昨年11月20日、APEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議の席で、習近平主席が「TPP加盟を積極的に検討する」と表明していた。それから10カ月を経て、正式に加入を申請したわけだ。
そしてそのわずか6日後、今度は台湾が、TPPへの加入を申請した。
TPPの本質は「中国包囲網」
当時の交渉は、日本側の大将が甘利明担当大臣で、アメリカ側が巨顔のタフネゴシエーター、フロマン通商代表(USTR)と事あるごとに対峙していた。
最大の焦点は農業と自動車だった。アメリカは豚肉や乳製品など日本への輸出を大幅に拡大したい品目について関税を出来るだけ早くゼロに近づける事を求めていたのに対して、自民党の中核的支持基盤の一つである農家からの反発は激しく、TPP推進を掲げた第2次安倍政権は非常に難しい立場に置かれた。
また、自動車協議では、アメリカ側の度を越した傲慢さが交渉をたびたび座礁させた。日本では黄色と指定されているウインカーの色についてまで、「ウインカーが白いアメリカ車もそのまま日本で売れるようにしろ」と、日本の国内法の変更まで強要しようとした。
そこで敢然と異を唱えたのが、今の外務事務次官、森健良である。日本の自動車メーカーは、日本の国内市場では魅力の乏しいアメリカ車を敵と見做しておらず、アメリカの横暴な要求にも相当程度譲歩する姿勢を示していた。
しかし森は、「これは国家の尊厳の問題」として、不公平・不平等な交渉にはあくまで異を唱え続けた。
日米は、実利面でもメンツ面でも、事あるごとに全面衝突し、甘利がフロマンの前で、机を叩いて怒りを露わにする事すらあったという。
あの強面フロマンも、自国民へのアピールばかりに力点を置いていたオバマも、結局は日本側の要求を飲んだ。
例えば、関税撤廃率はアメリカが100%だったのに対し、日本は95%。さらに最後までモメた農産品に関しては、「コメ、麦、牛・豚肉、乳製品、甘味資源作物」について日本側が多くの例外規定を獲得し、米国の農産品の関税撤廃率が99%だったのに対して、日本は82%と、2割弱の産品について国内市場を守るための例外規定を獲得した。
こんな、日本と自民党ばかり得をする合意にアメリカが判をついたのも、「決裂しては中国を利するだけ」という、アメリカ側の危機感が背景にあった。
「戦略的忍耐」という天下の愚策で、南シナ海の人工島を軍事基地化を許したあのオバマ政権ですら、「対中包囲網の構築」が、自由主義・資本主義陣営にとって、喫緊の課題であると認識していたのである。
※編集部注:2017年に米国はTPPを離脱。米国を含まない新協定(CPTPP)が2018年に発効されている。
次の首相が担う「自由主義堅持」の重責
TPPを巡る激烈な日米交渉が佳境に入っていた2014年4月、オバマ大統領が来日した。安倍首相が銀座の名店「すきやばし次郎」にオバマを連れて行き、ごく少人数で会食した時も、「話題」はもっぱらTPPだったという。
オバマは大好物である寿司をつまみながらも、ある品目の具体的な関税率について、安倍と静かな火花を散らした。
今後のTPP交渉では、新規加入国交渉の順番と内容が最大の焦点となる。すなわち
「中国を入れるか」
「台湾を入れるか」
「先に英国を入れて対中包囲網を強化するか」
という3点だ。
米国が離脱している今、TPPの自他ともに認める盟主は日本である。「自由主義」「資本主義」「法の支配」を守る、経済的な橋頭堡としてスタートしたTPPの舵取りは、当然ながら日本の次期総理大臣に委ねられることとなる。
「対中包囲網」構築のため、各国各様の努力で作り上げた世界最高レベルの経済協力協定の根本的なルールが、中国の都合で書き換えられてしまうのではないか?
