“菅義偉総理”でも「安倍ロス」は続く

“菅義偉総理”でも「安倍ロス」は続く

後任は菅官房長官で決まり?

 安倍首相が辞任を表明して1週間が経ち、世間の関心はすっかりポスト安倍=次期総裁。世論調査によると石破茂氏が一番人気らしいですが、推薦人を集められるかも微妙なところ。相変わらず人望のなさも圧倒的なようで。

 自民党各派の動きをみると、菅義偉官房長官でほぼ決まりのようです。その場合、河野太郎防衛大臣が官房長官になるのではと囁かれています。ポスト安倍候補の中では菅氏が唯一、アベノミクスを継承できる候補なので、まずは一安心でしょうか。

 引き続き力を持ち続けるであろう経産省が脱・原発派の河野氏とタッグを組んで、さらに財務省の前になす術なしの小泉進次郎環境大臣を巻き込んだ「神奈川ライン」が環境税など始めないか…。それだけが心配です。

 余談ですが「菅内閣」という表記、「菅義偉内閣」と「菅直人内閣」で紛らわしい。「どちらも同じようなものだろ」と言われないよう、頑張っていただきたいと思います。

「アベガー」から「スガガー」

 ワイドショーが菅官房長官を、「叩き上げの苦労人」と紹介していました。秋田県から集団就職で上京し、大学の夜間に通いながら働いていた。地方議員から長期政権の名参謀に成り上がり、「令和おじさん」を経てついに日本のリーダーとなる――万人が好む物語で、今のところ好印象のようです。

 しかし、首相就任したらマスコミが手のひらを返すことは目に見えています。かりに石破氏が首相になったとしても、自民党政権である以上、印象操作と粗探しで「アベガー」ならぬ「スガガー」「イシバガー」になるのです。安倍政権はアベノミクスと保守層の支持によって、メディアの猛攻に耐えることができました。「菅首相」は同じことができるか。ポイントは、菅首相に辣腕官房長官・菅義偉はいないということ。

 YouTube『WiLL増刊号』で白川司氏も懸念していましたが、「ポスト安倍」の人材不足は明らかです。自民党内の総裁交代にせよ野党への政権交代にせよ、ライバルに負けを認め、首相の座を譲り渡すのが通常。しかし、体調不良が辞任理由となる今回は、自民党にも野党にも後継が育たないまま消去法で次期総理が選ばれます。このままでは、毎年リーダーが代わる10年前の悪夢が繰り返される可能性が極めて高い。覆水盆に返らず。
 今のうちに言っておきます。「だから安倍さん以上はいない」。

【白川司】安倍首相の代わりはいない【WiLL増刊号#259】はこちら

「安倍ロス」に耐えられるか

 安倍首相が辞意を表明した後に行われた、共同通信による最新世論調査の結果は興味深いものでした。安倍内閣支持率が前回の36%から56%と、20ポイント以上の上昇。ふつう政権末期は支持率の下降傾向が続くものですが、7年半も続いた安倍政権は特別なようで。

 7年半といえば幼稚園児が中学生に、小学生が大学生に成長する期間。彼らにとって、物心ついた時から安倍首相は日本のリーダーだったわけです。いなくなって初めて存在の大きさに気づく――家族にしろ恋人にしろ友人にしろ、もしくはスポーツ選手やタレントにも当てはまるかもしれません。しかし、これまで政治家にそのような感情を抱くことはなかったのではないか。強いリーダーが現れるまで、日本社会は「安倍ロス」に苦しみ続けるでしょう。
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山根 真(ヤマネ マコト)
1990年、鳥取県生まれ。中学時代から『WiLL』を読んで育つ。
慶應義塾大学法学部卒業。ロンドン大学(LSE)大学院修了。銀行勤務を経て、現在『WiLL』編集部。
好きなものは広島カープと年上の優しい女性。

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カオ 2020/9/5 22:09

私も安倍ロスです。早くお元気になられて、トランプさんとゴルフでも楽しんでいただきたいです。もちろん第三次お待ちしてます。ところで以前何かで聞いたのですが、「後継を育てていないと言われますが?」と聞かれた安倍さんはこう答えたそうです。「(総理という立場は)自分で這い上がってくるもの」と。育てられたり与えられて務まるものではないし、やりたい事があり這い上がって手にする地位なんですね。だから安倍総理は後継を育てる気はなかったと思います。

KAG 2020/9/5 09:09

コメント失礼いたします。アメリカからWillの配信楽しみにしています。
安倍総理には元気になってまた戻って来てもらいたいです。
これからの日本とアメリカの行く末が心配でなりません。

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