「岸田さんだけには勝って欲しくない」
9月上旬、菅首相が総裁選不出馬を発表した頃、私は何人もの自民党議員から、こう聞いた。
「劇薬」の河野太郎や、「女性初」の高市早苗が総理・総裁なら、多くの自民党議員にとって、総選挙は追い風の中で戦える。
しかし、岸田文雄となると話は別だ。そもそも、「菅首相の元では総選挙は戦えない」という、烏合の衆の悲鳴によってスタートしたのが今回の総裁選だったはずだ。「地味」「発信力がない」「安倍さんよりリベラル」という意味で、岸田さんは菅首相と大差ない。
さらに「優柔不断」という意味では菅よりも印象が悪い。そんな岸田では自分の総選挙が危うい。
こんな受け止めが、思想の左右を超えて、9月上旬段階での多くの自民党議員の本音だった事は間違いがない。
9月上旬、菅首相が総裁選不出馬を発表した頃、私は何人もの自民党議員から、こう聞いた。
「劇薬」の河野太郎や、「女性初」の高市早苗が総理・総裁なら、多くの自民党議員にとって、総選挙は追い風の中で戦える。
しかし、岸田文雄となると話は別だ。そもそも、「菅首相の元では総選挙は戦えない」という、烏合の衆の悲鳴によってスタートしたのが今回の総裁選だったはずだ。「地味」「発信力がない」「安倍さんよりリベラル」という意味で、岸田さんは菅首相と大差ない。
さらに「優柔不断」という意味では菅よりも印象が悪い。そんな岸田では自分の総選挙が危うい。
こんな受け止めが、思想の左右を超えて、9月上旬段階での多くの自民党議員の本音だった事は間違いがない。
"二階切り"で「優柔不断」返上のはずが―
岸田の「育ちの良さ」を知らない自民党議員はいない。私も宏池会を担当していた頃に何度か懇談やプライベートな会合でご一緒した事があるが、どんな人にも気を配るし、どれだけ水を向けても他人の悪口を言わない。もし、一般的なサラリーマン社会の中に岸田文雄という人物を置いてみても、その人の良さと育ちの良さは、際立つだろう。
岸田文雄に接触した全ての人が感じる彼独特の優しさは、永田町という特殊な街では、アドバンテージというより、どちらかと言えば欠点として捉えられる事が多かった。
「岸田さんは育ちが良すぎてね」
「いざという時に決断力がない」
「役人にいいように使われちゃうよ」
そんな岸田のイメージを一変したのが、8/26の「二階俊博幹事長への宣戦布告」だ。和を重んじ、争いを好まない印象だった岸田が、第2次安倍政権以降幹事長として絶大な力を奮ってきた二階さんに、正面から牙を剥いたのだ。
公認権やカネの差配という幹事長だけに与えられた権力を、極めて恣意的に運用して二階派拡大に邁進してきたやり方で、清和会や宏池会経世会といった伝統ある派閥から、二階は強い反発を受けていた。
岸田はそこを突いて二階派以外の全ての派閥を味方に付けるという荒技に出て、これが結果的に総裁選勝利の決定打となった。
この宣戦布告は、派閥力学的な意味も大きかったが、一番大きかったのは岸田が自身の優柔不断なイメージを払拭できた事だ。
「あの二階に全面戦争を仕掛けた。岸田は本気だ」「もう優柔不断な岸田は過去のものだ」。
もしかしたら93年の初当選以来28年に及ぶ岸田の代議士人生の中で、「優柔不断でない」という印象が永田町に拡散されたのは、今回が初めてだったかもしれない。
岸田文雄に接触した全ての人が感じる彼独特の優しさは、永田町という特殊な街では、アドバンテージというより、どちらかと言えば欠点として捉えられる事が多かった。
「岸田さんは育ちが良すぎてね」
「いざという時に決断力がない」
「役人にいいように使われちゃうよ」
そんな岸田のイメージを一変したのが、8/26の「二階俊博幹事長への宣戦布告」だ。和を重んじ、争いを好まない印象だった岸田が、第2次安倍政権以降幹事長として絶大な力を奮ってきた二階さんに、正面から牙を剥いたのだ。
公認権やカネの差配という幹事長だけに与えられた権力を、極めて恣意的に運用して二階派拡大に邁進してきたやり方で、清和会や宏池会経世会といった伝統ある派閥から、二階は強い反発を受けていた。
岸田はそこを突いて二階派以外の全ての派閥を味方に付けるという荒技に出て、これが結果的に総裁選勝利の決定打となった。
この宣戦布告は、派閥力学的な意味も大きかったが、一番大きかったのは岸田が自身の優柔不断なイメージを払拭できた事だ。
