米・コロナ起源報告書:お手盛りと付け焼刃が暴いたバイデ...

米・コロナ起源報告書:お手盛りと付け焼刃が暴いたバイデン政権の闇

発表前から既に不安が…

 「5/26から90日以内。」世界最高と称されるアメリカの情報機関が、新型コロナウイルスの起源について3ヶ月かけてどのような報告書をまとめるのか、世界の関係者は大いに期待した。
 
 ところが、90日の期限だった8/24の前日、ホワイトハウスの報道官は、極めて奇妙なコメントを発した。

 「機密内容を含む報告書が24日にまとめられる。その後、機密内容を精査した上で数日後に公開する」

 ちょっと待って欲しい。今回の報告書をまとめるのは、アメリカのアヴリル・ヘインズ国家情報長官だ。国家情報長官とは、CIA(中央情報局)、FBI(連邦捜査局)、NSA(国家安全保障局)など、アメリカの16の情報機関を束ねる役職だ。

 大統領の所に上がる様々な生情報の中には、公表できるものと、公表できないものがある。例えば工作員が特殊な方法を使って入手した情報や、最新のデジタル技術を駆使して人知れず奪ってきたデータなどは、公開すれば工作員の身に危険が生じたり、アドバンテージを享受していたデジタル技術が敵国にバレて台無しになってしまう可能性がある。

 公表できる情報とできない情報を峻別し、公表する場合はどこまで公表するかという、ホワイトハウスの情報管理上、極めてデリケートな作業の最高責任者が、国家情報長官だ。

 一方、今回のコロナ報告書を作ったのも、国家情報長官だ。自分で作った報告書について、国家情報長官が改めて機密内容を精査するとでもいうのだろうか?

 野党共和党からは、「単なる時間稼ぎだ」「辻褄の合わない説明に、バイデン政権の杜撰さが凝縮されている」などと、嘲笑に近い批判が出た。

 このように、今回の報告書は、発表前から不名誉なミソがついていた。

 そして8/27、3日遅れで発表された報告書はわずか1ページ半。16の情報機関の現状認識を大雑把に分類しただけの内容だった。

 世界で455万人もの死者を出し、甚大な被害を巻き起こした新型コロナウイルスの起源に関する真実が明らかになると期待していた世界中の関係者は、明らかにやる気のない、付け焼き刃の報告書に、大いに落胆した。

 報告書が国家情報長官室のホームページで発表されると、与野党問わず多くの連邦議会議員や、大手メディアがその内容の杜撰さを強く批判した。

 あまりの批判の激しさに、国家情報長官室は8/30、報告書のネット上の前書きを書き足した
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 アメリカの情報機関群は、新型コロナウイルスパンデミックの歴史的性質を理解しており、また、情報源と情報収集手段を守りつつアメリカ国民に我々の活動内容を発表していく事の重要性をよく理解している。
The Intelligence Community recognizes the historic nature of this pandemic and the importance of informing the American public of our work while protecting sources and methods.

 このゴールに向けて、アメリカの情報機関群は、機密指定された報告書を精査して、近い将来機密解除バージョンを発表するよう作業を継続する。
To that end, the IC will continue to review the classified assessment with the goal of issuing a declassified version in the near future.
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 8/27に報告書要旨を公表した際のプレスリリースではこう書いていた。
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 大統領の指示の元で、情報機関群は新型コロナウイルスの起源に関する90日の再調査を終えた。国家情報長官室は、大統領と政策担当者に先週提出した報告書の、機密指定解除情報に基づく要旨をここに発表する。
 As directed by the President, the Intelligence Community completed its 90-day review on the origins of COVID-19. The Office of the Director of National Intelligence released the declassified key takeaways from the assessment that was provided to the President and policymakers last week.
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 要するに、発表段階では「機密情報保護の観点から、発表できるのはこの要旨だけ」との立場だったのだ。

 ところが、共和党のみならず、身内の民主党や大手メディアからも激しい批判を浴びたため、「もっと詳しい報告書を発表する」と言わざるを得なくなった。

 アメリカの情報機関は全米の最も優秀な人材が結集している超エリート集団とみなされている。そのトップに君臨するヘインズ国家情報長官の一連の不手際は、バイデン政権がいかにウイルスの真実追及に後ろ向きかを、はっきりと浮き彫りにした。
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鍵を握るアヴリル・ヘインズ国家情報長官
via wikipedia

