橋本琴絵:日本を救う失言王・麻生太郎の「ホンネ」

橋本琴絵:日本を救う失言王・麻生太郎の「ホンネ」

≪口先介入≫が日本を救う⁉

中国の日本侵攻を阻止した麻生・岸の連携プレー

 中国海警局(事実上の中国海軍の一部局)は、2021年7月6日から9日にかけて黄海海域での民間船舶の通信を制限し、9日は航行自体を禁止する旨を公表した。同海域での軍事演習を予定していたためだ。黄海は日本行きの商船・石油タンカーが航行する海域であることから、事実上同海域での演習は対日軍事演習であることが明らかだった。

 戦争初期の侵攻作戦とは、正直に「侵攻作戦」と命名されることはなく、歴史上頻繁に「演習作戦」と称して侵攻が始まる。たとえば、第二次世界大戦初期に行われたドイツ軍のヴェーザー演習作戦(デンマークとノルウェー両国への侵攻作戦)や、ライン演習作戦(対イギリス補給路を遮断する通商破壊作戦)などが知られる。演習とは、戦端を開く口実である。

 また、侵略先が他国であると侵略側が明言しなければならないルールは必ずしもない。中国共産党は「台湾は国土の一部」と主張し、尖閣諸島もこれに含まれ、沖縄に至っては「日清戦争後に日本が占領した地域であり国際法上の領有権は確定していない」などという荒唐無稽な主張までし続けている。

 こうしたなか、今年7月1日には、中国共産党結党100周年記念の祭典が執り行われ、習近平国家主席は「誰であれ中国を刺激するならば頭が割れて血を流すだろう」と暴力を示唆する演説を行い、台湾・尖閣諸島・沖縄侵攻作戦の発動が近いことを警告していた。

 誰の目から見ても戦争の危機が迫っていると感じるなか、7月5日夜、突如として中国は黄海で予定された前記軍事演習が取りやめになったことを発表した。一体、何があったのだろうか。

 実は、7月5日に東京都内で行われたイベントで、麻生太郎副総理兼財務相が「中国が台湾に侵攻した場合、集団的自衛権行使を可能とする安全保障関連法の〝存立危機事態〟
として対処すべきだ」との見解をスピーチしていた。これを受けて、翌日6日午前に防衛省内で行われた定例記者会見で岸信夫防衛大臣が「副総理のご発言は、基本的にこうした政府の考えを踏まえて行われたものであると承知をしている」と発表し、台湾侵攻作戦に自衛隊が立ち向かう意志を有していることを国内外に知らしめた。

 この2人の政府要人発言が、中国軍の「演習作戦」を止めたのか明確な因果関係は定かではない。しかし、明らかに「演習開始前に警告をしたら演習そのものが中止された」という時間的近接性・連続性があることは事実である。もしかすると、私たちが気づかないうちに、麻生・岸両大臣が日本国を救っていたかもしれないのだ。
橋本琴絵:日本を救う失言王・麻生太郎の「ホンネ」

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韓国に対しても毅然とした態度を示す麻生財務相。2020年3月27日、2013年7月に満了した日韓スワップ協定の延長についても、韓国の「日本が(借りてくださいと)お願いするならしてもいい」との発言に、「金を貸すほうが頭を下げるという話は聞いたことない」と発言。

2016年に釜山の日本領事館前に慰安婦像が設置された際には、2015年の日韓慰安婦合意違反として「約束した話が守られないなら、貸した金も返ってくる可能性もない」と主張した。

世界も驚く麻生流「口先介入」の影響力

 一般的な感覚からすると、発言だけで国家レベルの行為に歯止めをかけることはあり得ないと考える方がいるかもしれない。しかし、たとえば地球規模の外国為替市場では、しばしば「麻生発言」が大きな影響力を持ち、幾度となく日本企業の資産と雇用を守ってきた事実が知られている。いわゆる≪口先介入≫である。

