中国はTPPの理念から「ほど遠い」
中国がTPP(環太平洋経済連携協定)への加入を真剣に考えている。3月5日に始まった全国人民代表大会の政府活動報告においても、李克強首相はTPPへの加入を前向きに検討することを語った。
中国がTPPへの加入を目指すのは、TPPに対してイギリスが加盟申請を行うなど、環太平洋に限定された地域連携協定の枠組みを脱して、WTOに代わる包括的な世界協定に進化していく道筋が開けてきたこととも関わるだろう。RCEPとは協定のレベルに大きな違いがあり、この枠組みの中に入れるか排除されるかは中国の将来にとっても非常に重要なものになることを、中国はよく理解している。
だがWTO(世界貿易機関)に加入後に中国がWTO協定をまったく遵守していないのはすでに経験済みの話であり、中国がTPPに加入した後にTPPの条件を満たすようになることは、とてもではないが考えることはできない。自国企業を補助金などで保護し、自国内の企業には外資系企業であっても共産党委員会の設立を求め、その意向を踏まえた活動しかさせないようなやり方を行う中国のあり方は、TPPの理念にはまったく一致しない。そもそも中国は国有企業回帰と非市場経済化の方向を強めており、TPPの趣旨にはまったく一致しない。従って中国が何を言ってきたとしても、TPPに加盟させるわけにはいかない。
この点で現在試金石となっているのは、メキシコへの対応である。メキシコのロペスオブラドール政権は3月2日に国営の電力公社を優遇する電力産業法の改正を実現した。民間事業者の生み出す安価な電力の買取りの優先度を引き下げることによって、高コスト体質の電力公社を助ける道をメキシコ政府は選んだのである。これはTPPのみならず、メキシコがアメリカやカナダと締結したUSMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定)にも違反する事案だ。日本の三井物産、三菱商事、東京ガスなどもメキシコの発電事業に関わっており、TPPに違反する立法がこのまま認められれば、これらの企業は大きな損失を被ることになる。
このメキシコへの対応をなあなあで済ますことは許されない。日本政府はこれら日本企業のISDS条項によるメキシコ政府への提訴を積極的に後押しする姿勢を示すべきである。メキシコ政府は国際投資紛争解決センターの仲裁が出ても、これに素直に従わない可能性もかなり高いと思われるが、この時にメキシコのTPP加盟資格を凍結するくらいの処置はしっかりと取るようにしなければならない。むしろこの可能性をちらつかせながら、紛争処理にメキシコ政府を素直に従わせるように誘導していくべきだろう。高いレベルの自由化を約束できない国には厳しいペナルティーを科す姿勢を明確にし、これをもって中国の参加に対するハードルとすることから逃げてはいけないと考える。
中国がTPPへの加入を目指すのは、TPPに対してイギリスが加盟申請を行うなど、環太平洋に限定された地域連携協定の枠組みを脱して、WTOに代わる包括的な世界協定に進化していく道筋が開けてきたこととも関わるだろう。RCEPとは協定のレベルに大きな違いがあり、この枠組みの中に入れるか排除されるかは中国の将来にとっても非常に重要なものになることを、中国はよく理解している。
だがWTO(世界貿易機関)に加入後に中国がWTO協定をまったく遵守していないのはすでに経験済みの話であり、中国がTPPに加入した後にTPPの条件を満たすようになることは、とてもではないが考えることはできない。自国企業を補助金などで保護し、自国内の企業には外資系企業であっても共産党委員会の設立を求め、その意向を踏まえた活動しかさせないようなやり方を行う中国のあり方は、TPPの理念にはまったく一致しない。そもそも中国は国有企業回帰と非市場経済化の方向を強めており、TPPの趣旨にはまったく一致しない。従って中国が何を言ってきたとしても、TPPに加盟させるわけにはいかない。
この点で現在試金石となっているのは、メキシコへの対応である。メキシコのロペスオブラドール政権は3月2日に国営の電力公社を優遇する電力産業法の改正を実現した。民間事業者の生み出す安価な電力の買取りの優先度を引き下げることによって、高コスト体質の電力公社を助ける道をメキシコ政府は選んだのである。これはTPPのみならず、メキシコがアメリカやカナダと締結したUSMCA(アメリカ・メキシコ・カナダ協定)にも違反する事案だ。日本の三井物産、三菱商事、東京ガスなどもメキシコの発電事業に関わっており、TPPに違反する立法がこのまま認められれば、これらの企業は大きな損失を被ることになる。
このメキシコへの対応をなあなあで済ますことは許されない。日本政府はこれら日本企業のISDS条項によるメキシコ政府への提訴を積極的に後押しする姿勢を示すべきである。メキシコ政府は国際投資紛争解決センターの仲裁が出ても、これに素直に従わない可能性もかなり高いと思われるが、この時にメキシコのTPP加盟資格を凍結するくらいの処置はしっかりと取るようにしなければならない。むしろこの可能性をちらつかせながら、紛争処理にメキシコ政府を素直に従わせるように誘導していくべきだろう。高いレベルの自由化を約束できない国には厳しいペナルティーを科す姿勢を明確にし、これをもって中国の参加に対するハードルとすることから逃げてはいけないと考える。
TPPを日本有利に発展させよ
さて、チャイナリスクを考慮する中で、アメリカ・日本・インド・韓国・オーストラリア・ニュージーランド・ベトナムを統合するEPN(経済繁栄ネットワーク)構想が、トランプ政権期に米国務省から提起されてきた。EPNはこのように地域限定的なものにすぎなかったが、日本としてはTPPをこのEPNを事実上内包するものとして発展させていくことを構想した方がいいのではないだろうか。こうした姿勢が明確になれば、TPPに一度背を向けて離脱したアメリカにしても参加しやすくなるだろうし、EUなども取り込んでいきやすくなる。この中で非市場経済国である中国を切り離していくことを戦略的に考えるべきではないだろうか。
TPPにこうした性質を持たせることによって、台湾をTPPに引き入れることも容易になるはずだ。自民党内に発足した「台湾政策検討プロジェクトチーム」には、台湾を事実上独立国として扱うような台湾関係法の成立を目指す動きなども強めてもらいたいが、TPPを戦略的に位置づけて、ここに台湾を取り込みながら中国を排除する枠組みとして進化させることも、ぜひとも考えてもらいたいものだ。
TPPにこうした性質を持たせることによって、台湾をTPPに引き入れることも容易になるはずだ。自民党内に発足した「台湾政策検討プロジェクトチーム」には、台湾を事実上独立国として扱うような台湾関係法の成立を目指す動きなども強めてもらいたいが、TPPを戦略的に位置づけて、ここに台湾を取り込みながら中国を排除する枠組みとして進化させることも、ぜひとも考えてもらいたいものだ。
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。