アメリカの本音

 アメリカ人が最も嫌うものは何か。それは「不公平(Unfair)」です。

 独立宣言に「平等」の概念が謳われる国なので、当然かもしれません。同時にキリスト教の背景もあり、人助けすることをアメリカ人は美徳だと考えています。助けた相手に期待するのは感謝だけです。しかし、感謝もされず善意を利用されていると思った場合、アメリカ人は許しません。「不公平」だからです。

 2016年の大統領選で、トランプ氏は「日本は何100万台もの自動車をアメリカに輸出している」と日米貿易に不満を漏らしました。それでも先日、ようやく日米貿易協定が調印された。日本が輸出する倍以上の日本車がアメリカで生産されていることなど、安倍政権は時間をかけてトランプ政権を説得したのでしょう。安倍首相との緊密な個人的関係もあって、トランプ大統領は対日認識を改めています。
 
 2019年5月、私は『WiLL』誌上で安倍首相と対談しました。安倍首相は、「モノの輸出では日本が有利だが、サービス部門ではアメリカが有利だから、合算するとバランスが取れている」「双方がウィンウィンになるように、両国の国益に資する形で交渉をまとめることができる」と話してくれました。フタを開けてみると、その通りになった。
 
 日本の野党やメディアは、貿易交渉で日本が大幅に譲歩するのではないかと疑っていました。今となれば、「ゲスの勘繰り」にすぎなかったことがわかります(笑)。
 
 ただ、安全保障面では依然として、アメリカは日本に「不公平」を感じています。
 
 選挙期間中、トランプ氏は日米安保の片務性に不満を漏らしました。「在日米軍の費用を日本が全額負担すべきだ」と主張し、「そうでなければ日米安保は破棄、日本は核兵器でも作って自分の国は自分で守ればいい」とまで言い放った。もちろん、日本の核武装は現実的ではありませんし、アメリカも許さないでしょう。しかし、日本にもっと責任意識を持ってほしいというのがアメリカの本音なのです。
 
 日米安保は、ソ連(今は中国、北朝鮮)の脅威から日本を守るため、あるいは緩衝地帯を構築するために結ばれたものです。戦後、アメリカはお金と人材を供給して日本の面倒を見ていました。それから約70年、日本は世界第3位の経済大国にまで上り詰めた。にもかかわらず、いまだに安全保障ではアメリカにおんぶにだっこ。
 
 トランプ大統領が「不公平」と思うのも無理はないのです。

幼稚園児でもわかること

 国民の生命を守ろうとしない国家に、存在意義はありません。政府は国民を保護する義務があり、国民保護のためには軍隊が必要不可欠。それは有史以来、人類の常識となっています。だから世界中の国々は軍隊を持ち、日々訓練を重ねている。

 敵がこちらを殺すつもりで攻撃してきた場合、敵を殺すつもりで反撃しなければ一方的に殺されてしまうか、投降するほかありません。投降すれば、国民は虐(しいた)げられ奴隷のような生活を強いられることになります。

 日本には、「殺すくらいなら殺されよう」などと能天気なことを言う人たちが多い。しかし、このスローガンを日本国内に広めることで、大衆を「非戦派」と「主戦論」に分断することができます。日本の抵抗力を弱めようと目論む、敵国のプロパガンダにほかなりません。このような言葉を口にする人が身近にいたら、敵国のスパイか協力者、もしくは「世間知らずのお人よし」と思って間違いないでしょう。

 戦後の日本を守ってきたのは、憲法9条ではありません。自衛隊と在日米軍という軍事力が、国民と領土をソ連や中国、北朝鮮という敵国の侵略から守ってきたのです。平和を愛し戦争を憎むからこそ、敵より強くなって抑止力を持つ。これは毎日、小さなケンカが絶えない幼稚園児の方が実感しているはずです。小さな子どもでもわかることなのに、「知識人」たちは理屈をこねて平和主義を唱えている。これほど恥ずかしいことはありません。