 円とドルなどの外国為替市場は、安全資産とされる円に時として世界中の投資家の注目が集まり、急激な円高が進行することが頻繁にある。こうしたとき、日本政府は過去11回、国家による為替市場介入を行い、大規模なドル買いをすることで市場に円をばらまき、円高を食い止めていた。この11回のうち2回は民主党政権下で行われており、不適切な時機に不適切な金額で介入したため効果が薄く、私たちの血税を投資家の肥やしにしてしまっただけであったが、他の9回は円高阻止に成功していた。

 しかし、アメリカはこれを「為替操作だ」と強く非難した。よって、あまり「伝家の宝刀」を使うと為替操作国に認定され、他の場面でペナルティを受ける可能性がある。このため、麻生財務大臣は、まず部下の浅川雅嗣財務官(当時)などを最初に出して「市場で乱高下がみられる。激しい動きがあれば対応せざるを得ない」などとスピーチさせ、「国家権力の発動があるぞ」という「素振り」をみせる。

 財務官の発言で投資家が委縮しなかった場合(円高が進行し続けた場合)、次は日銀の黒田総裁に何か喋らせる。「これ以上の乱高下は看過できない」等だ。それでも円高が止まらなかった場合、ついにラスボスとして麻生太郎が登場し、「為替市場の動向に対し緊張感をもって見守る。場合によっては必要な措置をとる」と投資家を脅す。これで、世界中の「円買い勢力」は恐れおののき、ついに円高を止めるのである。初見であると冗談のような話だが、投資家ならば何度も経験している事実である。

 日本産業の要は、輸出企業だ。つまり円高になるといくら製品の性能が良くても価格が上昇して競争に敗北しやすくなる。このため、輸出関連企業の株価は円高による収益減退を見込まれて下落し、ついには日経平均株価も下落する。これを麻生太郎が何度も救っているのだ。麻生太郎の「一言」で救われた日本国の富は、誇大表現なしで千兆円や二千兆円といった話ではない。それほどまで「麻生太郎の口先介入」は影響力が強大なのだ。

 戦争も外国為替も、人の心理によって動きが決まる。その心理に「口先」がどれほどの影響を与えるのか科学的計測されていないが、少なくともドル円の数字には反映される。このため、麻生副総理による「やったら集団的自衛権発動だ」という発言は、多大な心的影響を中国共産党指導部に与えたものと推認される。

日本を倒せる「確証」が持てない中国共産党

 歴史上、宥和政策は「抑止力」の正反対の概念だ。1930年代後半のナチスドイツの軍事的膨張を下支えしたのは、当のナチスだけではなく、イギリスのチェンバレン首相らがヒトラーの領土要求に対して何ら具体的な対抗措置を取らなかったことだ。ナチスによるズデーデン地方の割譲やチェコ・スロバキアの解体要求に対して何ら毅然とした対応を取ることなく、独裁者の要求を承認し続けたことは、戦争の要因となったことで知られる。よって、中国による尖閣諸島・沖縄への軍事的野心を挫くためには、同地域の防備もさることながら、手を出した場合、ただちに戦争になるという「覚悟」を内外に示すことが重要である。

 では、麻生副総理の発言に伴う「日本の強さ」は、当の中国人からみてどのように映ったのだろうか。そもそも、歴史上、中国人は「負けた日本」というものを実際に目の前で見たことはない。意外に思うかもしれないが、第二次世界大戦で日本軍は太平洋方面では敗北を続けたものの、中国大陸では戦争末期でも米中連合軍に連戦連勝しており、なかでも昭和19年に発動された「大陸打通作戦」は日本陸軍建軍以来の兵力を投入し、中国各地で米中連合軍を撃破し、勝利を収めているのである。

 日本軍の参加兵力約40万人に対して、米中連合軍は100万人の兵力という二倍以上の差があったにもかかわらず、各地で日本軍は敵を撃破し、ついにはアメリカ軍の飛行場を占領することに成功している。太平洋島嶼部での陸軍の敗北は、海軍が連戦連敗することで補給が絶えたことが原因であり、朝鮮半島という当時日本領からの陸路補給が絶えなかった日本軍は、太平洋方面とは別格の強さがあった。

