トランプ失脚運動の元凶はジョージ・ソロス

トランプ失脚運動の元凶はジョージ・ソロス

抗議は正義?

髙山 米大統領選を迎えて、反トランプ運動が過激化している。アンティファをはじめとした「ポリティカル・コレクトネス(以下、PC)」グループの暴走があまりにひどい。しかも、メディアは、その実態を正しく報じていない。

馬渕 CNNをはじめとした大手メディア、もっと言えばディープ・ステート(ユダヤ系国際金融資本家)側はこれまで〝平和的手段〟によって、トランプ大統領再選の阻止運動を続けてきました。「ロシアゲート」を巡る特別検察官による捜査、「ウクライナゲート」による弾劾裁判……。結局、すべて失敗に帰しています。

髙山 反アベのモリカケ・サクラ・クロカワと同じで、フェイク報道の矢弾を放って終わった。

馬渕 合法的手段でトランプ大統領を失脚させることは無理だと判断した彼らは、ついに暴力的手段に舵を切ったのです。

髙山 それが白人警官によるジョージ・フロイド殺害事件だった。

馬渕 人種紛争に仕立て上げました。単なる抗議運動であれば何の問題もなかったのですが、極左暴力集団「アンティファ」が抗議活動を乗っ取り、商店の破壊や放火、略奪などの暴力デモに発展した。

髙山 まるで文革です。

馬渕 もっと言えば、ロシア革命を起こしたボルシェビッキ(レーニンが率いた共産主義運動)と同じ。暴力によって合法的な政権を倒すやり方です。今回の米国内のデモでも共産主義的、暴力革命的手段に訴える団体が登場してきた。その運動に中国も便乗し、トランプ降ろしを必死にやっているというのが実態です。
 気になる動きを見せていたのが、ワシントン州シアトル市での暴力運動です。街の中心部を占拠し、アンティファ自治区を宣言するに至りました。

髙山 「キャピトル・ヒル・オーガナイズド・プロテスト(CHOP=キャピトル・ヒル組織的抗議)」と称して、街の中心街、約六ブロックが無法地帯と化した。
 シアトルの女性市長で、民主党系のジェニー・ダーカンは不法占拠を解こうとした市警本部の動きに異を唱え、「抗議は正義だ」と自治区を事実上、容認してしまった。まるであさま山荘事件のようだった(笑)。

馬渕
 まさにそう。米国版パリ・コミューン(フランス・パリの労働者が市街地にバリケードを築いて自治を宣言した)です。自治区内は無法地帯になり、レイプ・略奪、高級住宅の占拠など野放しの破壊活動が行われた。

髙山 そんな矢先、「黒人の命は大切」と訴えていたくせに、自治区内で黒人の少年ら2人が殺傷される事件が起きた。所詮は無頼の略奪集団という素顔がバレて市長も警察を導入し、自治区は解放された。そのあと、全米中から非難の声が上がり、占拠地区内で焼き討ちにあった企業や店舗がダーカン市長に対して損害賠償訴訟を起こしている。
 シアトルのあるワシントン州自体もおかしな州で「人間の遺体の堆肥化を認める州法」が施行されている。この話を聞いたとき、思い出したのが、毛沢東時代の「大躍進政策」(農業と工業の大増産政策)──4,000万人近くの餓死者を出したが、毛沢東は「墓に埋めるな。田んぼに入れればいい。いい肥やしになる」と言った。
 知事のジェイ・インスレーもPCが売り物の民主党員で、知事になった途端、州のドラッグ規制を撤廃した。そのため、シアトルはすぐさま、ドラッグを合法化した蘭・アムステルダムの米国版になって、浮浪者やヤク中の集まる街になった。

馬渕 IS国にも似た世界がシアトルに現出したのです。そもそもIS国が誕生したのは、オバマ民主党大統領と結託したディープ・ステートが資金援助をしたからです。シアトル暴動の裏にもディープ・ステートが絡んでいるのは間違いありません。

