「マウスの楽園」実験
たとえば米アリゾナ大学の最新研究によれば、米国のミレニアル世代(おおむね1980年代初頭から1990年代中盤までに生まれた人)のうち、およそ40%もの人が「自分はLGBTだ」と答えている。こうした傾向は、実は半世紀以上も前に米国のジョン・B・カルホーンという動物行動学者によっても確認されていたのだ。
なぜ、そうなったのか―。この実験の経緯と結果から、われわれ人間も多くを学べるのではないかと思う。
実験開始からしばらくは55日ごとにマウスの数は倍増し続けた。最初は8匹だったマウスは315日後には620匹までに増加した。カルホーン氏ら研究者は、この状態がずっと続くと予測した。しかし、そこから出生率の著しい減少が起き始めたのだ。マウスの数は145日ごとに2倍のペースに落ち、飼育空間は3840匹ものマウスがストレスなく生活できるはずが、2200匹をピークに減少の一途をたどり、社会構造の崩壊が起こった。
「楽園」のはずが、治安が悪化
さらに次の世代では、メスのオス化、オスのメス化も進んだ。一部のオスのマウスは他のマウスとの関わりを避けるようになり、社会的競争や繁殖に興味を失った。一日中ただ飲み食いして寝るだけで、まさに「引きこもり」状態になった。やがて求愛行動のルールも崩れ、成熟しきっていないメスと、またオス同士で交尾を試みたり、性別問わず無差別に強姦するマウスも増えた。
そうしてネズミの楽園は「死」の段階へ入り、実験開始から560日目からはマウスの増加が止まり、600日目から死亡率が出生率を上回り始めたのだ。実験開始から4年目、最大2200匹まで増えたマウスは122匹まで減少し、そこでカルフーン氏は人道的な理由で実験を中止。ところが救出されたマウスを他の飼育空間に移しても、精神が戻ることはなく、元のマウス社会に適合できず全滅した。
「スピリットの死」を許すな
カルフーン氏はこれを「行動の沈下」と命名。いくら物理的に豊かでも、ただ放っておくだけでは『スピリットの死』が必ず起こり、それが起こった社会ではいずれ肉体の死も迎えることになると定義した。
この実験結果を見て皆さんはどうお感じになるだろうか?
ひょっとして「じゃあLGBTやフェミニズムも、豊かな現代社会が招いた自然な流れなんだな」と思う方もいらっしゃるかもしれない。しかし、実験結果を見てほしい。マウスの楽園は滅んだのだ。マウスよりもずっと高度な知能を持つ「人類」の一人として、自分の種が自ら滅亡へと進んでいる現状を許してもいいとは、私には到底思えない。
人間だからこそ、「沈下の連鎖」から抜け出すことができると信じたい。海外のように過激な個人主義を賛美すること、死刑廃止論や犯罪者人権の過剰擁護によって罪への寛容性を高めること、LGBT尊重の価値観を押し付けること―こういった「理性の暴走」こそがマウスの実験のような社会崩壊を招くのではないか。いまこそ私たちは「沈下の連鎖」を招きかねない左翼リベラルの思想波及を止めなければならないであろう。
1995年、ウクライナ東部のハリコフ市生まれ。ハリコフ・ラヂオ・エンジニアリング高等専門学校の「コンピューター・システムとネットワーク・メンテナンス学部」で準学士学位取得。2013年11月~14年2月、首都キエフと出身地のハリコフ市で、「新欧米側学生集団による国民運動に参加。2014年3~7月、家族とともにウクライナ軍をサポートするためのボランティア活動に参加。同年8月に来日。日本語学校を経て、大学で経営学を学ぶ。現在は政治評論家、外交評論家として活躍中。ウクライナ語、ロシア語のほか英語と日本語にも堪能。著書に『自由を守る戦い―日本よ、ウクライナの轍を踏むな!』(明成社)がある。