朝香豊:バイデン政権はファウチ氏を責任追及せよ

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「ファウチ・ゲート」で大ピンチ

 アメリカの公衆衛生行政に多大な影響を及ぼしてきた、アメリカ国立アレルギー・感染症研究所のアンソニー・ファウチ所長が窮地に追い込まれている。アメリカの情報公開法に基づき、ファウチ所長の数千通のメールが公開されたためである。ウォーターゲート事件になぞらえて「ファウチ・ゲート」と呼ばれるようにもなった。

 まず、昨年の2月5日付のメールが槍玉に上がっている。このメールはアメリカン大学の学長で元保健福祉長官のシルビア・バーウェル氏からの私的な問い合わせに対する返信である。このメールの中で、「市販のマスクは感染者がその感染を周りに広げないためにするもので、非感染者が感染しないようにするためのものではない。ウイルスは小さくて薬局で購入する典型的なマスクではウイルスは通過できてしまうから、ウイルスを排除する点ではマスクには実際効果はない」とファウチ所長は説明し、マスク着用は必要ないと助言していた。

 同年2月10日のワシントンポストに掲載されたQ&AのAは、ファウチ所長の回答に基づいて作成されたものである。この中で、新型コロナウイルスに関して一般的な人は何をすべきかという質問にファウチ所長は、現時点では新型コロナウイルスはリスクが低く、アメリカ人は「絶対に」マスクを着用すべきではないと答えていた。

 だが、その2ヶ月後の4月3日にファウチ所長はそれまでの方針を覆して、市民が外出する際には必ずマスクを着用するよう求めるようになった。この件について問われた時にファウチ所長は、「以前はマスクの不足があったからそう言っただけで、マスクは有効だとその時も内心は思っていた」との言い訳をした。

 もし本当にそうであるなら、ファウチ所長はバーウェル氏を大切な友人だとはみなしていなかったということなのだろうか。バーウェル氏の個人的な問い合わせに対して、本音とはまったく異なった回答をファウチ所長は行ったことになるからである。

 この矛盾を合理的に説明しようとした場合に、当時のトランプ政権にとって打撃になることを優先させて、ファウチ所長が政治的に動いたのではないかという疑惑が発生する。すなわち、本当はマスクが感染予防に有効ではないことを承知しておきながら、マスクを重視しないトランプ政権に打撃を与えたいという思惑から、マスクが有効だとする考えに鞍替えしたのではないのかというものである。

 ファウチ所長はトランプ大統領が服用していたヒドロキシクロロキンについても効果は全くないと全否定していたが、これも政治的な立場を反映したもので、純粋に科学的な見地から述べたものではなかったとの疑惑も持たれている。もしそうだとすれば、ヒドロキシクロロキンの投与によって救えた命が数多くあったことになり、多くのアメリカ国民の命よりもトランプ嫌いという政治的立場を優先させたことになってしまう。

度重なる疑惑

朝香豊:バイデン政権はファウチ氏を責任追及せよ

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もう言い逃れはできない⁉
 ファウチ所長には他にも疑惑がある。これはウイルスの発生源に関するものである。

 ファウチ所長はNPO法人の「エコヘルス・アライアンス」を通じて、アメリカ政府の資金を武漢ウイルス研究所に渡していた。何年にもわたって送られていた金額を合計すると740万ドル(約8億円)に達することも分かっている。

 武漢ウイルス研究所ではコウモリから採取したコロナウイルスの「機能獲得研究」が行われていた。「機能獲得研究」とは、ウイルスに遺伝子操作を加えることで人間への感染力や致死率を高めるための実験である。この「機能獲得研究」を行うのに、ファウチ所長が承認した資金が武漢ウイルス研究所で使われていたのではないかという疑惑も持ち上がっているのだ。

 この点についてファウチ所長は、コウモリの持つコロナウイルスが人に感染をうつすことができるかどうかを調査・決定するのにこうした資金が使われたのであり、「機能獲得研究」には用いられていないと述べている。

 これに対してジョン・ケネディ上院議員は、武漢ウイルス研究所が嘘をついているかもしれず、こうしたお金が「機能獲得研究」には使われていないとどうしてわかるのかと、ファウチ所長に問いただしたところ、ファウチ所長は「わからない」と返答した。これだけを聞けば、ファウチ所長はあまりに愚かであったために、中国側に騙されたかのように感じるかもしれない。

 だがニューズウィークは、2019年に始まった武漢での新プロジェクトが『エコヘルス・アライアンス』を率いるピーター・ダスザック氏の指導の下で運営され、同プロジェクトの内容に「機能獲得研究」が含まれていたことを報じている。ダスザック氏とファウチ所長は非常に親しい関係にあり、ファウチ所長がこのことを知らなかったはずはない。

 なお、ダスザック氏はコロナウイルスを実験室内で操作することが非常に簡単であることを認めている。さらに5つのウイルスを統合したウイルスの作成に取り組んでいることを、2019年に撮影された動画の中でも述べていた。