分断こそ植民地支配の鉄則

髙山 米国の黒人奴隷の歴史は、実に根深いものがある。米国初代大統領、ジョージ・ワシントンにしても、正直者の典型として桜の木を伐った話が教訓的に日本に伝わってきているけど、この話自体、真っ赤なウソ。その当時、桜の木なんて米国にはなかった。
 ワシントンの実像はまるで違う。彼はマウントバーノン(バージニア州にあった黒人奴隷を認める奴隷州)の農場に400人の黒人奴隷を囲っていた。大統領になると、当時、大統領官邸があったペンシルバ二ア州フィラデルフィアに、身のまわりの世話をする9人の黒人奴隷を連れてきていた。
 ところがこの州は黒人奴隷を認めない自由州で、6カ月間続けて、この州に居住した奴隷は自由人になるという規則があった。ワシントンはそのために9人の奴隷を5カ月間つとめさせると、マウントバーノンに送り返し、別の奴隷を官邸に連れてこさせた。

馬渕 歴史教科書では、そういった事実は看過されています。

髙山 ワシントンは性格に似て歯も悪く、28歳で大方が義歯だった。材料にカバの歯を使ったこともあったけれど、7組の総入れ歯の材料は多く生きた人間の歯だった。供給元は彼の農場で働かせていた黒人奴隷だ。入れ歯を新調するときは医師が農場に出向いてきれいな歯を持った奴隷が選び出され、門歯や臼歯をやっとこで引き抜いて揃えた。
 ワシントンの肖像画を見ると、入れ歯を外したものと、入れ歯を入れたものの2種類があって肖像画によって顎の大きさが変わってる。

馬渕 独立宣言を書いた第3代大統領、トマス・ジェファソンも黒人奴隷を使用していました。

髙山 ジェファソンは国産の黒人奴隷で商売していた。黒人女を買って黒人奴隷と交配させて子供をつくらせ、それを育てて国産奴隷として売っていました。それまで黒人奴隷は、アフリカ西海岸から東海岸のマダガスカルあたりまで出かけて黒人奴隷を買いこんで船で輸送してきた。途中、時化に遭って難破したり、奴隷取締船に遭遇して全奴隷を鎖で縛ったまま海に投棄したりして、歩留まりが悪く、無事に着いた奴隷は結構な高値で売りさばかれていた。
 で、ジェファソンは米国内で繁殖させた国産奴隷で商売していた。そのくせ彼が執筆した米国独立宣言には「人は神によって等しくつくられ、生命と幸福追求の自由を持っている」と書いている。恐ろしいほどの偽善者だ。
 しかも、ジェファソンは白人の血が混じった黒人奴隷サリー・ヘミングスを性奴隷にして最近のDNA鑑定によれば何人もの子供をつくっていたことが明るみになっている。
 ノースカロライナのチャールストンとニューヨークのウォール街が運ばれてくる黒人奴隷の荷揚げ場で、チャールストンは全体の4割を扱っていた。ウォール街には大きな黒人の競り市が立った。最近のPC自己批判運動で歴史を直視しろとか言われてウォール街は奴隷取引の史跡として看板を出すことになった。ところが、出来上がった看板の大きさは横30センチ、縦60センチと、とても小さい。それが最大の抵抗だと報じられている(笑)。

馬渕 黒人奴隷の歴史を振り返れば、その起源は英国の植民地支配に行き着きます。植民地支配の鉄則は、その国を分断させることにある。植民地経営を管理していたのが東インド会社で、経営者の多くはユダヤ系でした。米国に黒人奴隷を導入すれば、米国社会がいずれ分断されるに違いないとわかっていたのです。

髙山 その読みは正しかったわけか。

馬渕 当初、米国人にとって、黒人奴隷は貴重な労働資源だったし、家事労働の手伝いとしても重宝していたわけですが、その当時からすでに時限爆弾が埋め込まれていた。1960年代の公民権運動あたりから爆発し始めて、現在のアンティファ運動の大爆発につながったのです。

髙山 つい先年、バージニア州シャーロッツビルで南北戦争時の南軍司令官、ロバート・E・リー将軍像を「奴隷制を擁護していた」といって撤去する騒ぎが起きた。それが今度のBLM(黒人の命は大事)運動で再燃して、リー将軍どころか、国父ジョージ・ワシントン像やトマス・ジェファソン像まで打ち倒せまで広がった。確かに彼らは脛に傷を持つけれど、そこまでの歴史修正となると常識を超える。
 BLMの活動家ショーン・キングはキリスト教会のステンドグラスに描かれた「白人化されたイエスも白人優越主義の表れだから壊してしまえ」と叫ぶ。もはや文革の「批林批孔」(林彪、孔子を批判する政治運動)と同じ域にまで達している。

