二階幹事長・経団連・外務省 ≪媚中トリオ≫は 世界の潮...

二階幹事長・経団連・外務省 ≪媚中トリオ≫は 世界の潮流に置き去り

日本への「目に見えぬ侵略」

 クライブ・ハミルトン教授の『目に見えぬ侵略』(飛鳥新社)が話題を呼んでいる。私は教授に書面インタビューした『静かなる日本侵略』『日本が消える日』(ともにハート出版)で、日本に対する「目に見えぬ侵略」の実態を書いたが、彼らは忍び足でやってくるから厄介だ。

 中国の侵略体質に関して、愛知県立大学名誉教授・樋泉克夫氏の論考(国際情報サイト・フォーサイト「イタリア『新型コロナ危機』と中国人『歴史的大移動』の相関関係」)が興味深い。この論考をもとに、樋泉氏に電話で話を聞いた。
 中華文明発祥の地、黄河中下流域にある平原(中原)に出現した漢人には、いまでも「移動(入植)遺伝子」が残されているのだという。武装して侵略を企てるのではない。寝床を確保するためにゴザを担ぎ、異民族の住む肥沃な土地へと移動を繰り返し、最後は乗っ取ってしまうというのだ。

 これは中国共産党が行う「チャーム・オフェンシブ」(魅力攻勢)、「微笑み外交」に通じている。イタリアで武漢ウイルスの感染爆発を招いたのも、彼らの移動遺伝子に大きな原因があるというのが樋泉氏の考察だ。
 そんな漢人の特質について、「世界で最も理解できないでいるのが日本人」(樋泉氏)だという。日本人の知っている漢人とは、四書五経を残し、漢詩を詠み、京劇を演じる漢人であり、ゲテモノ食いで移動を繰り返し、新天地を乗っ取る〝本性〟は知らない。

 漢人の本性は、彼らに入植された新疆ウイグル自治区を見れば明らかである。初めこそウイグル人と仲良く暮らしていた入植漢人は、いつしか中央政府に呼応する形で決起し、「ここは四千年前から中国(漢人)の領土である」と主張した。なだれ込んだ人民解放軍がウイグル人狩りに乗り出し、いまでもそれは続いている。
 ウイグルの惨状を他人事だと思っている日本人がいたら、あまりに能天気である。花に擬態したハナカマキリに近づき、易々と捕食されてしまう昆虫のようなものだ。

 埼玉県川口市の芝園団地では、約5000人いる住人のうち、半数以上を中国人ら外国人が占めている。数年前に日本人との数が逆転したのだ。
 むろん、中国人住人の全員が侵略者だというつもりは毛頭ない。ただ異様ともいえるペースで増加を続け、地元住人からの苦情が絶えないという事実は厳然として存在する。

 早朝から深夜まで中国人同士が会話する大声が響きわたり、子どもの歓声や泣き声といった騒音のほか、エレベーター内や階段の踊り場など、子どもがところ構わず糞尿を残し、問題となっている。
 千葉市美浜区にも、チャイナ団地と呼ばれる広域エリアがある。自治会長からは、住民同士でゴミの分別や駐車場の利用方法などを話し合っていたとき、注意されて逆切れした中国人男性から「団地を乗っ取ってやる」とすごまれたという話を聞いた。

創価学会の恫喝

 首都圏の団地だけではない。札幌の繁華街「すすきの」の中心部、「日雇い労働者の街」といわれる大阪市西成区の「あいりん地区」など、全国でビジネスに名を借りた中国人による「中華街構想」の声が上がっている。
 新手の入植拠点ともいえる新中華街がやがて中国人居留区となり、池袋の地下社会のような治外法権エリアが出現しないとも限らない。

 武漢ウイルス唯一の〝功績〟は、政官財に巣くう漢人の本性を知らない親中派を炙り出し、再認識させたことだろう。

「日本への支援の心は金銭に代えられない」「生涯かけて中国のご厚意に応えていかねばならない」(3月12日、香港フェニックステレビの単独インタビュー)
「他国の政治行動について、とやかく意見を述べることは適当ではない。慎重に見守っていくということでいいのではないか」(6月1日の記者会見)

