安倍政権の風評被害

大高 お久しぶりです。

阿比留 こちらこそ、よろしく。

大高 阿比留さんと言えば、安倍政権ウォッチャーの1人。「桜を見る会」疑惑を見ていると、モリ・カケ・サクラで、よりひどいじゃありませんか。野党は無意味なシュレッダー検証をしたり、朝日をはじめとするアンチ安倍政権のメディアは〝疑惑〟を囃し立てるだけで、中身は悪質なマルチ商法と変わらない。ジャパンライフの山口隆祥元会長が「桜を見る会」に参加していたとして、安倍総理との癒着が取り沙汰されていますけど。

阿比留 興味深いチラシが見つかりました。「自民党・二階俊博幹事長を囲む懇親会」というもので、山口元会長が出席しています(下の写真)。まわりのメンツを見ると、岸井成格(故人/毎日新聞)、後藤謙次(報ステ)、田崎史郎(時事通信)、島田敏男(NHK)、重倉篤郎(毎日新聞)など錚々たるメンバーです。二階さんはただ呼ばれただけで、裏では元朝日政治部部長、橘優氏が政治家やジャーナリストを紹介したんだとか。

大高 橘さんはジャパンライフの顧問をしていたんでしょう。『夕刊フジ』(2019年12月6日)のインタビューに答えていましたが、ジャパンライフの経営実態については知らぬ存ぜぬの一点張り。さらに小沢一郎や菅直人、福島瑞穂、志位和夫らは、〝反社〟の田中正道とのツーショット写真がネットで拡散されている。野党の追及は、お決まりのブーメランですよ(笑)。

阿比留 でも、突き刺さっている部分は多くのマスコミが隠しているから厄介です(笑)。ある野党議員は取材で「桜を見る会は法的に問えないことはわかっているが、ずっと続けていれば、安倍政権の印象が悪くなる」と言っています。記者側が「そうは言っても、野党の支持率も別に上がっていませんが」と尋ねたら、「野党の支持率が上がらなくても、安倍政権の支持率が下がれば、こちらとしては勝ちだ」と。こんな野党と安倍憎しのマスコミが一体化して、盛り上げている構図なのです。

大高 安倍政権側としては、とんだ〝風評被害〟ですよね。国民からすると、永田町は〝学級崩壊〟状態に見えて、呆れるしかありません。その国民の視線を野党は感じていないんでしょうか。
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山口元会長が出席した「自民党・二階俊博幹事長を囲む懇親会」のチラシ。錚々たるメディア関係者の名前が並ぶ。

イメージの刷り込み

阿比留 一部の冷静な国民は「野党はまたバカなことを追及しているな」と思っていますが、多くはテレビのワイドショーで繰り返し報じられたら、疑惑は存在するに違いないと思い込んでしまうものです。

大高 いわゆる「情報弱者」ですか。

阿比留 ええ、そういう方々が無党派層として一定数存在していて、何か問題が発生したら「安倍政権にお灸をすえよう」と考えているので、ある程度の効果はあるわけです。

大高 対外的に目を向けたら、香港の騒乱をはじめ、それに付随する台湾情勢、ウイグル・チベット・南モンゴルにおける人権弾圧、一触即発状態の中東問題など、国際情勢はとても流動的です。ですが、与野党はじめ、ワイドショーもくだらないことで騒いで、国会が空回りしている。こんなことで日本の先行きは大丈夫ですか。

阿比留 選良たる国会議員が対外政策を議論するのは当然ですが、残念ながら国民すべてが中国の人権問題や北朝鮮のミサイル発射、中東情勢の行く末などに、関心が高いわけではありません。お金や不正が絡むと、国民はより高い関心を示します。
 産経新聞でコラム「極言御免」を週一で連載していますが、「桜を見る会はバカバカしい」という内容を2回書いたら、読者から「いつも阿比留さんの意見に賛同することは多いですが、今回の問題はまったく違います」というハガキが届きました。

