8月10日、傲慢な表情とふて腐れたような歩き方で、いかにも中国共産党を体現する趙立堅報道官が、トランプ政権が香港政庁トップら11人に制裁を科したことへの対抗措置として「香港問題で言語道断な振る舞いをした」11人のアメリカ人を制裁対象にしたと発表した。
11人の内訳は議員6人と国際人権団体の代表者5人である。この議員の顔ぶれが興味深い。列挙すれば、マルコ・ルビオ(1971年生)、テッド・クルーズ(1970年生)、トム・コットン(1977年生)、ジョシュ・ホーリー(1979年生)、パット・トゥーミー(1961年生)各上院議員とクリス・スミス下院議員(1953年生)。全員が共和党所属で、民主党は1人も入っていない。
これより先、7月には、トランプ政権が、新疆ウイグル自治区の中共幹部4人に制裁を科したことへの報復として、中共側も4人の米国政治家を入国禁止とした。列挙すれば、常連のルビオ、クルーズ、スミスに、政府の一員であるサム・ブラウンバック「国際宗教の自由」大使(1956年生。元上院議員、元カンザス州知事)。やはり全員共和党である。
この1年間にアメリカで成立した香港、ウイグルに関する対中制裁法案はいずれもルビオとクルーズが主導した。またリストには名前がないが(本人はショックだろう)、中国スパイの摘発強化を議会で主導してきたロブ・ポートマン上院議員(1955年生。上院国土安全捜査小委員長)もやはり共和党である。
ちなみに、ブラウンバックは、最も早い段階から日本人拉致問題に尽力してくれた上院議員(当時)で、スミスも、横田早紀江さんが下院外交委員会で証言した時の共同議長だった。人権に関する彼らの姿勢は一貫している。
トランプは、大統領権限を拡大解釈して中国に関税戦争を仕掛け、台湾との関係も加速度的に強化してきた。アメリカの対中強硬姿勢は、共和党政権であれ民主党政権であれ変わらないと言う評論家が少なくないが、その楽観(人によっては悲観)の根拠を示してほしいところだ。中共は、ホワイトハウス、議会とも民主党が押さえることを切望しているはずである。
トランプは、安全保障や人権にはさほど関心が強い方ではない。しかし経済取引の分野については歴代大統領中、知識、経験とも自分がナンバーワンという強い自負を持つ。その分野で中共にコケにされることは絶対に許せない。
独裁体制である以上、習近平が一言命じれば、知財窃盗、テクノロジーの強制移転など数々の不正を明日にも根絶できるはずで、それをしないのは自分をコケにしているからだ、というのがトランプの、今や確信と化した解釈である。中共が不当行為をやめない限り、トランプは対中締め付けに邁進するだろう。
バイデンには、中国に関してそのような強い意識はない。安全保障、人権、経済すべてにおいて一応立派な演説はするが、決断力、実行力が伴わない政治人生を送ってきた。オバマも、副大統領バイデンの優柔不断に辟易し、何ら重要な役割を与えなかった。
ある批評家の「ジュージュー焼き音は聞こえるが、ステーキが出てこない」というバイデン評を、バイデン自身、至言として回顧録に引いている。本人は、今はその弱点を克服し、ステーキを出せると言いたいのだろうが、逆に認知症の進行が取りざたされる中、焼き音すらかすれがちになってきている。
バイデンが副大統領候補に指名したカマラ・ハリス上院議員も、対中制裁法や非難決議に関して、議会で何ら積極的役割を果たしていない。検事出身だが、著書(2019年)で自らの最大業績と誇るのはLGBTQ(性的マイノリティ)の権利拡大に尽力したことで、国際問題に関しては記述自体ほとんどない。
というより、地球温暖化こそ人類にとっての最大脅威で、それへの対処が最大の国際問題と主張する民主党議員の1人である。この立場からは、中共は「敵」ではなく、同じ目標に向かって協力し合うべきパートナーという位置づけになる。
冷戦期にはスクープ・ジャクソン上院議員のような指導的な対ソ強硬派が民主党にもいたが、現在、一貫性と行動力を伴った対中強硬派は共和党に偏っている。年齢的にも、40代前半(コットン、ホーリー)から60代後半(スミス)まで幅広く、層が厚い。
日本の自民党にも共和党を見習ってほしいが、現状は民主党に近いのではないか。ルビオ、クルーズは50歳になるかならないかの年齢で、すでに主導的地位を確立している。若手の奮起を強く促したい。
11人の内訳は議員6人と国際人権団体の代表者5人である。この議員の顔ぶれが興味深い。列挙すれば、マルコ・ルビオ(1971年生)、テッド・クルーズ(1970年生)、トム・コットン(1977年生)、ジョシュ・ホーリー(1979年生)、パット・トゥーミー(1961年生)各上院議員とクリス・スミス下院議員(1953年生)。全員が共和党所属で、民主党は1人も入っていない。
