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上川陽子外相(YouTubeより)

総理を続けたい岸田さん

 月刊『WiLL』(2024年7月号)でも松原仁さん(東京26区)が外相・上川陽子さんの外国人献金問題で国会質問されていた詳細を書いておられましたが、その上川さんがお膝元の静岡県知事選で「女性がうまずして何が女性か」という発言をして盛大に燃えております。

 発言の内容を正確に追うと「ようやく決断をしていただいた。大きな大きな命を預かる仕事です。その意味で今一歩を踏み出していただいたこの方を私たち女性がうまずして、何が女性でしょうか」という内容です。

 そして、つなげて「実は私も初陣(ういじん)の時に本当に皆さんうみの苦しみにあるが、ぜひうんでくださいねと最後の演説で申し上げたが、いつも彼のことを思うと、その場面がばーっと頭によぎってくる。産みの苦しみは、今日男性はいらっしゃるが本当すごい」と話しておりましたので、まあ確かに女性ならではの子どもを産むことと知事を女性の力でうみ出すことを掛けてしゃべってるけど、そこまで悪い発言かなあと感じたりします。

 他方で、共同通信は英語版外信で「equating the importance of childbirth to electing a new governor in a speech ahead of a gubernatorial election(知事選挙に先立つ演説で、出産の重要性を新知事選出と同一視した)」と記しており、そりゃさすがに発言の捏造(ねつぞう)じゃないのかと、こっちはこっちで問題になっております。

 ここで悩むのは「俺たち的に、上川陽子さんって担ぐべき人なんだっけ」という点です。

『WiLL』読者の皆さん、どう思っておられます?

 いまの岸田文雄政権の状況を俯瞰(ふかん)し、近未来の政局をある程度、予測してみますと、岸田さん的には、総理大臣を続けたいわけですよ。なので、今年9月にある自民党総裁選で、何としても岸田さんは勝たなければなりません。

 しかしながら、現在、岸田さんの政権支持率は低迷しきっており、大変なことになっています。自民党の総裁は選挙に責任を負いますから、9月にすんなり総裁選があると岸田さんは総裁選に出ても落選するか、落選が確実視されるのであれば菅義偉(すがよしひで)さん同様、総裁選への出馬辞退を見送って「栄誉ある退陣」を余儀なくされます。

 つまり、何もしないと岸田さんは総理から降ろされちゃうので、何とか理由つけて総理を続けたいのだとすると、今国会の会期中に思い切って解散するしか可能性としてはなくなってしまう。だからこそ、サミットとか北朝鮮訪問とか減税とか政治資金規正法改正とかいろんなことをやって、与野党対決の静岡県知事選や目黒都議補選でもどこでもいいからとにかく勝って、それを口実に「ほら、俺が顔でも自民党は選挙に勝てるやろ。解散だ」ってなるしかないのです。

消去法で浮上してきた人物

 ただ、切り札として温存していたはずの北朝鮮電撃訪問も、あるいは政治資金規正法改正も、どうも劇的な自民党支持率の回復には至らず、岸田さんへの声望も高まらないようです。結果的に、選挙互助会としての自民党からすれば、いま岸田さんを降ろしてもいいことはないが、総裁選になったら岸田さんを選ぶ理由もないということで、レームダックというよりはエアポケットのような感じで死に体になっているのです。

 とはいえ、次の総裁選で担がれる人は誰なのかと言えば、実際には石破茂さんか、上川陽子さんぐらいしかいません。名前が上がりそうな人たちは、だいたいパー券問題でやらかしているか、岸田政権の閣内に幽閉されているため名乗り出ることがむつかしい塩梅(あんばい)です。

 国民の声望という点では石破茂さんは期待感を持たれていて、パー券問題でも自前の派閥がそれに先駆けて崩壊していることもあって塞翁(さいおう)が馬(うま)的に無傷だったのが、次期総裁筆頭候補に挙げられるぐらい盤石になりつつあります。ただ、本人的にはいくら意欲があろうとも、ながらく自民党内で非主流派として干され切ってきた中で、満を持して総裁選出馬って雰囲気でもなく、まあ簡単に言えば「あいつ大丈夫なのか」という、倉庫にずっとしまっておいたパソコンは本当に電源が入って立ち上がるのかってレベルで心配されています。

 そこで対抗馬となるのは今回の上川陽子さんで、まあ、なんというか地味なおばさんです。おととしぐらいまでは総裁選では上川のかの字も取り沙汰されないぐらい端牌(ハジパイ)の扱いでおりました。日本憲政史初の女性総理大臣を目指すレースにおいては野田聖子さんや高市早苗さん、あるいは小池百合子さん、小渕優子さんなど名前は挙がるものの、肝心の自民党主流や党員からのぶ厚い支持を得られるには至らず、ある意味で消去法の結果浮きあがってきているのが上川陽子さんだという話になります。

 そして、上川陽子さんというのは実際には女性政治家というよりは男性社会の中で生き残ってきた女性特有の臭みを持つ人物でもあり、ある面で、個人としての強さと男性社会で声望や実力者の引きを得ながら泳ぎ切る器用さを持っています。簡単に言えば、過剰に輝かない分、嫌われないでここまでやってきたという面が強いのです。

究極の選択

 政策主張的にもザ・自民であって、上川さんが法務大臣時代にお話をいただいたときは、佇(たたず)まいはともかく内容自体はなんだか竹下登さんが乗り移ってるみたいだなって雰囲気です。

「自民党総裁になってほしい」という意中の人は別にいる読者も多いかと思いますが、次の総裁選も総理に最も近くなる人を選ぶにあたり、現実的に石破さんなのか上川さんなのかという究極の選択を求められることになります。あ、もちろん岸田さんも出てきたら選択肢にはなりますけど、出なかったら選択肢に茂木敏充さんや加藤勝信さんあたりも並ぶのでしょうか。

 今回の発言切り取りで騒ぎになっているのも、そういう上川さんからすれば議員生活でいくつかあるスキャンダルの中でもようやくメジャーな報じられ方をして、逆の意味で存在感を示した、とも言えます。例えば、高市早苗さんが次もより高いポジションで入閣することを期待して、次の次の総裁選への出馬へ望みをつなぐのであれば上川政権になるのかなあと思いますし、菅義偉政権で進めてきた移民政策を菅さんに担がれる石破さんが促進する危険性を考えたら上川さんのほうがいいと考える人も多いかもしれません。

 何というか、究極の選択を突き付けられている感じはするんですよね、カレー味の何とかみたいな。
山本 一郎(やまもと いちろう)
1973年、東京都生まれ。個人投資家、作家。慶應義塾大学法学部政治学科卒。一般財団法人情報法制研究所上席研究員。IT技術関連のコンサルティングや知的財産権管理、コンテンツの企画・制作に携わる一方、高齢社会研究や時事問題の状況調査も行っている。

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