山口敬之:オミクロン騒動で再びうごめく"諸悪"

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"諸悪"の一人、テドロス

「オミクロン」の現在地

 「オミクロン」という変異株で世界が喧しい。例によって自称ウイルスの専門家や疫学者達が「オミクロン株はこれまでの変異株と比べても異例といえる変異の多さに特徴がある。日本でも感染第6波の主体となる可能性がある」と述べるなど、危機を煽る報道が続いた。

 そのウイルスとしての特徴については、当初は以下のような情報が流布された。

 ▶︎感染力が極めて強い
 ▶︎病原性(致死率)が高い可能性がある
 ▶︎ワクチンや従来の治療法が効かない可能性がある

 もしこれが事実なら、確かに大変な事だ。ところが、オミクロン株の震源地である南アからの現場報告は、全く「温度」が異なっていた。南ア医師会長のアンジェリク・クッツェー医師は、英国などのメディアに対して次のように語っていた。

「感染がしばらく落ち着いていた首都プレトリアでコロナ患者の急増が始まったのは11月18日。ただ、その症状は倦怠感や頭痛、体の痛み、まれに喉の痛みや咳であり、血中酸素濃度の低下や味覚・嗅覚の喪失といったデルタ株の症状とは違っていた」
「すぐに政府に報告し、翌週には新たな変異株であることが特定された。」
「これらの症状はデルタ株ではないと伝えました。ベータ株にかなり似た症状だったのでベータかもしれないし、あるいは新しい変異株に違いないと報告したのです」
「すぐに収束するかはわかりませんが、軽症で終わるのではないかと期待しています。今のところは、対処できると確信しています」
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日本も「鎖国」
 震源地南アでオミクロン株の感染者の診療に当たった医師の受け止めと、日本や欧米各国の報道のニュアンスが全く異なっていた。

 その内、欧米やアジア各国でもオミクロン株の感染者が見つかり、その特徴の詳細が徐々に明らかになってきた。

 ▶︎世界で同時発生したのではなく、南アで発生した変異株が世界に伝播したらしい
 ▶︎多くの感染者は無症状か、極めて軽症
 ▶︎これまでのワクチンが感染や発症を抑えられない可能性がある
 ▶︎ワクチンが重症化を防ぐ効果があるか、また死亡率を下げるかどうかもまだわからない
 ▶︎これまでの新型コロナウイルスの治療法の内、グラクソ・スミスクラインが開発したソトロビマブなどは、オミクロン株にも効く可能性が高い

 ソトロビマブは日本でも9月27日に厚生労働省の製造販売承認を取得している。

 要するに、徐々にオミクロン株への対処方法が解明されつつあるのであって、過度に恐れる必要はないのだ。

朝令暮改の岸田政権

 この新しい変異株について、日本政府の対応はいつになく迅速かつ過激だった。

 岸田政権はWHOがオミクロン株を「懸念すべき変異株」(VOC)に指定したわずか2日余り後の11/29、
 ▶︎全ての外国人の入国を原則禁止し、
 ▶︎さらに12/1から日本に向かう航空便の新規予約を取らないよう航空会社に求めた。

 外国人の入国のみならず、予約を持たない日本人の帰国すら拒絶した。事実上の「ウイルス鎖国」である。

 これを発表した際、岸田首相は記者団に対して「批判は私がすべて負う覚悟」と胸を張った。

 しかしこの日本政府の対応は国際社会から厳しい批判を浴びた。世界保健機関(WHO)で緊急事態対応を統括するライアン氏は1日、新型コロナウイルスの新変異株「オミクロン株」の出現を受けて、日本が導入した外国人の新規入国を原則停止する措置について「ウイルスは国籍や滞在許可証を見るわけではない」と述べ、「疫学的に理解困難だ」と批判した。

 WHOはこれまでも、渡航の一律禁止に関し「国際的な感染拡大を防げない上、人々の生活に多大な負担がかかる」と否定的な見解を示している。ライアン氏は、ウイルス検査や入国後の隔離で旅行者によるウイルス拡散の可能性は十分に下げられると強調。自国民か否かで判断するような対応は「矛盾しており、公衆衛生上の観点からも論理的とはいえない」と、日本政府の対応をはっきりと批判した。

 こうした批判を受け、岸田政権は「鎖国」措置を緩和した。公明党の斉藤哲夫国土交通大臣は一律の入国停止を撤回し、「配慮が足りなかった」と述べた

 岸田政権の当初の判断は、厚労省と国交省が主導した事がわかっている。そして岸田首相が霞ヶ関からの過激な意見具申を丸呑みした背景には、外国からの日本入国を完全に制限しなかった安倍・菅政権との差別化の意図があったとみられている。実際官邸筋は「岸田政権は安倍・菅の轍は踏まない。国民に多少の犠牲を強いても、ウイルスの流入は絶対に防ぐ」と胸を張っていた。

