【濱田浩一郎】政治とSNS:「#中央区だったら懲罰され...

【濱田浩一郎】政治とSNS:「#中央区だったら懲罰されていた」問題を考える

 東京都中央区議会議員の高橋元気氏(あたらしい党)が議会で懲罰動議をかけられ、2020年12月3日に賛成多数で可決された。このことは「#中央区だったら懲罰されていた」として、ツイッターで大きな話題・問題となっている。中央区民の私としても、大いに関心がある話題なので、ここに拙文を記す。

 問題の発端は、高橋議員の11月28日のツイートにあるようだ。
【濱田浩一郎】政治をSNS:「#中央区だったら懲罰され...

【濱田浩一郎】政治をSNS:「#中央区だったら懲罰されていた」問題を考える

高橋氏のツィート
 「教育委員会の委員が区議会で何の議論もなく再選されるのが違和感しかない。 少なくとも区民文教委員会に付託され審議されるべきでは。 ICT化(ネットワーク通信技術を活用して、人と人、人と物などをつなぎ、コミュニケーションをとること)も進む教育現場において、70代以上の委員の他に、若く知見のある候補者がいなかったのか、庁内で議論はされたのだろうか。 忖度にしか見えない」(同氏ツイッター)との一文が、懲罰動議を出される理由であるという。

 私も最初は首を傾げた。なぜこの程度のことで懲罰動議かと。議員にも表現の自由はあるし、コロナ禍の今、中央区議会はもっと他にやるべきことがあるだろうと。

 同様に感じた人も多く、ツイッター上では「表現の自由案件」「公権力が言論の自由を糾弾しようとする危機」といった言葉が散見された。

 ちなみに懲罰動議を出したのは、磯野忠議員(自民)、墨谷浩一議員(公明)、渡部博年議員、渡部恵子議員(立民)の4名とのこと。多様な政党に属する議員から出されたといえよう。

 しかし、なぜ彼・彼女らは、懲罰動議を出したのか。それは高橋議員が教育委員会委員の選定に対し、議決では賛成していたのに、SNSでプロセスに対する批判を述べたのが理由の1つであるようだ。

 ネット上ではこの点に触れる人は少ないが、ここに来て、高橋議員の側にも少し違和感を覚えた。事実関係の詳細は分からないが、なぜ、高橋氏の行動は一貫していないのか、議決では賛成したのか、そしてネットでは反対したのか、その説明を高橋議員はするべきではないかと思ったのだ。政治家のネット上の表現の自由は、常識の範囲で認められるべきだ。

 しかし、議決に賛成したにも関わらず、ネットでそれとは逆の反対意見を述べるようでは、いけないのではないか。反対ならば、議会において正々堂々と反対意見を述べ、そして議決にも反対すべし、それがあるべき姿ではないのか。それができなくとも、せめて喧々諤々の議論をするべきではなかったかと。

 もちろん、物事には微妙な問題もある。何でも賛成・反対と割り切れるものでもない。賛成と反対の中間ということもあろう。

 しかし、高橋議員の場合は教育委員会の委員が区議会で何の議論もなく再選されることや委員全体への大いなる違和感をツイートされた。そこまでの違和感や反対する心があるならば反対を通すべきだと個人的には思うのだ。

 高橋議員の懲罰動議の理由が「高齢者による差別」と主張する者もいるようだが、その理由ならばおかしい。高橋議員のツイートを見ても、私には差別的意図は感じないからだ。

 まだ情報が錯綜していて不明確な点もあるが、この問題が表現の自由の問題とどのように絡んでいるのかは、もう少しじっくり考えてみないと見えてこない気もする。懲罰動議を出した議員の動機や意図が、どこにあるのかを見極める必要もあるのではないかと思うのだ。

 高橋議員の政治家としての立ち居振る舞いや議会への向き合い方が問われる問題なのか、政治家のネット上の「表現の自由」が問われる問題なのか。それともその両方なのか。

 高橋議員の懲罰動議の問題から、1週間が経とうとしているが、現時点では、当日のような大きな騒ぎにはなってはいない。高橋議員は12月6日、自身の公式HPにおいて、今回の騒動を総括する文章を書いている(以下、「」部分は同議員の文)。

 そこには「第4回定例会の人事案として、教育委員会委員の再任の議案が、追加議案として11/27に正式に提出され」たこと。同日に採決が行われたこと。採決の前段階において議案の説明が行われたがその説明資料には具体的記述は少なく「これだけで何を判断すればいいんですか」と感じたこと。結果、高橋議員が属する会派は本教育委員会委員の任命同意について賛成の態度を表明したこと。その時点で再任問題について疑問に思っていたにも関わらず「積極的に同意・非同意について議論」しなかったことを反省していることがまずは述べられている。

 「私の言い方には問題があったと思いますし、その点は反省致します。議案に賛成しながら、その議案に批判的な意見を述べたと批判されるのは仕方ありません」とまで述べている。

 その上で懲罰理由を「既に賛成した人事案に対して批判的な意見をTwitter上で発信することは議会の信頼と品位を傷つける」ことと要約、「議会外での発言を、議会内の懲罰問題として持ち出された点、そして懲罰内容の公開を拒否され、公開の本会議の場に舞台を移された」として問題視をしている。「懲罰措置については、区議会を相手取って訴訟を提起すべき」との声には現時点では慎重であるが、その可能性は排除しないとする。

 私の印象論だが、懲罰動議反対派の見解のみが世上に出ており、賛成した議員等の見解表明が少ないように思う。

 懲罰動議まではいかなくとも良かったのではないかと思うし、懲罰内容の公開を拒否した点なども違和感が残る。

 一方で、再任問題について疑問に思っていたにも関わらず「積極的に同意・非同意について議論」しなかった高橋議員の行動にも違和感を覚える。両方ともに何か気持ちが晴れないモヤモヤ感があるのだ。

 もちろん、誰でも間違いはあるし、完璧ではない。高橋議員も反省すべき点は反省しておられるので、是非、若い力を活かして、区政を変えていってほしいと思う。
濱田 浩一郎(はまだ こういちろう)
1983年、兵庫県相生市出身。歴史学者、作家、評論家。皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員・姫路日ノ本短期大学講師・姫路獨協大学講師を歴任。現在、大阪観光大学観光学研究所客員研究員。現代社会の諸問題に歴史学を援用し迫り、解決策を提示する新進気鋭の研究者。著書に『日本人はこうして戦争をしてきた』、『日本会議・肯定論!』、『超口語訳 方丈記』など。

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