ガソリン車で何が悪い!――「環境政策」真理教が日本を滅ぼす

ガソリン車で何が悪い!――「環境政策」真理教が日本を滅ぼす

「日本中心」が最優先

 菅総理は「グリーン成長戦略」を打ち出し、電動車100%を2035年までに達成するとぶち上げ、その中でも特に電気自動車(EV)の普及に今後10年間に全力を上げる方針を打ち出した。政府はEVの1台あたりの購入補助費を現行の最大40万円から80万円に倍増するとしている。ここに示されるように、EVこそが自動車のあるべき未来であり、それ以外の選択肢は存在しないかのような議論が政府を中心にどんどん進んでいる。この議論には私はさまざまな違和感を覚える。

 真っ先に問題にしたいのは、菅総理をはじめとする日本の政治家に、日本の製造業をいかに守り発展させていくかという「日本中心」の視点が欠けていることである。世界を代表する大都市の中で、東京ほど空気がきれいな都市は存在しない。それは日本の自動車産業が世界に先駆けて燃費を向上させ、環境汚染物質の除去技術を発展させ、世界の他の国には真似のできないようにしてきたからである。中国などでは吸気する大気よりも排気する大気のほうが空気の質がいいことから「動く空気清浄機」だとさえ評価されているのが日本のガソリン車である。このハイレベルの日本のガソリン車が「CO2を排出するから」という理由で排除され、すべてEVに変わっていかなければならないのだろうか。そんな動きを日本政府が積極的に推し進めていることに疑念を感じざるをえない。

 この「環境政策」は日本車のレベルに到底勝てなくなったEUが仕掛けたゲーム・チェンジの戦略であり、さらにそこに中国がうまく乗っかってきたところがある。EUはCO2の排出量の少ないディーゼル車を普及させてきたが、日本のガソリン車のクリーンさには全く敵わなくなった。フォルクスワーゲンがディーゼル車の環境性能をごまかしていることがバレた「ディーゼル・ゲート」事件は、EU車が環境基準で日本車に完全に敗北したことを象徴する事件となった。この状況をひっくり返すためにEUが戦略として選んできたのが「ライフ・サイクル・アセスメント」(LCA)によるCO2評価である。

原子力発電が絶対不可欠

 LCAとは、資源の採掘から最終廃棄に至るまでのCO2排出量を測定し、これの小さい車を高く評価し、これの大きな車がEU内に輸入される場合には「国境炭素税」と呼ばれる関税を課すというというものだ。フランスでは化石燃料による発電は全電力の1割しかなく、スウェーデンに至っては1%にすぎない。こういうところでバッテリーを含めたEV生産を行えば、日本のように化石燃料に電力を頼っている国で生産するよりも遥かに優遇されることになる。日本での製造は圧倒的に不利にならざるをえず、日本での自動車生産は極めて難しくならざるをえない。そして日本は安定した太陽光発電にも風力発電にも地理的に向いておらず、こうした発電のコストは相対的にかなり高くならざるを得ない。

 こうなると、原子力発電を徹底的に活用しないと、もはや日本の自動車産業は生き残れなくなる。生き残れないのは自動車産業だけでなく、製造業全般がそうなってしまう。それなのに、日本政府はここに至ってさえ、思い切った原発政策を打ち出すことを行わなかった。政府として「こうやって日本の製造業を守ってみせるから、政府を信じてついてきてくれ!」というメッセージは、一切出していないのである。

 そもそもEVにはさまざまな弱点がある。バッテリーの劣化は防げないし、特に急速充電(それでも30分から1時間程度必要)では劣化は激しくなる。したがって中古での販売が難しいだけでなく、劣化したバッテリーの廃棄処分の環境負荷も極めて大きい。これで本当にエコなのかと、問い直す必要がある。

 リチウムイオンバッテリーは過充電ばかりでなく、過放電でも発火しやすい。衝撃を受けただけでも発火しやすいから、事故を起こすと極めて危険である。バッテリーの大量生産で生産コストが急減するとの意見があるが、そんなことは絶対にありえない。大容量バッテリーに不可欠なリチウムは希少金属であり、求められる需要の拡大に供給が追いつかないから、価格の高騰は避けられないからだ。燃えやすい電解液を利用したバッテリーに代わる全固体電池は、自動車に搭載するような大型のものの量産化技術は未確立であり、この点での技術的なハードルはまだまだ高い。長距離走行が可能になるためには重量が200kgにもなる大型のバッテリーを搭載しなければならないが、それだけ重たいものを積み込むことで燃費は当然悪くなる。自宅付近での買い物だけに使用し、そのために軽いバッテリーを搭載したEVを使うというなら現実感はあるが、すべての車の代替として考えるのは実は現実的ではないのである。

「自動車の未来=EV車」ではない

 実際、EV車以外にも自動車の将来の選択肢は広い。たとえば、水素、アンモニアなどを燃料とする燃料電池車もあれば、二酸化炭素と水素を結合させた燃料を利用するe-fuelというものもある。生成する時に二酸化炭素と水素を結合させ、水素を燃料として二酸化炭素を放出するので、新たな二酸化炭素の放出はない仕組みとなる。しかもe-fuelはガソリン車のエンジンなどの内燃機関でもそのまま使えるというメリットがある。当然ハイブリッド車での利用も可能だ。今はバブル的にEVの評価が高いが、現実的な選択肢になった時に、中古では売りにくく、充電するのに時間がかかり、長距離走行には向かないようなEVを人々が買い替え対象として選ぶかどうかはわからないのである。

 日本政府には、自動車の将来像をEVに決め打ちするような愚かなことはやめてもらいたい。将来の自動車には多様な選択があることを許容すべきである。その上でいかに戦えば日本の製造業を守り発展させられるかという視点からものごとを捉え、日本でのものづくりが少なくとも不利益を被ることがないような方針をしっかりと打ち出すべきだ。外国に対していい顔をするためだけに、国内の製造業にそのツケをしわ寄せするようなあり方は絶対あってはならないのではないだろうか。
朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。

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