橋本琴絵:高市早苗氏だけが有する 確かな"皇位継承観"

橋本琴絵:高市早苗氏だけが有する 確かな"皇位継承観"

日本に無理解なだけの"女系論"

 平成28年3月、国連女子差別撤廃委員会は日本国の皇位継承権を定めた皇室典範について、「母方の系統に天皇を持つ女系の女子にも皇位継承が可能となるよう皇室典範を改正すべきだ」との文言を盛り込んだ勧告を計画していたことが明らかになった。これに対して外務省が国連ジュネーブ代表部を通じて抗議したところ、この文言は勧告から削除されたが、国連が日本の歴史および宗教的価値観に対する無理解から、私たち日本人の信仰を否定する「人種差別」を行おうとしていた事実は記憶に新しい。
 「男系以外にも皇位継承権を認めるべきだ」とする思想からは、我が国の皇室が祭祀を担う存在であることを理解していない状態が伺える。というのも、西欧の王室は「世俗」に属し、聖俗はローマ・カトリック教会の教皇が担当していた。このような西欧史におけるおおまかな価値観を用いて日本の皇室を見た場合、天皇が我が国の祭祀を執り行う宗教的権威の長であるとの理解を欠く。そのため宗教的教義という変更不可能な領域についても、「男女平等」という昨今の政治的価値観を皇室に適用できると国連は勘違いをして、「女系にも皇位継承権を認めないのは性差別だ」という考えになったものと思われる。

 しかし、外務省の抗議によって国連は一応の理解を示し、ローマ・カトリック教会の教皇が男性でなければならない宗教的理由と同質の概念として、天皇の皇位継承権は男系に限定しなければならないことは女子差別撤廃の範囲に含まれないという最終判断を下し、勧告から皇室典範改正の文言を削除した。
 我が国も締結した「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」(平成7年条約第26号)の前文には、「人種、性、言語又は宗教による差別のないすべての者のための人権及び基本的自由の普遍的な尊重及び遵守を助長し及び奨励する」と記載されている。この意味で、宗教的祭祀を担う天皇の皇位継承条件の変更は「宗教的教義の変更」にあたり、これの変更を勧告することは「人種差別」に該当することが明らかである。

 つまり、天皇の男系に限定した皇位継承権の変更を主張することは(日本に対する)「人種差別思想」である(余談であるが、靖国神社への信仰を否定する中韓の要求も、当然人種差別思想に基づくものであると客観的に言える)。

自民党総裁選候補の"皇室観"

 さて、そこで問題になるのが今月執り行われる自由民主党総裁選挙候補者の持つ「皇室への思想」である。日本のことを何も知らない国連の外国人でさえ、外務省の説明をうけたことで納得して「女系継承」の勧告を取り下げたのに対して、我が国で生まれて育ったはずの総裁選候補者が、いまだ「女系皇位継承」を主張ないし容認しているという奇妙な構図がある。国連は我が国への憎悪は無く単に知識が無かっただけであるのに対して、この構図はむしろ日本人への憎悪を内在させているがゆえに「説明を受けても理解しない」という姿勢を保っているのではないかという疑いすら抱いてしまう。
 それでは、各候補(9/9日現在で、正式な出馬宣言をしていない方も含む)はこの点に関してどのように考えているのだろうか。

 河野太郎候補は、ニコニコ動画で配信されるインターネット番組『河野太郎と語ろう』の番組内で、皇位継承権について「女系天皇も含めて検討する必要がある」との認識を示している。また、2016年10月のブログでも「男系、女系に関わらず皇室の維持を図るべき」との見解を著し、天皇の子なら男女を区別しない「長子(第1子)優先の皇位継承権」に改めるべきであるとして、女系天皇の即位を可能にする皇室典範改正を提言した。(令和2年8月24日朝日新聞)
橋本琴絵:高市早苗候補だけが有する 確かな"皇位継承観"

