明治初期には男性皇族が多く、その経費の問題から皇族身分の増加を抑制する政策が採られた。実際に華頂宮の臣籍降下が為された一方、現代では秋篠宮悠仁親王殿下のみが未成年者の男性皇族となった。巷ではこの現状を打開すべく崇光天皇(北朝第三代)を祖とする伏見宮の直系子孫である旧皇族の皇籍復帰が議論されている。
本論は旧皇族の皇籍復帰に反対するものでは決してないが、その前に優先すべきこととして、婚外子の皇位継承権を否定する現行の皇室典範の改正が必要であると提唱する。その理由は、在留外国人や一般国民に認められている権利が、皇族に対してのみ認められていない「差別主義」を皇室典範が採用しているからである。
本論は旧皇族の皇籍復帰に反対するものでは決してないが、その前に優先すべきこととして、婚外子の皇位継承権を否定する現行の皇室典範の改正が必要であると提唱する。その理由は、在留外国人や一般国民に認められている権利が、皇族に対してのみ認められていない「差別主義」を皇室典範が採用しているからである。
わが国の皇位継承権制度~海外に倣う必要なし~
本邦の皇位継承権の在り方を論じる前に、参考として王室をいただく諸外国の王位継承法を紹介したく思う。なぜならば、第二次世界大戦後の主権喪失下に制定された現行の皇室典範とは、わが国本来の皇位継承法を否定し、諸外国の王室で採用されている王位継承法をそのまま輸入し、わが国の皇室に適用している「外国かぶれ」の愚を犯していると思料されるからである。
たとえば、ベルギー国王は、ヴェッテイン伯ディートリッヒ1世(?- 982)の男系男子でなければならず(ただし男系限定の規定は1991年まで)、スペイン国王はエスベイ伯ロバート2世(?-807)の男系男子でなければならない。また、明確な男系男子の継承法はないが、イギリス次期国王のチャールズ皇太子、ノルウェー国王、デンマーク国王(※現マグレーテ2世女王陛下は男系女子にあたる)は共通して、オルデンブルク伯エリマール1世(1040-1112)の男系男子または男系女子である。ここまでは日本と似ているが、英蘭を除く王位は「サリカ法」といって、「王位継承者は嫡出の男系男子に限る」といった制約がある。
サリカ法は王位継承に実子であるという生物学的要件と法律に定められた婚姻によって出生しているという政治学的要件を要求している。これは、現行の皇室典範第6条が法律婚の後に出生した者でなければ皇族の地位を与えないと、非嫡出子の差別規定を残していることと同じである。
王位継承権に生物学的条件と政治学的条件の2つを要求している王室は多い。たとえば、イギリス王国は、ハノーヴァー選帝侯妃ソフィアの子孫であることと(男系女系といった概念は無い)、カトリック教徒ではないことが(2013年まで)要求され、オランダ王国は初代国王のウィレム1世とその配偶者の子孫であること並びにオランダ議会が承認した結婚から生まれた者であることを王位継承権者に要求している。しかし、わが国本来の継承権は生物学的条件のみが要求され、「母親の身分は何か」といった政治学上の要求は存在しなかった。
わが国の皇位継承権制度の変遷をたどると、以下のようになる。
第一に、神武天皇の男系子孫のみであり、
第二に継体天皇の御代から天皇5世以内男孫まで皇位継承範囲が拡大され、
第三に推古天皇の御代から男系男子に即位できない事情があるときは天皇5世孫以内の男系女子に皇位継承権が認められ、
第四に明治になって天皇五世孫であっても男系女子の皇位継承権が欠格し、
第五に大東亜戦争後、天皇5世以内かつ法律婚から出生した嫡出子に限定され、天皇の皇子であっても婚外子の皇位継承権が欠格した。
これが問題なのである。わが国の史上初めて異民族の統治を受けたことにより、サリカ法が皇室典範に取り入れられ、そして今、第六の変更を加えようと、「女系天皇」が議論されている始末である。
はたして、日本に他国のルールをそのまま適用することが、わが国の繁栄に資するのだろうか。