報告書が暴いた、バイデンとヘインズの罪

 1ページ半、わずか42行の報告書は、その短さと杜撰さで激しく批判を浴びた。しかしどんな短い文章にも、書き手の心理や立場が、そこはかとなく滲んでいるものだ。

 一読すれば、この報告書が真相究明を目的として執筆されたのではなく、責任回避と自己弁護の精神に貫かれた、極めて政治的な文書である事がすぐにわかる。

 そして短い文章の至る所に、バイデン政権の後ろめたさ」が色濃く滲んでいた。

 報告書の杜撰さと恣意性を示す代表的な部分をいくつか示す。
(1)ウイルスの兵器化を否定したアメリカ政

 報告書はまず、情報機関で見解が一致した点を列挙している。その冒頭に挙げられたのが、次の文章だ。
 
 「我々はウイルスは生物兵器として開発されたものではないと判断している」
 
 ところが、これが全ての情報機関の統一見解でない事は、周知の事実だ。

 後述するように、少なくとも2つの情報機関が「ウイルスには人工的な遺伝子操作が施されていた可能性がある」と考えている。この場合の人工的な遺伝子操作とは、「機能獲得」(gain of function)と呼ばれ、自然界にあるウイルスに遺伝子操作を加える事で、人類に感染させる能力を与える研究の事だ。
 
 中国が新型コロナウイルスに酷似したコウモリ由来のコロナウイルスに遺伝子操作を加えていた事は、武漢ウイルス研究所の石正麗研究員の複数の論文から明らかになっている。

 だから、新型コロナウイルスは、百歩譲って完成した生物兵器ではないとしても、人民解放軍による生物兵器研究の過程で生成されたウイルスである可能性が極めて高いのである。

ましてや、ウイルスの起源を巡って米中は熾烈な情報戦の最中にある。バイデン政権が本気で中国と対峙し、ウイルスの真実に迫ろうという意思を持っていたのであれば、あらゆる選択肢を留保したはずだ。

 ところが、報告書の冒頭で、まるで中国に助け舟を出すかのように、「ウイルスの兵器化」を明確に否定し、中国の悪意の追及に蓋をしてしまった。

 この不可解な姿勢にこそ、バイデンとヘインズが抱える深い闇が横たわっている。
米・コロナ起源報告書:お手盛りと付け焼刃が暴いたバイデ...

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なぜ真っ先に「ウイルスの兵器化」を否定する必要があったのか??
(2)遺伝子操作の有無について

 報告書は、「ほとんどの情報機関は、新型コロナウイルスは遺伝子的な改変を加えられていないと考えている」とした。

 ところが、ウイルス学の世界的権威、アメリカ・ノースカロライナ大学のラルフ・バリック教授は、自らが武漢ウイルス研究所に遺伝子操作の手法を伝授した事を認めた上で、次のように明言している。

 ・武漢ウイルス研究所での遺伝子操作は、複数のウイルスの断片を合成する「キメラウイルス」を使うやり方だった事
 ・このやり方で作られたウイルスは、いったん完成してしまうと、それが自然由来のウイルスか人工ウイルスかを見分ける事が不可能である事
 ・武漢ウイルス研究所では、この技術を使って、新型コロナウイルスと酷似したコウモリ由来のコロナウイルスに遺伝子操作を行っていた事

 武漢ウイルス研究所に遺伝子操作を指南したアメリカ人教授が、「自然由来のウイルスか人工ウイルスかを見分ける事は不可能」と断言している中で、どうしてヘインズは「アメリカのほとんどの情報機関が、新型コロナウイルスは遺伝子的な改変を加えられていないと考えている」と結論付けたのだろうか。
 
 報告書は、「2つの情報機関は、遺伝子操作があったかなかったかという事を判断するための十分な証拠がないと判断している」と記した。

 キメラウイルスを使ってウイルスを人工合成した場合、後からは自然由来か人工物か見分ける事が出来ない以上、この2つの情報機関の結論が妥当である事は、火を見るより明らかである。
 
 という事は、残りの14の情報機関は、さしたる根拠なく「遺伝子操作が加えられていない」と推察している事になる。
(3)根拠の全くない「動物由来説」

 バイデン政権の不誠実な立場をはっきりと証明したのが、次の記述である。

 「4つの情報機関と国家情報会議は、確信の度合いは低いものの、新型コロナウイルスを持つ動物に人間が曝露した、あるいは新型コロナウイルスと(遺伝子的に)99%以上近似する原始ウイルスを持つ動物に曝露した事によって、初めての人類への感染が起きたと考えている。」

 この段落を要約すれば、「ウイルスは動物からヒトに感染したと考えている」という事になる。

 それならば、新型コロナウイルスの原始株をヒトにうつした動物は何だというのか。

 同じコロナウイルスで、世界的パンデミックを引き起こしたSARS(重症急性呼吸器症候群)はハクビシン、MERS(中東呼吸器症候群)はヒトコブラクダから、ヒトへと感染した事がわかっている。