そんな懸念が、日本内外に急速に拡大している。それは、9月中旬になって、「日本端子」という会社と河野太郎の、とてつもなく深い関係が知られるようになってからだ。
※参考記事はコチラ
「日本端子」は、河野太郎の地元、神奈川15区の平塚市に本社を置く、太陽光パネルの関連部品などを製造・販売する企業だ。
Jリーグ湘南ベルマーレのスポンサーでもあり、地元では知られた企業だ。また、河野太郎の実弟の河野二郎が社長を務めている事もあり、毎年表のカネだけで数百万円を兄に献金し、選挙に際しては集票マシンとして絶大な力を発揮している。
それどころか、河野太郎の地元の事務所は日本端子の本社の敷地内にある。もはや、河野家のファミリー企業という他ない。
「日本端子」問題の整理
〇「日本端子:チャイナ・ゲート」問題
【日本端子株式会社(本社平塚市)】
・河野洋平が会長兼筆頭個人株主
・実弟の河野二郎氏が社長
・河野太郎も4000株保有
・上記事実が主にウェブ上で拡散を始めてから日本端子のHPは閲覧困難に
→河野家が隠蔽のためHP閉鎖か?
◆日本端子(株)
設立:1960年8月23日
所在地:平塚市八重咲町26-7
◆代表者及び役員
会長 河野洋平(実父)
社長 河野二郎(実弟)
取締役 河野典子
取締役 小島孝之
取締役 藤野 優
取締役 簑島正夫
監査役 甲賀一雄
監査役 張戸英子
資本金:1億円
売上高:120億円(2006/3期)
純利益:17億9200万円(2020/3期)
総資産:222億円(2020/3期)
主業種:電気機器の製造販売(端子、コネクタ、圧着工具)
→主力は太陽光パネル関連端子
従業員:440名
◆株主構成 ※株主・出資者総数は10名
日本端子:90,000株
河野洋平(筆頭個人株主):58,000株
恵比寿興業:24,000株
鈴江コーポレーション:10,000株
河野太郎(第2個人株主):4,000株
〇北京日端電子有限公司(BNT)
工場:北京市順義区趙全営鎮兆豊産業基地兆豊一街27号(化学工業出版社院内)
営業事務所:北京市朝陽区酒仙橋路10号 恒通商務園B33
(HP説明)「北京京東科技集団股分有限公司[旧:北京東方電子集団公司]との合弁で設立。当社の技術を基に連鎖端子、成形品、組立品の製造、及びハーネス組立加工を行い、中国市場並びに海外市場向け 販売を行っています」
・BNTの合弁相手:「北京京東科技集団股分有限公司」:(BOEテクノロジーグループ株式会社)は中国国務院(政府)が株式の大部分を保有する国有企業。液晶ディスプレイ製造大手としての地位を国内で、かつ外国企業との国策的合同事業に参画する母体としても運用。
〇毘山日端電子化技有限公司(CNT)
工場:江蘇省毘山市玉山鎮農豊路238号4号棟
(HP説明)「端子とコネクタを手がける海外の量産拠点として独資で設立。現地における情報窓口としての役割を担うとともに、有事に備えてお客様の足元で生産活動を行う」
・毘山公司の異常性
→「独資で設立」「有事に備え顧客の足元で生産活動」
▷日本企業が中国の国内で事業を展開する場合、中国側出資比率がより大きい割合設定で合弁企業を設立するのが通例なのに、CNTは日本端子からの持ち込み資本だけの単独で設立(独資)
→中国政府当局との近さ・深さの証拠
▷「有事に備えて」とは、日欧米からの経済制裁などに備えて、中国国内の生産拠点を確保しているという意味
→CNTの主力製品はソーラーパネル
→「有事」がウイグル関連制裁を指している事は明らか
〇香港日端電子有限公司(HNT)
営業事務所:香港九龍観塘巧明街111至113號富利廣場15楼1503室
(HP説明)「当社現地法人として香港に設立。当社の販売拠点として、当社製品及び北京BNT公司製品を華南地区、東南アジア向けに販売し、併せて市場情報の収集を行う」
〇日本端子→河野太郎氏あての政治献金は、次の通り
H24.3.21:150万円
H24.12.4:100万円
H26.3.25:150万円
H26.11.26:100万円
H27.3.30:150万円