たとえば、ベルギー国王は、ヴェッテイン伯ディートリッヒ1世(?- 982)の男系男子でなければならず(ただし男系限定の規定は1991年まで)、スペイン国王はエスベイ伯ロバート2世(?-807)の男系男子でなければならない。また、明確な男系男子の継承法はないが、イギリス次期国王のチャールズ皇太子、ノルウェー国王、デンマーク国王(※現マグレーテ2世女王陛下は男系女子にあたる)は共通して、オルデンブルク伯エリマール1世(1040-1112)の男系男子または男系女子である。ここまでは日本と似ているが、英蘭を除く王位は「サリカ法」といって、「王位継承者は嫡出の男系男子に限る」といった制約がある。
サリカ法は王位継承に実子であるという生物学的要件と法律に定められた婚姻によって出生しているという政治学的要件を要求している。これは、現行の皇室典範第6条が法律婚の後に出生した者でなければ皇族の地位を与えないと、非嫡出子の差別規定を残していることと同じである。
王位継承権に生物学的条件と政治学的条件の2つを要求している王室は多い。たとえば、イギリス王国は、ハノーヴァー選帝侯妃ソフィアの子孫であることと(男系女系といった概念は無い)、カトリック教徒ではないことが(2013年まで)要求され、オランダ王国は初代国王のウィレム1世とその配偶者の子孫であること並びにオランダ議会が承認した結婚から生まれた者であることを王位継承権者に要求している。しかし、わが国本来の継承権は生物学的条件のみが要求され、「母親の身分は何か」といった政治学上の要求は存在しなかった。
わが国の皇位継承権制度の変遷をたどると、以下のようになる。
第一に、神武天皇の男系子孫のみであり、
第二に継体天皇の御代から天皇5世以内男孫まで皇位継承範囲が拡大され、
第三に推古天皇の御代から男系男子に即位できない事情があるときは天皇5世孫以内の男系女子に皇位継承権が認められ、
第四に明治になって天皇五世孫であっても男系女子の皇位継承権が欠格し、
第五に大東亜戦争後、天皇5世以内かつ法律婚から出生した嫡出子に限定され、天皇の皇子であっても婚外子の皇位継承権が欠格した。
これが問題なのである。わが国の史上初めて異民族の統治を受けたことにより、サリカ法が皇室典範に取り入れられ、そして今、第六の変更を加えようと、「女系天皇」が議論されている始末である。
はたして、日本に他国のルールをそのまま適用することが、わが国の繁栄に資するのだろうか。
伝統と慣習の否定
秋篠宮悠仁親王殿下が近い将来、交際相手の女性と御子をおつくりあそばされても、その御子は神武天皇の男系男子であるにもかかわらず、驚くべきことに皇族になることはおろか父親が悠仁親王殿下であることを定めることさえ現行の皇室典範は禁止している。すなわち、殿下が交際女性と仮に婚姻前に子供ができたとして、皇族とは認められないのだ
歴代天皇の中で、婚姻によって出生した御子が天皇に即位されたことはごくわずかである歴史に照らせば、伝統と慣習を否定したことの重大性は並外れたものであるといえよう。わが国の皇族とは、男性皇族を生物学上の父親とするすべての子どもたちのことを言うべきだ。「嫡出」を皇族の身分要件に定めたことは、それまでのわが国の歴史に存在しない。
また、この「男性皇族と交際相手の女性から生まれた子どもを皇族にすることは禁止する」と定めた皇室典範第6条が、男性皇族に対して産出抑制の圧力をかける深刻な差別制度であるという観点からも、改正しなくてはならない。
なぜならば、一般国民であっても、婚姻前に交際相手と子どもをつくった後、認知(民法第781条)して子どもの母親と結婚すれば「準正」(民法第789条第1項)といって嫡出子の身分を得るにもかかわらず、この一般人に認められている権利を皇族に限って否定しているからである。
皇室典範には認知や準正といった実体法上の規定がないため、秋篠宮悠仁親王殿下が交際女性と御子をもうけられたならば「誰が父親か」さえ確定することが法律上は不可能である。(参考までに東京高裁判決平成元年7月19日は「日常生活は私法の定めに従う」と指摘したが、上告審(最判平成元年11月20日)は「天皇に民事裁判権は及ばない」と判断した。(最高裁判所民事判例集第43巻10号1160頁))