馬渕 過去の歴史を全否定している。黒人デモの始まりとなったミネソタ州のティム・ウォルツ知事も民主党系です。

髙山 そんな中、独立記念日前夜、トランプ大統領はラシュモア山で演説を行い、「我々はこの危険な動きを暴き、わが国の子どもたちを守り、過激な攻撃を終わらせて米国の生活様式を守る」と言った。まさに正論ではありませんか。彼がまともに見える。

PCのなれの果て

馬渕 そもそも誰が何の目的で黒人奴隷をアメリカ大陸に連れてきたのか……この重要な点が議論されていません。
 むしろ、その事実は封殺されたまま「人種差別だ」と叫び続けるだけ。それこそまさにPCであり、水戸黄門の印籠と同じで誰も何も言えなくなってしまう。

髙山 2016年、トランプとヒラリーの大統領選を間近に控えた時期に、ビル・クリントンの出身校でもあるイエズス会系のジョージタウン大学の学長が、とんでもない演説をぶった。実は19世紀半ば、イエズス会はジョージタウン大学をつくったものの、建設資金の支払いに窮し、奴隷272人をルイジアナ州の農場主に売却していた。
 そういう2世紀も昔の話の証拠が見つかり、学長はその償いに当時、売り払った奴隷272人の子孫のすべてを入学させると約束した。子孫の数は優に数万を超える。それが今後、どれだけの数に上るかわからない。その手のPCにうんざりしていた有権者は大統領選でトランプにわずかな救いを求めて票を投じたと言われている。
 バージニア州・シャーロッツビルで発生したデモの時、参加した白人青年が「アファマーティブ・アクション(少数派に対する、過去にあった差別をなくそうとする取り組み)が全盛で、大学は黒人やアジア系しか入れない。白人こそ逆に差別を受けている」と話していたのは印象的だった。シアトルの事件にしても、行きすぎたPCのなれの果てがどうなるか、その現実を見せてくれたと言えないだろうか。

馬渕 一連のトランプ失脚運動は、逆のブーメラン効果が出始めています。「法と秩序が大事だ」とトランプ大統領が言うように、米国民の多くは法と秩序を重んじている。民主党系左派が巻き起こした運動は、結果として墓穴を掘ったとも言えます。

髙山 民主党はどうしてここまで左傾化したのでしょう。

馬渕 元凶は、ディープ・ステートのジョージ・ソロスです。彼は国際的な助成財団である「オープン・ソサエティ財団」を設立していますけど、この財団の目的は世界を左傾化させるためにある。民主党もソロスの洗脳を受けたと言えます。そのため民主党議員の若手の多くが極左であり、それこそ一大勢力になってしまった。民主党内にいる中道・穏健派の肩身が狭くなっているのは確かです。

髙山 今回、大統領候補にジョー・バイデンを押している。

馬渕 民主党内でも危機感があったのでしょう。バイデンを押す唯一の理由は「より左派ではない」。この1点です。バイデンも民主党内での発言権が強いわけでもない。最終的な指名を受けるまで、果してバイデンを大統領候補にするのか疑問です。

髙山 民主党は大統領選でさじを投げた感もある。

馬渕 そう、本音を言えば、バイデンでも、最近目立っているプエルトリコ系の女性議員、アレクサンドリア・オカシオ=コルテスでもいいのです。もう勝利は諦めている。過去を振り返ると、似たような状況があります。ニクソン大統領2期目の急進左派のジョージ・マクガバンや、レーガン大統領2期目の元副大統領ウォルター・モンデールのような戦いがそれ。モンデールは選挙人獲得数において525票対13票という圧倒的大差を付けられ、歴史的大敗を喫しています。
 コロナ禍がなければ、トランプ大統領の再選は確約されていました。今はコロナ対策と並行して経済活動も重視し、都市封鎖の解除を推進していますが、ニューヨーク州のアンドリュー・クオモ知事はじめ、民主党系の政治家が解除は拙速であると批判を強めています。ですけど、徹底的な都市封鎖を断行した民主党系知事の州は、むしろ感染者が拡大し始めている。

髙山 実に皮肉な話ですよ。

とにかく「トランプ=悪」

馬渕 米国コロナ対策の先頭に立つ、国立アレルギー・感染症研究所(NIAID)のアンソニー・ファウチ所長も左派です。米国人女性、ジュディ・マイコヴィッツ博士は、「自分の論文をファウチ所長に握りつぶされた。脅迫を受け、無実の罪で刑務所に入れられた」と告発している。ほかにもファウチ所長は、中国からの入国禁止措置に対して、当初は反対していたと、ピーター・ナバロ大統領補佐官が指摘しています。とかく黒い噂のある人物です。

