【谷本真由美】イギリス国民が「ポルノ」で騒然

【谷本真由美】イギリス国民が「ポルノ」で騒然

不信任投票は否決されたものの、苦難続きのボリス・ジョンソン英国首相
 イギリスでは相変わらず、ウクライナ情勢が大変な関心を集めている。戦後最悪のインフレによって、生活が苦しくなっている人が増えているのだ。

 とくに光熱費の高騰は大変で、昨年の倍以上の価格になるという見通しもある。イギリスは寒冷地なので暖房が必須だが、このままでは冬季に暖房をつけることができず、体調を崩す人や死亡する人も出てくる可能性がある。

 イギリス政府はウクライナ情勢をめぐり、ロシアに強気な態度で臨んでいる。ジョンソン首相がウクライナの首都キーウを訪問した4月には、ジョンソン政権の支持率は上がった。

 しかし、いま政権の信頼性を揺るがす「事件」が起きている。保守党の議員が、 議会の審議中にスマホでポルノを見ていたのだ。「犯人」は保守党のニール・パリッシュ下院議員。この事件が注目を集めた理由の一つとして、彼の選挙区がデボンというイギリス南西部の農業地帯であることが挙げられる。
【谷本真由美】イギリス国民が「ポルノ」で騒然

【谷本真由美】イギリス国民が「ポルノ」で騒然

ポルノを見ていたパリッシュ議員
 この地域は、美しい海岸線と田舎の風景が有名で、「クリームティー」という名物がある。イギリスの伝統的な焼き菓子であるスコーンに、クロテッドクリームという生クリームを低温で煮詰めて濃厚にしたものと、果肉たっぷりのジャムをつける。それと一緒に、美しい茶器でイングリッシュティーを楽しむのである。

 ティータイムは緑豊かな牧草地と美しい海岸を眺めながらゆったりと過ごす。イギリスの上品さを絵に描いたような土地なのである。

 イギリス国教会の価値観を色濃く残している地域でもあり、日本人が想像する進歩的でリベラルな欧州のイメージとは正反対だ。同性婚に反対する人も多く、 婚前交渉や女性が男性よりお金を稼ぐことに反対するような人も少なくない。

 そんな地域出身の保守系議員が、ウクライナ情勢をめぐって欧州の未来がどうなるかを真剣に議論するなか、スマホでポルノを見ていた──。イギリス国民は、そのギャップに驚いたのである。
 さらに驚くべきは、イギリス議会の女性議員たちが、こんなことは氷山の一角であり、他の議員はポルノの視聴よりもっと酷いことを国会でやっていると告発し始めたことだ。

 例えば、執務室内に女性を連れ込んでいる、女性議員の体を触ったり婚外交渉を要求したりしている……要するに「セクハラ」である。

 これまで、こうした「セクハラ」が国会内で大々的に問題視されたことはほとんどない。あまりにも日常的で数が多いので、いちいち事件にするのもバカらしいからだ。そんなことに構っていられるほど暇ではない。

 とはいえ、政治家の「下半身スキャンダル」はたびたび国民の関心事となる。

 コロナ対策でジョンソン首相の右腕を務めたマット・ハンコック議員は、自らのオフィスで大学時代からの女友達と不倫行為に勤しんでいたところを監視カメラに撮影され、タブロイド紙「ザ・サン」にすっぱ抜かれてしまった。

 コロナ対策で要職に就いていた議員がそんなことを行うなんて、しかも感染対策が最も厳しい時期だったにもかかわらず、職場で思い切り「濃厚接触」している……ハンコック議員の事件に、イギリス国民はショックを受けた。
【谷本真由美】イギリス国民が「ポルノ」で騒然

【谷本真由美】イギリス国民が「ポルノ」で騒然

コロナ下にもかかわらず、職場で「濃厚接触」のハンコック議員
 日本には、ここまで堂々と破廉恥な行為をしでかす政治家はいない。不倫するにしてもホテルか、せいぜい議員宿舎だろう。国会内や議員会館で事に及ぶ議員などいない。警備員や事務員、清掃員にばれてしまう。