H29.6.16:200万円
H29.10.12:5万円
H30.7.25:200万円
R1.8.9:200万円
計:1255万円
非上場の日本端子は
・河野洋平氏を会長兼大株主
・次男二郎が社長
・河野太郎に献金
→媚中の「政商」
→河野太郎のエネルギー政策の太陽光偏重が日本端子と無関係なはずがない
→売国媚中利権政治家は総理完全不適格
エネルギー政策も「媚中」の一環か
そして、河野太郎が総裁選で主張しているエネルギー政策の核心は「反原発」「太陽光を中心とする再生可能エネルギー推進」である。
今では小泉進次郎と石破茂と河野太郎は「小石河連合」と呼ばれるが、この3人の太陽光推進は徹底している。
例えば、高市早苗候補が、再生可能エネルギーに重点を置いた現行の「エネルギー基本政策」について、「あれでは日本の産業が成り立たない」として自分が首相になったときには修正する意向を示したのに対して、小泉進次郎が常軌を逸した反発を示した。
「再生可能エネルギー最優先の原則をひっくり返すのであれば、間違いなく全力で戦っていかなければならない」
「化石燃料依存型ではこれからの産業はもたない。その国際的な潮流を考えたら、どんな政権が生まれてもこの方向性を否定できるはずはない。」
ところが、この小泉進次郎の感情的な高市早苗叩きには、意外な所から強烈な反論が飛び出した。
高市早苗の元夫で、自民党の資源エネルギー調査会の山本拓会長が、「現職の大臣が公の場で、総裁選候補者の政策にいちゃもんを付けた。あまりにも子供じみている。総裁選の妨害行為だ」と、小泉に2通の公開質問状を送ったのだ。
1.旧一般電気事業者 10 社の 2019 年度の火力発電量は約 4,814 億 kWh/年です。これは 130 万 kW の原子力発電所約 53 基分に相当しますが、現在の火力 発電所の発電量を 2050 年に再生可能エネルギーでまかなうための具体的計画を、環境大臣としてお示しください。
2.経済成長とデジタル化の進展を図る際に、IT 関連消費電力 は 2050 年には 2016 年の 41TWh/年の約 4,000 倍の 176,200 TWh/年になる との予測が、国立研究開発法人科学技術振興機構の低炭素社会戦略センター によって発表されています。
現在よりも省エネルギーの進展があったとしても、IT 関連消費電力は莫大に膨れ上がることが予想されます。2050 年にそれらを再生可能エネルギーで まかなうための具体的計画を、環境大臣としてお示しください。
(1)現在の化石燃料発電量を全て太陽光発電で賄うのに必要な設備面積は東京 ドーム約 13 万個分です
2019 年の国内の総発電量は 10,240 億 kWh で、内訳は以下のとおりです。
【内訳】
再生可能エネルギー:1,843 億 kWh (18%) /化石:7,782億kWh (76%)/原子力:614 億 kWh (6%)
仮に太陽光発電だけで 2019 年現在の化石燃料による発電分(7,782 億 kWh) 全てを置き換えた場合は、全国に東京ドーム約 13 万個分の面積の太陽光発電設 備(620GW)が必要となります。
なお、一般財団法人再生可能エネルギー保全技術協会の筒井信雄理事長によ ると、それらの設置には約 93 兆円(15 万円/kW×620GW)が必要になるとの ことです(土地代等は含まない)。
当方の試算に対し、小泉環境大臣の見解をお示しください。
(2)小泉環境大臣が自民党総裁選挙の特定候補へ越権介入するならば自らの見解をまず示してください
文部科学省の国立研究開発法人科学技術振興機構低炭素社会戦略センターが発表した2050 年の IT 関連消費電力予測 176,200 TWh/年を仮に太陽光発電だけで賄おうとすると、東京ドーム約 2,940 万個分の設備面積が必要となります。
この点については、もちろん太陽光発電のみならず他の再生可能エネルギー で賄うとお考えかと思いますが、小泉環境大臣の見解をお示しください。
