ナザレンコ・アンドリー:他候補も「保守化」させる高市候...

ナザレンコ・アンドリー:他候補も「保守化」させる高市候補のインパクト

現時点では最も強い印象をお与えている高市氏
 8月30日に、「今こそ自民党は保守の源流に立ち返れ」と題した記事を寄稿させていただいた。嬉しいことに、自民党内でも同じ認識が強まっていたようで、安倍前首相の支持を受けた高市早苗氏が大活躍し、ネットを中心に人気度が急上昇している。左寄りのマスメディアにとって一番都合が悪い立候補者であるためか、河野氏や岸田氏と比べて報道の数が少ないが、もし結果として自民党総裁に選ばれなかったとしても、既に自民党の正常化への貢献は多大と言える。(自民党にいながら立憲民主党の主張にそっくりな政策を推奨し始めている、同じ女性議員の稲田氏とは雲泥の差だ)。

河野太郎氏の「転向」?

 まず驚いたのは、河野氏の突然な「保守化」。河野氏は昔から夫婦別姓の容認、女系天皇の容認、移民の推奨、靖国神社参拝への反対等、保守が全く受け入れられないような立場で有名である。稲田氏や石破氏ほどではないが、間違いなく自民党内では左寄りと言ってもいいだろう。ところが、こんな彼は先日、いきなり保守主義の大切さに触れた上で、日本の礎は皇室と日本語だと強調した。

 本人が心底からそう思っているかどうかは誰にもわからないし、過去の言動から真意を疑われても仕方ないが、政治家は基本的「思っていることよりも言っていること」のほうがよっぽど大事であり、さらに「言っていることよりもやっていることのほうが100倍大事である」と私は考えている。一般国民に影響を与えるのは内心ではなく、政策と言動の方であると考えるためだ。

 そして河野氏が保守寄りのことを言わざるを得ないのは、「国民が保守的な政策を望んでいて、愛国心を大事にしないと総理大臣になれない」という理解がしっかりあるからということであろう。この点で、良い意味での同調圧力が働いたかもしれない。
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ナザレンコ・アンドリー:他候補も「保守化」させる高市候補のインパクト

主張を変えざるを得なかった?
 このような河野氏の「転向」は、間違いなく高市氏と有権者のおかげだと言うべきだろう。「今こそ自民党は保守の源流に立ち返れ」にも書いたように、自民党には当選さえしていれば何でもいいという消極的な無思想議員が沢山いる。彼らにとって都合がいいのは、日本にまともな野党が存在していないことだ。国民の多くは民主党政権という悪夢を覚えており、それに輪をかけた立憲や共産のような極左政党が再び勝つとは思えない現状から、結局「どうせこちらに票を入れてくれるだろう」と甘く考えているのだ。

 ところが、今回は保守離れという現象が起きて、安倍氏が首相を勤めていた時代に熱心な自民支持者だった方でも、菅政権にはとても厳しい評価を下すようになった。この事態は、このまま続くと自らの当選が危うくなるという危機意識を多くの議員に持たせたのではないかと思う。

 このことは、バリバリの保守である高市氏が総裁選に出馬の意志を表明したとたん、今まで離れていた人も戻り、全力で彼女の応援をし始めたことは「保守的言動をすれば支持が集まる」ということでも証明された。なお、通常はどんな選挙も結局消去法で選ぶ人が圧倒的に多いので、もし高市氏が立候補しなければ、保守票も単に「立候補者の中でより右な人(実際は左派だけど、ベターな選択)」に行っただけと考えられる。

 このような状況を踏まえれば、岸田・河野の両氏が高市氏に保守層の票を独占されると思い、その票を取り戻すために他の候補も(仕方なく?)保守的な言動をせざるをえなくなったということであっても、結果として自民党の正常化を促して左傾化にブレーキをかけたことは、高市氏の偉業と言えるであろう。

「日本語重視」論は重要

 ところで、河野氏にも学ぶことがある。それは言語を重視しているところだ。彼は今回も日本語の大切さに触れたし、以前にも何回かカタカナ語使用に関して苦言を呈したことがある。具体的に言うと、クラスター=集団感染、オーバーシュート=感染爆発、ロックダウン=都市封鎖など、立派な日本語があるにもかかわらず、敢えて外来語を使用することを問題視していた。