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河野太郎氏は「政府の有識者会議の結果を尊重する」とは述べているが…
 石破茂氏は、女系継承権について「選択肢は排除されるべきではない」との考えであることを示している(令和2年9月14日時事通信社)。また、野田聖子氏は平成29年8月30日のBS朝日の番組収録で、天皇の皇位継承権について「そもそも女性がだめな理由は何なのか」との持論を述べている(平成29年8月30産経新聞)。

 岸田文雄候補は「女系天皇は慎重に検討すべきだ」(令和元年11月25日NHK報道)との見解を述べ、積極的に変更を加える意図は無いものと伺えるものの、宗教的教義を変更する人種差別思想について特段の反対意志を表明していない。
 最後に、高市早苗候補については、上記候補者(予定者)の人種差別首肯ないし容認の思想とは一線を画し、天皇の男系男子による皇位継承権の変更は絶対的に認められず、旧宮家の皇籍復帰と皇族との養子縁組を含む安定した神武天皇男系男子による皇位継承権者の確保を表明している。
 数多くの政策を取り組まなければならない自民党総裁選にとって、皇位継承権の在り方はひとつの政策に過ぎないと感じる方もいるかもしれない。しかし、当の日本人の利益を追求する行為が政治である。その政治において、国連が日本国に対して持つ理解ほどもなく、宗教差別は人種差別であると定める条約(※条約は、法律の上位であり憲法の下位に位置する)に違反する考えの持ち主が、果たして良い政治をできるのかという疑問を覚えざるを得ない。

 そこには、「日本人かつ日本国の政治を志すものでありながら日本国の祭祀についての理解がない」という国家の歴史に対する知識の欠如、または「理解しつつ、その上で攻撃を加えようとしている悪意」のいずれかが垣間見えるからだ。

 まず行われる一般党員投票を迎えるにあたり、「日本への思い」をはかる基準として、皇室に対するそれぞれの思想をみること決して間違いではないだろう。

多く存在している"男系男子"

 そうはいっても、実際問題として皇位継承権者が不在ならばどうするのかといった疑問も当然あるだろう。しかし、それは誤解である。ここで、皇室と皇位継承権に対する基本的な知識として、我が国の皇位継承権の在り方について述べたく思う。

 天皇の男系男子は、崇光天皇(北朝)の子孫である旧宮家の方々をはじめ、今上天皇の近親者にあたる東山天皇と後陽成天皇の男系男子とあわせて、計百名以上が存命である。これらの人々は、寺社を経営していたり、テレビ局のプロデューサーや弁護士をしていたりと、現在様々な職業に就かれたまま民間人として生活をされている。
 実はイギリスも、国王たる君主の近親者にあたる王位継承権者のうち、下位の方々は日本と同様に一般社会で生活をしている。国王・女王の最近親者は王族として宮殿に居住し、または公爵の称号を授与されているが、五十位近くも王位継承権順位が下がると、市中で普通のイギリス人として生活している。数百位も順位が下がると、コモンウェルス(豪州など)などイギリス国外に居住している例も珍しくない。

 それだけ数多くの「王位継承権者」がいるということは、言い換えれば何があってもイギリス王室は安泰であり、絶対的に滅亡することはないという国民の安心感を形成する根拠となっている。極端な話、仮にロンドンが核攻撃されてバッキンガム宮殿ごと消滅したとしても、イギリス王室は安泰なのである。この点、日本の皇室も実際に天皇の近親者である男系男子が百名上いるのであるから、この事実を広く国民に知らしめ、皇室の絶対的安定が既に確保されていることを以て国民を安心させたい。
橋本琴絵:高市早苗候補だけが有する 確かな"皇位継承観"

橋本琴絵:高市早苗候補だけが有する 確かな"皇位継承観"

