戦後最高の回顧録
橋本 『安倍晋三 回顧録』(中央公論新社)が刊行されました。北村さんには監修者として、すべての事実確認、第一次内閣から蓄積された資料の提供、写真の選定、事前の安倍さんとの打ち合わせなどご尽力いただいた。1年で18回、計36時間ものインタビューを実施できたのは北村さんのおかげです。
北村 こちらこそ大変お世話になりました。第1次政権に関する評価本はヒドイものばかりで、第2次政権ではちゃんとした回顧録を作ってほしいと思っていました。だから第1次政権が発足した2006年から新聞のスクラップ帳を作っていたんです。
橋本 大変だったでしょう。
北村 300冊を超えましたね(笑)。うちのトランクルームには専用の本棚が2つもあります。朝日新聞や週刊誌にもそれなりの記事があるので、読む媒体が多くて……。
橋本 安倍さんにはそのスクラップ帳をインタビュー前に読んでいただき、当時のことを思い出しながら語っていただいた。だから回顧録には、当時の生々しい記憶がもろに反映されている。ここまで踏み込んだ回顧録は過去に例がありません。戦後最高の回顧録ですよ。
私の苦労話といえば、安倍さんから出版に「待った」をかけられたことくらい(笑)。
北村 かなり踏み込んだ発言をされていました。例えば「私は密かに疑っているのですが、森友学園の国有地売却問題は、私の足を掬うための財務省の策略の可能性がゼロではない」といった。
〈財務省は当初から森友側との土地取引が深刻な問題だと分かっていたはずなのです。でも、私の元には、土地取引の交渉記録など資料は届けられませんでした。森友問題は、マスコミの報道で初めて知ることが多かったのです〉
橋本 安倍さんが生きていたら、大問題になっていますよ。
北村 原稿は2022年1月の時点で完成していましたが、当時は安倍派の会長になられたばかりで、関係者に迷惑をかけたくなかったのでしょう。
橋本 でも、「策略」という言葉のチョイスがうまいですよね。「陰謀」という言葉を使うと陰謀論になってしまいますが、策略というと少しマイルドなイメージがある。(続きは本誌にて!)
北村 こちらこそ大変お世話になりました。第1次政権に関する評価本はヒドイものばかりで、第2次政権ではちゃんとした回顧録を作ってほしいと思っていました。だから第1次政権が発足した2006年から新聞のスクラップ帳を作っていたんです。
橋本 大変だったでしょう。
北村 300冊を超えましたね(笑)。うちのトランクルームには専用の本棚が2つもあります。朝日新聞や週刊誌にもそれなりの記事があるので、読む媒体が多くて……。
橋本 安倍さんにはそのスクラップ帳をインタビュー前に読んでいただき、当時のことを思い出しながら語っていただいた。だから回顧録には、当時の生々しい記憶がもろに反映されている。ここまで踏み込んだ回顧録は過去に例がありません。戦後最高の回顧録ですよ。
私の苦労話といえば、安倍さんから出版に「待った」をかけられたことくらい(笑)。
北村 かなり踏み込んだ発言をされていました。例えば「私は密かに疑っているのですが、森友学園の国有地売却問題は、私の足を掬うための財務省の策略の可能性がゼロではない」といった。
〈財務省は当初から森友側との土地取引が深刻な問題だと分かっていたはずなのです。でも、私の元には、土地取引の交渉記録など資料は届けられませんでした。森友問題は、マスコミの報道で初めて知ることが多かったのです〉
橋本 安倍さんが生きていたら、大問題になっていますよ。
北村 原稿は2022年1月の時点で完成していましたが、当時は安倍派の会長になられたばかりで、関係者に迷惑をかけたくなかったのでしょう。
橋本 でも、「策略」という言葉のチョイスがうまいですよね。「陰謀」という言葉を使うと陰謀論になってしまいますが、策略というと少しマイルドなイメージがある。(続きは本誌にて!)
1946年、秋田県生まれ。読売新聞特別編集委員。慶應義塾大学法学部政治学科卒。読売新聞論説委員、政治部長、編集局次長を歴任。2006年より現職。日本テレビ「スッキリ」、読売テレビ「情報ライブ ミヤネ屋」「ウェークアップ」などに出演。14年度日本記者クラブ賞受賞。主な著書に『総理の器量』『総理の覚悟』(ともに中公新書ラクレ)、『範は歴史にあり』『宿命に生き 運命に挑む』『「二回半」読む』(いずれも藤原書店)などがある。