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山口敬之:"虚報ジャーナリスト" 鮫島浩を使い続ける大手メディアの罪

自民党総裁選予想でも大外し
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「直接取材して書いてください」

 11/15、国民民主党党首の玉木雄一郎氏が元朝日新聞記者の鮫島浩氏についてこんなツイートをした。
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 「鮫島さん、ご無沙汰しております。いろいろ書いていただくのはありがたいのですが、携帯も知っているのだから、想像だけでなく10分だけでもいいので直接取材して書いてください。いくらでも取材応じますから!

 鮫島が書いた玉木氏に関する記事について、全く取材がなかったと暴露したのだ。

 私は2017年3月、モリカケ関連の取材で2人の国会議員の衆議院議員会館の事務所を訪問した。1人が玉木雄一郎氏で、もう1人が共産党の宮本岳志氏だ。
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 共産党の宮本氏は、取材の途中で私の質問に答えられなくなると急に「帰れ」と怒鳴って自室に逃げ込んだ。これに対して玉木氏は、後ろの日程を変更してまで私が納得するまで取材に応じた。国会議員として以前に、人間としての度量の差を感じざるを得なかった。

 玉木氏は事後、私が取材に来た事、どのようなやり取りをしたかをTwitterで発信したが、その内容も正確で誠実なものだった。彼はどんな記者の取材に対しても丁寧に対応する政治家なのだろう。
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 その玉木氏が鮫島氏については「想像だけでなく10分だけでもいいので直接取材して書いてください」とツイートしたのだから、よほど腹に据えかねたものと見られる。 

 なかなか取材できない人ならいざ知らず、「いくらでも取材に応じる」と言っている人間すら取材せず、妄想で原稿を書く人物に、ジャーナリストを名乗る資格はない。

総裁選に出られなかった石破を「本命」

 先の総裁選の際、フジテレビの番組の中で「政治ジャーナリスト」鮫島氏は、「本命・石破茂、対抗・河野太郎という予測を立てた。
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 彼がこの予測をした段階で、少しでも取材をしているまともな政治記者なら、「石破は推薦人20人を集める事が出来ず総裁選に出馬できない」と把握出来ていた。

 結果はご存知の通り、鮫島氏が本命どころか対抗にも大穴にも挙げなかった岸田の圧勝だった。

 競馬の予想屋が大事なレースでこんなに大きく予想を外せば、すぐに誰にも見向きもされなくなるだろう。ところが、「政治ジャーナリスト」を自称すると、究極の大外しを繰り返しても、なぜか使ってくれるメディアがあるようだ。

妄想を記事に

 その鮫島氏が『サンデー毎日』の最新号(2021年11/28日号)に書いた政局記事を読んで、ひっくり返りそうになった。あまりに酷いウソと全く事実と異なる妄想を、まるで見てきたように書き連ねているのだ。典型的なのが、林芳正外相決定に至る経緯を解説した次の部分だ。

マスコミ各社は麻生氏も林氏の外相に反対したと伝えた。安倍氏と麻生氏の反対を押し切って人事を断行する度量が岸田氏にあるとは思えない。
麻生氏は本当に林氏の外相起用に反対したのか。反対のそぶりを見せつつ実は容認したのではないか。

 これほど事実と異なる事を、よく書けるものだ。部分的に間違っているのではなく、書いてある事のほとんど全てが完全に事実と乖離しているのだ。

 麻生が岸田に起用を提案した人物は、旧民主党出身で今は自民党麻生派に所属する松本剛明元外相である。この経緯は私のメルマガで詳述した。


 【政局メルマガ(28)】 「林芳正の外相抜擢」ー岸田新体制が抱えた爆弾(2)
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山口敬之:"虚報ジャーナリスト" 鮫島浩を使い続ける大手メディアの罪

林芳正氏の外相起用の経緯に関しても、妄想で書いたとしか思えない―
 そして、日中友好議員連盟の会長を務める林を外相に据えてはアメリカと中国と国際社会に誤ったメッセージを与える事になるという意見を言ったのは、麻生や安倍だけではない。

 そして最も私が呆れたのが以下の下りだ。

 「ひょっとすると麻生氏が林氏起用を発案したのかもしれないー2人の盟友関係に『疑念』が芽生えた

 この文章はそもそも日本語として成立していない。疑念はどちらかが他方に抱くものであって「盟友関係に疑念が芽生えた」という日本語は意味を成さない。『サンデー毎日』には、ごく初歩的な校正が出来る編集者や校閲者すらいないのだろうか。

 やむを得ず前後の記述から鮫島氏の書きたかった事を類推すると、「麻生が林外相案を起案したのではないかと、安倍が疑った」という事になる。

 ウソと捏造もここまで来ると、もはや「記事」とは呼べない。麻生は松本外相案を安倍にも説明して賛成するよう依頼し、その際に2人は「林のような親中派を外相にすべき時期ではない」との意見で一致していたのだ。

