【朝香 豊】NHK「改革案」の子供だまし

【朝香 豊】NHK「改革案」の子供だまし

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受信料を下げればOK?

 菅内閣のNHK改革の方向性がまとまってきたが、この内容は国民からすれば到底承服できない内容だ。

 報道によると、総務省の有識者会議は、NHKは受信料引き下げの原資となる積立金を新設し、ここに繰越剰余金を集めることで受信料を2023年度から約1割ほど引き下げる方針を固めたとされる。

 1割引き下げなのだから評価してくれというのが菅政権の考えなのだろうが、国民がもっとも不満に感じているのは、どうして見ていなくても、さらには放送内容に不満で見たくさえなくても、強制的に受信料を徴収されなければならないのかという点である。

 2012年に実施された産経新聞の調査によると、NHKの番組を見たいかとの問いかけに69%がノーだと答え、NHKの地上波放送にスクランブル化を導入すべきかとの問いかけには88%がイエスと答えている。見ようが見まいが法を背景に押し売りするようなやり方に国民は辟易としているのだ。ここに切り込まなければ、国民が求めるNHK改革にはならないだろう。

 NHKは「公共の福祉」を錦の御旗にして受信料制度を正当化しているが、今や国会中継にせよ、災害情報にせよ、選挙の政見放送にせよ、インターネットで事足りる時代になっている。そしてそれはインターネットを使って電波を使わないのであれば、NHKが担わなくとも政府自ら提供することが可能だ。

 以前であれば難視聴地域に放送を届けるための設備投資の原資が必要だったという言い訳も成り立った。だが、もはやそういう場所は竹島とか北方領土とかの例外を除外すれば、日本国内には存在しない。さらにインターネット環境が整いさえすれば必要な情報は流せるようになっているのであり、電波受信が必須のインフラだとも言えなくなっている。こうなると、NHKが主張する「公共の福祉」の根拠はもはやないに等しいのである。
衆議院TV (4470)

現在はネットから国会中継も見ることができる
via 衆議院TV

選択の多様化に逆行するNHK

 NHKに対する国民の不満は他にも様々ある。例えばNHKの職員の不祥事は毎年数多く発生しているが、これらはNHKの経営には何らのダメージにもなっていない。民間企業ではそういう事態が発生すれば死活問題となりかねず、場合によっては自社の身売りや倒産まで覚悟しなければならなくなる。現在の固定的な受信料制度は、NHKの組織改革を促すことが全くできないという観点からしても、問題が大きいと言える。それでいて、民間平均を遥かに上回る高額給与を職員が受け取っていることでも知られている。国民がこの仕組みに不快感を覚えるのは当然だろう。

 現代は技術も進み、それぞれのテレビでNHKが視聴されているかどうかを把握することも技術的に可能だ。1ヶ月ごとにNHKの視聴時間を割り出して、その視聴時間に応じて課金するようなことも可能だ。受信料契約を結んだ家庭だけが視聴できるようにして、残りの家庭にはスクランブルをかけて見えないようにすることも可能だ。完全に民放化することだってできるであろう。

 そもそも放送というものを電波を通じて行うということ自体が、デジタル化時代を迎えて電波の希少性が高まってきた中では変革期に入っている。電波オークションを行うなどして、放送利権に対する抜本的な切込みを行うとともに、これと連動するような大胆なNHK改革を国民は当然期待していたはずだ。

 改革志向の菅総理がそのことを理解できていないとは思えないが、この程度のことでお茶を濁すことになったのはどういうことだろう。

 さらに国民感情を却って逆なでするように、テレビを持っていながら受信契約を結ばないで支払いをしていない人への割増金制度の導入方針まで盛り込まれた。

 この程度のことで「改革」を謳うようであれば、菅内閣の支持率がさらに落ち込むのは避けられないのではないだろうか。
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朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。

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