一般国民が当然に認められている法律行為を皇族のみ制限することを首肯できる理由はない。したがって、生物学上の父子関係の存在確認を要件とした認知と準正の規定が皇室典範に必要である。
以上から、わが国の皇位継承権の正当性において、「どのような状態で生まれたか」といった条件が必要である理由は毫もなく、現行皇室典範第6条が「嫡出」であることを皇族の資格に求めていることの改正が必要である。
もちろん旧皇族の皇籍復帰も重要である一方、まず、秋篠宮悠仁親王殿下が交際相手の女性とお子様をもうけられた際、そのお子様が「皇族」の身分を有することが重要であり、これは将来にわたって男性皇族の数を安定させることに必ず資するものであることを強く主張する。
皇室典範に認知と準正を認めることは、側室制度以前の問題であり、なぜ一般国民に認められている権利が皇族のみ否定されているのか、といった重大な差別政策を私たちは真摯に受け止めなければならない。
歴代天皇の中で、婚姻によって出生した御子が天皇に即位されたことはごくわずかである歴史に照らせば、伝統と慣習を否定したことの重大性は並外れたものであるといえよう。わが国の皇族とは、男性皇族を生物学上の父親とするすべての子どもたちのことを言うべきだ。「嫡出」を皇族の身分要件に定めたことは、それまでのわが国の歴史に存在しない。
また、この「男性皇族と交際相手の女性から生まれた子どもを皇族にすることは禁止する」と定めた皇室典範第6条が、男性皇族に対して産出抑制の圧力をかける深刻な差別制度であるという観点からも、改正しなくてはならない。
なぜならば、一般国民であっても、婚姻前に交際相手と子どもをつくった後、認知(民法第781条)して子どもの母親と結婚すれば「準正」(民法第789条第1項)といって嫡出子の身分を得るにもかかわらず、この一般人に認められている権利を皇族に限って否定しているからである。
皇室典範には認知や準正といった実体法上の規定がないため、秋篠宮悠仁親王殿下が交際女性と御子をもうけられたならば「誰が父親か」さえ確定することが法律上は不可能である。(参考までに東京高裁判決平成元年7月19日は「日常生活は私法の定めに従う」と指摘したが、上告審(最判平成元年11月20日)は「天皇に民事裁判権は及ばない」と判断した。(最高裁判所民事判例集第43巻10号1160頁))
一般国民が当然に認められている法律行為を皇族のみ制限することを首肯できる理由はない。したがって、生物学上の父子関係の存在確認を要件とした認知と準正の規定が皇室典範に必要である。
以上から、わが国の皇位継承権の正当性において、「どのような状態で生まれたか」といった条件が必要である理由は毫もなく、現行皇室典範第6条が「嫡出」であることを皇族の資格に求めていることの改正が必要である。
もちろん旧皇族の皇籍復帰も重要である一方、まず、秋篠宮悠仁親王殿下が交際相手の女性とお子様をもうけられた際、そのお子様が「皇族」の身分を有することが重要であり、これは将来にわたって男性皇族の数を安定させることに必ず資するものであることを強く主張する。
皇室典範に認知と準正を認めることは、側室制度以前の問題であり、なぜ一般国民に認められている権利が皇族のみ否定されているのか、といった重大な差別政策を私たちは真摯に受け止めなければならない。
橋本 琴絵(はしもと ことえ)
昭和63年(1988)、広島県尾道市生まれ。平成23年(2011)、九州大学卒業。英バッキンガムシャー・ニュー大学修了。広島県呉市竹原市豊田郡(江田島市東広島市三原市尾道市の一部)衆議院議員選出第五区より立候補。日本会議会員。
昭和63年(1988)、広島県尾道市生まれ。平成23年(2011)、九州大学卒業。英バッキンガムシャー・ニュー大学修了。広島県呉市竹原市豊田郡(江田島市東広島市三原市尾道市の一部)衆議院議員選出第五区より立候補。日本会議会員。