髙山 トランプのまわりも左派がたくさんいる。

馬渕 共産主義はまだ死んでいないことがよくわかります。共産主義はこれまで文化破壊をしてきましたが、その本性が米国内でもいよいよ顕在化してきたのです。
 そもそもPCは、ボルシェビッキのやり方と通底するものがあります。ボルシェビッキは暴力革命でしたが、PCは革命を平和的手段で実行する。ドイツのフランクフルト学派(新マルクス主義と呼ばれる潮流の源流となり、1960年代には新左翼運動にも影響を与えた)の批判理論を実践して、秩序破壊を目指している。

髙山 家庭や夫婦、親子関係をすべて破壊する。

馬渕 コロナも、その戦略に則っています。「ソーシャル・ディスタンス」なんて、まさにそうではありませんか。人と人との関係を破壊する概念ですから。じゃあ破壊した後、どのような社会になるか、それについては一言も言及していません。

髙山 ソロスは、いまだにアンティファ支援に走っているようだけど、シアトルの件でもわかるように破壊に次ぐ破壊、放火に次ぐ放火で、もはや米国民も愛想尽かしをしている感がある。

馬渕 ところが、米国の大手メディアは、むしろ暴力を煽るような報じ方をしています。CNNを見ると、反トランプが病的なまでに亢進していることがわかります。とにかく何でもいいから「トランプ=悪」の構図です。
 ワシントンのセント・ジョンズ教会が放火され、そのあと、トランプ大統領は慰安訪問しました。CNNの番組にそこの教会のシスターが登場していましたが、金切り声で、トランプ大統領を非難している。あまりにもひどい罵詈雑言(ばりぞうごん)の嵐で、ヤラセなのかなと勘繰りたくなるほどでした。

髙山 CNNばかりじゃなく、トランプ支持のFOXテレビで報じられていることを、日本のメディアはもっと発信すべきだと思う。
 実際に、国際世論は変化しつつある。その1つに『ディー・ツァイト』というドイツの週刊全国紙に政治担当編集者であるヨッヘン・ビットナーは「EUとアメリカは団結して中国に対抗しなければならない」と、ニューヨーク・タイムズに書いている。親中派のメルケルに対しても「そんな場合じゃない」と。
 EU側でも脱中国に向けて動き始めている。産経パリ支局長の三井美奈が『正論』(8月号)で、EUのボレル外交安全保障上級代表の談話を書いている。「20世紀は米国の時代だった。21世紀がアジアの時代になるならば、その転機はコロナ危機だ。我々は中国に対する強力な戦略を必要としている。アジアの民主主義国家との関係を構築すべき」と訴え、日本とインド、韓国を名指ししたという。

馬渕 中国封じ込めは、これまでトランプ大統領の専売特許の感がありましたが、ようやくEUも脱中国に舵を切った。今後、全世界的に中国外しが進みそうです。

中国への天罰

髙山 今回のコロナ禍がなければ、中国の思うままになっていたんじゃないか。日本だって習近平を国賓として招待しただろうし、尖閣諸島へのちょっかいも、さらに激化したはずだ。リーマン・ショックや世界恐慌を超える経済的ダメージを与えた元凶は、間違いなく中国だ。言い逃れすることもできない。コロナ禍は、中国に下した天罰だったような気がします。

馬渕 まさしく天罰ですよ。習近平はこれで「皇帝」としての徳を失ったことになります。これまで世界を騙してきた中国のいかがわしい正体が、コロナ禍で顕在化したと言えます。世界が目覚めたという点では、コロナ禍も意味があったと言える。

