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【朝香 豊】米国大統領選の結果にかかわらず…日本は「スパイ天国」脱却を急げ

 世界情勢の行方に大きく影響を与える米国大統領選の結果が間もなくでる。トランプ再選が日本・そして自由主義諸国にとって望ましいと考えるが、トランプ・バイデンいずれに決まるにせよ、日本は自らの力でその安全を確保するために「必ず」行わなくてはならないことがある。それが「スパイ天国」からの脱却だ。

ファイブアイズ参加は現実的か

 今年の7月に、河野防衛相(当時)がイギリス保守党のオンライン勉強会に参加した際に、アングロサクソン系の5カ国(アメリカ、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド)の秘密情報共有ネットワークである「ファイブアイズ」に日本が参加する案を提起したところ、英国議会外務委員会のタジェンダット委員長が歓迎の意を示したということが報道された。

 当初はこれはイギリス側のリップサービスであり、真に受けるのがおかしいという見方が多かったが、イギリスはその後ジョンソン首相までが歓迎の意を示した。対中関係で微妙な問題が関わっているため、「親分」たるアメリカが表に出てきてはいないが、ジョンソン首相の行動から考えれば、英米間でこの点の話し合いはできていると考えるのが普通であろう。
 
 この話が持ち上がった背景には、当然ながら、異型の大国である中国の著しい台頭がある。かつてのソ連とは違って、中国は国際経済の中に大きな根を張っている。世界の貿易シェアでは今や中国は世界一であり、ヨーロッパとアメリカと日本を併せたよりも大きな人口を抱えているのも魅力的に映る。それゆえにどの国も中国とはなかなか直接的には対峙しにくいという現実がある。

 このまま放置すれば「自由を基調とする人間的な社会」が「圧迫と専制を基調とする非人間的な社会」に敗北する流れが見えてきている。そのためには西側の力を結集し、そのレベルを引き上げなければならない。この点で地理的な面で中国との関係も深く、またその影響も強い日本が持つ情報は非常に重要になっている。

 さらに言えば、国際的な原材料・部品のサプライチェーンから中国を切り離そうとする「経済繁栄ネットワーク」(EPN)構想などが動いているが、これとファイブアイズへの日本加入問題は連動していると見るべきだろう。

 7月末に開かれた米豪外交防衛相会談(ツープラスツー)では、既存のファイブアイズの情報共有システムに経済情報まで拡大させることが議論された。経済を軍事から切り離すことをせずに、一体化させて中国への対抗を進めるというのが基本的な考えになっているのである。そしてその枠組に日本を取り込んでいくというのは、英米の戦略面から見ても合理性は高い。

日本=スパイ天国は妄想ではない

 だが、日本が今すぐにでもファイブアイズに完全な形で加盟できると考えるのは無理がある。冒頭にも記した通り日本は「スパイ天国」であるからだ。「スパイ天国」というのは保守派がでっち上げた幻想などということを言う左派言論人もいるようだが、それは違う。

 アメリカに亡命したレフチェンコが1982年に米下院情報特別委員会の秘密聴聞会でソ連の対日積極工作を暴露した。レフチェンコの証言によれば、レフチェンコが操ったエージェントには、石田博英元労相、山根卓二産経新聞編集局次長、瀬島龍三伊藤忠商事会長なども含まれていた。日本のスパイ防止意識の驚くべき希薄さが正直に指摘され、日本の「スパイ天国」ぶりがはっきりと示された事件であった。

 近年になってようやく、特定秘密保護法・不正競争防止法・改正外為法などによってスパイ行為の規制の網は一応かかったことになっている。だが、罰則規定があまりにも甘いと言わざるをえない。ファイブアイズに加入して今までにないレベルの情報を入手できるようにするためには、スパイ行為に対してスパイ行為にふさわしいレベルで罰則を用意する必要がある。別途にスパイ防止法の制定を目指さないとしても、少なくとも既存の法律の罰則規定の強化は必須である。

 罰則の厳格化だけでなく、民間企業まで含めた厳しいセキュリティクリアランス制度の導入も必要不可欠だ。セキュリティクリアランス制度は、情報漏洩の恐れがないと認められた人だけしか機密情報を扱えないようにするために、扱える人物を選定する際に厳格な審査を行うというものだ。特定秘密保護法によってこのセキュリティクリアランス制度は公務員に関しては導入できたと言えるが、民間企業にまで対象を広げる必要はあるだろう。

 もともとファイブアイズは秘密組織であったはずで、仮に日本がファイブアイズに加盟したとしても、それを公言する必要はない。全部の体制が整うまで参加しないというのではなく、防衛省が集めている中国・北朝鮮・ロシア・韓国などの軍関連の通信傍受の情報(シギント)をファイブアイズで共有することなら、今でもできるだろう。世界は軍事・経済・情報が一体化して動くのが前提となっており、その中で西側の中で枢要な役割を日本が果たすのが求められている。

 従来の枠組みを抜け出して日本がファイブアイズに参加するのは、非人間国家である中国との対峙の中では、当然行うべきものだと考える。
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朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。

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