「あの二階に全面戦争を仕掛けた。岸田は本気だ」「もう優柔不断な岸田は過去のものだ」。
もしかしたら93年の初当選以来28年に及ぶ岸田の代議士人生の中で、「優柔不断でない」という印象が永田町に拡散されたのは、今回が初めてだったかもしれない。
総裁選報道で消えた自民党内外の「選挙不安」
今、NHKを初めとするテレビ各社は、総裁選の報道の直後に、立憲民主党など野党のニュースが必ず入る。
新聞やテレビが自民党総裁選報道にジャックされ埋没を危惧した野党側の抗議を受け、総裁選の報道の後必ず野党の瑣末な発信を「ニュース」として扱っているのだ。
立憲民主党と共産党の選挙協力や、国民民主党との政策協議など、支持率3%の政党とそれ以下の政党の戯言を毎回見せられる視聴者はたまったものではない。
これは、立憲民主党の枝野代表が、「総選挙の前に自民党のニュースばかりを報道するのは不公平」と駄々をコネた事に対して、大手メディアが屈したからだ。
野党側の危惧を生み出しているのは、自民党の支持率の急激な回復だ。
日経新聞は9/28、総裁選前後の支持率の変化を捉えた記事を出した。総裁選を通じて自民党内外の「風向き」がどう変わったか、その経過を時系列で辿っているので、少し長いがそのまま引用する。
****************************************
首相が自民党総裁選に出馬しないと表明したのは9月3日だ。報道各社はその直後から相次いで世論調査を実施した。主要各社の結果を見ると、いずれも自民党の政党支持率が8月の前回調査より上がった。
日経新聞は9月上旬と下旬の2回、調査した。自民党の政党支持率は9~11日の緊急調査で48%、23~25日の定例調査で47%になった。8月は39%だった。
新型コロナウイルス禍で自民党支持率は4月以降、下落傾向にあった。9月の2回の調査結果は菅政権発足前の2020年8月の47%とほぼ同じまで戻った。
各社が9月上旬に実施した調査の自民党支持率も同じ傾向だ。朝日新聞が前月比5ポイント増の37%、読売新聞は4ポイント上がり36%、NHKは4.2ポイント高い37.6%になった。
日経新聞と朝日新聞は7月、読売新聞とNHKは8月に政権発足来の最低水準を記録していた。
9月になると日経新聞と朝日新聞は21年で最高の支持率になった。
「一時期は自民党が衆院選で70議席、下手したら100議席くらい減らすのではないかと言われていた」。麻生太郎副総理・財務相は9月上旬、麻生派の会合で前月まで党内に広がっていた懸念に言及した。
「いまはまるで状況が変わった。自民党が負けるような雰囲気ではなくなった」。麻生氏は8月下旬に党が独自に実施した衆院全選挙区の情勢調査に触れ、こう指摘した。「手元に持っているものは破り捨ててもらって結構だ」とも話した。
総裁選の論戦も自民党には追い風になったと見られている。
17日の告示前から出馬表明や政策の発表が続き、最終的に河野太郎、岸田文雄、高市早苗、野田聖子の4氏が立候補した。4人がそろう討論会やテレビへの出演が増え、自民党への認知度が高まった。
野田氏の陣営が9月下旬に開いた会合では政党支持率が話題になった。
「一時は離れていた緩やかな支持層が戻った」「4人が立候補して党内論議の幅広さを示せている。無党派層や野党支持層の関心を集めた」と分析する声があがった。
自民党の政党支持率と対照的なのがいわゆる無党派層の動向だ。支持政党や好意を持っている政党に関して「なし」と答える無党派層は日経新聞の調査では7月に35%だった。9月の定例調査は30%に下がった。
衆院選で各党が議席を伸ばすには無党派層の取り込みが重要になる。現時点で野党はその受け皿になっていない。野党第1党の立憲民主党の政党支持率は日経新聞の8月の調査で11%になったが、9月の定例調査は8%にとどまった。
立民は菅内閣発足とほぼ同時期に旧国民民主党の大半と合流した。それでもこの1年の政党支持率は日経新聞の調査で6~11%の範囲内が続く。
8月までは野党内に「現首相の下で衆院選になれば野党に政権批判票が集まる」との期待があった。首相が退陣表明をした後の9月は他社の調査でも立民の政党支持率は低調だ。朝日新聞が5%、読売新聞が7%、NHKが5.5%だった。
