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【安積明子】鈴木大地氏出馬断念で…一足早い・千葉県知事選挙の行方

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 来年4月に行われる予定の千葉県知事選が、ちょっとした話題になっている。自民党県連はスポーツ庁の鈴木大地前長官の推薦を検討していたが、石井準一参議院幹事長代理らがそれに反発。かねてから県知事への転身を噂されていた千葉市の熊谷俊人市長を擁立するようだ。

 結局は鈴木氏の「後見人」を自任する森喜朗元首相が出てきて、鈴木氏の出馬を断念させた。もっとも鈴木氏も、「自民党がまとまるなら」という条件を付けていたので、自民党県連内でまとまらない以上は出馬できない。

 しかしながら、この騒動、そもそも原因は自民党千葉県連の中の不協和音のようだ。

 その始まりは森田健作知事が初当選した2009年3月の千葉県知事選に遡るという。当時も自民党は分裂していた。石井氏らは当時関西大学助教授でテレビで論客として華やかに活躍していた白石真澄氏を支持したのだ。だが白石氏は34万6002票しか獲得せず、101万5978票の森田氏に遠く及ばなかった。

 実は投開票の前日、筆者は千葉入りして主要候補の選挙事務所を回っている。最も賑わっていたのは、堂本暁子元知事の後継候補でいすみ鉄道社長だった吉田平氏の選対だ。千葉市の中心にあって広い道路に面した1階と中2階を使ったジーンズ店の居ぬきの事務所には、多数の電話が設置され、絶えずボランティア希望者が訪れていた。

 この選対を仕切っていたのは、後に山本太郎氏の選挙を手掛ける斎藤まさし氏。「選挙の神様」という斎藤氏の噂は聞いていたが、63万6991票という吉田氏の得票には不本意だったのではなかったか。

 白石選対に行くと、スタッフの男性がひとりいて、奥から石井氏がのっそりと出てきた。候補は街宣中だというが、選挙戦最終日というのになんともヒマそうな雰囲気だったことを覚えている。驚愕したのは“公約集”だった。パソコンから直接A4の紙にプリントアウトしたものをホッチキスで止めただけ。おカネが潤沢になかったのだろうが、これでは勝利の女神が避けて通るに違いない。

 一方で、森田氏は余裕だった。午後8時前に千葉市中央公園でマイク収めをした後、近所にあった選対の事務所に駆け込んだ。中には支持者たちが集まっていたが、他の選対と違ったのはその熱気だ。

 あれから11年半が過ぎ、70歳になった森田知事は不出馬の見込み。石井氏は着々と党内で力を付け、野心に満ちた42歳の若き千葉市長を抱え込もうとしている。

 そういえば11年前には、2020年に菅義偉首相が誕生するなど、想像だにできなかった。そういう意味で政治の世界は伏魔殿。広く深く定点観測しなければ、真実は見えてこない。
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安積 明子(あづみ あきこ):ジャーナリスト
兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。
1994年、国会議員政策担当秘書資格試験合格。参議院議員の政策担当秘書として勤務の後、執筆活動を開始。夕刊フジ、Yahoo!ニュースなど多くの媒体で精力的に記事を執筆している。

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