これより先、7月には、トランプ政権が、新疆ウイグル自治区の中共幹部4人に制裁を科したことへの報復として、中共側も4人の米国政治家を入国禁止とした。列挙すれば、常連のルビオ、クルーズ、スミスに、政府の一員であるサム・ブラウンバック「国際宗教の自由」大使(1956年生。元上院議員、元カンザス州知事)。やはり全員共和党である。
この1年間にアメリカで成立した香港、ウイグルに関する対中制裁法案はいずれもルビオとクルーズが主導した。またリストには名前がないが(本人はショックだろう)、中国スパイの摘発強化を議会で主導してきたロブ・ポートマン上院議員(1955年生。上院国土安全捜査小委員長)もやはり共和党である。
ちなみに、ブラウンバックは、最も早い段階から日本人拉致問題に尽力してくれた上院議員(当時)で、スミスも、横田早紀江さんが下院外交委員会で証言した時の共同議長だった。人権に関する彼らの姿勢は一貫している。
トランプは、大統領権限を拡大解釈して中国に関税戦争を仕掛け、台湾との関係も加速度的に強化してきた。アメリカの対中強硬姿勢は、共和党政権であれ民主党政権であれ変わらないと言う評論家が少なくないが、その楽観(人によっては悲観)の根拠を示してほしいところだ。中共は、ホワイトハウス、議会とも民主党が押さえることを切望しているはずである。
トランプは、安全保障や人権にはさほど関心が強い方ではない。しかし経済取引の分野については歴代大統領中、知識、経験とも自分がナンバーワンという強い自負を持つ。その分野で中共にコケにされることは絶対に許せない。
独裁体制である以上、習近平が一言命じれば、知財窃盗、テクノロジーの強制移転など数々の不正を明日にも根絶できるはずで、それをしないのは自分をコケにしているからだ、というのがトランプの、今や確信と化した解釈である。中共が不当行為をやめない限り、トランプは対中締め付けに邁進するだろう。
バイデンには、中国に関してそのような強い意識はない。安全保障、人権、経済すべてにおいて一応立派な演説はするが、決断力、実行力が伴わない政治人生を送ってきた。オバマも、副大統領バイデンの優柔不断に辟易し、何ら重要な役割を与えなかった。
ある批評家の「ジュージュー焼き音は聞こえるが、ステーキが出てこない」というバイデン評を、バイデン自身、至言として回顧録に引いている。本人は、今はその弱点を克服し、ステーキを出せると言いたいのだろうが、逆に認知症の進行が取りざたされる中、焼き音すらかすれがちになってきている。
バイデンが副大統領候補に指名したカマラ・ハリス上院議員も、対中制裁法や非難決議に関して、議会で何ら積極的役割を果たしていない。検事出身だが、著書(2019年)で自らの最大業績と誇るのはLGBTQ(性的マイノリティ)の権利拡大に尽力したことで、国際問題に関しては記述自体ほとんどない。
というより、地球温暖化こそ人類にとっての最大脅威で、それへの対処が最大の国際問題と主張する民主党議員の1人である。この立場からは、中共は「敵」ではなく、同じ目標に向かって協力し合うべきパートナーという位置づけになる。
冷戦期にはスクープ・ジャクソン上院議員のような指導的な対ソ強硬派が民主党にもいたが、現在、一貫性と行動力を伴った対中強硬派は共和党に偏っている。年齢的にも、40代前半(コットン、ホーリー)から60代後半(スミス)まで幅広く、層が厚い。
日本の自民党にも共和党を見習ってほしいが、現状は民主党に近いのではないか。ルビオ、クルーズは50歳になるかならないかの年齢で、すでに主導的地位を確立している。若手の奮起を強く促したい。
島田洋一(しまだ よういち)
1957年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。同大学院法学研究科政治学専攻博士課程(修了)を経て、85年、同大学法学部助手。88年、文部省に入省し、教科書調査官を務める。92年、福井県立大学助教授、2003年、同教授。北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会副会長。櫻井よしこ氏が代表の国家基本問題研究所評議員兼企画委員も務める。著書に『アメリカ・北朝鮮抗争史』(文春新書)など。
1957年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。同大学院法学研究科政治学専攻博士課程(修了)を経て、85年、同大学法学部助手。88年、文部省に入省し、教科書調査官を務める。92年、福井県立大学助教授、2003年、同教授。北朝鮮に拉致された日本人を救出するための全国協議会副会長。櫻井よしこ氏が代表の国家基本問題研究所評議員兼企画委員も務める。著書に『アメリカ・北朝鮮抗争史』(文春新書)など。