~持続化給付金問題~ また朝日が…電通に天下り? 小さ...

~持続化給付金問題~ また朝日が…電通に天下り? 小さい、小さい

〝巨悪〟か〝小悪〟か

須田 持続化給付金問題が世間を騒がせていますね。

髙橋 結論を言うと、そんなに大した話じゃない(笑)。野党やマスコミが期待する〝巨悪〟は出てきませんよ。

須田 背後にあるのは〝小悪〟ですね。整理してみましょう。
 コロナショックで売り上げが落ちた事業者に支払われる持続化給付金。その事務委託手数料・769億円が、一般社団法人「サービスデザイン推進協議会」(以下、サ協)に支払われた。サ協は2016年、広告代理店の電通、人材派遣大手のパソナ、BPO業界で勢いがあるトランスコスモスによって設立された団体です。BPOとは「ビジネス・プロセス・アウトソーシング」の略で、その市場規模は年々拡大中。

髙橋 アウト(外部)から、ソーシング(調達)する。一言でいえば行政の「外注」です。人事やコールセンターなど、アウトソーシングしている企業は多い。時代の流れですよ。

須田 サ協は749億円で電通に再委託。電通は子会社やトランスコスモスに再々委託し、申請受付から審査、広報などを仕切りました。

髙橋 経産省は実働部隊がいないので、昔から〝手足〟を外注してきた。つまり「行政委託」です。今回の場合、電通がエージェント、仕切りはノウハウを持っているトランスコスモス、パソナが人出しってわけ。

須田 電通はテレビ業界の衰退で先行きが明るくない。広告だけでなく、さまざまな分野の代理店をめざしている実態も明らかになりました。行政の仕事を引っ張り込んで、恒常的にカネが入る仕組みをつくりたかったんでしょう。

髙橋 問題は2つ──。
① サ協に官僚が天下っているか
② サ協への事務手数料(769億円)は妥当か、接待があったか

黒いカネや天下りがないと、盛り上がる話じゃない

須田 サ協は「行政委託型公益法人」です。公益法人だから納税する必要がない。ということは、天下りを考えてカネをプールしておける。

髙橋 そもそも行政委託型なので、民間で業務フローをつくることはまずできない。そのため、昔でいう外郭団体みたいなものでやらざるを得ない。行政委託型だから、公益法人で納税の必要ナシ。
 役人時代には、行政委託型公益法人のスキームや定款をつくったことがあるけど、もちろん専務理事は天下り。役所ではこの天下りを「専務理事政策」と呼んでいた(笑)。国民の批判を浴びて、天下り規制をつくったのも私です。その影響もあって、今回のサ協は専務理事ナシ。「天下った官僚」という叩きやすい〝敵〟が存在しないんです。天下らないなら、カネをプールする理由もない。

須田 電通への天下りを狙っていたというのはどうでしょう。持続化給付金を管轄するのは中小企業庁。サ協のスキームや定款は、現長官の前田泰宏氏が本省にいたときの部署でつくられている。

髙橋 まぁ今回の件で天下れなくなったし、そもそも仕事をまわしたからといって天下りできるわけではない。担当者が役員や取締役の人事権を持つほど出世してもらわないとダメ。そう簡単にいかないんです。
 マスコミは前田氏が電通側とどれだけ〝密〟だったかを騒ぎ立てるでしょう。と思ったら案の定、『週刊文春』(6月18日号)がサ協の平川健司業務執行理事(元電通)らとのテキサス旅行を報じていた。野党も必死に経産省と電通の依存関係を問題視するけど、経産省側は「カネはもらっていない」と冷静に答えていた。接待・カネなしとなると、「事件」になるレベルの話ではない。やっぱり天下り、接待がないとスキャンダルとしてのパンチがない(笑)。あとはせいぜいスキャンダルの「写真」が出てくればいいけど、それでも個人問題にしかならない。

いつもと同じ構図

髙橋 769億円の委託手数料も、2兆円の予算の2割にもならないので「高い」とは言いにくい。だいたい法外な手数料を取れば、あとで会計検査院から注文がつく。それを知る官僚がスキームをつくっている以上、法外な手数料は取りません。

須田 相場は18~23%といわれていますから。1次補正に計上された持続化給付金の事務費は776億円。入札ではサ協に769億円──99%の価格で落札されている。普通の公共事業なら、90%を超えれば「完全談合」といわれます。

髙橋 談合といえば談合でしょうね。持続化給付金はスピードが求められたので、ほどよい金額にする余裕すらなかったんじゃないの。
 逆にいえば、そういう手続き上の問題にすぎないってこと。ガイドライン違反や通達で済んで、刑法や国家公務員倫理法などの刑事罰に問われるような話ではない。役人からすれば、天下りせず、カネを自分の財布に入れていないから、そんなに気にしないはず。ましてや、政府にとっては電通がどれだけもらうかなんてどうでもいい。総額でいくらかかるかが大事。安倍首相もまったく知らなかっただろうし、国会が閉会すれば盛り下がっていくでしょう。

