ウイグル問題:中国臓器移植の闇に尻込みする日本のメディア

ウイグル問題:中国臓器移植の闇に尻込みする日本のメディア

1兆円産業の臓器ビジネス

 中国の医療外交のえげつなさは、マスクだけにとどまらない。コロナ禍第1波が終焉の兆しをみせていた6月、《心臓移植へ日中バトンつながる 藤田医科大病院で闘病実習生、チャーター機で帰国》と題し、《技能実習生として来日中に重い心臓病を患い、藤田医科大病院(愛知県豊明市)で闘病してきた中国人女性(24)が12日、心臓移植手術を受けるため、中部国際空港(同県常滑市)から中国当局が手配したチャーター機に乗り、帰国した。女性は心臓外科の先進医療で知られる中国・武漢の病院に入院し、移植の日を待つ》(中日新聞・6月13日付)といったニュースが、他にも東京新聞などで報じられた。

 NHKも報じたが、なんといってもインパクトが大きかったのは、フジテレビ系の情報番組『とくダネ!』の特集コーナーで取り上げられたことだ。確かに日中が協力し、重い心臓病を患う若い中国人女性の生命が救われる物語は美しい。

 だが、放送を見ると、疑問がふつふつと湧いてくる。たとえば「日本では待機時間は3年、中国では心臓移植が1~2カ月でできる」と報じられたが、他国と比較して、中国国内で早急に臓器移植手術を受けられる理由は何か。それらの臓器は、どこからかオンデマンドで供給されているのだろうか……。

 これらの疑問には一切触れず、全体的な印象としては〝日本より中国の臓器移植の方が、ドナーも見つかりやすく、進んでいる〟といった中国臓器移植を肯定する内容だった。

 案の定、放送後、ネットを中心に批判の声が多数上がった。ウイグル弾圧の悲劇を漫画で訴えてきた清水ともみ氏はツイッターで《〝日本で進まぬ臓器移植〟、一方中国では1~2カ月で出来るのにって?なんだこのアオリ。ひとりの人間の命を、人生をいただく行為が、そんなに簡単に出来るはずがない。そして、世界で言われている背景を報道が知らないはずがない。おかしいし、怖いよ》とコメントしている。

 中国政府によるウイグル弾圧や中国臓器移植ビジネスの実態を知る視聴者からすれば、おぞましい臓器売買の実態を伏せて美談に仕立て上げたフジテレビに対して、怒りの矛先が向くのも当然だろう。中国には臓器移植のため、罪もない人間が強制収容施設にストックされており、今や臓器移植は中国で1兆円産業と指摘されている。

 この問題に詳しいジャーナリストの野村旗守氏はこう言う。
「元中国国家主席江沢民の号令で開始された法輪功に対する迫害は、間違いなく今世紀最大の人権弾圧の1つです。中国は世界に冠たる拷問文化の国で、近年は法輪功のみならずウイグル、チベット、南モンゴルの人々も迫害しています。共産党政府は、軍や警察、諜報機関などを駆使し、信仰を放棄しない者に対しては、長時間に及ぶ殴打、電気ショック、集団による性暴力、薬物強要、過酷な強制労働、睡眠剝奪、言葉による侮辱や脅迫等々、およそ考え得るすべての方法を総動員して転向を迫ります。3月に公開されたドキュメンタリー映画『馬三家からの手紙』はその実態を克明に描いています。
 なかでも狂気の迫害が、脳死状態にした信者の生体から心臓、肝臓、腎臓、角膜などの主要臓器・器官を盗み取る『臓器狩り』の蛮行です」

『とくダネ!』特集の欺瞞

『とくダネ!』による〝日中の国境を越えてつないだ命のバトン〟特集によると、中国人女性を救うため、医師たちが中国領事館に働きかけ、中国南方航空も動いたという。

ナレーション「母国中国で心臓移植を受ける。中国ならすぐにドナーも見つかるはず。総領事館に掛け合い、武漢市にある心臓外科の先進医療で有名な病院の受け入れも決定し、あとは帰国の日を待つだけとなった」

 番組内で中心的役割を果たしたのが、医療ジャーナリストの伊藤隼也氏である。彼は2019年から藤田医科大学の理事長のアドバイザーを務めており、今回は患者の中国人女性を3カ月以上、見守っていたという。

小倉「日本国内においては、日本人でも臓器移植はまだハードルが高いのですが、それが日本にいる外国人が臓器移植ということになると、現状としては、隼也さん、どうなんですか」