大高 要するに安倍政権を擁護しているんじゃないかと。

阿比留 安倍政権が国の政治を私物化したり、自分勝手にやったりしているというイメージが、産経読者にも一定割合で刷り込まれているのです。鳩山由紀夫政権時代、民主党党員にも一定の招待枠の割り当てがあったと書いたら、「民主党もやっていたから、安倍政権で許されることにはならない」と。客観的な事実を書いたに過ぎないのですが。人数にしても鳩山政権時代は1万人だったのが、1万8000人になったのは増え過ぎだと言いますけど、その人数の違いにどう線を引けばいいのか。

大高 おっしゃる通りです。

バカバカしい指摘

阿比留 そもそも野党の主張に間違いがあることも判明しています。野党は「前夜祭パーティーをホテルニューオータニで開催しているが、会費5000円でやれるわけがない。総理側が不足分を負担した公職選挙法違反だ」と息巻いていました。

大高 後援会の収支報告に記載されていないので、「政治資金規正法違反だ」とも言っていますね。

阿比留 ところが、ホテル側に確認したところ、「5000円でやることはありますよ」と。もちろん会場にいる人数分の食事が出てくるわけではありません。安い単価の食事を、ある程度の人数分出しておけば、5000円で十分対応できます。

大高 あと高級すし店「銀座 久兵衛」にも嚙みついてきました(笑)。立憲民主党の黒岩宇洋衆議院議員がパーティーに「銀座 久兵衛」の寿司が出ていたと。

阿比留 TBSでも取り上げて問題視していました。「銀座 久兵衛」の主人、今田洋輔氏に電話取材したところ、「うちの寿司は出していない。本店も、ニューオータニの支店にも確認したし、過去数年遡って調べたけど、出した記録はない」と。

大高 つまりデマだった。

阿比留 国会議員がデマを平気で拡散し、まるでニューオータニに非があるかのように言う。明細書を書くべきだと野党や朝日は主張しますが、ホテル側がいかに安い原価で食事を出しているかなんて、そんな明細書を見せたいと思わないでしょう。たとえば、800人が集まった会場に、出された料理は300人分だったとか、競合ホテルに知られたくないだろうし、参加者から文句を言われるのも嫌です。

大高 同窓会だって、明細不明が多い(笑)。

阿比留 安倍政権側はホテルに「もう少し説明してくれませんか」と言ったそうですが、ホテル側もそう簡単に首肯できないのは当然でしょう。

大高 政治家のパーティーなんて、飲み物や食事にたいしたものは出てきません。

阿比留 担当記者に聞いたところによると、加藤紘一氏の政治資金パーティーは本当に貧相だったとか(一同爆笑)。会費は1万円程度ですが、テーブルに並べてあるのはピーナッツやビール数本だけ。

大高 そんなものでしょう。

阿比留 「桜を見る会」自体、1人当たり飲食代で数100円なのに、まるで大宴会を開いているようなイメージを拡散し続けています。1万8000人を呼んで大宴会したら、5000万円の予算で済むはずがありません。1つずつ検証したら、野党の指摘のバカバカしさなんてすぐにわかる。それでも多くのメディアは中立的に正しく報じません。

大高 田村智子議員(共産党)がこの時期、国会で「桜を見る会」疑惑を取り上げたのには、何かしらの意図があると思えて仕方ありません。たとえば、改憲阻止や安倍四選阻止を狙っているとか。

阿比留 それもあるでしょうが、追及材料がほかにないから取り上げてみたら、思いのほかマスコミの食いつきが良かった(笑)。大高さんがおっしゃったように、日本を取り巻く国際情勢は厳しさを増す一方です。トランプ大統領は北朝鮮に対して関係は良好としつつ「軍事力行使が必要なら使う」と言っているし、中国では日本人の逮捕・拘束が続いています。翻って日本の国会を見ると、「桜を見る会」を追及するために延長しろと言っている。

大高 呆れを通り越して、ガクゼンとします(笑)。

阿比留 そもそも野党は「今国会は日米貿易交渉を徹底追及する」と鼻息を荒くしていたのです。ところが、12月4日、何の抵抗もなく法案が成立しました。与野党議員、そしてマスコミは、日本国民を舐めているとしか思えません。この程度の国民にはこの程度の話題でいいと。しかも残念なことに、それが一定の効果を生んでいます。