 はっきり言えるのは、鮫島氏は岸田にも麻生にも安倍にも、あるいは彼らの真意を知る側近や周辺にすら、一切話を聞いていないという事だ。

 全く取材をしていないからこそ、20人の推薦人すら集められなかった石破が、国会議員票を少なくとも191票を集めなければ勝てない総裁選の本命だと「予測」出来るのだろう。

 もはや、鮫島氏がジャーナリストでも政治評論家でもない事は誰の目にも明らかだ。全く取材をしていない事について、自分の妄想だけで記事風の駄文を書き連ねる、「詐話師」というジャンルに属する人物である。

古巣朝日新聞ですら認めた「思い込み」

 世の中には、残念ながら妄想と現実の区別がつかなくなってしまう人が一定程度いる。そういう人は医師の診察を受けたり薬剤を処方されたりして症状の改善に取り組む。

 ところが「自称ジャーナリスト」だけは、そのような努力をせずに、妄想を何回も流布する事が許される。
 朝日新聞の世紀の大誤報となった福島第一原発・吉田調書に関する2014年5月の記事について、鮫島氏は自分が出稿責任者だったと認めている。
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世紀の大誤報となった「吉田調書」記事
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 鮫島氏のこの「スクープ」は、3ヶ月後に吉田調書の全文が公表されると、捏造と歪曲に満ち満ちた虚報である事が明らかになった。
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一方、命令違反の撤退がなかったことを伝えた産経新聞の記事
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 そして1ヶ月後、ついに朝日新聞自ら誤報だった事を認めざるを得なくなり、自社の記事を取り消すという前代未聞の不祥事となった。
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記事の取り消しおよび社長の謝罪を伝える朝日新聞の記事
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 当時の木村伊量社長は紙面でこう謝罪した。

 「『命令違反で撤退』の表現を撤回すると共に、読者及び東電の皆様に深くお詫びします
 「誤った内容の報道となった事は痛恨の極みです

 木村社長の謝罪の中で、最も大切なのが以下の部分である。

 「思い込みや記事のチェック不足が重なった事が原因と考えております

 鮫島氏は長年働いた朝日新聞によって「思い込みで記事を書く人間」と認定されたのである。実際今回の総裁選や林外相を巡る鮫島氏の「記事」にも、その傾向がはっきりと残っている。

 記者とは取材に基づいて事実を伝える職業であるはずだ。思い込みで書かれた文章は報道記事ではなく、報道記事とは呼べないモノを書く人物は記者とは呼べない。要するに鮫島氏は古巣の新聞社から「ジャーナリストではない」と言われたに等しい。

 鮫島氏の虚報によって、木村社長と編集部門の最高責任者が辞任を余儀なくされ、4人の管理職が停職、2人の記者が減給処分を受けた。本来なら、ジャーナリストを廃業してもおかしくないほどの事をしでかしたのが鮫島氏である。

 これが医師なら免許剥奪だろうし野球選手なら永久追放だろう。しかし資格のいらない「ジャーナリスト」は、どんな虚報を出そうとも、本人が止めない限りいつまでもジャーナリストと名乗り続ける事が出来てしまう。

鮫島氏を起用するメディアの罪

 最も罪深いのは、思い込みによって大誤報を出した人物だと知りながら、その人物の妄想をあたかも事実に基づく記事であるかのように掲載するメディアの側だ。

 しかも鮫島氏の場合は、間違った調書をつかまされたのではなく、本物の調書を入手した上で内容を歪曲したのであって、誤報というよりは虚報と呼ぶべき、より悪質な事案である。

 深刻な虚報の前科があり今なお捏造と歪曲を繰り返している人物の記事を目玉記事として掲載したサンデー毎日もまた、読者を愚弄して恥じない恐るべきメディアだ。

 こんな事を繰り返していれば、そんな雑誌にお金を出す人はいなくなるだろう。

 しかし彼らが毀損しているのは自身の評判だけではない。プロパガンダとジャーナリズムをごちゃ混ぜにする大手メディアによって、実は情報そのものの信頼性が毀損され、フェイクニュースが蔓延するという悪循環に陥っている。

 大手メディアの自傷行為は、我々の社会自体にも深刻な悪影響を及ぼしているのである。
山口 敬之(やまぐち のりゆき)
1966年、東京都生まれ。フリージャーナリスト。
1990年、慶應義塾大学経済学部卒後、TBS入社。以来25年間報道局に所属する。報道カメラマン、臨時プノンペン支局、ロンドン支局、社会部を経て2000年から政治部所属。2013年からワシントン支局長を務める。2016年5月、TBSを退職。
著書に『総理』『暗闘』(ともに幻冬舎)、新著に『中国に侵略されたアメリカ』(ワック)。

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この記事へのコメント

yoshiko 2021/11/25 13:11

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