伊藤「ほとんど不可能に近いと思います。実際、過去に数例だけあるのですが、日本の健康保険を持っている患者さんはできるんですが、実際問題、日本の臓器移植の待機者はいま14,000人以上いるんですね。実際、そのうちの2%ぐらいの方が平均3年1カ月近くお待ちになっているということで、心臓移植だけではなくて、今回補助循環装置を使いましたよね」

小倉「彼女を武漢に送り届けたということは、中国武漢のほうが移植手術がやりやすいということなんですか」

伊藤「やはり武漢は非常に移植の待機時間(平均1~2カ月)が短いんですね。それで、日本と違って数カ月待てば、残念ながら日本と違うという点はあるんですが、移植ができるという現実があります。(略)本当に日本でもまだまだいろいろな取り組みが必要だと思っているのですが、実際問題、中国と比べると日本はそこに関しては残念ですが、いわゆる十分ではない環境ですね、本当に」

カズレーザー「いや、もともと心臓病に罹患する方の割合というのはあまり変わらないと思うんですけど、そこまでドナーの数に差がある根本的な理由は何でしょうかね?」

伊藤「やはり日本と制度が違うとか人口がすごく多いとか、さまざまな理由があるのですが、やはり移植に対する国の考え方そのものとか国民のいろいろな考え方が違うので、これは一概に比較はできないので、僕はこの日本の補助人工技術、これは藤田医科大学はすごいと思うんですよね(略)」

医療ツーリズムの実態

 要するに臓器移植に関し、日本では平均3年1カ月の待機だが、中国では平均1カ月~2カ月だと、中国での移植を間接的にPRしているわけだ。伊藤氏はカズレーザーの問題の核心をつく質問に対して、問題の本質をはぐらかしているように見受けられる。なぜなら、伊藤氏は株式会社医療情報研究所の代表なのだから、中国臓器移植の問題点を知らないはずがない。伊藤氏に「DHC虎ノ門ニュース」を通じて取材を申し込んだのだが、なぜか断られてしまった。

 この美談の背景には、実は愛知県の大村知事の鳴り物入りで「インバウンドによる健診・検診で収益を上げる」といったことが、愛知県で積極的に推進されてきたこととも無縁ではない。

 大村知事は「医療ツーリズムのニーズが世界的に高まる一方、我が国の受入れに向けた取組は、またまだ十分とはいえない状況です。そうした中、愛知県では医療ツーリズムを推進し、優れた医療技術の提供と医療の国際化を図るため、今月23日、〝あいち医療ツーリズム研究会〟を立ち上げることといたしました」(2016年5月10日)とツイートしている。

 医療の国際化とはいえ、実際には愛知県健康福祉部保健医療局医務課・主査の山川高英氏の報告によると、県内17の病院(予定を含む)が外国人患者の受け入れを実施、全体244名中230人が中国人と圧倒的な数を占めている。価格設定は「診療報酬単価と同じまたはそれ以下」、及び「診療報酬単価の2倍以上」が多いとあり、中国の富裕層がターゲットであることは一目瞭然だ。

 また、2014年度より補助金事業として政府が医療機関における外国人患者受入れ環境整備事業を開始し、全国から19病院が選ばれており、愛知県はこの時点で藤田保健衛生大学病院(現在は「藤田医科大学病院」に改名)のみがエントリーされている。医療ツーリズムに関して、こんなニュースも報じられている。

《日本の医療機関が中国人に人気、悪質業者もある日本診療手配サービス会社が明かした数字によると、日本での診療の相談は毎年平均1万件を超え、それぞれの治療費は大部分が600万円以上になるという。医療目的で訪日する中国人の数は、2020年にはのべ31万人を超す見込みで、医療市場の潜在的規模は5,507億円に及ぶと予想している。

 業界関係者の話では、言葉の壁や地域格差を利用して、日本の医療機関について中国国内で虚偽の宣伝をしたり、法外な値段を要求したりする業者がいるという。例えば、本来4万元(約64万円)しかかからないフルコースの精密身体検査で、13万元(約210万円)も徴収した事例があった。

 また、日本の医療機関では銀行カードを利用できるのにも関わらず、多くの仲介業者が自らの利ザヤ稼ぎのため、患者には仲介業者を通さなければ支払いができないと告げているという》(『東方新報』2019年5月18日付)