「機能獲得研究」による産物か

 そもそもファウチ所長は、鳥インフルエンザウイルスに関して「機能獲得研究」を行うことを2011年に擁護する立場を示していた。「機能獲得研究」はオバマ政権の時に一旦停止させられていたが、アメリカ国立衛生研究所は「専門家パネル」の承認があれば「機能獲得研究」を行ってもよいとして、2017年にこの停止処置を解除している。そして秘密裏に「専門家パネル」の承認が行われて、インフルエンザウイルスについて2件の「機能獲得研究」が進められていたことが2019年に明らかになった。

 さらに、武漢ウイルス研究所の石正麗研究員が明らかに「機能獲得研究」について書いた論文で、この研究に資金提供をしてくれたとしてファウチ所長への謝意を表明していたこともわかっている。こうなるとファウチ所長が中国側に騙されただけだというのは非常に考えにくいことになる。

 数々のノーベル賞学者を輩出している有名なスクリップス研究所のクリスチャン・アンダーセン博士は、早くも2020年の1月31日の段階で「(このウイルスの)遺伝子配列は進化論から予想されるものとは矛盾していると考えている」との内容を記したメールを、ファウチ所長に送っている。

 その2日後には、新型コロナウイルスにはHIVウイルスの遺伝子と同じゲノム構造が挿入されているとする、インド工科大学のプラダン教授たちが発表した論文について、WHOのテドロス事務局長とバーンハード特別戦略アドバイザーが「コンクラーベ」(秘密会議)を行ってごまかそうとしているのではないかとするメールが、イギリス政府の科学顧問であるジェレミー・ファラー氏からファウチ所長に送られている。

 つまり、英米のトップレベルの研究者たちが、このウイルスについて人工的に作られたものではないかとの疑いを持ち、そのことをファウチ所長に知らせていたわけである。

 ところがファウチ所長はこのウイルスが「機能獲得研究」を通じて武漢ウイルス研究所で生み出された可能性を一顧だにせずに、自然に進化したものだという立場を取り続けてきた。
朝香豊:バイデン政権はファウチ氏を責任追及せよ

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この人の役割は何だったのか?

バイデン政権の責任追及

 それだけではない。「ウイルス人工説」の広がりについてどう対処すればいいかについて、ファウチ所長が様々な仲間と「相談」をしていたこともわかってきた。

 権威ある医学雑誌の『ランセット』はこのウイルスの起源は武漢ウイルス研究所ではないかという仮説を根拠なき陰謀論だとして完全に否定する声明を掲載したが、ここにもファウチ所長たちのグループが大きな影響力を行使していた疑いが強まっている。この声明には27人の科学者が署名しているが、前述の『エコヘルス・アライアンス』を率いるピーター・ダスザック氏もその中の一人である。それだけでなく、ダスザック氏は他のメンバーへの働きかけも行っていた。

 ファウチ所長らのこうした工作は相当広範囲に及んでいたと思われる。例えば、アメリカ疾病予防管理センターの所長を務めたロバート・レッドフィールド氏は2020年の3月に、「(新型コロナウイルスが)何らかの(自然的な)方法でコウモリから人に感染したとは、私は信じていない。通常病原体が動物から人へと感染する場合には、人から人へと感染できるようになるまでにしばらく時間がかかるものである」とCNNの番組で発言して、「研究所起源説」を示唆したことで、同僚の科学者たちから殺害の脅迫を受けていたことを明らかにした。レッドフィールド氏は、こうした迫害は政治家から受けることはあっても、科学界から受けることがあるとは思ってもみなかったと述べている。

 国務省内で武漢ウイルス研究所の調査を進めてきたグループも、この研究所がコロナウイルスのサンプルで機能獲得実験を行っている中で、3人の研究者が2019年秋に病気になったことを示す機密情報を入手したが、この公表を行うと「パンドラの箱」を開けることになるからやめろとの圧力をさまざまなところから受けていたこともわかった。

上記で確認してきたように、政治的な思惑から、あるいは一部の人間の自己保身から、科学界で真実の追及が厳しく抑制される事態が生じていた疑いが極めて強いことが示唆される。

 あたかも「科学」の立場にいるように見せかけながら、自分たちにとって都合の悪い論を「根拠のない陰謀論」だとして葬ろうとする本物の陰謀が広がっていた可能性を、我々は軽く見るべきではない。

 このウイルスが「機能獲得研究」を通じて武漢ウイルス研究所で生み出されたものであるなら、中国に対してその責任を取らせることは大切である。その一方でその中国とつながるような動きを示してきた勢力についても、きちんとした解明が求められる。

 バイデン政権の正当性とも絡む問題ゆえに、ファウチ所長の責任問題は曖昧にされる可能性も高いが、世論の高まりの中でこれが許されない流れができれば、世界の流れを変えるのに大いに貢献することになるだろう。
朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。新著『それでも習近平が中国経済を崩壊させる』(ワック)が好評発売中。

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