 日本は「敗戦国」という殻(から)に閉じ込められ、軍事や安全保障を真剣に考える機会を与えられませんでした。これはGHQをはじめとする連合国の責任です。日本は日米同盟を選び、安全保障をアメリカに委ねました。その選択は、冷戦期には間違っていませんでした。ところが、副作用はあまりにも大きかった。長年にわたるアメリカ依存が続いたことで、日本人はすっかり「平和ボケ」という病気に罹ってしまったのです。

「平和ボケ」を治療するためには、学校では決して教えないことを勉強するしかありません。戦後、日本の小中学校は「軍隊=悪」という虚偽を刷り込む洗脳施設と化しました。多くの日本人はその虚偽に洗脳され、思考停止したまま今に至ります。

「戦争のできる国」のどこが悪い

 2015年、集団的自衛権を部分的に認める「平和安全法制」が成立しました。そのときよく耳にしたのは、日本が「戦争のできる国になる」という声です。朝日新聞をはじめとするメディアも、この論調に乗って安倍政権を批判していました。このような風説を流していたのは、いったいどこの国の人たちなのでしょうか。そもそも、日本を取り巻く東アジアの国々は、すべて「戦争ができる国」です。中国やロシア、北朝鮮はもちろん、韓国も自前の軍隊を持って徴兵制を敷いています。
 
 日本を「戦争のできない国」にした張本人はアメリカです。しかし、その最大の理由は、強い日本と二度と戦争をしたくなかったから。日本人は好戦的な民族で、1000年前から軍事政権が支配する残虐非道な国だというプロパガンダを、アメリカ政府や大半のアメリカ国民は信じていました。しかし、7年弱にわたり日本を占領したGHQは、日本人がそのような民族ではないと実感した。

 さらに、ソ連の影響下で共産主義化する中国大陸と、韓国に武力で攻め入る北朝鮮を目の当たりにします。アジア地域で領土拡大の野心を抱くのは、いつの時代もロシアと中国であり日本ではない。日本が戦ってきた日清・日露戦争、そして大東亜戦争は「侵略」でなく「自衛」が目的だったことを理解したのです。
 
 トランプ政権は、日本が再び「戦争ができる国」になることを望んでいます。日本が武力で国境線を変更しようと企む国々を牽制することで、アジアの平和が守られるからです。

 裏を返せば、強い日本の復活は、中国やロシア、北朝鮮や韓国にとって不都合なわけです。近隣四カ国と、それらの国と親交が深い小国を除けば、世界中の国々が日本の憲法改正を待っている。中国の侵略から諸国を守ることができるのは、アジア最大の自由主義国である日本の「義務」といえます。

 例えば、町内会に掃除当番があったとします。あなたの番が回ってきたとき、「ウチは家訓で掃除を禁止されている」と断ることができるでしょうか。そのような自分勝手は許されませんし、まともな日本人ならきちんと掃除当番をこなすはずです。

「和」を重視する日本人は、集団のルールを守らない人間を嫌います。ところが日本という国自身が、十分な能力があるのに義務を果たしていません。戦争で焼け野原になった日本は、周囲の掃除どころではなかったので当番を免除されていたにすぎない。しかしここへきて、当番を肩代わりしてきたアメリカが「いい加減に自分でやってよ!」と催促しているのです。日本が東アジアの掃除当番を引き受ける時が来ています。

 安倍首相は、日本が果たすべき責任と義務に気付いているはずです。だからこそ「自由で開かれたインド・太平洋構想」を提唱し、自由主義国家による対中包囲網を敷こうとしている。「セキュリティダイアモンド構想」、すなわち日本・アメリカ・オーストラリア・インドの間で構築する新しい安全保障構想は、アジア地域でますます重視されていくでしょう。

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中国と韓国を知らないアメリカ人

 北朝鮮にすり寄っている韓国の文在寅大統領を、世界は冷めた目で見ています。トランプ政権も例外ではありません。文大統領との会談が数分間の「立ち話」で終わることもしばしばです。

 大半のアメリカ人は、良くも悪くも韓国という国を気に留めていません。そもそも、国の存在自体を知らないのです。中国ですら、トランプ政権下で「アメリカに立ちはだかる危険な国」であることを認識した人たちも少なくありません。一般のアメリカ人は、ハワイより西にある国のことに関心がないのです。
 