 大村知事といえば、「お辞め下さい大村秀章愛知県知事 愛知100万人リコールの会」が発足し、ネットを中心に話題になっている。大村氏は、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」の企画展で、昭和天皇の写真をバーナーで焼き、その灰を足で踏み付けるような映像作品などの公開を認めた揚げ句、公金を投入していたことで批判されていた。ところが地元のメディアや大マスコミは、トリエンナーレでは慰安婦少女像展示のみにフォーカスをあて、そこにクレームをつけるのは「表現の自由への弾圧であり、ヘイトだ」といった論点のすり替えを行っていたのだ。

 一方で、慰安婦少女像以外に、①天皇侮辱動画を隠して出品、②日本兵士侮辱といった、信じられない作品が展示されていたことには一切触れていない。そんな展示会を承認し、さらには愛知県コロナ感染者495名の情報漏洩問題とあわせて、大村知事行政そのものが問題視されている。

 リコール運動を旗揚げしたのは、美容外科「高須クリニック」の高須克弥院長で、6月28日には名古屋市の河村たかし市長とともに、市内の繁華街でリコール・キャンペーンを展開。作家の百田尚樹氏やジャーナリストの有本香氏なども賛同している。

 地元の人に「なぜ、中日新聞は大村知事リコール運動を大々的に報じないのか?」と尋ねると、こう教えてくれた。
「大村行政と中日新聞はズブズブですから。中日新聞の社長・大島宇一郎氏は、愛知県が2022年秋の開業を目指し整備を進めるジブリパークの運営会社の社長にも就任していてウハウハでしょう。愛知県で後押ししている観光産業の重要なポストをゲットできたわけですから、これも俯瞰してみれば大村行政のお陰ではないでしょうか?」

 それにしても普通の日本人の神経なら、このように日本を貶める下品な作品を芸術のカテゴリーに入れることはしないだろうが、よく調べてみると、大村知事は実に中国や朝鮮半島がお好きな方のようだ。
 昨年、愛知県国際展示場で行われた統一教会のイベントには、

「孝情文化祝福フェスティバルの開催を祝し、心よりお喜び申し上げます。混迷する東アジア情勢の中で太平洋運命圏時代と日韓米の連携をテーマに韓鶴子総裁をこの愛知県国際展示場にお迎えし、かくも各界各層の多くの皆様がご降臨くださったことに心より歓迎申し上げます。(後略)2019年10月6日/愛知県知事・大村秀章」

 などと祝電を送っている。

 同年9月26日にも、中国駐名古屋総領事館が開催した中華人民共和国成立70周年祝賀会に出席した大村知事は「特に今年5月の中国訪問の成果を言及し、雄安新区に訪れグリン・スマートシティの魅力を理解した。新しく広東省と友好提携を結び、各分野での協力に強固たる基礎を固めた。清華大学と交流覚書を調印し、教育、科学技術イノベーション、人材育成などの面で協力関係を強めた。大村知事は当面日中関係のさらなる発展のチャンスを摑み、中国との友好交流と実務協力を深めていきたいと述べた」(中国駐名古屋総領事館HP)という。

 大村知事の自慢は、愛知と中国との〝ピンポン友好外交〟で、1999年、当時国会議員だった大村知事は日中友好議員連盟のメンバーとして初訪中、以後、20回に及ぶ訪中を果たしている。そもそも愛知県は2004年には「上海産業情報センター」、2008年には、愛知県内企業の相談窓口である「愛知県江蘇省サポートデスク」も設立している。《愛知県は日中経済や日中関係の発展においても主導する立場である》(『人民中国』2020年2月号)と自負しているそうだ。

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中国製で大丈夫か

 藤田医科大学病院に話を戻そう。実際にどういう病院なのか、通院する患者さんに話を聞いてみた。

「先生も看護師さんも親切で、地元では大変評判のいい病院です。ただちょっと気になることが。去年、PET-CT検査を受けた時、装置に『漢字のロゴ』が書かれていたのです。珍しいな、と思い、どこの製品ですか? と技師さんに聞いてみました。すると技師さんが、『ユナイテッド・イメージング社製です』というのです。病院のHPで見たものには、SIEMENS(シーメンス)と書かれていたのですが、その場でそれ以上技師さんにも聞けず、帰宅してネットで調べたらやはり中国の会社でした。
 私は中国製の装置で放射線を当てられて本当に大丈夫だったのか今でも不安です。それに個人情報の秘匿がどの程度守られるのかということも気になりました。何しろTikTokやZoomのような中華系アプリでさえ問題視されているのに、検査の情報は大丈夫? と思わずにはいられませんでした。もちろん、病院を信用していますが、もし中国製で検査されると知っていたら……ちょっと考えたかもしれません」

