【山口敬之】続:総選挙に忍び寄る"中国共産党"の影

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中国の新型ミサイルに震撼したアメリカ

 10/16、イギリスの有力経済紙フィナンシャル・タイムズが、中国の新型ミサイルについてスクープ記事を世界に配信した。
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 「中国が宇宙空間を利用した極超音速ミサイルのテストを行った」と題した記事は、こう続いた。

 「8月に発射され地球を周回した核弾頭搭載可能なミサイルは、アメリカの情報機関を震撼させた」

 長年にわたり軍事力で質量共に世界を圧倒してきたアメリカが、中国の新型ミサイル実験に衝撃を受けたというのである。

 フィナンシャル・タイムズは、衝撃の理由は中国の新型ミサイルの先進性にあると指摘する。

 日米が採用しているイージスシステムは、弾道ミサイルが放物線軌道を描く事を利用して飛翔コースを予測し、SM-3やPAC-3といった迎撃ミサイルを衝突させて破壊する。

  しかし今回中国が実験した「極超音速滑空体」(HGV)は、飛翔中にグライダーのように滑空して軌道を自由に変えられるため、これまでのシステムでは迎撃が事実上不可能なのだ。

 長年巨費を投じて構築した、アメリカの弾道ミサイル防衛システムを完全に無力化してしまう可能性があるからこそ、アメリカは強い衝撃を受けたのだ。
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現状の日米の防衛システムでは迎撃が困難な可能性も
 アメリカが衝撃を受けた理由がもう一つある。今年に入って2度、アメリカ軍は立て続けに「AGM-183A」と名付けた自身のHGV発射実験に失敗しているのだ。

 飛翔中の軍用機から切り離した後に点火するため「空中発射高速応答兵器」(ARRW)とも呼ばれる米国版HGVは、4月にはB-52H爆撃機からの切り離しに失敗、7月にはロケットエンジンの始動に失敗して空中で爆破された。

 そのわずか1ヶ月後、中国が独自開発したHGVの発射実験を行い、地球を周回してターゲット近辺に着弾させたのだから、アメリカ軍のメンツは丸潰れだ。

 最新兵器の開発においては、これまで常に米国の後塵を排してきた中国が、少なくともHGVという最先端ミサイル開発の分野では、アメリカに完全に追いつき追い越したのだ。

中国・新型ミサイル開発の裏に日本の大学の"下支え"

 HGVは弾頭そのものが極超音速で自律的かつ自在に飛翔するという意味で、これまでのミサイルと根本的に異なる。

 この革新的な兵器開発を支えたのが、「スクラムジェットエンジンの開発」と「耐熱素材・耐熱塗料の研究」だった。
 
 スクラムジェットエンジンとは、極超音速で飛翔する滑空体の空気取り入れ口で発生する衝撃波で空気を圧縮し、その圧力を利用して燃料を噴射、燃焼させて推力を得るエンジンだ。

 ・シンプルな構造ながら
 ・極超音速巡航(マッハ数5以上)が可能で
 ・極超音速において最高の推進力を得る
 という、巡航型HGVにとっては必要不可欠な最先端技術だ。
 
 日本ではかねて日本大学やJAXA、防衛装備庁航空装備研究所(ASRC)など官学で研究が進められており、世界的にも評価されていた。

 こうした日本の軍事技術に転用可能な研究について、高市早苗政調会長は先の総裁選で次のように指摘していた。
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技術面での安全保障にも警鐘を鳴らした高市早苗氏
 ≪中国では、軍需産業、国防科学技術大学(軍系大学)の他、国防7校と呼ばれる大学、中国科学院などが「極超音速兵器」の研究開発に従事しています。米国も「極超音速兵器」を開発しているが、現時点では中国に凌駕されていると聞きます。
 
 この「極超音速兵器」開発の鍵となるのが、「スクラムジェットエンジン」と「耐熱素材」の技術です。これらの関連技術を支える日本の大学や研究機関に、中国人技術者が多数在籍していました。
 
 なかには、日本の国立大学在籍中に日本政府の科学研究費補助金を受領し、JAXA関連施設にも出入りし、中国に帰国後は極超音速分野の新型実験装置の開発に成功した中国科学院の研究員もいました。この実験装置がJAXAの実験装置と類似しているとの指摘もあります。
 
 北京理工大学(国防7校)副教授の専門はロケットエンジン燃焼ですが、もともと同大学の兵器発射理論・技術の修士課程に在籍した後、日本の国立大学で燃焼工学を専攻し博士となり、同大学の助教を務めました。
 
 また、ハルビン工業大学(国防7校の一つ)教授の専門はセラミックスですが、日本の国立研究開発法人の研究員を務め、中国の国防科技イノベーショングループに所属し、多機能耐熱セラミック複合材料研究を行っています。
 