立民の平野博文選挙対策委員長は衆院選に関し「(首相の退陣で)状況が変わった。大変厳しい選挙になる」と説く。
*************************************
こうして、総裁選を通じて自民党支持率が急激に回復する中で、党内の総選挙に対する危機感も急速に薄まった。
新聞やテレビが自民党総裁選報道にジャックされ埋没を危惧した野党側の抗議を受け、総裁選の報道の後必ず野党の瑣末な発信を「ニュース」として扱っているのだ。
立憲民主党と共産党の選挙協力や、国民民主党との政策協議など、支持率3%の政党とそれ以下の政党の戯言を毎回見せられる視聴者はたまったものではない。
これは、立憲民主党の枝野代表が、「総選挙の前に自民党のニュースばかりを報道するのは不公平」と駄々をコネた事に対して、大手メディアが屈したからだ。
野党側の危惧を生み出しているのは、自民党の支持率の急激な回復だ。
日経新聞は9/28、総裁選前後の支持率の変化を捉えた記事を出した。総裁選を通じて自民党内外の「風向き」がどう変わったか、その経過を時系列で辿っているので、少し長いがそのまま引用する。
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首相が自民党総裁選に出馬しないと表明したのは9月3日だ。報道各社はその直後から相次いで世論調査を実施した。主要各社の結果を見ると、いずれも自民党の政党支持率が8月の前回調査より上がった。
日経新聞は9月上旬と下旬の2回、調査した。自民党の政党支持率は9~11日の緊急調査で48%、23~25日の定例調査で47%になった。8月は39%だった。
新型コロナウイルス禍で自民党支持率は4月以降、下落傾向にあった。9月の2回の調査結果は菅政権発足前の2020年8月の47%とほぼ同じまで戻った。
各社が9月上旬に実施した調査の自民党支持率も同じ傾向だ。朝日新聞が前月比5ポイント増の37%、読売新聞は4ポイント上がり36%、NHKは4.2ポイント高い37.6%になった。
日経新聞と朝日新聞は7月、読売新聞とNHKは8月に政権発足来の最低水準を記録していた。
9月になると日経新聞と朝日新聞は21年で最高の支持率になった。
「一時期は自民党が衆院選で70議席、下手したら100議席くらい減らすのではないかと言われていた」。麻生太郎副総理・財務相は9月上旬、麻生派の会合で前月まで党内に広がっていた懸念に言及した。
「いまはまるで状況が変わった。自民党が負けるような雰囲気ではなくなった」。麻生氏は8月下旬に党が独自に実施した衆院全選挙区の情勢調査に触れ、こう指摘した。「手元に持っているものは破り捨ててもらって結構だ」とも話した。
総裁選の論戦も自民党には追い風になったと見られている。
17日の告示前から出馬表明や政策の発表が続き、最終的に河野太郎、岸田文雄、高市早苗、野田聖子の4氏が立候補した。4人がそろう討論会やテレビへの出演が増え、自民党への認知度が高まった。
野田氏の陣営が9月下旬に開いた会合では政党支持率が話題になった。
「一時は離れていた緩やかな支持層が戻った」「4人が立候補して党内論議の幅広さを示せている。無党派層や野党支持層の関心を集めた」と分析する声があがった。
自民党の政党支持率と対照的なのがいわゆる無党派層の動向だ。支持政党や好意を持っている政党に関して「なし」と答える無党派層は日経新聞の調査では7月に35%だった。9月の定例調査は30%に下がった。
衆院選で各党が議席を伸ばすには無党派層の取り込みが重要になる。現時点で野党はその受け皿になっていない。野党第1党の立憲民主党の政党支持率は日経新聞の8月の調査で11%になったが、9月の定例調査は8%にとどまった。
立民は菅内閣発足とほぼ同時期に旧国民民主党の大半と合流した。それでもこの1年の政党支持率は日経新聞の調査で6~11%の範囲内が続く。
8月までは野党内に「現首相の下で衆院選になれば野党に政権批判票が集まる」との期待があった。首相が退陣表明をした後の9月は他社の調査でも立民の政党支持率は低調だ。朝日新聞が5%、読売新聞が7%、NHKが5.5%だった。