 終戦時、中国に展開する日本軍は健在であり、天皇の停戦命令によって武器を置いたに過ぎない。つまり、中国人にとって「日本軍」とは、あくまで伝聞で聞いた範囲の敗北をした軍隊であり、実際に目の前でみた経験として「敗北した様子」を知らないのである。

 このような歴史的経緯は、中国人に対して「果たして自分たちの実力は日本軍に通用するのであろうか」という懐疑心を常在させるものと分析する。これが重要なのだ。
橋本琴絵:日本を救う失言王・麻生太郎の「ホンネ」

橋本琴絵:日本を救う失言王・麻生太郎の「ホンネ」

毎年「対日戦勝記念日」を祝うものの、実際には日清戦争も支那事変(日中戦争)も日本に敗れた中国。祝うなら唐の時代、新羅との連合軍で日本と任那を任した「白村江の戦い」ではないだろうか。

「銃剣外交」と「口先戦争」

 私は、核兵器の抑止力が働くなかでの紛争は、「銃剣外交」をすべきであると考えている。銃剣外交とは何か。銃剣とは、ライフルの先端に装着するナイフのことだ。刺突といって、近接距離で実際に敵の身体を刺して攻撃する。実は、現代において銃剣を正式採用している軍隊は、日本の自衛隊とアメリカ海兵隊のみである。なぜならば、ライフルの射程は千五百メートル以上であるから、ライフルの先にナイフを取り付けたところで敵に近接する前に撃たれるため、現代戦では意味がないと各国で考えられたからだ。しかも、ナイフの重みで銃口が下がるため、命中率も低下させる恐れがある。しかし、日米は兵士の銃剣を現在も通常装備としている。それはなぜだろうか。実は、今回の「口先戦争」と共通した効果をもっている。

 日本が平成4年以降カンボジアでPKO活動をしていた際、誤射を防ぐため自衛隊員の持つ64式自動小銃の弾倉は外されていた。しかし、銃剣は装着されたままだった。ライフルの弾がないことに気づいた現地住民らは自衛官を「案山子」であると揶揄したが、銃剣自体は本物である。これに大きな抑止効果があり、治安維持に貢献した経験があった。

 こうした話は大東亜戦争中も頻繁にあり、警邏(けいら)中の兵士や陣地防衛の兵士らが三八式歩兵銃(装弾数5発)の先に銃剣を取り付けていると、ただ「刃物を取り付けている」という視覚的条件を示すだけで心理的抑止効果が働き、治安維持がしやすかったことが指摘されている。射撃したら目に見えない速さで飛ぶ銃弾よりも、目に見える「刃物」の方が敵への心的圧力が高い場面があるのだ。

 私は、この心理こそ外交に重要であると考えている。自衛隊が毎年富士で火力演習を行って国内外に戦闘能力を示し、観閲式でパレードを行うのも、それ自体が無形の「抑止力」としてわが国の安全を守ることに資するからだ。実際の戦闘は最終局面であり、その前に「いかに相手方を畏怖させるか」といった形而上の心理戦こそが外交の基礎である。

 残念ながら、わが国の外務省がこうした外交の基本を守ったことは創設以来一度として見当たらないが、今回、麻生太郎・岸信夫両閣僚による「口先戦争」は、わが国の存立を防衛するに十分に連携プレーであったと言わざるを得ない。国民の多くはこうした事実を知らないまま平和を享受する。しかし、平和は無料ではなく、多大なる努力の下にあることを一人でも多くの人に知ってもらいたいと願う。
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橋本 琴絵(はしもと ことえ)
昭和63年(1988)、広島県尾道市生まれ。平成23年(2011)、九州大学卒業。英バッキンガムシャー・ニュー大学修了。広島県呉市竹原市豊田郡(江田島市東広島市三原市尾道市の一部)衆議院議員選出第五区より立候補。日本会議会員。

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