【谷本真由美】メーガン妃の暴露にエリザベス女王が“氷の微笑”

【谷本真由美】メーガン妃の暴露にエリザベス女王が“氷の微笑”

 イギリス王室が新たな危機に直面している。チャールズ皇太子の次男であるヘンリー王子と妻のメーガンが、アメリカで放送された人気司会者オプラ・ウィンフリーの番組で2時間にわたるインタビューに応じ、イギリス王室は「差別的な機関」だと主張したのである。

 ある王族がヘンリー夫妻の子供の肌の色はどんな風になるかと尋ねたこと、お輿入れにあたって振る舞いやマナーに関して何の支援もなかったことなどを暴露したうえで、厳しい差別にさらされて精神を病み、メーガンは自殺すら考えたと話した。

 チャールズ皇太子から手当てが打ち切られたことについても苦情を述べた。ヘンリー王子には、エリザベス女王の母親とダイアナ妃から受け取った20億円を超える遺産がある。その遺産はプロ投資家によって運用され、何をせずとも巨額の資金が転がり込んでくる。しかも、王室ネタを売り飛ばすことで、アメリカのメディアから巨額の報酬を得ている。にもかかわらず、毎月の手当てをよこせと要求しているのだ。

 アメリカでは、ヘンリー夫妻を擁護し、王室を人種差別集団と非難する世論が高まっている。しかし、王室が本当に人種差別しているのであれば、そもそも結婚自体を容認しないだろう。

 インタビューにはウソが多い。婚約や結婚の際にはチャールズ皇太子と直々に打ち合わせを重ねていて、様々な支援を受けている。彼らは精神的状況が良くないと主張しているが、王室の一員としてイギリスで最高の医療システムにアクセスすることができる。医師の治療を受けていないというのは非常におかしな話だ。精神状態が悪いのであれば、そもそも医師はテレビ出演を禁止するだろう。しかも、プライバシーを守りたいといっている割にはテレビや週刊誌に出まくる。この夫婦は「矛盾の塊」なのである。
gettyimages (5457)

「矛盾」の夫婦
 インタビューが放送された3月上旬、イギリスはコロナウイルスのワクチン接種者が1日あたり40万人、総計2200万人を超え、1日の死者数は100人前後に落ち着いていた。終わりの見えないコロナ禍にやっと光が差したものの、依然としてロックダウンは厳しく続き、医療従事者は日々、過酷労働・低賃金の現場で命をかけて働いている。イギリスのGDPはマイナス10%をマークし、多くの国民が職を失っている。戦後最大の危機に直面していることは間違いない。

 国民を勇気づけるため、王族は真っ先にワクチンを接種し、啓蒙活動や公務にいそしんだ。エリザベス女王の夫であるフィリップ殿下は99歳で健康状態に不安があるなか、女王は身を削って公務に取り組んだ。その甲斐もあってか、国民の間ではワクチンが危険だという意識はかなり薄くなってきている。

 そんななか、ヘンリー夫婦はこのタイミングで王室にケンカを売り、国民の希望を砕くようなインタビューをぶつけてきたのである。本国の惨状などどこ吹く風。自らの権利ばかり主張して義務を果たさない〝富豪夫婦〟に、イギリス国民の怒りは最高潮に達している。

 そして遂に、イギリス王室がコメントを発表した。イギリス人はアメリカ人のように大袈裟な表現は使わず、控えめで上品な英語で行間を読ませる。王室の声明はその典型だ。

 「困難の全体像を知り家族全員が悲しんでいます」の「saddened to=悲しむ」は、「我々は激怒しているぞ!」と解釈するのが正しい。

 「思い出は様々かもしれませんが、真剣に受け止め、家族内で私的に取り上げたい」の「recollections may vary=思い出は様々かもしれない」は、「ナニでっちあげてんだよ!」という意味。「be addressed by the family privately=家族内で私的に取り上げる」は、「外でペラペラ話してんじゃねえぞ!」である。

 声明全体を要約すると、「お前ら、しばいてやる!」というもの。エリザベス女王は静かに激怒している。

 イギリス人にとって、王室は自分たちのアイデンティティを司る存在である。王室に求められるのは継続性や伝統、そして品格にほかならない。ところが、この夫妻は王室の役割を全く理解していない。

 日本の皇室は、豪族であったイギリス王室以上に国民の精神的な支えとしての役割が大きく、精神的、宗教的な重要性が遥かに大きい。日本ではイギリス王室に倣って「開かれた皇室」を求める声もある。しかし、ヘンリー夫妻を見ていると、「開かれた王室」がいかに国民の士気を下げるかがよくわかるだろう。品格を維持するためには、その役割をよく理解している人物をメンバーとして迎えなければならない。
谷本 真由美(たにもと まゆみ)
1975年、神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院にて 国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、 国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国で就労経験がある。ツイッター上では「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。

関連する記事

関連するキーワード

投稿者

この記事へのコメント

コメントはまだありません

コメントを書く