 さらに、西北工業大学(国防7校の一つ)教授の専門は航空エンジン高温部品冷却技術ですが、日本の国立大学の研究員を務め、中国では「国防973プロジェクト」「国防基礎預研」「航空発動機預研」に従事しています。

 この他にも、「極超音速兵器」に必要な「推進装置」「設計」「耐熱材料」「流体力学実験」などについて、中国科学院・力学研究所や国防7校の研究者が日本の学術機関に在籍し、帰国後に中国の大学や研究機関で極超音速関連研究に従事している事例が散見されます。
 
 日本の大学や研究機関においては、海外人材受け入れ時のスクリーニング(身辺調査)が甘いので、日本の技術が中国の武器・装備品の性能向上を下支えしてしまっている可能性が高くなっています。
 中国がアメリカに先立ってHGVの発射実験に成功し、低軌道を変則的に飛翔しながら地球を周回させる事が出来たのは、HGV用のスクラムジェットエンジンの開発に成功したからだ。

 その研究開発を下支えしたのが、政府から科学研究開発費を受け取ってスクラムジェットや耐熱素材の開発をしていた、日本の大学や研究機関だったのだ。

長尾敬氏が暴いた「国防7校」問題

 高市が言及した中国の「国防7校問題」を国会で初めて指摘したのが、自民党の長尾敬前衆議院議員である事は、先週の本稿で指摘した。
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 長尾氏は、日本の国公立・私立大学45校が、人民解放軍の技術革新に直接的に貢献している中国の「国防7校」の留学生を毎年少なくとも数百人受け入れている事を指摘した。

 この中には、スクラムジェットエンジンや極超音速滑空体の耐熱・耐衝撃構造に資する研究で知られる大学も多く含まれている。
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 日本の大学の最先端研究を数年間かけて習得した中国人「留学生」が毎年数十人単位で中国に帰国して、HGVを始めとする人民解放軍の兵器開発に従事した事は、もはや疑う余地はない。

 「日本の税金によって日本で行われていた研究が、日本人を殺戮する中国の最新型兵器開発に使われる」という、想像を絶する事態のカラクリを初めて暴いたのが長尾氏だったということだ。

日本を守るには「敵基地攻撃能力」は必須だ

 中国やロシアなどの急速なHGV開発に対して、アメリカはいくつかの対応策を打ち出している。

 (1) HGVの打ち上げプラットホームの早期探知と破壊
 (2) HGVの上昇段階での破壊
 (3) 低軌道における変速軌道に対応できる迎撃システムの開発
 (4) 終末段階(ターゲット上空)での迎撃

 HGVの発射プラットホームは、
 ・爆撃機
 ・潜水艦
 ・弾道ミサイル
 ・巡航ミサイル
 など多岐にわたる。
 
 HGVは変速軌道を取る滑空状態に入ると迎撃が難しいため、まずは(1)発射前と(2)発射直後の上昇段階(ブーストフェイズ)での対処を目指す。

 また、(3)変速軌道に入ったHGVの迎撃(ミッドコース迎撃)も諦めたわけではない。既存の地上レーダーの代わりに、数百基から一千基に及ぶ低軌道衛星群を新たに配備し、その赤外線センサーで極超音速兵器のスクラムジェットエンジンの熱を探知・追尾して、長射程迎撃ミサイルを誘導する。この全く新しい防空システム「HBTSS」(極超音速および弾道追跡宇宙センサー)は、既に本格配備にむけた準備が進められている。
HBTSSのイメージ図

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 さらに、ミッドコースで撃ち漏らしたケースに備えて、従来のPAC-3やSM-6といった低高度の拠点防衛システム(4)も組み合わせて迎撃確率を向上させる。
 アメリカの対応のうち、上記の(1)(2)は、言うまでもなく「敵基地攻撃能力」だ。

 例えば、HGV弾頭のミサイルを搭載した原子力潜水艦であれば、対潜哨戒技術によって敵国原潜の位置を常時把握し、いざ開戦となれば即座に潜水艦を破壊する。

 つまり、移動ミサイル基地でもある潜水艦をミサイル発射前に破壊するというこの戦略こそ、現代の「生きた敵基地攻撃能力」である。

 中国や北朝鮮はノドンやテポドンのような固定式の発射台は日米の敵基地攻撃に脆弱だと判断して、1980年代以降主な発射方式を移動式発射台である「TEL車輌」に順次移行した。
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日本を標的とした中国の弾道ミサイルDF-21(東風21)

日本を標的とした中国の弾道ミサイルDF-21(東風21)

