【安積明子】菅首相指名 こぼれ話

【安積明子】菅首相指名 こぼれ話

 9月16日に菅義偉第99代内閣総理大臣が誕生したが、参議院での首班指名では3名の議員が白票を投じている。無所属の柳田稔議員と須藤元気議員、そして参議院自民党の関口昌一会長だ。 

 国民民主党が解党した後、新・立憲民主党にも新・国民民主党にも参加しなかった柳田氏や、立憲民主党に離党届を出すも放置され、同党の解党によってようやく解放された須藤氏はともかく、なぜ参議院自民党の関口会長は「菅義偉」に一票を投じずに白票を入れたのか。関口会長になんらかの意図があったのか。それともなんらかの手違いか。ということで、さっそく参議院議員会館の関口昌一事務所に電話して聞いてみた。

 筆者「この度の首班指名で関口先生が白票を入れられたので、その理由を教えて下さい」

 秘書「えっ!そんなはずがありません」

 筆者「確かに白票を入れられているんですよ。参議院事務局の資料によると、関口先生は『菅義偉』には投票せず、『白票』に入れられたことになっています」

 秘書「それは参議院事務局の間違いです。参議院事務局に聞いて下さい」 

 ヤレヤレである。まず参議院事務局がこのような基本的なことを間違えるはずがない。それに万が一、参議院事務局が間違っていたとしたら、間違いを指摘して訂正を求めるのは議員事務所の仕事だ。しかも首班指名は国会議員の最も重要な責務で、そのような重大案件について初めて電話をかけてきた第三者に「あんたがやっといて!」と任せる話ではない。 

 それでもまあとりあえず、関口会長本人はどう説明するのかを聞いてみようと再度尋ねた。

 筆者「関口先生はご在席ですか」

 秘書「いえ、いまは院内の議員会長室です」

 筆者「関口先生に連絡はとれませんか」秘書「とれません!」 

 こういう場合の「とれない」とは、普通は「関口会長と連絡をとることは、同議員が極めて重要な会議中で物理的に不可能」ということになるのだが、どうやらそうではなく、単に「(面倒臭くて?)連絡したくない」ということだったようだ。実際にこのやりとりの後、産経新聞の速報がネットで流れ、「(菅氏の名前は)書いたが、間違えて予備の投票用紙を出した。他意があるわけではない」との関口会長のコメントが掲載されている。 

 なお、筆者が参議院事務局の資料を関口事務所に直接持参したため、問題の重大さをようやく理解してもらえたが、国会議員の事務所にしては危機意識がかなり低いと思った。ということで今回のコラムは、関口事務所に“歯に衣着せぬ”ものになっている。もっとも“奥歯にものが挟まった”ような書き方は苦手なので、歯科医でもある関口会長にはそこはご容赦いただきたい。
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安積 明子(あづみ あきこ):ジャーナリスト
兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。
1994年、国会議員政策担当秘書資格試験合格。参議院議員の政策担当秘書として勤務の後、執筆活動を開始。夕刊フジ、Yahoo!ニュースなど多くの媒体で精力的に記事を執筆している。

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