自民党総裁選挙が俄然面白くなってきた。派閥に所属せず、当初20人の推薦人を集めるのも大変ではないかと見られていた高市早苗・前総務相の存在感が大きくなってきたからだ。

 高鳥修一衆院議員が代表世話人を務める『保守団結の会』や、青山繁晴参院議員が代表の『日本の尊厳と国益を護る会』など、自民党の保守派は強い高市支持を打ち出している。こうした勢力だけで、国会議員50人以上の支持がある。
朝香豊:現実味を帯び始めた「高市早苗総裁」誕生

朝香豊:現実味を帯び始めた「高市早苗総裁」誕生

「風」が吹いてきたか―

岸田氏のポカ

 安倍前総理が「次は岸田さん」と話していたことはよく知られていたから、義理堅い安倍氏は岸田文雄・元外務大臣の支援に回ると思われていたが、今回は高市氏の支援を表明した。岸田氏は二階幹事長が5年にわたって自民党の幹事長として君臨している党内の不満を代弁して人気を高めたが、これが菅おろしを意図したものであったことに安倍氏は不快感を感じたのかもしれない。

 さらに安倍氏が支持する高市氏を牽制しようとしてか、岸田氏はさらなるポカをやらかした。いわゆる「森友問題」について「国民が納得するまで説明を続けることが政府の姿勢として大事だ」と述べたのだ。これで岸田氏は安倍氏が所属する最大派閥の細田派を敵に回す形になった。さらに言えば細田派に続く党内第二派閥の麻生派をも敵に回したとも言える。麻生副総理は財務相を兼務し、「森友問題」では省内から自殺者を出すほどの傷を負っているからだ。
 麻生派からは国民の人気も高い河野太郎・行革担当相が出馬を表明しているが、派閥の領袖である麻生氏は安倍氏に同調して高市氏を支援する意向を示していると伝えられている。河野氏は麻生氏に派閥を挙げて支持してほしいと9月6日に直談判したが、どうやら説得は不調に終わったようだ。会談終了後に記者から声を掛けられても、河野氏は一言も発せずに通り過ぎた。党内最大派閥の細田派に加えて、第二勢力である麻生派も高市支持に動き出しているのである。

党員・党友票はどうなる?

 こうなると我々が注目すべきは党員・党友票の行方だ。

 大マスコミは高市氏をなるべく表に出さない動きに出ている。この中で読売新聞が9月4〜5日に行なった世論調査では、次の首相としてふさわしい人物として河野氏が23%、石破茂・元幹事長が21%、岸田氏が12%などとなる中で、高市氏は3%に留まった。同じ期間に共同通信が行なった世論調査でも、河野氏が31.9%、石破氏が26.6%、岸田氏が18.8%などとなる中で、高市氏は4.0%に留まった。この手のアンケートの信頼性はともかくとして、国民の中では高市氏の支持はまだまだ高まっていないことは事実であろう。
 また、少し前になるが、日経新聞は8月27日〜29日に「自民支持層」に限った調査を行なっている。こちらでも河野氏が18%、岸田氏が14%、石破氏が12%となる中で、高市氏は4.0%に留まっていた。ただ、この時はまだ菅総理が出馬を断念する前のことであり、菅総理支持は20%あった。さらに安倍前総理を推す意見も10%あった。8月末の段階で菅総理を支持していた層は、マスコミの報道に踊らされずに菅総理の業績を冷静に観察していた人たちが多いと思われる。そして安倍前総理の支持者の大半は高市氏支持にそのまま流れることが期待される。こうしたことを加味した場合に、自民支持層の中で高市氏への支持がすでにトップになっている可能性もある。
朝香豊:現実味を帯び始めた「高市早苗総裁」誕生

朝香豊:現実味を帯び始めた「高市早苗総裁」誕生

一般の人気は高いというが―
 さらに、保守層の愛読者が多い夕刊紙のサイトが8月20日に行なった調査では、高市氏支持は81%、同じ層の読者を持つ月刊誌が9月6日に発表した世論調査でも、74.6%が高市氏を支持している。この結果が自民党支持層全体の動向を表しているとは言えないだろうが、高市氏が岩盤保守層の厚い支持を受けているのは確認できる。

 興味深いのはこうした偏りがないはずのYahoo!ニュースの調査でも、9月7日午前8時段階では、高市氏の支持が44%でトップとなっていることだ(※リンク先は現時点の状況となります)。ちなみに2位の河野氏は30%、3位の岸田氏は12.8%である。高市支持者が他の出馬者より積極的行動に出ている結果にすぎないという冷めた見方もできるだろうが、それだけ高市氏には熱い支持者が多いということを示している。そしてそのような支持者の熱さは、河野氏や岸田氏の支持者にはないものである。

 党首選では最後に「風」が決め手となる。そしてその「風」は熱い支持者がどれだけ多いかということによって大きく動く。

【高市早苗】私が日本を「強くて美しい国」にします!【WiLL増刊号#625】

高市氏へのインタビューはこちらから!

「風」が決め手となる

 ここで思い出したいのは、自民党が野党に転落していた時に行われた2012年の総裁選挙のことだ。当時は安倍氏は第一次安倍内閣を体調不良で任期途中で投げ出さざるをえなくなった記憶がまだまだ強く、有力候補ではなかった。石破氏と石原幹事長(当時)の事実上の一騎討ちだと見られ、「石・石対決」とも呼ばれていた。これが崩れたのは、石原氏の失言連発による自滅の様相も大きかったが、当時吹いた「風」の力も大きかった。そしてその「風」は熱い安倍氏の支持者によってもたらされたものでもあった。

 当時の安倍氏並の「風」が吹けば、高市氏当選の可能性は大きく広がってくる。しかも高市氏は強い発信力を持つ。筋の通ったことを堂々と話せる高市氏は、今後候補者の討論会などでその存在感を高めていくのは間違いない。

 高市氏が自民党総裁に選出されれば、それはすなわち第100代日本国総理が高市氏になることを意味する。第100代の総理が初の女性首相になるとなれば、大きな話題になるはずだ。日本の政治が新しい在り方へと代替わりする象徴として高市総理が誕生することを期待しながら、これから火蓋が切られる自民党総裁選挙を楽しみにしたいと思う。
朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。新著『それでも習近平が中国経済を崩壊させる』(ワック)が好評発売中。

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桑港老亀 2021/9/9 10:09

私はシニアで丹念に今の日本の政治を統計立ててインターネットで総合的角度から、読み解いて行く内に、
私のインスぺレーションの感がぴたりと「高市早苗総裁」誕生に傾き、最初の女性首相と確信しました。
これからの政治、経済、防衛と、国際社会に生きて行く日本の舵取りを正論で操舵してくれると思います。

桑港老亀 2021/9/9 10:09

私はシニアで丹念に今の日本の政治を統計立ててインターネットで総合的角度から、読み解いて行く内に、
私のインスぺレーションの感がぴたりと「高市早苗総裁」誕生に傾き、最初の女性首相と確信しました。
これからの政治、経済、防衛と、国際社会に生きて行く日本の舵取りを正論で操舵してくれると思います。

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