立民の平野博文選挙対策委員長は衆院選に関し「(首相の退陣で)状況が変わった。大変厳しい選挙になる」と説く。
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こうして、総裁選を通じて自民党支持率が急激に回復する中で、党内の総選挙に対する危機感も急速に薄まった。
「地味すぎる」二枚看板
岸田の総裁としての初仕事が、総裁選翌日の党人事だった。
「松野博一官房長官、甘利明幹事長」
9/30午後、岸田新体制の二枚看板が発表された。
直後、私のところに多くの知人から「松野博一って誰?」という問い合わせが来た。
当選7回、第二次安倍政権下の2016年に文部科学大臣に抜擢された事もある千葉3区選出の衆議院議員だが、一般国民からすれば、余程の政局通でなければ、顔と名前は一致しないだろう。
一方の甘利氏は安倍・麻生の盟友で、3人の頭文字を取って「3A」と呼ばれる事もある重鎮だが、2016年に都市再生機構を巡る文春砲のターゲットとなり、安倍内閣の重要政策であるTPPなどを担ってきた経済財政担当大臣の辞職を余儀なくされた。
ただでさえ地味な岸田総裁が、「松野ー甘利」という、総裁に輪をかけて地味な2人によって総選挙に臨む事など、1ヶ月前であれば絶対にあり得なかった。
党内からは、今回の総裁選で躍進した高市を官房長官や幹事長に登用して、岸田本人のリベラル色を打ち消し、総選挙の看板に使うべきだという声は、高市陣営以外からも出ていた。
確かに「高市官房長官」にすれば、毎日の記者会見で高市が登場し、総裁選の討論で折り紙付の弁舌が、連日大手メディアを飾る事になる。
挙党一致をアピールする意味でも、岸田本人のリベラル色を打ち消す意味でも、「高市官房長官」は、岸田新政権のキックオフにはいい事づくめの妙手だった。
しかし、唯一にして最大のネックは、高市の「靖国参拝宣言」だった。
5年の長きに渡って外務大臣を務めた岸田にとっては、総理大臣はもちろん、「官房長官・外務大臣・防衛大臣」という安全保障担当の3閣僚が靖国参拝した時の中韓の反発は、想像に難くない。
しかし、逆に言えば敢えて高市を官房長官にする事で、逃げかけた保守層をガッチリ掴むチャンスでもあった。
官房長官が松野博一になるという報道が出た後、自民党のある閣僚経験者はこう嘆息した。
「来年の参院選後、高市官房長官が終戦記念日の8/15に靖国参拝する前に、内閣を改造すればよかったんだ」
「結局、高市を選挙の顔として使う決断が出来なかったのは、岸田さんの『優柔不断』という地金が出てしまったからなんだよ」
「松野博一官房長官、甘利明幹事長」
9/30午後、岸田新体制の二枚看板が発表された。
直後、私のところに多くの知人から「松野博一って誰?」という問い合わせが来た。
当選7回、第二次安倍政権下の2016年に文部科学大臣に抜擢された事もある千葉3区選出の衆議院議員だが、一般国民からすれば、余程の政局通でなければ、顔と名前は一致しないだろう。
一方の甘利氏は安倍・麻生の盟友で、3人の頭文字を取って「3A」と呼ばれる事もある重鎮だが、2016年に都市再生機構を巡る文春砲のターゲットとなり、安倍内閣の重要政策であるTPPなどを担ってきた経済財政担当大臣の辞職を余儀なくされた。
ただでさえ地味な岸田総裁が、「松野ー甘利」という、総裁に輪をかけて地味な2人によって総選挙に臨む事など、1ヶ月前であれば絶対にあり得なかった。
党内からは、今回の総裁選で躍進した高市を官房長官や幹事長に登用して、岸田本人のリベラル色を打ち消し、総選挙の看板に使うべきだという声は、高市陣営以外からも出ていた。
確かに「高市官房長官」にすれば、毎日の記者会見で高市が登場し、総裁選の討論で折り紙付の弁舌が、連日大手メディアを飾る事になる。
挙党一致をアピールする意味でも、岸田本人のリベラル色を打ち消す意味でも、「高市官房長官」は、岸田新政権のキックオフにはいい事づくめの妙手だった。
しかし、唯一にして最大のネックは、高市の「靖国参拝宣言」だった。
5年の長きに渡って外務大臣を務めた岸田にとっては、総理大臣はもちろん、「官房長官・外務大臣・防衛大臣」という安全保障担当の3閣僚が靖国参拝した時の中韓の反発は、想像に難くない。
しかし、逆に言えば敢えて高市を官房長官にする事で、逃げかけた保守層をガッチリ掴むチャンスでもあった。
