門田隆将:左翼勢力の「新・階級闘争」に翻弄される日本

門田隆将:左翼勢力の「新・階級闘争」に翻弄される日本

何か「ヘン」なSNS

 世の中がやっと「なにかヘンだぞ」と気づき始めた。SNSを通じた連日の東京五輪中止運動のお陰かもしれない。

 共産党の元都知事候補、宇都宮健児氏の「東京五輪の開催中止を求めます」との署名運動があっという間に10万筆を超え、5月14日には計35万筆の署名を添えて開催中止の要望書が都に提出された。
 
そして欧米に比べコロナ感染者が何十分の一、何百分の一に過ぎない日本の状況をグラフで示しながら〝さざ波〟と表現した髙橋洋一氏が猛然と非難され、「内閣官房参与の更迭を求めます」とのツイデモがくり広げられた。

 これら異常な東京五輪中止圧力には、〝前段階〟がある。今年2月初め、五輪組織委員会の森喜朗会長が、「女性は優れているので、女性理事に空きが出た場合は、必ず女性を後任にする」との趣旨の話をしたところ、その前に「女性は話が長いので会議に時間がかかる」という部分だけを切り取られて女性蔑視発言とされ、SNSが〝大爆発〟。森氏は会長の座を追われた。

 さらに5月には白血病から奇跡の復活を遂げた競泳の池江璃花子選手に対して「悲劇のヒロインを演じた責任を持て」「コロナで亡くなられた方にお悔やみも言えないのか」との五輪出場辞退を迫るツイートが多数寄せられ、池江選手が衝撃を受けていることが明らかになった。東大の研究者によって、その投稿の80%近くが過去投稿から〝リベラル系〟だったことも判明した。一体、日本はどうなってしまったのか。そんな疑問を持つ日本人が多くなったのである。

【門田隆将】命か五輪か?無責任ワイドショーの論点ズラシ【WiLL増刊号#542】

門田さんが醜い「ワイドショー」を斬る!動画はコチラ

日本共産党の巧妙なSNS戦略

 その疑問に一つの回答を提示したい。日本共産党による「新戦術」だ。その後の世論工作に大きな影響を及ぼす画期的な戦略と言っていいだろう。

 2013年5月、日本共産党中央委員会は32万人党員(当時。現在は約27万人と推定)に対して一本の指示を出した。「党員それぞれがツイッターとフェイスブックを始めよ」というSNS開始命令である。

 年々増大するインターネットの影響力に注目した共産党中央委員会が、一人ひとりの党員がSNSの発信力を駆使し、「世論構築と集票をおこなっていく」との方針を決定し、党員に一斉通知したのである。

 指令を受けて党員たちは、ツイッターとフェイスブックでの運動を展開し始めた。もちろん古参党員には、ツイッターやフェイスブックなどSNSは全く馴染みがない。だが、党中央委員会の指令は共産党員にとって絶対だ。横のつながりで一からやり方を教えてもらい、慣れぬ手でSNSを始めたのだ。

 共産党員の熱心さについては、説明の必要はあるまい。どんな広大な選挙区であろうと、あっという間に候補者のポスターを貼ることができる組織力は、日本の政党の中でもナンバー・ワンであることは周知のとおりだ。要は、「真面目」なのである。その彼らが始めた世論構築と集票のための運動の効果はすぐに出た。

 2カ月後の7月21日におこなわれた参議院選挙で共産党は改選の3議席から8議席へと一気に躍進したのである。2.6倍だ。議案提出権確保という久々の勝利を収めた共産党は3週間後の8月10日、志位和夫委員長が戦略の成功に触れ、講演でこう語った。

 「〝強く大きな党づくり〟で力を発揮したのがインターネット選挙です。日本共産党はこの分野で大健闘いたしました。 ツイッターでは〝発信力〟も、〝拡散力〟も、日本共産党が第一党になったのです」

  会場は万雷の拍手に包まれた。それは、共産党の「SNSを通じて世論操作をおこなっていく」というその後の基本戦略が確立された瞬間だった。
門田隆将:左翼勢力の「新・階級闘争」に翻弄される日本

門田隆将:左翼勢力の「新・階級闘争」に翻弄される日本

日本共産党は巧妙なSNS戦略で浸透を図る―

危機感を共有せよ

 以後、共産党は自らの党名を伏せたまま可能なこのSNS戦略によって、日本の世論を大きく左右するようになる。日本の歴史上、一人も存在しない女系天皇を実現させるという「内側からの皇室解体」を目論む同党が世論形成をおこない、大きな効果を挙げているのもその一つだ。ツイッターの〝生贄〟にされていく保守系の人物もあとを絶たない。

 共産党自体の党勢は衰えているのに、SNS戦略によって、影響力は逆に増大しているのである。問題は、彼らに乗せられてこれを拡散させ、炎上させていく一般の国民の多さである。

 このことを告発した拙著『新・階級闘争論──暴走するメディア・SNS─』(ワック)には、大きな反響をいただいているが、このまま左翼思想の浸透が進めば「日本が滅びてしまう」という悪夢さえ脳裡をよぎる。全体主義への流れを止めるため、この危機感を共有していただくことを強く願う。
門田 隆将(かどた りゅうしょう)
1958年、高知県生まれ。作家、ジャーナリスト。著書に『なぜ君は絶望と闘えたのか』(新潮文庫)、『死の淵を見た男』(角川文庫)、『オウム死刑囚 魂の遍歴』(PHP)など。『この命、義に捧ぐ』(角川文庫)で第十九回山本七平賞を受賞。最新刊は『新・階級闘争論』(ワック)。

関連する記事

関連するキーワード

投稿者

この記事へのコメント

コメントはまだありません

コメントを書く