髙山 これまで米国による中国への対応は、さまざまなところで批判の声が上がっていた。米中貿易戦争にしても、米国だって返り血を浴びるとか。でも、世界の中国を見る目は明らかに変化している。ライプツィヒでEU首脳陣と習近平の会談が9月に実施される予定だったけれど、コロナの影響もあり延期になった。世界からは中国の横暴をこれ以上許さない空気が出ている。
 豪州の大学教授、クライブ・ハミルトンが中国侵略の脅威を告発した『目に見えぬ侵略』という本を書き、日本でも翻訳出版された(飛鳥新社)。その中で言及されているけど、豪州の上院議員、サム・ダスティヤリは、やたらと中国にゴマすりをしていた。ダスティヤリの背後を洗うと、富豪実業家、黄向墨の存在が浮上してきた。そこから献金を受けていたことが明るみになり、最終的には議員をやめることになった。
 ほかにもカリフォルニア州議員、ダイアン・ファインスタインの秘書、ラッセル・ロウについても書かれている。ロウは中国系米国人だが、中国共産党に協力する工作員だったことが判明した。このことからも中国寄りの議員たちの実態調査が、どんどん進んでいるのではないか。民主党が反中にシフトチェンジしたのも、奇妙な印象を受けます。トランプ流の赤狩りが始まって、それが功を奏し始めているのかどうか。

馬渕 ハミルトンの指摘はとても重要で、米豪だけでなく日本でも〝目に見えぬ侵略〟は深刻化しています。ところが、日本はとても呑気で、それどころか自民党政権が率先して中国の侵略を許容しているほどです。

髙山 政界・財界には親中派発言をしている奴らが多くいるけど、一度、身辺調査する必要がある。本来であれば、新聞をはじめとしたメディアの役割でもあるけど。「日本のダスティヤリを暴け!」だ。

馬渕 新聞内にも中国共産党シンパがいるんでしょう。

髙山 だから産経がつぶされるんだ(苦笑)。驚いたけど、テレ朝の「ワイド!スクランブル」という番組でのことだ。米国内でウイグル人の頭髪を使ったカツラが押収された事件を報じた際、同局のアナウンサー、小松靖が「ウイグルの問題は我々メディアも非常に扱いにくい問題で、中国当局のチェックも入りますし、我々報道機関でウイグル問題を扱うのはタブーとされていると聞きました」と発言した。小松アナは、すぐ番組を降板させられるかと思ったけど、まだ出演している。

馬渕 同じ朝日系でも、だいぶ毛色が違いますね。

髙山 今までは朝日新聞から天下りで幹部が入っていたけど、最近は受け付けなくなったと聞いた。どうしても役員を入れたかったら、その給料は朝日新聞が持てと、テレ朝は突っぱねているそうだ(笑)。

馬渕 ほかのメディアも追従したら面白いのに。産経だって、どんどん取り上げればいいのです。「我々は必死に抵抗しているんだ」とか。

ジャーナリズムの醜態

髙山 朝日は朝日で、ボルトンのインタビュー記事を載せた(7月2日付)翌日、「天声人語」でもその件について触れていた。読んでびっくり仰天した。トランプが「フィンランドはロシアの一部か」と側近に聞いたことや、英国との首脳会談の場で「貴国は核保有国ですか」といったエピソードを紹介、仮にも一国の元首に対し、些細な言い間違いや勘違いを大仰に取り上げて罵り倒す。安倍さんに対するのと同じだ。
 国際儀礼というか、何で米大統領には礼を失した書き方が許されるのか。そういうマナーで言えば批判されるべきはボルトンではないのか。自分が仕えた大統領が退任しない限り、回顧録は書かないという不文律がある。その不文律を破って、トランプの悪口を一方的に書き散らす。しかも、中身はかなりいい加減だ。
 朝日がボルトンにインタビューするのだったら、「なぜ、在任中に回顧録を出したのか。日本には一宿一飯の義理という言葉がある。それを無視するのか」と問うべきだ。それもしないでトランプの悪口を拝聴して、そのまま書いている。産経も追随してボルトンのインタビューを載せたけど、本当に情けない。もはや〝マスコミの自殺〟と言っても過言ではない。

馬渕 過去、国家安全保障問題担当大統領補佐官を務めたキッシンジャーやブレジンスキーの回顧録は、それなりに歴史的資料としても価値が高いものです。ところが、ボルトンの場合は、単なる暴露本ですから、まったく価値がありません。自ら評判を落とす真似をしたと言えます。今や、ボルトン本は米国内では、どこも相手にしていません。日本のメディアくらいですよ、食いつきがいいのは(笑)。

髙山 日本のジャーナリズムの醜態をさらしてしまった。

馬渕 ボルトン本が出る背景には、米国の言論界の実態が表れています。とにかく、トランプ大統領を辱(はずかし)めたい一心なのです。でも、大統領選への影響は皆無と言っていいでしょう。大統領選の争点は、外交よりも経済です。コロナ禍で、トランプ政権も苦しんでいますが、何とか持ち直そうとしている。

