島田洋一:生方幸夫氏 落選~めぐみさん「死亡」を楽しげ...

島田洋一:生方幸夫氏 落選~めぐみさん「死亡」を楽しげに語った愚

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 世に意識の低い政治家は多いが、立憲民主党の場合、「俺が女子中学生と性交して何が悪い」云々の本多平直議員といい、ここで触れる生方幸夫議員といい、常軌を逸した考えを、高揚感をもって、あるいは誇らしげに語る議員が目立つ。

 オバマ元米大統領が回顧録で、「権威に歯向かう姿勢を売り物にする習性などから、発信において自制心を欠くことにほとんど倒錯した誇りを持つ議員が特に民主党に多い」と自党に関し鋭い観察を記しているが、日本の無責任な「抵抗のみ野党」にも当てはまるようだ。

 さて、生方衆議院議員の拉致発言である。総選挙を控えて開催した自らの「国政報告会」(9月23日)で飛び出したものだけに、酔余の放言の類ではなく(それでも許されないが)、長く温めた考えを開陳した、満を持した発言と言える。

 生方氏は拉致に関する会場からの質問に、笑いを交えながら滑舌よく答える。73歳とは思えない声で、認知症の兆候は見られない。

 生方 拉致問題は、こんなこと言ったら悪いのかもしれないけれど、本当にあるのかどうか、ないんじゃないか。少なくとも、何ですか、亡くなった小さい女の子、中学生かなんかで。

 質問者 横田めぐみさん。

 生方 横田さん。横田さんが生きているとは誰も思っていないのです、自民党の議員も。生きていたら何で帰さないの。生きているなら帰すではないですか。帰さない理由はまったくないし。

 「帰さない理由」は1対1で工作員教育に当たらされるなど、北の秘密を「知り過ぎている」からだ。

 生方氏は、横田めぐみさんの名前を思い出せず(あるいは、些細な問題と印象付けたいため、思い出せないフリをしつつ)、「亡くなった」という点だけは、さりげなく明確に強調している。私は当日の動画を見たが、生方氏はめぐみさんに関し、ほとんどせせら笑うような調子で語っている。

 冷血非道な北朝鮮に拉致された「女の子」について根拠なく「亡くなった」と力説することが楽しいらしい。

 これまで、拉致について不見識な政治家を少なからず見てきたが、ここまで腐爛した精神も珍しい。母の横田早紀江さんが「怒る気力もない。こんな日本人がいることに驚いた」と嘆息するのも当然だろう。
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島田洋一:生方幸夫氏 落選~めぐみさん「死亡」を楽しげに語った愚

拉致という犯罪に巻き込まれた同胞に対して、いまだに信じがたい発言である―
 10月11日に発言が問題化したのを受けて、同日夕、立民党執行部に促された生方氏が、「この度は、私の著しい勉強不足と思い込みから、事実に基づかない発言をしてしまい」云々で始まる謝罪文を持って救う会事務所を訪れた。

 しかしこの弁明はおかしい。生方氏は読売新聞記者を経て、議員生活4半世紀におよぶ政界の古株である。小泉訪朝に始まる激動期にも国会にいた。

 同氏は、めぐみさん死亡という根拠なき断定に続き、悪いのは帰還した拉致被害者を「約束通り」北に戻さなかった日本だと、批判の矛先を小泉政権に向けている。勉強不足ではなく、確信犯的親北派であることが分かる。

 生方氏は、北朝鮮問題に関する自分の指南役は「石井一先生」(元自民党議員)だと、この国政報告会でも明かしている。

 石井氏は、「交渉の入り口から拉致問題を外さねばならない。(小泉訪朝時に)北朝鮮は拉致被害者13人のうち8人が死亡と通告した。最高権力者が首脳会談で発した言葉であり、重く受け止めるべきだ」などと北の立場に慮るよう主張してきた代表的な親北派である。

 情けない話だが、自民党にも、日朝議連(衛藤征士郎会長)の中核メンバーなど石井氏を師と仰ぐ議員はいる。

 今回の生方発言は、拉致被害者を死んだことにしたい親北議員たちが、いまだ政界に深く根を張り、機を見て鎌首をもたげてくる日本政治の危うい現実を改めて白日の下に晒した。

 生方問題が発生した当日、立憲民主党の枝野幸男代表は記者団に対し、「まずおわびをすることが一番大事だ」と公認見送り等については言葉を濁した。

 私が枝野氏なら、問題の動画をすぐに見せるよう側近に命じ、中身を確認したうえで、即日除名する。生方氏自身、民主党副幹事長時代の2010年、産経新聞のインタビューに応え、小沢一郎、輿石東両幹部の「政治とカネ」の問題は深刻で、「要するに言い訳から入る選挙は勝てませんよ」と語っている。潔く、即日議員辞職すべきだった。
島田 洋一(しまだ よういち)
1957年、大阪府生まれ。福井県立大学教授(国際政治学)。国家基本問題研究所企画委員、拉致被害者を「救う会」全国協議会副会長。近著に『アメリカの解体』(ビジネス社)。

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