門田隆将:日中友好という名の「侵略」をどう止めるか

門田隆将:日中友好という名の「侵略」をどう止めるか

外務大臣が一番の親中派では―
 日中国交正常化50周年を翌月に控えた2022年8月、二つの出来事があった。

 まず8月4日、中国は台湾を封鎖して特別軍事演習を行い、日本のEEZ(排他的経済水域)内に5発のミサイルを撃ち込んだ。東アジアの平和を根底から覆そうとする暴挙である。
 しかし、岸田文雄政権は電話での抗議のみで、NSC(国家安全保障会議)を開くこともなく、中国に怒りさえ示すことができなかった。しかも、中国側は、「両国は関連海域で境界を決めておらず〝日本のEEZ〟という見解は存在しない」というトンでもないコメントを発表した。見事な〝友好態度〟である。

 50年前の国交正常化時のことを知る人間には許しがたい思いしかこみ上げてこないだろう。当時、スターリン批判に端を発した中ソ対立が、その3年前の「ダマンスキー(珍宝島)事件」で緊張状態が極限にまで達し、北京や上海では、ソ連の核攻撃に備え、避難訓練までおこなわれる危機的状況に突入していた。おまけに破壊と殺戮が全土を覆った文化大革命によって、中国の大地は〝荒野〟と化していたのである。

 日本のカネと技術でインフラを整え、荒廃から脱するために中国共産党は必死だった。長い時間と労力をかけて自民党に食い込み、ついに政権中枢に辿りつくのである。しかし、日本側はそんな中国の事情をまったく知らないまま、功名心に駆られた田中角栄首相と大平正芳外相のコンビで、北京に乗り込み、交渉ではいいように翻弄されたのである。

 初日の晩餐会での田中首相のスピーチで「多大なご迷惑」という言葉の中の「迷惑」という日本語を「麻煩」という中国語に逐語訳してしまい、中国側が激怒。当初から会談のペースを完全に「中国に握られてしまった」のである。
 相手の実情も知らないまま乗り込んだツケは大きかった。1972年9月29日、日中共同声明には、「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」という、その後の歴史問題で繰り返される文言が挿入された。

 その後、日中友好に逆らうことが許されない〝日中友好絶対主義〟に陥った日本は、中国へのODAが総額3兆6千億円以上にも達した。日本企業自身がODAに群がり、技術とノウハウを惜しみなく提供して、中国のインフラはどんどん整えられ、やがては日本のGDPを抜くに至る。田中派(今の平成研)と大平派(宏池会)は中国から優遇され、日本企業と中国双方から利益を受け、〝親中派〟として歩んだのである。
門田隆将:日中友好という名の「侵略」をどう止めるか

門田隆将:日中友好という名の「侵略」をどう止めるか

中国を利する施策ばかりの方
 この8月に明らかになったもう一つの問題は、東京都の外国人起業家への「資金調達支援事業」だ。
 無担保・保証人なしで外国人経営者に起業資金「1500万円」を融資するというもので、条件は日本国内において「創業5年未満」で在留資格を有している者なら「誰でもOK」というものだ。6月28日から開始された制度だが、中国で話題沸騰になり、8月に入って、日本でも大問題となったのだ。

 かねて小池百合子都知事の中国への〝奉仕ぶり〟は凄まじい。2020年にコロナが蔓延し始めた2月、都が備蓄していた医療用防護服を中国に33万6千着も無償提供したことは記憶に新しい。問題は日本でもマスク不足などが叫ばれた「2月下旬」になって20万着も提供したことだ。

「小池知事は都民よりも中国人の方が大切なのか」
 そんな声が上がったのも当然だろう。
 太陽光発電パネルの設置を新築の建物に義務化する都の方針も、太陽光パネルがほとんど中国製であることから「中国優遇策」との大非難が巻き起こった。その極めつけが今回の無担保・保証人なしの1500万円融資だったのだ。

「もし銀行マンが無担保、保証人なしの融資をやったら、その時点で懲戒解雇になるのは確実。小池氏がそんな常識を知らないはずもないので、露骨な中国人への優遇策を承知でやっていることになる。融資された1500万円を使い切ったら逃げるのは想像できますし、仮に経営に成功したら、東京都は中国人経営者だらけになるということです。コロナ禍でこれほど都民が困っている時に、それに乗じて、中国人をさらに呼び込もうという魂胆が恐ろしい。完全に中国の利益のために小池氏は動いています」(都政担当記者)

 安倍氏死去で親中勢力は、さらに勢いを増している。中国の属国に向かって走る国家と首都の領袖に鈴をつける人間はいないのか。
門田 隆将(かどた りゅうしょう)
1958年、高知県生まれ。作家、ジャーナリスト。著書に『なぜ君は絶望と闘えたのか』(新潮文庫)、『死の淵を見た男』(角川文庫)、『疫病2020』(産経新聞出版)など。『この命、義に捧ぐ』(角川文庫)で第19回山本七平賞を受賞。最新刊は『新・階級闘争論』(ワック)。

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