安倍政権の実績

大高 通算在職日数が憲政史上最長となった安倍総理ですが、最近の動きを見ていると、少し鈍いんじゃないかと歯がゆくなることもあります。第1次安倍政権のときは、教育基本法改正や防衛庁を省に格上げしたり、国民投票法案を可決するなど、さまざまな実績がありました。では、第二次安倍政権以降、主だった業績が果して何なのかと言われると答えに窮します。

阿比留 まず評価したいのは、集団的自衛権の限定的行使を容認した平和安全法制によって、アメリカとの関係を対等に近づけることができたことです。この法案が成立していなければ、今のような北朝鮮の状況を鑑みると、もっと日本はアメリカに厳しい要求を突きつけられている可能性が高かった。根拠なく慰安婦募集の強制性を認めた河野談話もそうです。作成過程を検証して、事実上、無化しました。いかにいい加減で、適当な文書であったかが周知されています。あと、評判は悪いですが、特定秘密保護法を成立させました。内閣支持率を下げてでも、国際標準に近づける努力をしています。
 もう1つ、特筆すべき点は歴史問題でしょう。今や世界を見渡しても、日本に歴史問題で文句を言ってくるのは韓国だけになったのです。第2次安倍内閣が発足したとき、オバマ政権は安倍総理のことを「歴史修正主義者」「右翼ナショナリスト」と見ていましたが、その偏見もなくなりました。なおかつ、戦後70年談話でアメリカとは完全に「戦後は終わった」と、和解状態に持っていきました。

大高 それに付随して、オバマ大統領の広島訪問と、安倍総理の真珠湾訪問がありました。

阿比留 韓国が歴史問題でいくら騒いでも、アメリカが韓国の主張を取り上げなくなったことは、大きいと思います。

大高 それまで中国や韓国から村山談話に従えと言われていました。

阿比留 中身がなく曖昧だったから、いいように使われていたのです。しかも外務省は村山談話に縛られていました。そこで70年談話を発表することで、日本政府の歴史認識や外交方針がより鮮明化されたと言えます。

大高 河野談話は無効化されたという認識でいいのでしょうか。

阿比留 少なくとも国内問題においてはそう言えます。

大高 問題は河野談話を根拠に、外国勢力が反日プロパガンダを展開していることだと思います。政府として明確に河野談話の無効性を発信すべきじゃありませんか。

阿比留 第1次安倍政権のときは政権基盤が弱く、河野談話を否定したら公明党が拒否反応を示し、連立を離脱する可能性もあった。安倍総理の本音としては破棄したい気持ちがあるでしょう。ですが、政府の公式談話として一度発表され、世界に拡散してしまった以上、「あの談話は間違っていました」と言ったところで、「歴史修正主義者だ」と批判されるだけ。安倍総理の政治信条は100点満点を目指さない漸進主義です。匍匐前進のように一歩一歩前に進んで橋頭堡を築いていく。河野談話にしても歴史を検証した上で、外務省や民間に「あの談話は間違いだった」と流布させていく。安倍総理はそういう方向に持っていこうとしています。

習近平国賓招待の意図

大高 NHKの世論調査を見ると、安倍政権の「外交・安全保障」を高く評価する結果が出ています(2019年11月11日時点)。ですが、2020年春ごろ、習近平を国賓で招こうとしています。このことに関して批判の声が高まっていますが、安倍総理の胸の内はどういうお考えなのか。
※注)『WiLL』本誌掲載2020年1月当時の状況です

阿比留 中国側から習近平氏の訪日の申し出があった時点と現在では、中国をめぐる状況が変わったという部分もあり、今後見直される可能性もありますが、まず国賓招待をする意図はどこにあるのか、と言えば、一つには他国との関係を睨んだ上でのことです。極東の安全保障のためにも中国と手を組み、ロシアと接近させない。そういった腹積もりがあります。
 また、韓国にしても中国と共同戦線を張って対日・反日路線を進めたいのですが、安倍総理と習近平が笑顔で握手を交わしている限り、中国は対日・反日路線に舵を切ることができない。戦時朝鮮半島出身労働者問題(いわゆる徴用工問題)にしても、韓国の大法院が日本企業側の賠償を認める判決を下し、韓国政府が司法の判断を認めるという見解を出していますが、中国は何ら反応を示していません。