 しかし、その後わずか1日で、こうした「決断」を事実上全面的に撤回したのだ。
 
 岸田政権のスタンドプレーと朝令暮改に、帰国を予定していた邦人や日本を訪問する予定のあった外国人は大いに迷惑を被った。そもそも自国民の帰国を政府が拒絶するという今回の措置は、憲法違反の疑いすらあった。

一連の岸田政権のダッチロールで暴かれたのは、
 ▶︎霞ヶ関の中央官僚は、国民生活を犠牲にしても危機を煽りコロナ禍を継続させたいという「体質」を持っており、
 ▶︎岸田政権は霞ヶ関の官僚の言いなりに動く「官僚主導内閣」だ という事実だった。
山口敬之:オミクロン騒動で再びうごめく"諸悪"

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今回、決断は早かったと思いきや―

またもやワクチン推奨の大合唱

 アメリカの感染症対策トップのアンソニー・ファウチ博士は、11月下旬段階ではオミクロン株は「危険信号」だとしつつ、ワクチンには依然として重症化を防ぐ効果があるかもしれないと述べていた。

 ところがその後、ファウチはワクチンの有効性について事実上正反対の発信をするようになる。「これまでのワクチンが作り出すウイルス抗体が、この変異株には効くのか効かないのかまだ分からない」と述べたのだ。

 アメリカのコロナ対策の司令塔のこの発言に、「オミクロン株にはワクチンが効かないかもしれない」と、世界に衝撃が広がった。

 実際12/2までに日本入国時にオミクロン株への感染が確認された2名は、ファイザー社製のmRNAワクチンを2回接種済だったのだ。

 世界で確認されている感染例でも、ワクチンによる抗体は十分に残存しているはずの人が多く含まれていた。

 ところがその一方で、オミクロン株には効かない可能性が指摘されているはずのワクチンの3回目の接種を「オミクロン株の感染拡大に備えて前倒しで行うべき」という、本末転倒の議論が高まってきた。

 日本医師会の中川俊男会長は1日の会見で、新たな変異株「オミクロン株」が急拡大する懸念があるとして、3回目接種について「前倒しして進めることも考える必要が出てきた」との見解を示した。

 3回目接種は、2回目を終えてから原則8カ月が経過した18歳以上が対象。12月中は先行接種を受けていた医療従事者が対象となり、来年1月以降、高齢者らにも順次拡大する方向となっている。

 中川会長はオミクロン株へのワクチンの効果は現段階では不明とした上で、政府は接種体制を整えている自治体に対して、前倒し接種を認めることも検討すべきだと言及。「できれば全国一律に前倒しするのが理想」とも述べた。

 「最悪の場合、オミクロン株による第6波も想定しなければいけない」と述べ、市民らにマスク着用や手洗いなどの感染対策を続けるよう求めた。
山口敬之:オミクロン騒動で再びうごめく"諸悪"

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ワクチンが「効くのかわからない」のに3回目の接種を進めよという謎(写真はアンソニー・ファウチ)
 おやおや。感染者の多くが無症候や軽症と報告されているオミクロン株の、最後に残った懸念は「ワクチンが効かない」事ではなかったのか。

 中川会長は昨年夏、国民に外出自粛を呼びかけておきながら、アクリル板など感染抑止策の十分でない寿司店で女性との会食をしていた事が明らかになった。

 こうした人物が、今度は効果があるかわからないないのに、ワクチンの3回目接種を推奨する。

 もはや多くの国民はこうした「専門家」の根拠なき暴論は、十分に聞き飽きている。

総括なき「専門家」「コメンテーター」

 政府や地方自治体のコロナ対策に関わる人物の多くはこれまで、根拠なく危機を煽り、多くの飲食店を経営破綻に追いやり、東京オリンピックの中止を訴え、国民にあらゆる行動の自粛を呼びかけてきた。

 例えば「8割オジサン」こと西浦博教授は、東京オリンピックを開催する事で、8/31には東京の感染者が4万人に達すると指摘した。ところが、実際は13分の1以下の3000人未満に収まった。その後日本は感染者も死亡者も急減して、世界で最高レベルの「コロナ対策の優等生」となった。

 その一方で、テレビ朝日のワイドショーでコメンテーターを務める玉川徹氏は、感染症や疫学の専門家でもないのに、PCR検査を幅広に行う韓国のコロナ対策「K防疫」を昨年来繰り返し絶賛し、日本の対策を繰り返しこき下ろした。しかし、12/1の感染者数は日本全体で115人であるのに対して、韓国は45倍以上の5262人。単位人口当たりで韓国は日本の110倍以上の感染者を出している事になる。

 これに対してK防疫礼賛者は、「日本はPCR検査が不十分だから、感染者の総数を把握できていない」と主張する。しかし、同じ12/15の死者は日本が1名であるのに対して韓国は46人と、こちらも単位人口当たり110倍だ。

 感染者数が把握できていないというなら、日本の死亡率は韓国よりも著しく高くならなければ辻褄が合わない。韓国の感染状況は、「日本の100倍深刻」なのだ。

 「徹底したPCR検査の実施が感染拡大を抑止する」と主張した玉川氏は、明らかに間違っていた。自身のかつての主張の間違いを認めない限り、彼にコロナやワクチンを語る資格は全くない。