 ところが、新型コロナウイルスについては、ゲノム配列が判明して1年8ヶ月が過ぎた今も、どの動物からヒトに感染したかわかっていない。

 これまでに千数百種類もの動物が検証対象となったが、特定のコロナウイルスを変化させてヒトに感染させる能力を与える、いわゆる中間宿主となりうる動物は、全く見つかっていないのだ。

 動物さえ見つかれば、ウイルスの起源の問題はその瞬間に解決する。ところが、いくら沢山の動物を検証しても、該当するものがひとつも見つからないからこそ、「研究所流出説」が信憑性を帯びているのである。

 こうした状況でもなお、動物からの感染説を取るのであれば、どの動物が中間宿主である可能性が高いと考えているのか、現段階での見解を示すべきだろう。

 さもなければ、前項の2つの情報機関のように、「動物由来説については、結論を得るだけの情報はない」とまとめるのが、科学的な態度だ。

 しらみつぶしに多くの動物を調べても該当種が見つからないのに、動物由来説を取る情報機関こそ、科学ではなく、政治的な意図を優先していると類推されてもやむを得まい。
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報告書からは、とても「動物由来説」に根拠があるとは思えない

「国家情報会議」の正体

 そして、この報告書が図らずも自白したのが、バイデン政権そのものの恣意性である。

 報告書は、動物由来説を取る機関として、「4つの情報機関」と「国家情報会議」を列挙した。
 
 ここでもう一度、アメリカの「16」の情報組織について整理しよう。

 (1)CIA(中央情報局・独立諜報機関)
 (2)司法省
  -FBI(連邦捜査局)
  -DEA(麻薬取締局)
 (3)エネルギー省
  -OICI(情報部)
 (4)国防総省
  -NSA(国家安全保障局)
  -DIA(国防情報局)
  -NGA(国家地球空間情報局)
  -NRO(国家偵察局)
  -4軍(陸海軍海兵隊)情報組織
 (5)国土安全保障省
  -インテリジェンス分析局(I&S)
  -沿岸警備隊情報局,
 (6)国務省
  -INR(情報研究局),
 (7)財務省
  -TFI(金融情報局)
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16の強固な情報組織があるはずだが―
 見ればわかるように、アメリカの16の情報機関のうち15の組織は、連邦政府の省庁か軍に所属している。

 そして、アメリカの情報機関を統括していたのは、唯一の独立組織であるCIA長官だった。CIA長官はCIAという巨大組織に加えて、アメリカの全ての情報機関のトップに君臨していたのであって、だからこそCIAは「中央情報局」と呼ばれる。

 しかし2001年911テロを防げなかった反省から、情報機関同士の風通しをよくする目的で、2005年に新たに設置されたのが「国家情報長官」なのだ。

 だから、国家情報長官は、16の情報機関を統括し、各機関が集めた情報を整理して大統領に報告する役割を担っている。

 こうした経緯から、長官を支える「国家情報長官室」には工作員や分析官や実行部隊がおらず、あくまで長官の庶務を支えるマネージメント組織に過ぎない。

 ところが報告書では「動物由来説」を取る組織の一つとして、「国家情報会議」が列挙されている。

 国家情報会議とは、16の情報機関の情報を総合して大統領に様々な提言を諮問機関だが、実質的なトップは国家情報長官である。要するに、ザックリ言えば、国家情報会議≒国家情報長官=ヘインズなのである。
 ここで、大きな疑問が生じる。工作員や分析官など、情報機関としての実態がない国家情報会議や国家情報長官室、あるいはヘインズ本人が、なぜ他の情報機関と並列して、「動物由来説」を支持しているのだろうか。

 そもそもこの報告書自体、16の情報機関の見解を集約する形で書かれている。それなのに「動物由来説」に関する見解に賛意を示す時にだけ、情報組織を持たない「国家情報会議」が登場するのか。

 結局この報告書によって、大統領の諮問機関である国家情報会議が動物由来説を支持していると明かされたのであって、それはすなわち「バイデンとヘインズは研究所流出説に否定的な立場である」というニュアンスを明確に出しているとも言える。