大高 今までの中国だったら、尻馬に乗って自分たちも徴用されたと、被害者をでっち上げてでも攻勢を仕掛けてくるでしょう。

阿比留 ところが政府や民間レベルで、そんな声は聞こえてきません。トップが握手をしているときに、下の人間はそれを乱す真似はできないのです。それは、習執行部批判ということになりますから。

大高 米中貿易戦争で経済的にも弱っているから、日本を味方に引きつけておく必要もある。

阿比留 それもあります。

大高 まったくのご都合主義です。

阿比留 そこを日本政府は利用しているのです。6月、習近平が初めて訪朝を果たした際、金正恩に「拉致問題を解決しなさい」と告げています。これも日中関係が良好であるがゆえの発言でしょう。それと中国は国家主席が第1の国です。国賓として日本で接遇されたとなったら、政府高官や事務方は日本に配慮しなければと思うわけです。一方で、習近平本人には香港の「一国二制度」問題やウイグル人の人権弾圧について、言うべきことはしっかりと言う。

大高 それを期待したい。

阿比留 もちろん言ったところで中国がすぐに変わるわけではありませんが、釘を刺すことはできます。国賓招待にしても香港デモの情勢やウイグル問題がどこまで進展するかで、日本政府は対応を変えていくと思います。今のところ、トランプ政権との歩調は乱れていません。役割分担がありますから。

大高 アメとムチみたいな。

阿比留 強面の刑事と優しい顔をした刑事さんみたいなものです。机をドンと叩いて「吐け!」という刑事がいて、その後ろで「まあまあ」とやさしく肩を叩いて、「そろそろ吐いて楽になったらどうだ?」と。でも、日米が中国に言っていることは基本的に同じで、知的財産権を守ること、国際ルールに遵守することを求めている。やはり中国は日本にとって軍事的にも経済的にも脅威であることは間違いありません。

大高 そうですよ。

阿比留 だからこそリスクコントロールが必要なのです。一方で、韓国は脅威でも何でもないから放っておく。

首脳外交のルール

大高 中国で日本人が逮捕され、拘束されています。ある意味、拉致事件だと揶揄されていますが、日本だってスパイと思しき中国人をもっと取り締まるべきではありませんか。

阿比留 北大教授の逮捕は実際にひどいやり方でした。安倍総理が王岐山に「返さないととんでもないことになる」と訴えたところ、無事、解放され帰国の途につきました。ただ、外務省高官によると、拘束されている日本人の中には、実際に怪しいと疑われても仕方がないような人間がいるのも事実なようです(笑)。見極めが難しいところもあるので、全員を直ちに返せとは言いづらい。

大高 水面下では、いろいろ動きがあるわけですね。

阿比留 産経のソウル支局長だった加藤達也記者はセウォル号沈没事故当日の朴槿惠大統領の対応が杜撰(ずさん)だったと報じて出国禁止状態になりました。安倍総理は朴大統領に「加藤君を解放しなさい」と直接、何度も言ったそうです。朴大統領側は「よく検討します」と答えつつ、「この話は表に出さないでください」と。表に出さない約束で本音を語るのが、首脳外交の1つのルールなんでしょう。

大高 アメリカではウイグル人権法案を下院が提出しました。日本側でも対外的に中国に対して、明確な意見表明をする政策的な動きがあってもいいと思いますが。

阿比留 自民党がもっと動いて、議員立法を提出すべきだと思います。青山繁晴議員らが発足させた「日本の尊厳と国益を護る会」が、習近平国賓招待に対して反対する提言文を官邸に持ち込み、官房副長官に手渡しています。こういった動きを政府は歓迎しています。

大高 議員側からもっと声を上げてほしいと。

阿比留 日本政府が仮に国賓で招くとしても、「これだけの反対の声がありながら、押し切って招待した。だから、中国側もそれ相応の配慮をして、改めるところは改めてほしい」と言える。ところが、今の自民党や公明党の動きを見ていると、反応が鈍い印象を受けます。