 公共の電波を使って事実でない事をさも事実であるかのように語る人物を使い続けるのであれば、そのテレビ局もまた、国民を欺いて恥じないメディアということになる。
山口敬之:オミクロン騒動で再びうごめく"諸悪"

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間違った主張でコロナの恐怖を煽ったにもかかわらず、シレっとコメントし続けることは許されるのだろうか?
via twitter

コロナ危機を煽る理由

 こうして見てくると、危機を煽り日本の対策を書き下ろす「自称専門家」「自称ジャーナリスト」「コメンテーター」には、いくつかの種類に分類出来る事がわかる。

 (1)ワクチンを打たせたい勢力
 (2)社会を騒擾させたい勢力
 (3)現政権を倒したい勢力

 ワクチンを作る製薬会社、ワクチン接種で利潤を産む関係業種にとって、「変異種の脅威」は煽れば煽るほど巨利を得ることが出来る。

 ▶︎政権側は、危機を煽る事でワクチンの接種率を上げるという効果が期待できる。
 ▶︎一方で、現政権を倒したい野党や大手メディアは、危機を煽る事は国民の不安増大と政権への憎悪に繋がる
 ▶︎これは共産主義者にとっては、資本主義転覆の第一段階である「社会騒擾」の創出を期待出来る。

 だから、大した事がない変異株でも、あるいは大したものか大したものでないかはっきりわからない変異株でも、「ワクチン業界」「政府」「大手メディア」「野党」が揃って「これは大変だ」と大合唱する土壌が出来上がっているのである。

テドロスの影に"諸悪の根源"中国

 そもそも今回のオミクロン騒動は、WHOが11/26にオミクロン株を「懸念される変異株」に指定した事に端を発する。

 WHOのテドロス・アダノム・ゲブレイエスス事務局長は、

「オミクロン株はこれまでにないほどスパイクたんぱく質が変異している。それらのいくつかは、パンデミックの波に影響を及ぼす可能性が懸念される」
「オミクロン株の出現は、多くの人がCOVID-19は終わったと考えていても、実際には終わっていないことを示している」

 テドロスは、母国エチオピアで「ティグレ人民解放戦線」という過激な反政府活動を行なっていた共産主義政党を率いていた人物で、中国の強い後押しで2017年にWHOの事務局長になった。

 ちなみにエチオピアは、2016年から2018年までの3年間で、中国の直接投資が40億ドル、二国間貿易額は54億ドルに達しており、「経済的に中国に従属している」と表現されている。

 共産主義者でありあらゆる意味で中国に頭の上がらないテドロスはパンデミックの初期の昨年初頭、世界の専門家が求めたパンデミックの緊急事態宣言を出し渋った。そして1月に北京を訪問して習近平に会うと、中国の旧正月である春節の最終日になってようやく宣言を発出した。このテドロスの初動の遅れが、世界の感染状況を悪化させたと指摘されている。
山口敬之:オミクロン騒動で再びうごめく"諸悪"

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そもそもがアナタの責任だ!
 そもそも、世界的なパンデミックには、震源地である地域・地名があてられてきた。日本脳炎しかり、スペイン風邪しかり、MERS(中東呼吸器症候群)しかりである。ところが、武漢発だという事がわかっている新型コロナウイルスだけは、「中国ウイルス」「武漢ウイルス」という名前にならず、テドロスによって新型コロナウイルス(Covid-19)という名前が付けられた。

 そしてWHOは変異株についても、インド株や南ア株という言い方を止め、ギリシャ文字のアルファベットを充てた。ところが、Xi(クサイ)という文字の番になった時、これが習近平の英語表記(Xi Jinping)に一致してしまったため、Xiという文字は使われなかった。これについて国際社会の一部からは「テドロスが習近平の飼い犬である証拠だ」との指摘が出ている。

 信用できないのは日本のイカサマ専門家だけではないのだ。武漢ウイルス研究所のウイルス研究に補助金を出していたファウチといい、その容疑者をコロナ対策の司令塔として使い続けるバイデンといい、共産主義者で世界的パンデミックを悪化させた張本人でおるテドロスといい、世界のコロナ対策をリードする多くの人物に巨大な疑問符が付いている事が、世界のコロナ禍全体に暗い陰を落としている。そしてその多層的な疑惑の全てにリンクしているのが、中国共産党なのだ。
山口 敬之(やまぐち のりゆき)
1966年、東京都生まれ。フリージャーナリスト。
1990年、慶應義塾大学経済学部卒後、TBS入社。以来25年間報道局に所属する。報道カメラマン、臨時プノンペン支局、ロンドン支局、社会部を経て2000年から政治部所属。2013年からワシントン支局長を務める。2016年5月、TBSを退職。
著書に『総理』『暗闘』(ともに幻冬舎)、新著に『中国に侵略されたアメリカ』(ワック)。

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