髙山 もう叩きどころがない。

三つ巴の戦争状態

馬渕 我々が気を付けるべき点は、コロナ禍を利用して、世界をもう1度、自分たちの手に取り戻そうとする連中がいるということです。それこそディープ・ステートですが。コロナの恐怖を煽り、経済活動を自粛させ、停滞、不況化させる。企業が倒産すれば、ディープ・ステートがそれらの企業を買い占めていく。そういう図式です。
 だからこそトランプ大統領はディープ・ステートを敵とみなしている。人権を弾圧しても平然としている中国共産党も同じく倒すべき敵です。ディープ・ステート側はそんなトランプの再選を何としてでも阻みたい。中国共産党に対しても、心の底では覇権主義を許していない。一方、中国共産党は、当然反トランプですし、過去痛い目にあっているディープ・ステートにも心を許していない。

髙山 トランプ、ディープ・ステート、中国共産党……この三つ巴の戦争状態であるわけですね。

馬渕 ですが現時点では、ディープ・ステートは中国共産党と休戦協定を結んでいます。11月3日の大統領選までは、トランプ再選阻止で一致団結しようと。その証拠に、アンティファに中国共産党の工作員も参加していたとも言われています。トランプ大統領はディープ・ステートと中国共産党を同時に相手どって戦っているわけですから大変ですよ。

髙山 トランプが再選したら、状況はどう変化しますか。

馬渕 中国共産党政権に対する圧力が格段に高まるに違いありません。ディープ・ステート側は、晴れて、中国共産党の敵に回るからです。

髙山 トランプとディープ・ステートは反りが合うかどうか。

馬渕 ディープ・ステートは、とにかくトランプ大統領に戦争をしてもらいたいと考えている。自分たちの懐が潤いますから。でも、トランプ大統領は必死になって抵抗している。「米兵はディープ・ステートによって犠牲になった」と言い続けてきたのも、そういう観点からです。

髙山 イラク、シリア、アフガニスタン……すべて撤兵を表明している。

馬渕 北朝鮮にしてもそう。トランプ大統領は事を構えたくない。潰すことは簡単ですが、その途端、北東アジアを中心に戦火が広がる。それこそディープ・ステート側の思うつぼです。イランも同じです。でも、ディープ・ステートは何とか戦争させようと、ホルムズ海峡のイラン領空で米国製ドローンを飛ばし、イランに撃墜させたりしている。
 すわ戦争か、という一触即発の状況でしたが、トランプ大統領はそういった挑発に、懸命に乗らないようにしているのです。

髙山 日米をはじめ多くのマスコミは〝トランプは戦争好きだ〟と言っている。とにかく、こういう歪(ゆが)められた情報に踊らされてはいけない。今回の対談がそのよすがになることを願います。
髙山 正之(たかやま まさゆき)
1942年、東京生まれ。東京都立大学卒業後、産経新聞社に入社。社会部デスクを経て、テヘラン、ロサンゼルス各支局長。80年代のイラン革命やイラン・イラク戦争を現地で取材。98年より3年間、産経新聞の時事コラム「異見自在」を担当。辛口のコラムで定評がある。2001年~07年、帝京大学教授。著書に、『アジアの解放、本当は日本軍のお陰だった!』『白い人が仕掛けた黒い罠─アジアを解放した日本兵は偉かった』、共著に『こんなメディアや政党はもういらない』(和田政宗)(以上ワック)などがある。最新刊『日本人よ 強かになれ――世界は邪悪な連中や国ばかり』(ワック)が発売中!
馬渕 睦夫(まぶち むつお)
1946年、京都府生まれ。京都大学法学部3年在学中に外務公務員採用上級試験に合格し、68年、外務省入省。71年、研修先のイギリス・ケンブリッジ大学経済学部卒業。2000年、駐キューバ大使、05年、駐ウクライナ兼モルドバ大使を経て、08年に外務省退官。同年防衛大学校教授に就任し、11年、退職。『馬渕睦夫が読み解く2020年世界の真実』(ワック)、『知ってはいけない現代史の正体』(SBクリエイティブ)、『天皇を戴くこの国のあり方を問う新国体論 ――精神再武装のすすめ』(ビジネス社)など著書多数。

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