大高 与党自体、一枚岩ではないことが問題なんですね。しかも親中派も多数います。

阿比留 問題意識そのものが薄いのです。安倍総理自身、若い頃から靖國議連や教科書議連などを立ち上げて、提言をくり返してきました。同じように自民党内からさまざまな声をあげてくれれば、政府としても対応しやすいし、カードとしても利用できます。

タチが悪い良識派

大高 オーストラリアに対して中国のスパイ工作が明るみになりました。ボー・〝ニック〟・ジャオという中国系オーストラリア人に100万豪ドル(約7400万円)を渡して、スパイに仕立て上げ、メルボルンの選挙区から連邦議会選に立候補させようとした。当然、日本でもそういうことが行われていると思って当然ではありませんか。

阿比留 困ったことに、日本人の場合は、マネートラップにかからなくても親中派と言える人たちがたくさんいますから(苦笑)。民主党政権時代、習近平が国家副主席という立場で来日し、天皇陛下に拝謁したことがあります。天皇陛下に拝謁するためには1カ月ルールというのがあり、1カ月前までに文書で正式に申し込む必要がありました。ところが、そのルールを破って、習近平は陛下に拝謁できた。この拝謁によって、李克強と争っていた国家主席の座について一頭地抜くことができたと言われています。このときは、外務省も宮内庁も習近平に拝謁させることは反対していたし、官邸も動きが鈍かった。
 ですが、中国大使館からの攻勢がすさまじく、中国側の要請を受けた小沢一郎氏が鳩山首相(当時)に電話をして、「何をやっているんだ。さっさと会わせろ」と。そこで鳩山首相は平野官房長官にその件を下ろしました。宮内庁は内閣府の外局ですし、その長である官房長官からの命令であれば、言うことを聞かざるを得ない。中国側は労せずして目的を達成したと言えます。

大高 中国や韓国、北朝鮮に対して、いい顔をしたほうがいいと思っている議員は、いまだに多くいらっしゃるんですね(笑)。

阿比留 中国に対して極端な言説をする議員を見たとき、チャイナマネー漬けじゃないかと思いがちですが、違うんです。確かにハニートラップに引っかかった人もいましたが、多くの人たちは勘違いの〝良識派〟で、「これをすることが正しいんだ」と思い込んでいる。鳩山由紀夫さんが最たるものです。韓国が望む通りの発言をして、相手を喜ばせています、〝良識的〟日本人だと。でも、『反日種族主義』の編著者、李栄薫氏が言うには、実は日韓関係を悪化させたのは、この〝良識的〟日本人だったのです。

大高 タチが悪すぎます(笑)。

阿比留 世の中には悪い人間がおり、悪いことを企んでいるから、良心的な自分たちにはそういう人間を叱りつける義務があると思い込む。

大高 ワイドショーにしたり顔で出ている朝日新聞のコメンテーターなどまさにそう!

阿比留 安倍政権を全部悪と決めつけて、戦っていることに酔っている。1人でシャドーボクシングして、強敵と戦っている気になっているようなものです。

大高 そもそも文政権が持ち出した詭弁、日韓併合無効論などは最初、和田春樹氏といった日本の学者たちが韓国に入れ知恵し、日韓協定で経済協力は解決済みとする立場をひっくり返し、個人請求権はあるから戦時労働者(徴用工)や慰安婦の補償をしろなどと、ヤクザ顔負けのゆすりたかりをやっているわけです。

阿比留 〝良識的〟弁護士、〝良心的〟学者……こういった存在は本当に厄介です。鳩山さんを見ると、日本に対してルサンチマン(恨み)を持っているとしか思えません。総理として〝友愛〟を説いた私を理解せず、ついて来なかったと……。

大高 鳩山さんは新たな政治団体「共和党」を結成する動きを見せていますが、どうでしょうか。自分を「棟梁」と呼ばせるなんて、何を考えているのやら(笑)。

阿比留 現職議員は誰も参加しませんよ(笑)。それこそ泥船に乗るようなものですから。鳩山さんと同じく出世を阻(はば)まれた官僚や学者たちは、ルサンチマンを抱えやすいものです。それで反政府的な発言を繰り返している。つくづくタチが悪いと言わざるを得ません。

