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鳩山由紀夫元首相。外交を知らない愚かな人物が日本のトップだったとは信じがたい

鳩山元首相の稚拙なツイート

 鳩山由紀夫元首相が、3月19日に次のようなツイートをしている。

《安倍元総理は二十数回プーチンと会談して信頼関係を築いたと述べてましたね。こういう時こそ友愛精神を発揮すべきです。ウクライナに軍事的な装備品を提供するよりも、プーチンにウクライナから手を引けと訴え、返す刀でゼレンスキーにNATO加盟を諦めさせる平和外交を行うべきです》

 こういう外交を知らない愚かな人物が日本のトップだったというのはいまだに信じがたいが、同じようなツイートをする識者は少なくない。

 私が愚かだと決めつけるのは、安倍晋三元首相はプーチン大統領と親交があるから、こんな時期でも会ってくれるだろうし、会えば軍事侵攻をやめるように説得できると信じ込んでいることにある。

 安倍元首相は派閥の領主であり、与党に一定の影響力はあるとはいえ、今は無役の衆議院議員にすぎない。単なる個人の信頼関係だけで、国と国との正式な交渉である外交などできるはずがない。

 たとえ外交特使として派遣されたとしても、岸田首相の親書を渡す以外に権限がないのだから、どちらにしても国家を代表してプーチン大統領と公に交渉などできないのである。

 鳩山元首相はそれと同時に、ウクライナが求めている防衛装備品の提供をするな、と言っている点も大問題だ。

 ウクライナが血を流して戦っているのは、国家主権という国家にとって最も大事なものを守るためである。国家主権がどうでもいいのであれば、子供たちを含む民間人まで巻き込んでの血みどろの戦いなどする必要はない。

 ゼレンスキー大統領はそのための助けを必死に各国に求めているのに、その本質がまるで見えていないのである。いったいこの人は誰の利益を守りたいのだろう。

 いや、私たちはもう知っている。このような愚かな人物が首相になったからこそ、まとまっていた沖縄の米軍基地移転問題は再び揉めて、アメリカとの関係も冷え込み、その立て直しに何年も費やす羽目に陥り、国益を大きく損ね続けたのだから、愚かでないはずがない。

 そもそも「元首相」で「ロシアに信任がある」という条件は、鳩山氏にも当てはまっているのだから、ご自分がロシアに飛んでプーチン大統領を説得したらいかがだろう。

 自分ができもしないことを、「友愛精神」などといった意味不明な根拠で提案することに、何のてらいもないのが不思議でならない。
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鳩山由紀夫元首相の3月19日のツイート。やはり“宇宙人”

共産党のプーチン「反安倍」利用

 もっと酷いのは共産党の田村智子参議院議員だろう。
 田村議員は3月22日の参院予算委員会で「安倍晋三元首相のすり寄りがプーチン大統領を増長させた」と安倍外交の総括と反省を求めた。
 
 共産党が誰かを攻撃すると、不可思議な現象が起こりやすい。

 たとえば今回も「プーチンを増長させたのは安倍元首相だ」という言説がツイッターを中心に巻き起こったかと思えば、朝日新聞がそれに呼応するかような記事を書き(3月23日付《「君と僕」が見たはずの「同じ未来」 安倍元首相のロシア戦略の挫折》)、3月20日のフジテレビの「日曜報道THE PRIME」に出演した立憲民主党の渡辺衆議院が「自民党は安倍政権がロシアと共同経済協力をやった負い目がある」などと、根拠不明な安倍批判を展開。

 挙げ句の果てに、共産党議員が国会で安倍叩きを始めて、それを東京新聞などが「ロシア協力に無駄金を使った」などと騒ぎ始めた。

 まるで、どこからか司令が出て、マスコミ・政治家・左派論者が一斉に安倍批判を始めたようなまとまり方だ。
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プーチン大統領(左)と安倍元首相。なぜか今、安倍外交を批判する勢力が後を絶たない

矛盾だらけの共産党

 共産党の志位和夫委員長が、3月17日に次のような発言をしている(しんぶん赤旗電子版3月18日付)。

「軍事と軍事の悪循環のエスカレートに陥ってしまうことがいま一番危険だ。憲法9条を生かした外交努力によって平和な東アジアを築いていくことに力をそそぐべきだ」
「相手が軍事や力の論理、核兵器で威嚇してきた場合に、『こっちも軍事でいこう、力でいこう、核でいこう』となれば軍事対軍事の果てしない悪循環になり、戦争につながる一番危険な道に落ち込む」
「そのような悪循環に陥らないようにするための外交こそ大事だ」

 要するに「憲法9条を生かした外交努力で、戦争を起こさないことが重要だ」と主張しているのだ。私は無理だと思うが、これは1つの主張として成立することは否定しない。

 ところが、同じ共産党の田村議員は、上で述べたように、ロシアと関係を深めた安倍元首相の外交努力を、ウクライナ軍事侵攻を根拠に否定している

 9条を生かして武力は持たず、外交でなんとかしろと言っておきながら、安倍元首相の外交は否定するというのは矛盾もいいところだ。結局、何をしろと言いたいのか。

 共産党は安倍元首相や、その経済政策であったアベノミクスを否定しているのだが、あまりに行き当たりばったりなので、その論理は完全に破綻している。

 ところが、野党政治家も左派のマスコミは、そういった破綻は気にならないようで、共産党に呼応して安倍批判を繰り返す。これ以上「批判のための批判」で恥の上塗りをするのはやめたほうがいいのではないだろうか。

 共産党や立憲民主党や朝日新聞や東京新聞などのマスコミがそこまでして守りたい9条というのは、軍事投射能力を持つことで抑止力を得るという国家の当たり前の主権を制限するものである。

 今ウクライナは国家主権を守るために戦っているのに、「国家主権を制限して平和を」と叫ぶ人たちの頭の中身はどうなっているのだろう。この人たちの論理を著しく欠いた思考のあり方は、私にとって謎である。
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志位和夫委員長。自身の主張の論理破綻に気付いていないのだろうか――
白川 司(しらかわ つかさ)
評論家・翻訳家。幅広いフィールドで活躍し、海外メディアや論文などの情報を駆使した国際情勢の分析に定評がある。また、foomii配信のメルマガ「マスコミに騙されないための国際政治入門」が好評を博している。

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