官房長官が松野博一になるという報道が出た後、自民党のある閣僚経験者はこう嘆息した。
「来年の参院選後、高市官房長官が終戦記念日の8/15に靖国参拝する前に、内閣を改造すればよかったんだ」
「結局、高市を選挙の顔として使う決断が出来なかったのは、岸田さんの『優柔不断』という地金が出てしまったからなんだよ」
「増税」「日本端子問題」河野太郎に染み付いた悪印象
そして、一時は議員票でも党員党友票でもトップランナーと目されていた河野太郎を、広報本部長で登用するという報道にも、自民党内からは「センスがない」という声が一斉に漏れた。
河野太郎は外務大臣や防衛大臣、さらにはワクチン担当大臣と、安倍・菅政権ではずっと陽の当たる場所を歩んできた。だから、広報本部長は外形上は降格だ。
しかし、河野が総裁選終盤で失速した理由を考えれば、今回は無役にして冷や飯を食わせるのが、河野にとっても正しい措置だった。
というのは、今回の失速は、河野太郎という政治家の本質に関わる、幾つもの深刻な疑義に起因していたからだ。
議員票離反を招いた直接的な理由は、河野が総裁選前半で持ち出した「基礎年金の消費税化」という主張だ。
かの民主党政権すらも、計算によっては消費税率20%以上が必要になる事が判明して断念した政策を、総裁選で唐突に持ち出した事で、多くの議員が「河野の異常性」を痛感した。
「消費増税の河野総理」の下では自分の選挙が危ういと感じた多くの議員が、河野丸という泥舟から退去して逃げ出したのは、ある意味当然だ。
長年の持論だからといって、総選挙間近の総裁選で大幅増税に帰結する政策を口にした瞬間、河野の目は完全に消えたのだ。
河野太郎は外務大臣や防衛大臣、さらにはワクチン担当大臣と、安倍・菅政権ではずっと陽の当たる場所を歩んできた。だから、広報本部長は外形上は降格だ。
しかし、河野が総裁選終盤で失速した理由を考えれば、今回は無役にして冷や飯を食わせるのが、河野にとっても正しい措置だった。
というのは、今回の失速は、河野太郎という政治家の本質に関わる、幾つもの深刻な疑義に起因していたからだ。
議員票離反を招いた直接的な理由は、河野が総裁選前半で持ち出した「基礎年金の消費税化」という主張だ。
かの民主党政権すらも、計算によっては消費税率20%以上が必要になる事が判明して断念した政策を、総裁選で唐突に持ち出した事で、多くの議員が「河野の異常性」を痛感した。
「消費増税の河野総理」の下では自分の選挙が危ういと感じた多くの議員が、河野丸という泥舟から退去して逃げ出したのは、ある意味当然だ。
長年の持論だからといって、総選挙間近の総裁選で大幅増税に帰結する政策を口にした瞬間、河野の目は完全に消えたのだ。
中国関連のビジネス事情について鋭い現場レポートを発信し続けている、「沢野勝治の『非日常的日常記録』」というブログがある。
マカオでモータースポーツ関連など様々な事業を展開する沢野氏は、日本端子問題について、合弁会社中国の会社情報から本質に迫るという、ジャーナリスティックなアプローチを行なっている。
沢野氏は総裁選期間中2回にわたって、日本端子問題を合弁会社の登記簿謄本などから徹底分析した。
▶︎ 河野家の中国の会社について調べてみた
▶︎続・河野家の中国の会社について調べてみた
マカオでモータースポーツ関連など様々な事業を展開する沢野氏は、日本端子問題について、合弁会社中国の会社情報から本質に迫るという、ジャーナリスティックなアプローチを行なっている。
沢野氏は総裁選期間中2回にわたって、日本端子問題を合弁会社の登記簿謄本などから徹底分析した。
▶︎ 河野家の中国の会社について調べてみた
▶︎続・河野家の中国の会社について調べてみた
総裁選後のブログのタイトルは「総裁選は終わり、これからが本番ですね」。
その中で沢野氏はこう書いた。
_________________________________
ともあれ今回の事で河野家はトンデモナイ状態にある事がわかりました。これは合弁なんかではなく、完全に中共乃至北京政府経済局の一部となっており、こんな状態では安全保障上の問題も懸念されます。