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「2050 年の IT 関連消費電力を太陽光発電だけで賄おうとすると、東京ドーム約3000万個分の設備面積が必要」
山本氏の指摘が客観的データに基づいているだけに、小泉大臣は明確な返答をする必要がある。
河野総裁では官民ともに「媚中シフト」の恐れ
その謎を解明する重要なヒントが、に行われた、18日の日本記者クラブでの討論会で示された。
この討論会では、記者クラブの代表が各候補者に質問する形式がとられた。
ところが、記者クラブ側の質問は河野太郎と岸田文雄に集中。高市と野田は答えたり喋ったりする機会が河野や岸田に比べて著しく少ない、極めて不公正な進行が続いた。
そしてある女性記者が、決定的な言葉を口走った。日中関係に関する質問をする際に、「外務大臣、防衛大臣経験者」として岸田文雄氏と河野太郎氏に限定したのだ。
この記者は毎日新聞政治部長の佐藤千矢子。総裁選は日本の総理総裁を決める選挙であり、その討論会は過去の外交・安全保障政策を検証する場ではない。
首相として外交・安全保障の舵取りを質す場で、「外務・防衛経験者」に回答者を限定するのは、全く筋が通らない。
長く経営難が指摘されていた毎日新聞は2016年から、「チャイナ・ウォッチ」という折り込み紙面を掲載し始めた。
チャイナ・ウォッチとは、中国政府が運営する英字新聞社「China Daily(チャイナ・デイリー)」が発行している、いわば中国によるプロパガンダ広告だが、一見新聞記事のような体裁をしている。
2018年11月に毎日新聞が掲載したチャイナ・ウォッチでは、新疆ウイグル自治区を「日本・韓国・スイスに並ぶウィンター観光地」として、2022年北京冬季五輪までに整備するという記事が掲載されている。
ウイグル人に対する想像を絶する人権弾圧に世界的批判が高まる中、こうした記事を恥も外聞もなく掲載する毎日新聞は、もはや報道機関を名乗る資格はない。
実際、アメリカのシンクタンクやイギリスの新聞は、「中国共産党の影響下にある組織」として、日本の報道機関としては毎日新聞を名指ししている。
アメリカ司法省はチャイナ・ウォッチに関して今年7月、衝撃的なデータを公表した。毎日新聞同様、チャイナ・ウォッチを掲載している「ニューヨーク・タイムズ」が、中国側から半年間で160万ドル(約1億7600万円)もの広告費を受け取っていたというのだ。他にも「シカゴ・トリビューン」や「ヒューストン・クロニクル」などにも、様々な名目で、100万ドル(約1億1000万円)を支払っていたという。
毎日新聞にも、類似の額が与えられていることは、想像に難くない。新聞各紙はどこも部数・広告減に苦しんでいるが、毎日新聞はもはや、チャイナ・ウォッチなくしては経営が成り立たないとも言われているのだ。
総裁選は中共の「日本侵略」の仕上げか
そもそも、「憲法改正」「国防軍創建」「靖国参拝」などを唱える高市早苗は、中国にとっては最悪の候補者だ。
そんな中、脱原発で河野太郎と連携する小泉進次郎が高市早苗を苛烈に批判。
そして、経営の根幹を中国に握られた毎日新聞が、記者会見での高市の発言機会を奪う。
そして決め手は河野太郎だ。父が会長兼大株主、弟が社長を務め、中国共産党の特別な配慮を受けて中国本土に3つの支店を構え、太陽光発電設備で巨額の利益を生み出している「日本端子株式会社」の大株主である河野太郎が、「反原発」「太陽光重視」を掲げて、総裁選を優位に戦う。
中国共産党の日本侵略は、メディアと政治の奥深くに浸透し、最終局面を迎えている。その総仕上げこそ、今回の自民党総裁選である。
1966年、東京都生まれ。フリージャーナリスト。
1990年、慶應義塾大学経済学部卒後、TBS入社。以来25年間報道局に所属する。報道カメラマン、臨時プノンペン支局、ロンドン支局、社会部を経て2000年から政治部所属。2013年からワシントン支局長を務める。2016年5月、TBSを退職。
著書に『総理』『暗闘』(ともに幻冬舎)、新著に『中国に侵略されたアメリカ』(ワック)。