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中村逸郎氏(筑波学院大学教授)
1956年生まれ。ロシア研究の第一人者。学習院大学大学院政治学研究科博士課程単位取得退学。筑波大学人文社会系教授を経て現職。2017年、『シベリア最深紀行』で、梅棹忠夫・山と探検文学賞を受賞。『東京発モスクワ秘密文書』『ロシア市民』『ろくでなしのロシア』などの著作がある。

敵は徹底的にやっつける

 プーチン大統領──。ウクライナへの軍事侵攻する意図はないと言いながら、戦争を始める──そんな噓を平然とつくことができる傲岸さ。そして、街々を破壊し、人々を残虐に殺す冷酷非道さ。
 プーチン氏の野蛮性・残虐性は、どこから来るのか。

 1つにはプーチン氏の個人的な幼児体験が大きい。『プーチン、自らを語る』(ナタリア・ゲヴォルクヤン、アンドレイ・コレスニコフ、ナタリア・チマコワ著/扶桑社/2000年)では、次のようなエピソードが語られています。

 プーチン氏は少年の頃、レニングラード(当時)にある5階建て集合住宅の一部屋に家族2人と暮らしていました。台所、トイレは共同で、風呂は銭湯に通うような貧しいところです。そんなプーチン少年にとって、遊び場といえばアパートの廊下や中庭、街頭で、特に階段踊り場の穴に棲むネズミ相手に友達と一緒に棒でいじめて遊んでいたのです。

 ある時、大きなネズミを見つけ、廊下の角に追いつめました。ところが逃げ場を失ったネズミは突然くるりと向きを変えると、プーチン少年に飛びかかってきたのです。驚いて慌てて逃げるプーチン少年をネズミは踊り場を飛び越え、階段を駆け下りて追ってくる。プーチン少年の逃げ足は早く、間一髪ドアを閉めて難を逃れることができたのです。
 まさに「窮鼠猫を嚙む」をプーチン少年は目の当たりにしたわけですが、この実体験をもとにプーチン氏は「敵は、徹底的にやっつけねばならない。少しでも余力が残っていると、敵は力を回復し、将来、状況を逆転させるかもしれない」という哲学をつくり上げます。

 実際に、これまでもテロリストや反逆者に対しては地球の裏側まで探し出し、角(コーナー)に追い詰めたうえで、最後は捕まえる。プーチン氏は、
「我々はどこでもテロリストを追跡する。空港なら空港で。こう言っちゃ悪いが、便所にいても捕まえて、やつらをぶち殺してやる。それで問題は終わりだ」
 とまで言っています。
 プーチン氏の徹底性、粘着性、残虐性が垣間見える発言です。(つづきは本誌にて!)
『WiLL』2022年6月号(4月26日発売!)

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◎『WiLL』2022年6月号目次
百田尚樹:橋下徹の怪しい言説 キミは中露の代弁者か/「ロシア・中国・北朝鮮“魔の三核地帯"に立つ日本」安倍晋三・北村滋:プーチンは力の信奉者/高市早苗:《早苗の国会月報》日本は核兵器の最前線/ナザレンコ・アンドリー:ロシアに降伏したら地獄が待っている/岩田清文(元陸上幕僚長)・門田隆将:これならできる核共有(シェアリング)/中村逸郎(筑波学院大学教授):ロシアを決して信じるな/廣瀬陽子(慶應義塾大学教授):ハイブリッド戦争の内幕/宮嶋茂樹:グラビア 殺戮と破壊 これが戦争じゃ! 目を背けるな!

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