 欧州で最も先進的なはずのイギリスといえど、政治家たちが日常的に不倫やセクハラを楽しんでいる。日本人の「欧州幻想」をぶち壊すようだが、これが現実なのだ。

 欧州の人々は男女問わず、日本人に比べて道徳やモラルの意識が欠けている場合が多い。セクハラや不倫もかなり多い。長時間労働が当たり前の日本人とは異なり、欧州人は定時で仕事を終わらせる。余った時間とエネルギーを性に費やしているのかもしれない。

 これは実際に現地で働いたことがある日本人女性ならよくわかる。他方で、短期出張や在外研究など、一時的に滞在するだけの日本人男性にはわかりづらい。彼らはセクハラの対象ではないからだ。

 このような実情があるからこそ、欧州ではセクハラや性差別をめぐるルールづくりに熱心なのだ。いわば「反動」ともいえる。
谷本 真由美(たにもと まゆみ)
1975年、神奈川県生まれ。シラキュース大学大学院にて 国際関係論および情報管理学修士を取得。ITベンチャー、コンサルティングファーム、 国連専門機関、外資系金融会社を経て、現在はロンドン在住。日本、イギリス、アメリカ、イタリアなど世界各国で就労経験がある。ツイッター上では「May_Roma」(めいろま)として舌鋒鋭いツイートで好評を博する。

関連する記事

関連するキーワード

投稿者

この記事へのコメント

ホッとした人2 2022/6/20 07:06

先ずは昨日の件、掲載ありがとうございました。連投に成りますがご勘弁を。

早速、本日付の産経ネット記事「ロシアと韓国…「歴史は進歩する」のウソ 古田博司」有料記事拠り一部抜粋。

【いまだに多くの人が、歴史は進歩すると考えている。人類は過ちを繰り返しながら一歩ずつ進歩してきたのであり、やがて理想の社会へと行き着くというわけだ。戦争にしたって、第一次世界大戦、第二次世界大戦と多くの過ちから学んできたのだから、いつかは戦争も核兵器もない平和な世界を実現できるという理想を抱く。

こういうことを言う人は、特に新聞やテレビなどに出てくるインテリやマスコミ人に多い。彼らは、社会がある発展段階を経つつ進歩し、どの国でも必ず近代化できるし、せざるを得ないという進歩史観で世の中を論じようとする。

しかし、ロシアによるウクライナ侵攻は、そういう人たちが、進歩という虚構(ウソ)をばらまいてきたことを証明してしまった。】

私は、基本的に文系学者とは「綺麗事の左翼の為の御用学者」でしかないと考えているが、この元筑波大・古田氏と現福井大・島田氏の両名は別格である、と考えている。今後、我が国は安全保障上の危機的状況を迎えるのはハッキリして居り、少なからず痛い目に遭って(複数国から同時に攻撃を受け、海保の一隻でも沈められるか、ミサイルの数発でも喰らって)、常に遅い決断を得意とする伝統の我が国では、いよいよ国家・国民の安全を痛烈に意識し始め、具体策に取り掛かると思われる。物事の進歩には、何らかの犠牲が伴うのは人生の鉄則であり、歴史の教訓であろう。犠牲者の数が少ない事を祈るだけである。

ホッとした人 2022/6/19 18:06

日本人は、自分達が「それなりにまとも」(他国から見たら清廉潔白に近い)なものだから、
白人共も自分達と同じだろうと考えてしまう。特に白人なら。一方、中国・朝鮮人・ロシア人+白人共は
自国の民族の残虐性が日常的で当たり前過ぎるから、他も、特に日本も同じだろうと
何も考えずにそう信じ込む。因みにインターネットがどんなに普及しようが、
他の民族の事など如何でもいい「ミザル・キカザル」の民族には、情報の浸透など有り得ない。
100年経とうが、1000年経とうが、これだけ大きな質量のものを変えるのは、難しい。人間一人が生き方を変えるには相応の痛みを伴う。これが在るからこそ、組織・集団・民族・国家は「絶対に変わらない」 
そう永久に。
で、結論は何かと言えば、「又やる。又繰り返す」である。

すべてのコメントを見る (2)

コメントを書く