昨日に至っては日本端子株式会社がHPで『太陽光には関わっていません』とHP上で声明を出しましたが、会社のパンフレットや今月23日の求人では『最近は太陽光パネル頑張ってます』等と〝ウソ〟の情報を発信しました。これは良く無い。
________________________________
沢野氏のブログは舌鋒鋭く毒舌とも言える筆致だが、中国という共産党独裁国家の会社登記情報の裏の裏まで知り尽くした上で、根拠となるデータを余さず提示しているだけに、その主張は説得力がある。
沢野氏が看破した通り、河野太郎の日本端子疑惑は、これからが本番なのだ。
その中で沢野氏はこう書いた。
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ともあれ今回の事で河野家はトンデモナイ状態にある事がわかりました。これは合弁なんかではなく、完全に中共乃至北京政府経済局の一部となっており、こんな状態では安全保障上の問題も懸念されます。
昨日に至っては日本端子株式会社がHPで『太陽光には関わっていません』とHP上で声明を出しましたが、会社のパンフレットや今月23日の求人では『最近は太陽光パネル頑張ってます』等と〝ウソ〟の情報を発信しました。これは良く無い。
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沢野氏のブログは舌鋒鋭く毒舌とも言える筆致だが、中国という共産党独裁国家の会社登記情報の裏の裏まで知り尽くした上で、根拠となるデータを余さず提示しているだけに、その主張は説得力がある。
沢野氏が看破した通り、河野太郎の日本端子疑惑は、これからが本番なのだ。
"ヌルい"岸田人事のリスクとは
「官房長官と幹事長」という総選挙の二枚看板を、「超地味」な布陣にしたのは、岸田が自民党支持率の一時的な上昇にアグラをかいている証拠である。
そして、重大疑惑の禊が終わっていない河野太郎を登用した事で、外務大臣も経験した岸田が、河野太郎の重大売国疑惑を不問に付したと受け取られてもやむを得まい。
「ヌルくて」「ユルい」人事が改めて浮き彫りにしたのは、岸田の優柔不断な本性である。
人事の概要を聞き知った党内からは、
「岸田さんは総選挙をナメてるんじゃないか」
「たとえ総選挙は何とかこなしても、こんなユルい現状認識と人事では、参院選で惨敗するんじゃないか」
今回の総裁選は「菅首相の元では総選挙は戦えない」という声から始まり、「河野太郎の下では戦えない」という声が岸田勝利を演出した。
そして今は、「岸田総理の下で総選挙は大丈夫か?」という不安が、ジワジワと党内に広がっている。
そして、重大疑惑の禊が終わっていない河野太郎を登用した事で、外務大臣も経験した岸田が、河野太郎の重大売国疑惑を不問に付したと受け取られてもやむを得まい。
「ヌルくて」「ユルい」人事が改めて浮き彫りにしたのは、岸田の優柔不断な本性である。
人事の概要を聞き知った党内からは、
「岸田さんは総選挙をナメてるんじゃないか」
「たとえ総選挙は何とかこなしても、こんなユルい現状認識と人事では、参院選で惨敗するんじゃないか」
今回の総裁選は「菅首相の元では総選挙は戦えない」という声から始まり、「河野太郎の下では戦えない」という声が岸田勝利を演出した。
そして今は、「岸田総理の下で総選挙は大丈夫か?」という不安が、ジワジワと党内に広がっている。
山口 敬之(やまぐち のりゆき)
1966年、東京都生まれ。フリージャーナリスト。
1990年、慶應義塾大学経済学部卒後、TBS入社。以来25年間報道局に所属する。報道カメラマン、臨時プノンペン支局、ロンドン支局、社会部を経て2000年から政治部所属。2013年からワシントン支局長を務める。2016年5月、TBSを退職。
著書に『総理』『暗闘』(ともに幻冬舎)、新著に『中国に侵略されたアメリカ』(ワック)。
1966年、東京都生まれ。フリージャーナリスト。
1990年、慶應義塾大学経済学部卒後、TBS入社。以来25年間報道局に所属する。報道カメラマン、臨時プノンペン支局、ロンドン支局、社会部を経て2000年から政治部所属。2013年からワシントン支局長を務める。2016年5月、TBSを退職。
著書に『総理』『暗闘』(ともに幻冬舎)、新著に『中国に侵略されたアメリカ』(ワック)。