菅総理への手紙―デービット・アトキンソン氏の重用に疑問

菅総理への手紙―デービット・アトキンソン氏の重用に疑問

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 菅総理殿

 デービッド・アトキンソン氏とは、もうお会いになったり連絡を取ったりされない方がいいと思います。

 私がそう申し上げる本当の理由は、ここでは開示できません。しかしこの「Daily WiLL Online」で開示できる理由を以下申し上げておきます。

外国人のブレーンは危険

 ①彼は日本国籍を有する日本人ですか? 日本国籍を有する者ですか? 恐らくそうではないでしょう。だとすると、安倍内閣の今井補佐官のように国家公務員の身分を有して、その罰則、特に守秘義務上の罰則を負う者ではない限り、会ったり連絡を取ったりされるのは好ましくありません。

 ホワイトハウスでもダウニング街10番(イギリス首相官邸所在地)でも、トップが軽々しく外国人に会ったりはしません。とにかく個人的に会うことは厳禁されています。外国の大使、公使と会う時も必ず米国側、イギリス側の担当部署の職員が同席します。マイケル・フリンの事件などを思い出していただければと思います。


 ②アトキンソン氏が代表を務める株式会社小西美術工藝社と、彼のゴールドマンサックス出身という経歴が、すとんと納得のいくものではありません。詳しくは申し上げられませんが、「Daily WiLL Online」では、この程度しか言えません。

 ③アトキンソン氏の主張する観光立国論はあくまでも立国の基本政策として補助的なものであるというのは、現在のG7の国で観光立国論を掲げている国がないことからもお分かりのことと思います。アングロ・サクソン国、特に米国、イギリスでは、観光立国はどちらかと言うと政策的には片隅に追いやられています。

日本を危険にさらす≪中小企業の切り捨て≫

 ④もう1つアトキンソン氏の言う「日本の生産性が低いのは中小企業が多すぎるからだ、非効率な中小企業が多すぎるからだ。従って統廃合をせよ」という理論は間違っているどころか、安全保障上極めて危険な提案であり、我が国の安全保障上の国益に反します。

 ご承知のように、日本の軍事産業は自動車産業と同じく、膨大な系列的重畳的下請け中小企業群によって支えられています。

 戦車1つをつくるにしても、何万という部品は何千という重畳的系列的下請け企業群によって個別的系列的に生産されているのです。それらを統廃合し、そこで働く人の最低賃金を引き上げて、これらの下請け企業群が成り立たなくなることは、有事の際の国家総動員的な軍事調達ができなくなることを意味します。

 例えば、三菱重工業だけで全ての戦車の部品をつくっている訳ではありません。計器類1つをとっても、センサー1つをとっても、砲弾や弾薬1つをとっても、それぞれ1次下請け、2次下請け、3次下請けの中小企業群によって支えられています。

 仮に労働生産性が低く非効率的だとしても、それは国の安全保障上のコストであり、あえて維持するべきものです。自動車産業、電機産業、造船産業、素材産業、化学技術産業等、全て有事の際には必要となる産業であり、これらは全て重畳的な下請け中小企業群によって支えられており、アトキンソン氏の言うように統廃合し、足腰が弱くなってしまっては、有事の際の緊急サプライチェーンが機能しなくなり、我が国の安全保障に大きな支障が出ます。

観光で国は「立国」しない

 ⑤アトキンソン氏の言う観光立国論、インバウンド立国論は、日本の軍事的安全保障と軍事的科学技術の発展にはマイナスです。この点については機会があれば別に詳しく述べますが、簡単に言ってしまえば、人類の歴史を見ますと、観光に頼っていた国、または地域は、ことごとくないがしろにされるか、滅ぼされています。

 米国をはじめドイツなど、産業立国の国には観光立国政策というものが存在しないことについてもう少し掘り下げてみます。

 ただ観光立国の提唱者アトキンソン氏ですが、菅総理はちょっと人を見る眼がなかったと思います。

 先進国で観光立国と言っている国はどこもありません。むしろGDPの観光に占める割合が多い国は産業力の弱い衰退国であるということが分かる。産業衰退国は観光に頼ることになります。