 今や、公開されている多くのデータや証言が、「新型コロナウイルスは武漢ウイルス研究所から流出した」という仮説を強力に補強している。

 そして、こうした世界の潮流に対して中国側は「アメリカこそが流出元である」などと主張し、米中の熾烈な情報戦が続いている。

 ところが、多くの情報が研究所流出説を示唆しているのに、なぜバイデンとヘインズだけは、敢えて中国を利するような態度に終始しているのか。

 それは、バイデンとヘインズこそが、武漢ウイルス研究所での危険なウイルス兵器化研究に資金を提供し続けたオバマ政権の中枢にいた、いわば容疑者だからだ。

中国のウイルス兵器化研究を支援したオバマ

 オバマ政権は2014年、アメリカ国立衛生研究所(NIH)経由で武漢ウイルス研究所に対して370万ドルの資金提供を行った。

 そしてまさにこの年、武漢ウイルス研究所は、コウモリ由来のコロナウイルスがに人類に感染するように遺伝子操作をする、いわゆる機能獲得研究に本格的に着手した。

 このアメリカの資金は、2015年に「コウモリ女」として知られる武漢ウイルス研究所の副所長、石正麗の「SARS型コロナウイルスが人類に感染する可能性」という論文として結実している。

 そして石正麗は、雲南キクガシラコウモリという中国固有のコウモリのコロナウイルスを遺伝子操作し「人類への感染能力を獲得させる事に成功した」と自ら発表した。
山口敬之:お手盛り報告書が暴いたバイデン政権の闇

山口敬之:お手盛り報告書が暴いたバイデン政権の闇

機能獲得研究を巡って施設を視察するオバマと、随行したファウチ(2014)
via 著者提供
 こうしたアメリカの中国への「ウイルス兵器化」の外注には、アメリカ国内からも批判が出ていた。

 例えば、2018年には中国に駐在するアメリカの科学系外交官が、

 ▷武漢ウイルス研究所(WIV)の安全性と管理体制にぜい弱性がある
 ▷この研究所が行っていたコウモリのコロナウイルスの研究が、重症急性呼吸器症候群(SARS)のようなパンデミックを起こしかねない

 との公電を本国に送っている。

 こうした批判を無視して、アメリカ政府は武漢ウイルス研究所への支援を続けた。この支援を一貫して推進したのが、国立アレルギー感染症研究所の所長であり、今もアメリカのコロナ対策の司令塔役を担っているアンソニー・ファウチである。

バイデンとヘインズも「共犯」

 オバマ政権がアメリカ国民と人類全体に対する恐るべき背信行為に手を染めていた時、バイデンはどこにいたか。

 もちろん、副大統領としてホワイトハウスに陣取り、こうした中国への資金供与の全てを知りうる立場にいた。

 一方のヘインズ国家情報長官はどうか。オバマがアメリカ国内でのウイルスの機能獲得研究を禁止した2013年、バイデンの強い推薦によって、ヘインズはCIA副長官に異例に大抜擢されている。

 オバマがアメリカ国内での機能獲得研究への助成停止を決定したからこそ、翌年から武漢ウイルス研究所への資金提供が始まった。

 そしてその重要な決定をする時期に、ヘインズはCIA副長官として足繁くホワイトハウスに通い、オバマやバイデンに中国など世界情勢を報告している。そしたその報告の中には、世界各国の生物化学兵器研究の状況についての報告が含まれていたこともわかっている。

 そして2015年1月、ヘインズはオバマ大統領の安全保障担当副補佐官へと昇格する。ちなみにヘインズの前任の副補佐官は、現国務長官のアンソニー・ブリンケンである。

 また、バイデン副大統領の安全保障担当補佐官を務めていたジェイク・サリバンは、バイデンの大統領就任と同時にホワイトハウス入りし、現在安全保障担当大統領補佐官を務めている。
 オバマとファウチによる武漢ウイルス研究所への資金供与の全貌を知る立場にあったバイデンが、資金供与決定の際の基礎情報をオバマに上げていたヘインズに、ウイルスの起源を巡る情報を整理させる。

 これは、犯人に犯人を探せと言っているに等しい。今回の報告書そのものが、壮大な茶番だったのだ。

 もはやアメリカという国に正義はない。そして、この隠されてもいない茶番と、その先のとてつもない闇を、一切報じない日本のメディアも、暗黒勢力の手先と見るほかあるまい。
山口 敬之(やまぐち のりゆき)
1966年、東京都生まれ。フリージャーナリスト。
1990年、慶應義塾大学経済学部卒後、TBS入社。以来25年間報道局に所属する。報道カメラマン、臨時プノンペン支局、ロンドン支局、社会部を経て2000年から政治部所属。2013年からワシントン支局長を務める。2016年5月、TBSを退職。
著書に『総理』『暗闘』(ともに幻冬舎)、新著に『中国に侵略されたアメリカ』(ワック)。

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