須田 電通や竹中平蔵氏が会長を務めるパソナが出てくるから、「安倍人脈」と騒ぎ立てやすいんですよ。これ、モリ・カケ騒動や桜を見る会、黒川弘務検事総長の定年延長問題と同じ構図です。朝日新聞が「おかしい!」と〝火のないところ〟に火をつける。すると野党や週刊誌が動き出す。ワイドショーも同調して、支持率が下がる……。火のないところを〝大火事〟に見せるいつもの手法です。

髙橋 「安倍政権は不祥事だらけ」ってね。今回も鎮火しようがなくなって、「疑惑は深まるばかりだ」と書いて終わるでしょ。でも、ここまで来たら朝日や文春を応援する! がんばって巨悪を見つけ出してくれ(笑)。マスコミは「〝血税〟の使い方」という見出しを打ちたがるけど、持続化給付金が盛り込まれた補正予算の原資は「血税」ではない。国債発行で日銀買取だから、原資は通貨発行益。
 週刊誌に取材されたとき、このことを指摘すると、「取材はいいです」と断られた。けっきょく、見出しは「血税」のママ。ウソを書いてでも支持率を下げたいのか。

須田 行政委託型公益法人のスキームは昔からあるのに、なぜいま問題になったんでしょう。5月22日、立憲民主党の川内博史衆議院議員が決算行政監視委員会で取り上げた。そして同党の海江田万里元経産相が「大変な問題だ」と言い出して、東京新聞が報道します。

髙橋 それより前の5月2日、サ協の設立経緯や定款のPDFが寄稿サイト「note」に匿名で投稿されていました。電通やパソナとのつながりを指摘していて、政治問題化を狙ってるような感じだった。すいぶん詳しいので、投稿者は官僚だと思う。それに一部マスコミがつられたんでしょう。

須田 個人的な恨みなのか、〝悪意〟に近い意図がその匿名の投稿者にあったのかもしれません。そうだとすれば今頃、シメシメと思っているでしょう。〝小悪〟が眠っていても、持続化給付金は6月11日現在、申請数の約75%に給付されていて、もっとも成功している経済対策です。

髙橋
 天下りや接待でいうなら、持続化給付金より「Go To キャンペーン」のほうが怪しい。私がある場所でそう言ったら、事務局の公募が中止になった。政府も素早い対応をみせています(笑)。

10万円給付が遅い驚きのワケ

髙橋 持続化給付金に比べて、一律10万円の特別定額給付金は遅すぎる。給付率は35.9%(6月10日現在)。一番スピードが求められていたというのに……。

須田 行政のIT化が進んでいない現状が明るみになりました。マイナンバーカードを使ったオンライン申請でも、マイナンバーと銀行口座がひも付けられていなかったので、即入金にはならず。

高橋 オンライン申請が開始されてすぐ申請したけど、2週間かかった。

須田 給付が遅れていることについて、大阪府四條畷市の東修平市長が「note」に、「なぜ10万円給付に時間がかかるのか」という説明を寄稿しました。それを読んでビックリ。オンライン申請でも、ネットで送られてきたデータをわざわざプリントアウトし、不備がないかを郵送されてきた申請書と一緒に確認していたんです。不備があれば電話で、電話がつながらなければ文書で問い合わせているとか。「オンライン申請」といいながら、ネット上で完結させていないんです。

髙橋 プリントするという発想がおかしい(笑)。

須田 取材したところ、ほとんどすべての自治体が同じ手間をかけているようです。郵送による申請との違いは、必要事項を紙にボールペンで記入するか、画面にキーボードやスマートフォンで入力するかだけ。オンラインも郵送も、役所に申請が届いてからの作業はまったく変わらないんです。
 むしろオンライン申請の場合、申請書をダウンロード→プリントアウトという手順を踏むので、郵送されてきた申請書入りの封筒を開けるより面倒かもしれません。業を煮やした香川県高松市はオンライン申請を中止し、郵送に1本化しています。

髙橋 そんなもんだろうと思ったよ。 役人時代、マイナンバーの前身だった「住基ネット」(住民基本台帳ネットワークシステム)、オンラインで確定申告を完結できる「e-Tax」の導入にかかわった私にいわせれば、IT化が進まないのは役所のせいだけではない。
 コロナ前のマイナンバーカードの普及率(14.9%/1月15日時点)を見ても、これまで国民が行政のIT化に乗り気じゃなかった。今回の給付金も、オンライン申請の方法がわからないという人もいたくらいですから。

須田 韓国でも一律給付が行われましたが、政府はクレジットカード会社と提携して、カードの「ポイント」で支給しました。期限があり、クレジットカード決済限定ですが、申請したその日に使えるようになった。

髙橋 そりゃそうだ。クレジットカードをつくるときにマイナンバーを書くから、本人確認もすぐ終わる。

須田 この話を与野党の国会議員にすると、立憲民主党の議員が「クレジットカードを持っていない人はどうする」と言い出す。なぜか基準を最底辺に下げようとするんです。基準をもっと上げていかないと、IT化は進みません。