保守化していく官公庁

大高 末端で情報収集をしている方の話を聞いたことがありますが、「スパイ防止法」がないから、というのは責任転嫁に過ぎないと。いくらヒューミント(人を媒介とした諜報活動のこと)で情報を集め逮捕しようとしたところで、上層部から圧力がかかり、無罪放免になってしまうと。実に不思議な国だとぼやいていました。

阿比留 朝鮮総連も甘やかされ放題でした。警察庁が朝鮮総連に乗り込むと、当時の社会党議員がわざわざ警察庁本部に乗り込んで文句を言うほどでしたから。

大高 官公庁含め、リベラルが多いと言えます。

阿比留
 第1次安倍内閣が発足したとき、安倍総理は「自分はどれだけ総理を続けられるかわからないけど、保守で10年つなげたい」と言っていました。保守政権が10年間続けば、霞ヶ関の官僚はずる賢いので、みな保守的に変貌していく(笑)。そうすれば、日本社会全体も保守的な考えを持つようになると。

大高 実際に10年が経とうとしていますが、相変わらずリベラル、戦後利得者たちの残滓を引きずった連中が各界で幅をきかせているように思えますが……。

阿比留 安倍総理は各省庁の人事にそれほど関心が高くありませんが、外務省だけは例外的に強い関心を抱いているようです。総理自身、外交が好きだという面もありますが、対外的な人事はしっかりしたいという意思が強いようです。

大高 阿比留さん自身、外務省の変化は感じ取っていますか。

阿比留 現在の秋葉剛男事務次官は肝が据わっているし、その部下の山上信吾経済局長は「外務省一の右派」と言われているほど(笑)。ある外務省の高官から聞いた話によると、「外務省は日本の縮図である」と。省内には保守派もいれば、左派や共産党、創価学会員もいる。その中で意見を通すには、戦って伍していく必要がある。何事も一挙に進まないのは、会社だけではないのです。

大高 慰安婦問題に関しては、外務省の対応に歯がゆい思いをしている人たちが多いと思います。

阿比留 慰安婦問題がこじれたのは、当時の外務省官僚の多くが問題の本質を理解していなかったことが起因していると思います。慰安婦問題とは何かをきちんと勉強した官僚も少なかった。ごく少数の人たちが理解しており、解決に乗り出そうとしても、もう物事が大きく動きすぎていたときだった。

大高 吉田清治氏などの創作話が資料として引用された悪名高き「クマラスワミ報告」(女性に対する暴力とその原因及び結果に関する報告書)に対して、外務省による幻の反論文を読んだことがありますが、実によくできていました。でも、闇に葬り去られてしまった。

阿比留 誰が実行したのかは、いまだに不明です。

大高 末端の人たちが頑張っても、結局、上に潰されてしまう。

阿比留 鶴岡公二元駐英大使は、スリランカにいるクマラスワミ氏に直接、反論しようと連絡を取ったのですが、逃げられてしまった。このように外務省内でも対応すべく動いていた人たちはいたのですが、あまりに衆寡敵せずで、国際世論で敗北したため、外務省としてはできるだけ放っておいて、やり過ごすことに決めたのです。

大高 傷口は広がるばかりのような気がします。

阿比留 しかも、これが安倍第1次政権時の、外務省内のまともな保守派の意見だったのです。でも、今の外務省は、以前よりさらにまともになったと言えます。

大高 だからといって積極的に動いているようには見えません。初動対応がすべてだったと言うのは酷なことでしょうか。

憲法改正へのステップ

阿比留 安倍批判の中に「独裁政治だ」と言う人がいますが、そんなバカなことはありません。そもそも安倍総理は、自民党内で少数派の議員でした。竹下派のように親中派で無思想、経済政策だけ……こういった考えが自民党の主流派でした。清和会にしても、それほど信念のある議員が集まっているわけではない。
 その中で安倍総理や中川昭一さんのような少数派が、一所懸命、議連などを立ち上げ、人を集め、同志を増やしていったのです。自民党内でもそうだったのですから、野党を含めて考えたら、左派ばかり。こういう四面楚歌の中で匍匐前進しながら、できることを少しずつ進めています。