 観光産業のGDPに占める割合に基いて、少ない順から国名とパーセンテージを表示すると、次のとおりです。

・中国:1.3%
・カナダ:2.0%
・米国:2.8%
・スイス:2.8%
・ロシア:4.8%
・ドイツ:8.6%
・フランス:9.5%
・イギリス:10%
・スペイン:11.8%
・イタリア:13%
・ギリシャ:18%

 IT立国、デジタル立国の中国やカナダ、米国は1~2%台、製薬と生物研究産業立国のスイスは 2.8%、軍事立国のロシアは4%台、機械産業立国のドイツは8%台です。

 ちなみに、観光立国の典型と言える、例えば古代ギリシャの遺産で今でも国を支えてもらっていると言われているギリシャは観光産業のGDPに占める割合が18%。
 
 さて、問題の日本を見てみると11%です。つまり、落日のイギリスよりも産業力が衰えており、イタリア、スペイン並に産業力が衰退してきています。産業が衰退し、観光特にインバウンドに頼る他ないのが、日本、イタリア、スペインと言えるでしょう。

 アトキンソン氏は日本に対して、さらにこの割合を高めようと主張しています。つまり、言葉を代えて言えば、産業立国、軍事立国、IT立国、デジタル立国、生物研究立国を諦めろと言っているに等しい。

 観光おもてなし立国の国は産業が衰退し、結果として産業小国軍事小国科学小国になり下がっていき、経済が衰退し他国に滅ぼされる運命にあることは歴史が証明しています。

 アトキンソン氏の主張は、そういう意味で日本にとって毒針です。カジノ立国は、アトキンソン氏の主張かどうかは知りませんが、衰退する日本にとって、古代エジプトのクレオパトラ女王を殺したコブラの毒牙となるでしょう。

 おもてなし立国は日本の安全保障を極めて危うくする誤った政策です。なぜなら、日本にとって、観光立国収入の大半はインバウンド経済になりますが、そのインバウンド経済の中心は中国人観光客です。

 新型コロナで明らかなように、インバウンドはパンデミックが始まれば、一挙に萎んでしまいます。その都度、大量の国債を発行し、観光業界を支援する必要が生じ、日本の財政が疲弊するでしょう。

 しかも、中国が戦略的に日本への中国人渡航を制限禁止すれば(尖閣の火が噴けば、中国はそうするでしょう)、観光立国日本は一挙に干上がってしまうから、日本の経済と安全保障を北京にその首根っこを押さえられてしまいます。だから、カジノはコブラの毒牙となるのです。

 以上、この提言を菅総理のお目にとどまることを祈っており
ます。
石角 完爾(いしずみ かんじ)
1947年、京都府出身。通商産業省(現・経済産業省)を経て、ハーバード・ロースクール、ペンシルベニア大学ロースクールを卒業。米国証券取引委員会 General Counsel's Office Trainee、ニューヨークの法律事務所シャーマン・アンド・スターリングを経て、1981年に千代田国際経営法律事務所を開設。現在はイギリスおよびアメリカを中心に教育コンサルタントとして、世界中のボーディングスクールの調査・研究を行っている。著書に『ファイナル・クラッシュ 世界経済は大破局に向かっている!』(朝日新聞出版)、『ファイナル・カウントダウン 円安で日本経済はクラッシュする』(角川書店)等著書多数。

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この記事へのコメント

2020/12/8 14:12

どんな立ち位置か全くわからない。
デービットさんというより「お金さん」ですね。

天真爛漫 2020/11/17 17:11

しかし、旅館やレストラン、バスなどの業界に働いている方々はさすが三菱重工の下請けにはなれないのですが。

2020/11/17 05:11

完全にDS支配に持ってかれるだろ。菅総理は中共、DSの言いなりだ。一刻も早い退陣を求める。

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