ナザレンコ・アンドリー:リベラル(自由主義者)なのにコ...

ナザレンコ・アンドリー:リベラル(自由主義者)なのにコロナ下では「私権制限」を推奨するワケ

 その拡大から1年が経っても国民の関心を最も集めている話題、武漢ウイルス。超過死亡の統計を見れば、ウイルス自体による直接的被害が少ないものの(むしろ国内死亡数が11年ぶりに減少した)、マスメディアが煽るパニックとそれに応えざるを得ない政府のコロナ対策に間接的・直接的被害を受けた方々の数は計り知れない。

 10万人を超えたコロナ解雇、何か月も連続で月間最多件数を更新するコロナ破綻、強制的自粛で増えるDVと精神病… これらの原因はウイルスではなく、60代以下の死亡率が1%(しかも死亡者の殆どはどんな病気でも重症化しやすい高齢者)にも満たない病気を必要以上に恐れて経済を停止させたがる人。そういう意味ではコロナ禍はもはや「人災」と呼んでもいいだろう。

リベラル(自由主義者)なら私権制限に反対するのでは…

 社会に広まったパニックのせいで私権制限が日毎に増え、今の日本は主権を回復して以来最も不自由かつ独裁に近い状態になっているとも思える。

 権力者がお店の営業時間、個人が移動できる距離、JRの便数や電気をつけていれられる時間帯まで「要請」と言いながらも実情としてはほぼ強制的に決めようとしている。

 ところが、それと同時に不思議な現象が起きている。安倍政権の頃から事あるごとに「独裁がー、権利がー」と悲鳴をあげていた自称リベラルはロックダウンにダンマリか、むしろ更なる制限を推奨しているのだ。

 「自由に反対する自由主義者」と聞くと「えっ」ってなるかもしれないが、日本のリベラル&左派は単なる社会主義者だと理解すれば納得できるではないかと思う。そう、共産党も立憲民主党も社民党も、そして特に令和新撰組は左翼であっても、決して自由主義者ではない。おそらくは自由競争によって必然的に生じる格差を嫌い、成功者そのものを妬み、努力する者が政府に搾取され努力せぬ者は無条件に金をばらまかれるシステムを目指しているわけだ。

 彼らのようなルサンチマンの塊みたいな集団にとっては、人々の日常生活が政府に管理され、皆が政府のお金に頼らないと生きてられないような状況こそ理想。それは共産主義が目指している計画経済にそっくりの体制で、さらには支配者側に回って国の富を管理する立場になるのは自分たちという謎の自信が彼らにあるからだ。
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「五輪中止」の主張も本当に国民のことを思ってなのか?

社会主義政策は国家貧困への道

 では、社会主義らしき政策の何が問題なのか?答えはとても簡単。人類史上、社会主義体制は様々な国で試されたにも関わらず、たった一度でも成功したことなく、貧困以外の結果をもたらしたことがないからだ。現状の日本の政策やその結果を見てもその問題点がすぐ浮かぶ。
 例えば、休業や時短要請。飲食店でのクラスター発生率は全体の5分の1以下であるにも関わらず、多くの自治体が飲食店をスケープゴートにしようとし、科学的根拠を示していないまま飲食業界に理不尽な制限を加え続けている。

 代わりに「要請協力金」なるものを約束しているが、例えば大阪では未だに2月8~28日分でさえ49%しか支給されず、半分の経営者にとって本当にただの約束でしかない。「自由を金で買う」発想自体は危険だが、百歩譲ってそれを認めたとしても、支給の仕方が問題だらけだ。
 市場の基本は「競争力の高い企業が生き残る」ことにあるが、協力金の上限を一律6万円としている現制度は全く市場原理を考慮していない。一日6万円の売上を出したことないような店にとって緊急事態は第二のバブルで、仕事しないほうがぼろ儲けできる時期になっている。逆に、業界で成功を収め、売上も多かった店は当然経費も高くなることが多いのであり、この程度の協力金ではやっていけず倒産に追い込まれてしまう。しかも、自治体は要請にとどまらず、休業・時短命令まで出しているので、消費者側は応援したい店を助けようにもできない。