 実は、日本は2600年以上も独立を保っているうえ、ずっと単一民族国家でいたため、国語の重要性を理解していない方が多いように思う。日本は法令によって公用語を規定していないことからでもそれは明らか。例えば、私の出身国であるウクライナについてみると、憲法の中にはウクライナ語に関する規定がたくさんある。
 ・第10条 ウクライナの公用語はウクライナ語である。国はウクライナ語がウクライナの主権の及ぶ全範囲で使用できること、及びウクライナ語の全体的な発展を約束する。(以下略)

 ・第11条 国は歴史意識・伝統及び文化においてウクライナが結束し発展することを目標とし、それはまた伝統文化においてや言語的かつ宗教的独自性を持つ全ての先住民族や少数民族が発展することをも目標とする。

 ・第103条 …満35歳以上で、投票権を有し、選挙日から過去10年間ウクライナに居住し、ウクライナ語を使用する者は、ウクライナ大統領への被選挙権を有す…
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自国語の維持は非常に重要なマターである

言語は民族のアイデンティティ

 上記の様に、ウクライナ憲法には国家が国語の保護と発展を約束する規定や、ウクライナ語を使用しない者は大統領や最高裁判官になれない規定まで憲法に盛り込まれている。法律のレベルでも国語保護に関するものは多く、例えば公共の電波を使うテレビ局がコンテンツの75%を国語のものにしなければいけない法律、サービス業(飲食店など)では他の言語の使用を頼まれていない限り必ず国語で接客しなければならない法律、少数民族の学校でも必ず国語を勉強しなければいけなくて、普通の学校では授業の80%が国語で行われなければいけないという法律、等々。

 それは、言語はアイデンティティそのものであり、祖先と現世代を繋いでいる橋だからだ。逆に言うと、他国に植民地支配されると、占領者が第一に奪おうとするのは言語だ。ウクライナに対しては「ロシアの国益に反する」として何度もウクライナ語の使用やウクライナ語での出版を禁じてきたロシアもそうであり、現在ウイグル語やモンゴル語の使用を規制しようとしている中国もまさしくそうだ。世界の歴史上も現在も、言語の封殺は民族を支配するにあたってとても有効的な政策であると考えられているのだ。

 例えば、読者の多くはご存知だと思うが、本来は「中国人」という民族は存在しない。現在の≪中国≫に漢・満・回・蔵・蒙など、50以上の民族が存在している。しかし、中央政府にそれらの民族が言語と文化を奪われつつあるため益々≪中国≫としての同化が進み、しばらくしたら民族のアイデンティティーが完全に消える恐れが十分ある。

 こうなってしまうと遺伝子的な違いが多少残っていても、文化的民族的に本当に≪中国人≫になる。これは、大和民族も例外ではなく、もし中国の日本に対する侵攻が進み、日本語と日本文化を奪われてしまえば、日本人が消滅して中国人になる可能性もあるだろう。
 日本では今、少子化と高齢化が加速化し、移民も年々増えている。だからこそ、日本政府は一層国語と伝統文化の保護に注力しなければいけない(本来ならばそういう意志を憲法に明記すべきだろう)。

 高市さんの言動で多くの政治家が保守主義の大切さに気付いてご自身の公約にこうした政策を取り入れたように、河野氏の影響で日本語保護政策の重要性もより多くの人に認識されることは期待してもいいのではないだろうか。
ナザレンコ・アンドリー
1995年、ウクライナ東部のハリコフ市生まれ。ハリコフ・ラヂオ・エンジニアリング高等専門学校の「コンピューター・システムとネットワーク・メンテナンス学部」で準学士学位取得。2013年11月~14年2月、首都キエフと出身地のハリコフ市で、「新欧米側学生集団による国民運動に参加。2014年3~7月、家族とともにウクライナ軍をサポートするためのボランティア活動に参加。同年8月に来日。日本語学校を経て、大学で経営学を学ぶ。現在は政治評論家、外交評論家として活躍中。ウクライナ語、ロシア語のほか英語と日本語にも堪能。著書に『自由を守る戦い―日本よ、ウクライナの轍を踏むな!』(明成社)がある。

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