髙橋 アメリカは社会保障番号(SSN:ソーシャルセキュリティナンバー)と銀行口座がリンクしているから、給付金の〝実施決定〟から2週間で振り込まれた。先進国であらゆる生活インフラとマイナンバーがひも付けられていないのは日本だけ。マイナンバーの導入も先進国のなかでビリだった。

須田 SSNを取得していない友人がニューヨークに住んでいて、電気料金が払えなくなったことがありました。そうなると、わざわざ治安が悪いハーレムの電力会社の窓口に行かないと払えない。

左派が嫌がるIT化

髙橋 アメリカではSSNを取得しないと、銀行口座が開けない、クレジットカードがつくれない、運転免許証が取れない、保険に入れない。つまり、SSNナシでは生きられない。アメリカに住んだときは、空港に着いたその日のうちにSSNの取得手続きのため、州都の社会保険事務所に直行しました。

須田 日本以上に個人のプライバシーを大切にするアメリカでさえ、SSNがインフラの一つになっている。日本もコロナを機にIT化が進むといいんですが。

髙橋 それでも、共産党は「給付が遅い」と批判しながら、「国民総背番号制」といってマイナンバー制にも反対している。それでどうやって早く配れというのか。どっちも両立させるなんてムリ。セキュリティを高めてマイナンバーを普及させるしかありません。
 住基ネットの設立にかかわったとき、導入を嫌う自治体が多かった。バックに公務員の労働組合である自治労がいる左派が、「プライバシーが危ない」と騒いで使わないように働きかけていた。IT化が進めば、公務員は削減されるから。結局、住基ネットは消滅してマイナンバー制と入れ替わることになった。予算のムダでした。

須田 ようやく政府は、給付金の申請で得られたマイナンバーと銀行口座をひも付ける方向で進めています。

髙橋 でも最初は、その情報を捨てるところだった。いまの法律では次回の給付金に活用できないというから笑っちゃう。「ひも付ける」といっても、1つのマイナンバーに1口座だけなのも物足りません。
 ほかの先進国と同じように、すべての預貯金口座のひも付けを義務化し、マイナンバーで税務申告させればいい。そうすれば銀行口座の出入金履歴を遡れるので、業務は効率化する。納税漏れもなくなって、増税する必要もなくなります。

須田 髙橋さんは、確定申告もネットで完結させているんですか。

高橋 もちろん。e-Taxに登録してある銀行口座で何でも決済しているから、確定申告もすぐ終わります。払いすぎることはあっても、未払いになることはない。だから今後、国税庁は税理士を使って確定申告している人だけを調べることになるかもしれない(笑)。政治家もすべての取引を銀行口座にしておけば、クリーンな政治家として売りになる。将来的に税理士もいなくなるでしょう。

須田 公務員から反発が来るんじゃないですか。国税庁の国税専門官以上は、退官すると自動的に税理士資格を取得できる。役所をやめたら税理士というのが彼らの王道ですから。

髙橋 左派にとっても都合が悪い。税務署長の経験もあるけど、共産党系の民商(全国商工団体連合会)対策が大変だった。確定申告期限前の最後の3日間、「署長に会わせろ」と民商が大挙して押し寄せる。つるし上げられると面倒なので、近くのホテルで待機していた(笑)。確定申告が完全にIT化すると、彼らの存在も必要なくなる。だから反対してるってわけ。

須田 彼らは「税務署に顔が利く」「公的なお金を借りやすくなる」というのが売りですから。IT化は職業が淘汰されるだけでなく、民商のように特定の政党と結びついている既得権益層をも潰すことになる。 持続化給付金問題と〝IT後進国〟問題は、「マンパワー削減」という点で一致しているんです。

髙橋 結局、日本の足を引っ張るのはいつも同じ連中。彼らを打破しないと、有事に同じ失敗をすることになるよ。
髙橋 洋一(たかはし よういち)
1955年、東京都生まれ。東京大学理学部数学科・経済学部経済学科卒業。博士(政策研究)。80年に大蔵省(現・財務省)入省。大蔵省理財局資金企画室長、プリンストン大学客員研究員、内閣府参事官(経済財政諮問会議特命室)、内閣参事官(首相官邸)等を歴任。現在、株式会社政策工房代表取締役会長、嘉悦大学教授。2008年、『さらば財務省!』で第17回山本七平賞受賞。ほかに『「文系バカ」が、日本をダメにする』など著書多数。
須田 慎一郎(すだ しんいちろう)
1961年、東京都生まれ。日本大学経済学部卒。経済紙の記者を経てフリー・ジャーナリストに。また、2007年から12年まで内閣府の多重債務者対策本部有識者会議の委員を務める。読売テレビ「そこまで言って委員会NP」やDHCテレビ「真相深入り! 虎ノ門ニュース」などに出演中。『夕刊フジ』の連載「金融コンフィデンシャル」も人気を博している。

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