 ところが、日本だけはよく知っています。なにしろ、かつては最大の敵国でありながら、現在では最重要同盟国になった「不思議な国」だからです。
 
 日本では「西側諸国」という言葉がありますが、アメリカでは「United States, Europe, and Japan」と呼びます。直訳すれば、「アメリカ、ヨーロッパ、そして日本」。自分たちを表現する言葉に「日本」という国が入っている。そんな仲間意識もあって、アメリカ人は日本に興味があるのです。
 
 トランプ大統領当選直後、安倍首相はニューヨークのトランプタワーを訪れ会談を行いました。メディアはその様子を、「ご主人様にしっぽを振る犬のようだ」と揶揄した。しかし真相は逆、つまりアメリカが安倍首相を最初の会談相手に選んだとされています。
 
 なぜか──アメリカにとって、信頼できるアジアのリーダーは安倍首相しかいないからです。プーチンでも文在寅でもなく、ましてや習近平や金正恩なわけがありません。だからこそ、トランプ陣営の側近たちは選挙戦の忙しい合間を縫って来日し、会談の下準備をしていたのです。

「平和ボケ」から脱却せよ

 1955年、「自主憲法の制定」のために保守合同で結党されたのが自民党です。ところが、いまだに憲法改正の発議すらされたことがありません。野党の体たらくに安心しきって真の国防議論を避けてきた自民党にも、大きな責任があると言わざるを得ません。

 しかし参院選後、ようやく自民党が重い腰を上げようとしています。10月4日の所信表明演説で、安倍首相が憲法改正は「国民への責任」と明言しました。二階幹事長や岸田政調会長ら自民党幹部も、全国各地で集会を開き、改憲論議を活発化させることに積極的な姿勢を見せています。

 歓迎すべき動きではありますが、国民投票へ向けていくつかアドバイスをしたいと思います。

 まず、自民党の国会議員は各選挙区で地方議員と協力し、憲法改正の必要性を訴えるキャラバンを行うべきです。山本太郎氏の「れいわ新選組」を見習って、草の根運動を保守が実行すればいいでしょう。
 
 トランプ大統領は選挙戦で、航空機の格納庫など大きな空間を確保し、たくさんの人々に持論を訴えました。日本の政治家も、このような勉強会を開くべきです。政治資金パーティーで支持者を前に語っても、国民を動かすほどのエネルギーにはならないのです。

 メディアからのバッシングを恐れてはいけません。バッシングすればするほど話題になり、国民が憲法について知るチャンスが増えます。平和安全法制のときと同じで、どうせ「戦争になる」「徴兵制になる」という的外れな批判しかできないでしょうから、かえって好都合。メディアの化けの皮もはがれていくに違いありません。

 アメリカでは、家庭でも政治について当たり前のように議論を交わします。親子が現政権の政策について意見をぶつけ合うのはよく見る光景です。一方で日本社会では、政治・宗教・野球の話をすべきでないといわれます。日本中で憲法改正の機運が高まれば、この状況も変わっていくでしょう。

 政治に関心を持つのは当たり前のことですし、常識を疑って自らの頭で国の将来を考えることは「右傾化」ではありません。私はこれを「正常化」と呼んでいます。

「よくわからないから」という理由でとりあえず反対する日本人は多い。しかし、それは民主主義国家の「主権者」として無責任ではないでしょうか。何もわからないなら、新しい知識を素直に学べばいいのです。
 
 70年前、アメリカ人が日本国憲法の草案を書いてしまった。私は、その歴史に罪悪感を覚えています。だからこそ〝普通〟の在日アメリカ人という立場から、日本人が「平和ボケ」から脱却するために情報発信を続けているのです。
 
 しかし、憲法改正するかしないかを決めるのは日本国民にほかなりません。皆さんが賢明な判断を下すことを期待します。

ケント・ギルバート
1952年、米国アイダホ州生まれ。70年にブリガムヤング大学に入学し、71年にモルモン宣教師として初来日。80年、同大学大学院を修了し、法務博士号・経営学修士号を取得。その後、国際法律事務所に就職し、法律コンサルタントとして再び来日。タレントとして『世界まるごとHOWマッチ』などの番組に出演する。『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』(講談社)など著書多数。

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