 発言主は、自民党の二階俊博幹事長である。

 冒頭の発言は、アリババ創業者のジャック・マー氏からマスク100万枚が寄贈されたことについての発言である。2つ目は、中国が香港に対して、言論や集会、報道の自由を奪う「国家安全法」の導入を決めたときの発言だ。二階氏が、国家安全法は「香港抑圧法」であり、国際公約である一国二制度を否定するものであることを知らないはずがない。
 同氏の地元、和歌山県の「アドベンチャーワールド」には、東京・上野動物園の3頭をさしおいて、6頭ものパンダが暮らしている。パンダのレンタル料は上野動物園の場合、10年契約で年間95万ドルと高額だ。アドベンチャーワールドは私営のため公表していないが、同じくらいの額を支払っているのだろう。人間の警戒感を解く可愛いパンダは、中国共産党によってチャーム・オフェンシブの小道具と化している。

 むろん、マスクをもらって感謝することを批判しているのではない。中国への制裁を表明した同盟国・米国との足並みを乱し、香港市民を見捨てるような発言をした人が、一方でマスクをもらって喜び、謝意を表している。こんな与党首脳の姿が、世界の人々にどう映るのだろうか。

 二階氏の姿に香港市民や欧米諸国が怒りを感じても、中国共産党が喜ぶことはないだろう。篭絡した相手が、筋書通りの言動をしたと受け止めるだけである。
 二階氏は確信的な中国贔屓とみられるが、多くの国会議員には中国から激しい工作が仕掛けられていただろう。その手法は「恫喝」と「懐柔」だ。

 恫喝とは、中国と友好関係にある公明党や支持母体の創価学会を通じ、「次の選挙で協力しない」と圧力をかけることだ。日本チベット議員連盟に所属していた議員が、在京中国大使館の政治担当公使から「選挙で落としてやる」と言われたという話を聞いたことがある。「学会票を回さない」という意味だったそうだ。
 その一方、贔屓してくれたら中国へ招待し、共産党の大幹部に会わせ、記念写真を撮らせると懐柔してくるのだ。確固たる国家観、安全保障観を持たず、目先の選挙や名誉心を満たすために活動している政治家は手玉に取られてしまうのだろう。

 日本政府もだらしない。国家安全法については、菅義偉官房長官が5月28日の記者会見で、「香港の情勢を深く憂慮している」と述べたに過ぎず、「非難」や「抗議」といった言葉は用いられなかった。
 これでは、屁の突っ張りにもならない。習近平の国賓来日こそ年内実施は見送られ、来年以降も無期限延期となる見通しだが、「中国を刺激したくない」という気持ちがあまりにも強く出過ぎていないか。

時代錯誤の外務省

 日本政府の対応がいくら「米英両国から支持されている」(菅氏)といっても、対中制裁に踏み切ろうとするトランプ政権と協調しないあたり、どこまでも情けない外交姿勢である。トランプ大統領は日本のへっぴり腰に苦虫を嚙み潰しているのではないか。
 日・米・欧の関係にクサビを打ち込もうとしている中国にとって、日本が最も与しやすいと思われては、欧米各国が中国との対立を深めるなか、スキマ風が吹きかねない。

 日本政府の反応について、外務省幹部がこう解説してみせた。

「みんなで中国を非難することが国益にかなうのか。こういう状況だからこそ、余計に中国と意思疎通を図らなければいけない」(産経新聞電子版/5月30日)

 外務省は同じセリフをいつまで言い続けるのか。米中冷戦時代を迎え、両国に二股をかけられる時代は過ぎ去ったのだ。中国を非難せずにきた結果が、連日の中国公船による尖閣諸島への接続水域入域・領海侵犯、5月に発生した日本漁船拿捕未遂である。また現在、中国国内において民間企業に勤める10人以上の日本人が、容疑事実を公表されないまま拘束されている。

 そんな外務省の媚中ぶりに業を煮やしたのだろう。安倍首相は今秋のG7(先進7カ国)で、国家安全法に対する共同声明の作成を主導していく考えを示した。外務省によって「深い憂慮」でまとめられることがないよう、強いメッセージを発信していただきたい。

経団連=朝貢使節団

 財界の媚中ぶりも重症だ。特に経団連、日本商工会議所、日中経済協会の3団体は、朝貢使節団かと見まがうほどである。
 昨年9月、3団体は雁首を揃えて訪中した。李克強首相に恭しく礼をし、今春予定されていた習近平の来日を「わが国経済界あげて歓迎する」と媚びまくった。そのウラで、彼らが首相官邸に中国を刺激しないようブレーキをかけていたという話は知る人ぞ知る。2018年10月には、約500人の財界人が安倍首相の訪中に同行している。