大高 憲法改正に向けて、ステップづくりを始めていますが、野党は討議の場にも出ず、サボタージュばかりしています。果たして憲法改正の道筋は見えているのでしょうか。

阿比留 今国会では国民投票法改正案の見送りが決まりました。残念な結果ですが、次の通常国会では法案を通そうと、安倍総理の決意は固いようですから、強行も辞さない。その結果、国民の信を問うべきだとなれば、衆院解散・総選挙もあり得ます。

大高 総選挙になった場合、見通しはどうでしょう。

阿比留 負けることはありません。ただ議席数は多少減らすという予測が出ています。数が減った中で、どれだけ求心力を持って憲法改正に動き出せるかは、未知数です。冷静かつ慎重に判断した上で解散・総選挙に踏み切るでしょう。

大高 2020年は安倍政権にとって一つの山場がやってきそうですね。

阿比留 そうです。

大高 101歳で中曽根康弘元首相が亡くなりました。中曽根さんも憲法改正には熱心に取り組んでいましたが、実現できなかった。

阿比留 憲法改正の歌までつくっていましたから。憲法改正できなかったのは、世論の動きを見てのことでしょう。「反動右派」と言われるような時代でしたから、そんなことに政治的エネルギーを注いだら、経済・外交に手が回せなくなる。

大高 自民党が結成されて70年以上、「憲法改正」は党是ではありませんか。自民党議員であれば負い目を感じないほうがおかしいと思いますけど。

阿比留 国会議員はまだ比較的に意識が高いのですが、地方議員がよくありません。利権を得るには自民党が便利だと思っている議員が一定数存在しています。「憲法改正をお願いします」と言ったところで、「旨味はあるのか」といった反応です。

大高 あいちトリエンナーレの件で、河村たかし市長に話を聞いたのですが、県連は利権にガチガチでまったく動かないそうです。

阿比留 それが現実でしょう。

大高 朝日をはじめ、これからも左派は反安倍を加速させていきそうですね。

阿比留 朝日に関しては、すでに振り切っていますから(笑)。

大高 でも、もうカードはないでしょう。「桜を見る会」だって不発に終わりそうです。

阿比留 そうですが、ある程度の成功体験を得ていることも事実です。モリ・カケ問題で政権支持率が2割下がりましたから。この成功体験で、「夢よ、もう一度」と言ったところでしょう。憲法改正にしても、朝日は護憲派なので、安倍にやらせても嫌だし、憲法改正も嫌だから、二重に反対論陣を張ってくるに違いありません。安倍総理四選が現実となったら、それこそ目も当てられない。なりふり構わず攻めてきますよ。

大高 総理夫人の周辺を嗅ぎまわっていそうです、どこかに疑惑がないかと(笑)。

阿比留 それを思うと「日本は平和な国だな」とつくづく思います(笑)。安倍総理の行く道は、まさに「イバラの道」で前途多難ですが、憲法改正に突き進んでほしいものです。


阿比留 瑠比(あびる るい)
1966年生まれ、福岡県出身。早稲田大学政治経済学部卒業。90年、産経新聞社入社。仙台総局、文化部、社会部を経て、98年から政治部。首相官邸、自由党、防衛庁(現防衛省)、自民党、外務省などを担当し、第1次安倍内閣、鳩山内閣、菅内閣、第2次以降の安倍内閣で首相官邸キャップを務める。『総理の誕生』(文藝春秋)、『安倍晋三の闘い』(ワック)など著書多数。

大高 未貴(おおたか みき)
1969年生まれ。フェリス女学院大学卒業。世界100カ国以上を訪問。チベットのダライラマ14世、台湾の李登輝元総統、世界ウイグル会議総裁ラビア・カーディル女史などにインタビューする。『日韓〝円満〟断交はいかが?   女性キャスターが見た慰安婦問題の真実』(ワニブックス)、『イスラム国残虐支配の真実』(双葉社)、『父の謝罪碑を撤去します 慰安婦問題の原点「吉田清治」長男の独白』(産経新聞出版)など著書多数。「真相深入り!虎ノ門ニュース」(レギュラー)、「ニュース女子」などに出演している。

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