英国王室は王位継承順位を細かく定め、国民に安心感を与えている
 「天皇の近親」という概念は、女系で数えたならば昭和天皇の子女と結婚された旧宮家の方々が最近親となるが、前述の通り我が国の皇位継承順位は女系で数えるのではなく、男系(父系)から数える。すると、現在の男性皇族の次に天皇の近親となるのは「華園家」の男子である。これは、東山天皇の男系男子である。しかし、この華園家の当主は高齢であり、娘しかいないので事実上男系断絶しているため、次に近親となるのは長野神社宮司を務められている梶野家(同じく東山天皇男系男子)である。このように東山天皇の男系男子の数家あり、これに続いて後陽成天皇の男系男子が当主を務める家が在る。平成16年から靖国神社第9代宮司を務められた南部利昭氏も、後陽成天皇の男系男子にあたる。
 したがって、現在の皇室典範第2条第2項が「天皇に最近親の皇族に皇位を伝える」と定めている部分を「天皇に最近親のに皇位を伝える」という日本の伝統本来の形に戻せば皇位継承権者確保の問題は容易に解決する。

 このような皇族復帰に関しては「国民感情が納得しない」というような漠然とした批判がよくなされるが、一度、天皇の男系男子が臣籍に降下したのち再度皇族になることは、伝統に特段反するものではない。例えば、旧皇族全員の共通祖先にあたる伏見宮貞致親王は母親の身分が低いため民間で鍛冶屋をしていたところ、異母兄弟の病死によって伏見宮家の継承権者が不在となったため、江戸幕府によって皇族認定されて皇族に復帰した前例がある。もちろん、伏見宮は天皇の「猶子」となっているが、猶子とは相続権(家督継承や皇位継承)を持たない子のことであり、あらゆる相続権を持つ養子とは異なる。

 以上のような歴史および「実は多くの男系男子が存在している」現状からしても、日本の伝統に反する「天皇・皇族の養子縁組」をするため、養子禁止を定めた皇室典範第9条を改正するよりも、「男系の最近親者に皇位が継承されていく」という我が国の国体の在り方を取り戻すべきであると私は考える。また、現在の皇室典範は「非嫡出子」の皇位継承権を否定する規定を残しているため、天皇の男系男子であっても婚姻していない母親から生まれた場合(すなわち交際相手)、皇族になることができない。これは、明治天皇や大正天皇が非嫡出子として生まれて天皇に即位した日本の伝統に反しているため、この点も皇室典範を改めるべきであると考える。
橋本琴絵:高市早苗候補だけが有する 確かな"皇位継承観"

橋本琴絵:高市早苗候補だけが有する 確かな"皇位継承観"

さかのぼれば、後陽成天皇の男系男子も存在しているのだ
via wikipedia

高市早苗氏のみが伝統を理解している

 つまり、現在の皇室典範には「我が国の伝統に即した部分」と「我が国の伝統を否定した部分」が混在しており、前者は養子禁止や男系継承の点、後者は男系最近親による皇位継承権と非嫡出子の皇位継承権である。この点をしっかりと整理した上で、この問題に取り組みたい。

 以上まで歴史的背景を踏まえた上でも、この秋の総裁選で「日本の伝統」に即した政策を提唱している者は高市早苗候補ただ1人であるという事実に改めて注目したい。

 高市早苗著「美しく、強く、成長する国へ」(ワック社)には、次のような一文がある。

 「一人の日本人として、美しい祖国への自信と誇り、先人への感謝の気持ちを忘れずに、国家の繁栄と国民の皆様の幸せに貢献できるよう、全てを捧げることを誓う」

 他の候補者に、このような毅然とした覚悟があるだろうか。少なくとも、私はそう見えない。高市早苗候補とは異なり、日本の伝統と宗教観さえ否定するものが、一体どのようにして日本の国益を守るというのだろうか。日本の伝統ひとつ守る意志の無い者が、どのようにして日本の経済と国土を守るというのだろうか。今後も、筆者は強く高市早苗候補を応援していくものである。それが、日本を守ると固く信じるからである。
橋本 琴絵(はしもと ことえ)
昭和63年(1988)、広島県尾道市生まれ。平成23年(2011)、九州大学卒業。英バッキンガムシャー・ニュー大学修了。広島県呉市竹原市豊田郡(江田島市東広島市三原市尾道市の一部)衆議院議員選出第五区より立候補。日本会議会員。
2021年8月にワックより初めての著書、『暴走するジェンダーフリー』を出版。

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