 かくもメイド・イン・チャイナのイメージは悪い。携帯電話や圧力鍋が爆発したというニュースが記憶に新しいので、患者さんの不安は理解できる。ユナイテッド・イメージング社のHPを調べると「中国ハイエンド医療機器マーケットのファーウェイ(HUAWEI)となることを1つの目標として掲げており、これからの中国の製造業を背負って立つ存在となることを期待されています」とある。また、同社はアメリカを中心に、海外にも医療装置を多数導入している実績があるようだ。

 知人の医療関係者らに、ユナイテッド・イメージング社について聞くと、

「アメリカは今でこそファーウェイをはじめとする中国の国策会社の正体を見抜いていますが、オバマ政権時代には中国とズブズブで、随分この会社の医療機器が導入されたようです。シーメンスなどの老舗と同等の機器は、機種にもよりますが3~5億円が相場だと思います。ユナイテッド・イメージング社の機器の日本への納入価格はわかりませんが、老舗メーカーよりは安価だと思います」

──なぜ安価なのでしょうか?
「GEやシーメンス、フィリップスでの勤務経験がある(もしくは潜り込んでいた)人が多数働いている会社だと聞いています。開発費が節約されていて安いのでしょう」

──それって産業スパイじゃないですか!
「中国はそういう国ですから……」

 また、「この会社の医療機器は、中国国内では、中南海の人間が入る人民解放軍系の301病院や、臓器移植で訴訟沙汰にもなった解放軍309病院にも導入されているようだ」という情報も寄せられた。

中国の4色の罠

 藤田医科大学病院のHPには「ファーウェイ(中国語表記:華為技術、英語表記:HUEAWI)様よりマスク10万枚を寄贈いただきました」(2020年3月19日)と記載されている。
 
 ファーウェイといえば、アメリカやカナダのみならず世界中が警戒感を強めている企業だが、藤田医科大学病院は中国とのつながりが随分深いようだ。そして「厚生労働省からは、外国人患者さんの受け入れ拠点病院に認定され、医療通訳の育成、検査内容説明等の各種患者説明文書の多言語対応などにも取り組んでいる」「中国の早期がん患者さんへのセカンドオピニオン対応を高品質なテレビ会議システムで国境をまたいで実現」とも紹介されている。

 カルテ、患者情報が大陸とつながっていることを意味するのだろうが、患者一人ひとりの個人情報が中国政府に握られる可能性はないのか。たとえば、親中派の某議員の妻は中国で臓器移植を受けたなどとも噂されている。

 冒頭で紹介した野村旗守氏は「中国には4色の罠がある。赤はハニートラップ、黄色がマネー、青がサイバー、緑がメディカル」と指摘している。日本の医学界が中国に侵食されている可能性も否定できない。

 隣国との友好は大事ではあるが、真の友好とは目先の経済的な利益などではなく、人としての高い倫理観や道義観といったものがベースとなって構築されてゆくものだと思う。コロナ禍を世界中にばらまいても謝罪1つせず、むしろ〝中国がコロナを封じ込めた〟といわんばかりのハッタリ外交を展開する中国との関係を続けていいものか。愛知県と言えば、トヨタの技術が中国に流出するのでは、という不安も囁かれている。ちなみに藤田医科大学病院でも、数年前から経営方針にトヨタ方式が導入されているようだ。

 6月30日、香港での反体制活動を禁じる「香港国家安全維持法」が施行され、〝香港が死んだ日〟と、世界中から評された。すでに香港では1万人を超える反体制派が拘束され、国家安全法の容疑者はDNA検査などを強制的に受けさせられているという。彼らが臓器摘出のための待機要員とされないことを願うばかりだ。
大高 未貴(おおたか みき)
1969年生まれ。フェリス女学院大学卒業。世界100カ国以上を訪問。チベットのダライラマ14世、台湾の李登輝元総統、世界ウイグル会議総裁ラビア・カーディル女史などにインタビューする。『日韓〝円満〟断交はいかが? 女性キャスターが見た慰安婦問題の真実』(ワニブックス)、『イスラム国残虐支配の真実』(双葉社)、など著書多数。「真相深入り!虎ノ門ニュース」(レギュラー)、「ニュース女子」などに出演している。

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