最新韓国経済事情~自滅へ向かってまっしぐら~

最新韓国経済事情~自滅へ向かってまっしぐら~

ことごとく裏目 文在寅の経済政策

 現在韓国経済は自滅に向かってまっしぐらである。

 文在寅政権の考え方は単純だ。資本主義は大企業が資本力にものを言わせて庶民を苦しめる邪悪なものだとした上で、大企業の横暴を政府の力で食い止め、政府による経済への介入を強めていかない限り、望ましい経済が実現することはないというとらえ方である。

 具体的には、残業時間を含めた労働時間が週52時間を超えることを禁止し、誰もが人間らしい生活を実現できるようにするのだとした。それでは会社が回らないというのであれば、もっと従業員を雇えばいいではないか、そうすれば雇用も増えるではないかというわけだ。

 低い最低賃金を引き上げないと人間らしい暮らしができないということで、2年間で約30%引き上げることもやった。生涯を安心して暮らせるようにするために、定年延長を強力に進めた。

 これで過重な労働時間から解放され、失業は減り、賃金は増え、老後の不安も解消し、働いている人たちはみなハッピーになるはずだった。

 だがこれがすべて裏目に出て、経営体力に余裕のない事業体がバタバタ潰れ、逆に失業を一気に増やした。定年延長で年配者を継続雇用しなければならなくなった企業は、若者の新規採用を控えるようになった。雇用が減る中で年配者の雇用が増やされれば、そのしわ寄せが若者を襲うのは必然である。

 20代の体感失業率(ちゃんとした職に就きたいと思いながら、短時間のアルバイトに頼っている人たちなども潜在的には失業者と同じとみなして算出する失業率)は26.8%に達している。韓国トップのソウル大学でも新卒の就職率は7割を下回り、韓国内で正社員として新卒雇用されるのは、実は10人中1人しかいなくなったという調査結果もある。

 雇用を安定化させる目的で、非正規職の場合には採用から2年が経過したら正規職にしなければならないことにしたが、皮肉にもこれが2年ごとに解雇される不安定な生活を送らせることにもなった。

 安定した生計が成り立たないことによって未婚率が急上昇し、すでに男性の未婚率は50%を超えている。2.1以上でないと人口の維持が難しいとされる合計特殊出生率は0.92となり、少子化は日本以上に深刻だ。これは韓国の未来を奪い取っている。

 高まる失業の増大に対して、文在寅政権は公務員を無理して増やすことで解決する道を選んだ。例えば、大学の空き教室の照明やエアコンの電源を落とすことを専門的に行う公務員を採用したりしている。このように生産性や必要性の見地で疑問符が付く雇用を無理やり創出し、見かけ上は失業率がなるべく上がらないように頑張っているわけだ。こうした非効率が蔓延する中で、韓国はビジネスを行うのに魅力のない国になり、稼ぐ力がどんどん弱っている。

 さらに、いわゆる「徴用工」問題などで、韓国と付き合うカントリーリスクを感じた日本企業が、静かに韓国離れを始めている。反日だけでなく、反米姿勢も強まっている中で、米企業もまた静かに撤退を始めている。

枯渇する外貨 ~米韓スワップ協定のジレンマ~

 この状況で、海外との取引に必要な外貨の枯渇が起こる可能性も指摘されている。
 建前としては韓国には4000億ドルを超える潤沢な外貨準備があることになっているが、本当はすでにカツカツなのではないかと見られている。
 というのは、海外取引と深い関係を持つ韓国輸出入銀行が今年に入ってすでに90億ドルほどの外債を発行して、ドルをかき集めているからだ。それだけではまだ足りないようで、韓国ウォンの価値を安定させるための「外平債」(外国為替平衡基金債券という名前のドル建て国債)を、韓国政府はこの7-9月期に15億ドル分を追加発行してドル集めに走ることも公表した。

 いざという時に多額のドルを調達できる米韓スワップ協定は9月に期限を迎える。
 韓国としては上限600億ドルまで手に入れられるこのスワップ協定の延長を是が非でも求めたいところだろうが、アメリカは延長の条件として、中国や北朝鮮を利する行動はしないことを当然求めるであろう。それは社会主義の側に立つ文在寅政権としては、簡単には呑めない話である。

 社会主義的な理想を掲げ、それに向かって邁進した結果として、稼ぐ力が奪われ、産業の空洞化が進み、将来の希望を奪っていく。生産性・効率性を軽視しては稼ぐ力がなくなり、経済が衰退する。搾取(さくしゅ)をなくして富を平等に配れば、みんなが幸せになると社会主義者は思っているが、そんな理想が実現できる経済力にはまだまだ及んでいないのだ。

 日本の経済政策を考える場合には、この韓国の失敗を反面教師として学ぶのは有効であろう。
 (1915)

朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。

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