 政府が消費者の意思を問わず、経営者の営業の自由も認めず、その代わりに根拠も不確かに決めた金額を血税から与える制度は不正の温床の他ならないし、資本主義社会ではあってはならないもの。自由競争無くして経済発展はありえないのだ。
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飲食店ばかりがなぜやり玉に?
 そう考えると、批判の多かったGoToイートキャンペーンのほうがずっと優れていたのではないか。なぜかというと、消費者が普段から沢山利用してくれるところこそより多くの支援金を貰うシステムになっており、競争原理が働いていたからだ。でも日本の左翼はこの公平性あるシステムを一所懸命叩き、中止にさせ、代わりに直接給付を主張してきた。
 言うまでもないが、飲食店の休業で経済的損害を被るのは飲食店の経営者だけではない。お店への協力金は広く知られているが、中間の卸業者は?酒屋さんは?料理の材料を販売する業者は?代行やタクシーは?ドミノ現象で企業がドンドン倒れていき、影響している要素が多すぎてそれぞれの関係者の赤字を正確に計算することも不可能だし、全てを血税で補うことも絶対に無理。相次ぐ閉店や倒産、要請を無視し始めている営業者の増加はその証であろう。

「経済より命」の欺瞞

 私たちは今、社会主義失敗の実例を目の当たりにしていると言っても過言ではないだろう。何ら不思議なことはない。なぜなら、基本的に政治家と官僚は安定的な「給与」で生活しており、その「給与」が大幅な減額、もしくは突然の解雇でもされない限り、おそらくは市場のダメージが人々の懐に与える被害を理解できないからだ。自ら経済活動を実感していない人に経済の管理を任せてしまう政策が成功するはずがない。
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「官僚」は経済活動の本質がわからないのか―
 では、どうやって感染防止と経済のバランスを保てたか?最初からオリンピック開催と同じ考え方で対策を考えていればよかったと思う。つまり、すぐに経済停止を考えないで、「どうやって安全に営業してもらえるか」と考え、感染予防対策の支援に集中すればよかったではないか。何ヵ月間も全ての店に休業・時短を強いながら6万円支払う政策のコストと、消毒・検温・仕切り設置を義務付け、それに必要な道具を支給する政策のコストと、どちらのほうが安いか一目瞭然だろう。お店側もクラスターが発生してしまえば一番困るわけだから、闇営業など考えずに、全力で協力してくれたはずだ。
 野党は「経済より命」と主張するが、それは言葉を選ばずに言えば「国にたかって」生きている人の発想であり、経営者と労働者にとって経済と命は一緒。60才代以下の死亡率は0.1%以下であるような病気を止めるために若者・現役世代を貧困に追い込むような方針を今すぐにでもやめなければならない。

 こうした政策はコロナ以上に命を奪い、国を亡ぼす。マスメディアの煽りに騙されず、今こそ冷静に危機管理を行い、感情ではなく科学と統計に基づいてビジネスと感染予防が両立する対応が求められるであろう。
ナザレンコ・アンドリー
1995年、ウクライナ東部のハリコフ市生まれ。ハリコフ・ラヂオ・エンジニアリング高等専門学校の「コンピューター・システムとネットワーク・メンテナンス学部」で準学士学位取得。2013年11月~14年2月、首都キエフと出身地のハリコフ市で、「新欧米側学生集団による国民運動に参加。2014年3~7月、家族とともにウクライナ軍をサポートするためのボランティア活動に参加。同年8月に来日。日本語学校を経て、大学で経営学を学ぶ。現在は政治評論家、外交評論家として活躍中。ウクライナ語、ロシア語のほか英語と日本語にも堪能。著書に『自由を守る戦い―日本よ、ウクライナの轍を踏むな!』(明成社)がある。

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