 直前のペンス演説で、中国への深入りにキツく釘を刺されていたにもかかわらず、〝三跪九叩頭(さんききゅうこうとう)の礼〟よろしく、臣下のように振舞った。三跪九叩頭とは、「一度ひざまずき、3回頭を垂れる」という動作を3度繰り返す、清朝の皇帝に対する臣下の礼である。彼らは拘束されている同胞企業人について、注文を付けたのか。ビジネスで優遇してもらいたいがため、媚びへつらって揉み手してきただけではないのか。

 3団体訪中の様子を、中国出身の楊海英静岡大学教授は、「会談の冒頭、深々と頭を下げる日本の財界人と無表情の李首相との会見の様子は皇帝に謁見する前近代的な『朝貢使節』のようだった」(ニューズウィーク日本版/2018年10月25日)と語っている。

 後述するが、情けない日本の財界に比べ、トランプ大統領は本気だ。日本も中国依存のサプライチェーン(供給網)を抜本的に見直さなければ、日本企業が制裁対象になりかねない。

脱・中国への好機

 武漢ウイルスは、自動車製造からマスク、消毒液といった衛生用品にいたるまで、日本企業の中国依存の深さと危険性をも余すところなく炙り出した。中国による計画的な生産・輸出を停止されれば、日本経済は窒息してしまう。
 日本の輸入全体に占める中国の割合は、2000年の14.5%から2019年には23.5%まで高まっている。中間財の輸入に占める中国の割合をみても、日本は21.1%で、米国の16.3%よりも多く、先進国トップとなっている(ロイター通信/5月1日)。まずはこの是正から取り組まねばならない。

 とはいえ、中小企業からトヨタといった大企業まで、中国に進出した日本企業は数知れない。しかし、チャイナ・リスクは進出時より、撤退時にあることはあまり知られていない。
 雇用を中心に、中国経済にとってダメージとなる日本企業の撤退は、中国当局に認められにくい。労務だ、税務だと難クセをつけられたのち、莫大なカネを請求され、撤退できずにいるケースは少なくない。言葉の壁や中国国内法への知識不足など、そのハードルは高い。中国側と合弁会社を設立していれば、話はなおさらややこしくなる。

 そこで企業単体ではなく、会計や税制などの専門家チームによる撤退プロジェクトを立ち上げる必要がある。多少のカネがかかっても、急がば回れだ。追徴課税されることを考えれば、安上がりである。
 先述したように、チャイナ・リスクには米国による日本企業への制裁リスクも含まれている。米国は2018年夏、国防権限法で輸出管理改革法(ECRA)を成立させた。ECRAは主に中国に対して、米国の兵器転用技術や先端技術の輸出を規制する法律である。対中版〝新COCOM〟(対共産圏輸出統制委員会)といえよう。

 米国の本気度がうかがえるのは、バイオテクノロジーや人工知能などを規制対象にしたことだ。これらは「中国製造2025」に指定されている分野と重なる。これ以上、中国に先端技術を渡さないという米国の強い意思の表れである。
 こうした製品の輸出が原則禁止となる以上、日本も中国企業との共同開発や産学協同の技術開発を見直さなければ、ECRA違反による制裁対象となる可能性があるのだ。
 中国は「千人計画」という国家プロジェクトで海外頭脳のヘッドハンティングも行っており、残念ながら日本人研究者も大勢参加している。これらも、わが国からの頭脳流出だけでなく、ECRA違反という観点から、見直さなければならない。

 武漢ウイルスは、中国のIT企業と提携してAI(人工知能)を駆使した自動運転を推進する自動車産業からアパレル産業まで、幅広い分野で中国から撤退せよ、と教えてくれたのだ。
 日本には歴史的に培ってきたモノづくりの技術と伝統、オリジナリティがある。日本が「脱・中国」を進めることは、中国の不公正な貿易慣行を是正することにもつながる。
 中国の〝静かなる日本侵略〟の現状や脱・中国に向けた論考は、7月にハート出版から発売される新著でさらに詳しく述べている。興味のある方はお読みいただきたい。
佐々木 類(ささき るい)
1964年、東京都生まれ。早稲田大学卒業後、産経新聞に入社。地下鉄サリン事件で特ダネ記者としてならす。その後、政治記者となり、首相官邸、自民党記者クラブのキャップを経て、政治部次長に。4年間のワシントン支局長の後、2018年10月より論説副委員長。論説委員時代には、読売テレビ「たかじんのそこまで言って委員会」に出演するなど、産経新聞屈指の論客として知られる。著書に『日本人はなぜこんなにも韓国人に甘いのか』(アイバス出版)、『静かなる日本侵略』『日本が消える日』(ともにハート出版)などがある。

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