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 しかし、TEL車輛といえども発射地点に到着してから車輌を固定して水平を取り、ミサイルを屹立させて発射するまでに数十分はかかる。

 だから米国は、CIAなど情報機関のエージェント情報(ヒューミント)や、通信・デジタル情報(テリント・シギント)などを総動員して巨大なTEL車両が展開できるエリアを事前に特定して衛星による警戒レベルに濃淡をつけるなど、TELという移動式の「敵基地攻撃」にも迅速に対応すべく、不断の努力を続けている。

 これに対し中国や北朝鮮は、鉄道や潜水艦からの発射など、「移動式ミサイル基地」の多様化に余念がない。

 ご存知のように、アメリカは「世界の警察」である事をやめようとしている。日本が日本の国土を自力で守る必要が高まっている今こそ、中国や北朝鮮がいかなる技術革新を遂げようとも、それに対応した「敵基地攻撃の獲得」に向けた継続的な投資が不可欠だ。

 だからこそ岸田首相も19日、官邸で開いた国家安全保障会議(NSC)後、記者団に「敵基地攻撃能力の保有も含め、あらゆる選択肢を検討するよう改めて確認した」と説明した。

即座に「敵基地攻撃能力」議論に釘をさす公明党

 ところが、公明党の山口那津男代表は、すかさずこう牽制した。

 「敵基地攻撃能力は、昭和31年に提起された古めかしい議論の立て方だ」(参考記事
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速攻で「敵基地攻撃能力」論を牽制
 この主張は、総裁選の論戦で「敵基地攻撃能力は昭和の概念」と述べた自民党の河野太郎広報本部長とウリ二つだ。(参考記事

 現実に中国は1300基以上の日本をターゲットとした核ミサイルを配備している。日本人を大量殺戮するミサイルの日本着弾を防ぐありとあらゆる手段を模索するのが、全ての日本の政治家の責務だ。

 実際にアメリカは、ミサイルの発射前から着弾直前までのあらゆるフェーズで、敵の弾頭の破壊・迎撃方法を追究し続けている。

 それなのに、公明党や河野太郎は、ミサイル抑止の最も有効な手段の一つである敵基地攻撃能力をハナから放棄すべしと主張し、放棄する代わりにどのように国土を守るのか具体策を示していない。

 こうした人々は、中国の核ミサイルから国土を守るという日本の政治家として当然の責務を果たそうとせず、日本に対する中国の軍事的優位を固定化させようとする、売国媚中勢力と断定せざるを得ない。
 一方、日本向けミサイルに巨費を投じる中国の軍事技術のさらなる進歩に日本の学者や研究者が手を貸している現状を初めて暴き、国会の場で是正を求めたのが長尾敬氏だ。

 日本学術会議は、自衛隊の軍事研究には徹底的な協力拒否を貫く一方で、中国軍への技術漏洩には一切の予防手段を講じない。この事についても長尾氏は警鐘を鳴らし続けた。

 また、ウイグルとチベットという中国共産党に蹂躙され弾圧されている少数民族の人権問題に取り組む超党派議連で事務局長を務めている。先の国会ではウイグル人権法案の成立を目指して奔走したが、公明党の反対もあり上程すらされなかった。
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 先週も指摘した通り、公明党は10/29投開票の総選挙で、大阪の自民党候補の中で長尾氏にだけ推薦を出していない。

 公明党は、政策と選挙で協定を結んでいる自民党の公認候補である長尾氏に推薦を出さなかった理由を明らかにすべきだ。

 さもなければ、公明党は「中国の軍拡に反対し、中国共産党に抑圧された少数民族の救済を主張している長尾氏を落選させようとしている」と見られてもやむを得まい。

 そしてそれは、公明党が日本と日本人のための政党ではなく、中国におもねり日本の防衛力強化を妨害する、中国と中国共産党のための政党だと自ら認めているに等しいのだ。
山口 敬之(やまぐち のりゆき)
1966年、東京都生まれ。フリージャーナリスト。
1990年、慶應義塾大学経済学部卒後、TBS入社。以来25年間報道局に所属する。報道カメラマン、臨時プノンペン支局、ロンドン支局、社会部を経て2000年から政治部所属。2013年からワシントン支局長を務める。2016年5月、TBSを退職。
著書に『総理』『暗闘』(ともに幻冬舎)、新著に『中国に侵略されたアメリカ』(ワック)。

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この記事へのコメント

あふぉ 2021/10/23 09:10

チャイナの植民地として永続的にその勤勉な労働力と豊かな発想の源である日本国民ごと全てを隷属するために可能な限り抵抗力を失わせ丸飲みにしたい、そういう事を日本国内にも望んでいて事が成った暁には自分達が中間の支配層に成りたいという集団がいる。

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