久しぶりに“上級市民(区民)”を見たと思った。7月29日午後6時から開かれた千代田区議会百条委員会でのことだ。
同区議会は石川雅己区長が家族と購入した区内の高級マンションの部屋(約1億2000万円)が、一般には販売されない「事業協力者住戸」であった件を追及。区議会は石川区長が虚偽答弁をしたとして刑事告発を決議し、これについて石川区長が議会の解散を通知した。
29日の百条委員会で行われたのは、マンションの共同購入者である石川区長の次男の証人尋問だ。当初は「共同購入者である区長夫人が反対している」とのことで、次男を尋問できそうになかったが、午後4時頃に事態は一転。
「次男から百条委員会に出ると言ってきた」との知らせを受け、傍聴するために永田町から馳せ参じた。この件はニュースで大きく報じられたこともあって、区庁舎8階にある区議会の部屋には多数のメディアや区民であふれ、別室でモニター中継されたほどだった。
異例なのはそれだけではない。証人になるべき次男が宣誓の前に「あなた方はいったいどういう法的立場で証人尋問するのか」と質問したのだ。「(父親である)区長が解散した以上、区議たる委員はその資格を喪失し、証人尋問することができない。よって百条委員会は法令上の根拠を欠き無効になる」という主張だ。
そうかそうか。はじめからおとなしく証人尋問を受けるつもりなんぞ全く無く、百条委員会を潰して区議会の鼻をあかしてやろうということで出てきたわけか。
しかし、千代田区議会も負けてはいない。石川区長が区議会に伝えた「解散」の意味についてあらかじめ総務省に問い合わせ済みだ。
そもそも地方自治法第178条は、議会が不信任決議をした場合に、首長はその通知から10日以内に解散できると規定している。衆議院に対する内閣総理大臣の「解散権」と異なり、地方自治体の議会の解散には必ず「不信任決議」がなければならない。これについて石川区長は刑事告発を実質的な不信任決議として解したが、総務省は「不信任決議は正規の議決を経て行われるべきで、区長の解散は違法だ」と判断。要するに百条委員会は成立していると総務省がお墨付きを与えたわけだ。
ここで一気に空気が変わる。それまで強気一辺倒だった次男が一転して弱気になり、「(自分には)法的なことはわからない」「(委員の法的立場について)教えてくれと言っただけ」など言い訳。しぶしぶ宣誓に応じた。
しかしながら、次男から「無資格者」扱いされた委員長らはおさまらない。「我々の身分に関わることを、軽々に言うな!」と厳しく次男を批判。ということで、ここまでの45分間は議会というよりも、ほとんど格闘技のようなものだった。
そして証人尋問が始まったが、腕組みをして足をも組み、時には顎を上げて委員の質問を聞くという証人の態度は、傍聴した有権者にどんな印象を与えただろうか。
なお、千代田区選挙管理委員会は7月31日、石川区長の「解散」について「無効」と判断。これについて石川区長は「区民の参政権を奪うもので、理解に苦しむ」と批判したというが、区民としては区長選をしたいと思うのではないか。
ちなみに石川区長は2017年2月の区長選で、小池百合子東京都知事の全面的支援を受けて圧勝。その勢いが7月の都議選での都民ファーストの大躍進と自民党の歴史的惨敗に繋がるのだが、区長選で「石川区長と二人三脚で東京大改革を実現する」と声高く宣言した小池知事は、今回はダンマリを決めている。女帝に斬り捨てられた上級市民(区民)たちの行く末はいずこ。
同区議会は石川雅己区長が家族と購入した区内の高級マンションの部屋(約1億2000万円)が、一般には販売されない「事業協力者住戸」であった件を追及。区議会は石川区長が虚偽答弁をしたとして刑事告発を決議し、これについて石川区長が議会の解散を通知した。
29日の百条委員会で行われたのは、マンションの共同購入者である石川区長の次男の証人尋問だ。当初は「共同購入者である区長夫人が反対している」とのことで、次男を尋問できそうになかったが、午後4時頃に事態は一転。
「次男から百条委員会に出ると言ってきた」との知らせを受け、傍聴するために永田町から馳せ参じた。この件はニュースで大きく報じられたこともあって、区庁舎8階にある区議会の部屋には多数のメディアや区民であふれ、別室でモニター中継されたほどだった。
異例なのはそれだけではない。証人になるべき次男が宣誓の前に「あなた方はいったいどういう法的立場で証人尋問するのか」と質問したのだ。「(父親である)区長が解散した以上、区議たる委員はその資格を喪失し、証人尋問することができない。よって百条委員会は法令上の根拠を欠き無効になる」という主張だ。
そうかそうか。はじめからおとなしく証人尋問を受けるつもりなんぞ全く無く、百条委員会を潰して区議会の鼻をあかしてやろうということで出てきたわけか。
しかし、千代田区議会も負けてはいない。石川区長が区議会に伝えた「解散」の意味についてあらかじめ総務省に問い合わせ済みだ。
そもそも地方自治法第178条は、議会が不信任決議をした場合に、首長はその通知から10日以内に解散できると規定している。衆議院に対する内閣総理大臣の「解散権」と異なり、地方自治体の議会の解散には必ず「不信任決議」がなければならない。これについて石川区長は刑事告発を実質的な不信任決議として解したが、総務省は「不信任決議は正規の議決を経て行われるべきで、区長の解散は違法だ」と判断。要するに百条委員会は成立していると総務省がお墨付きを与えたわけだ。
ここで一気に空気が変わる。それまで強気一辺倒だった次男が一転して弱気になり、「(自分には)法的なことはわからない」「(委員の法的立場について)教えてくれと言っただけ」など言い訳。しぶしぶ宣誓に応じた。
しかしながら、次男から「無資格者」扱いされた委員長らはおさまらない。「我々の身分に関わることを、軽々に言うな!」と厳しく次男を批判。ということで、ここまでの45分間は議会というよりも、ほとんど格闘技のようなものだった。
そして証人尋問が始まったが、腕組みをして足をも組み、時には顎を上げて委員の質問を聞くという証人の態度は、傍聴した有権者にどんな印象を与えただろうか。
なお、千代田区選挙管理委員会は7月31日、石川区長の「解散」について「無効」と判断。これについて石川区長は「区民の参政権を奪うもので、理解に苦しむ」と批判したというが、区民としては区長選をしたいと思うのではないか。
ちなみに石川区長は2017年2月の区長選で、小池百合子東京都知事の全面的支援を受けて圧勝。その勢いが7月の都議選での都民ファーストの大躍進と自民党の歴史的惨敗に繋がるのだが、区長選で「石川区長と二人三脚で東京大改革を実現する」と声高く宣言した小池知事は、今回はダンマリを決めている。女帝に斬り捨てられた上級市民(区民)たちの行く末はいずこ。
兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。
1994年、国会議員政策担当秘書資格試験合格。参議院議員の政策担当秘書として勤務の後、執筆活動を開始。夕刊フジ、Yahoo!ニュースなど多くの媒体で精力的に記事を執筆している。