リーダーシップが発揮された

 5月14日、新型コロナウイルスに関する緊急事態宣言が39県で解除された。安倍総理は「ここから、コロナの時代の新たな日常を取り戻していく。今日は、その本格的なスタートの日であります」と記者会見で述べた。新型コロナウイルスを封じ込めつつあるという確信とともに、緊急事態宣言解除後の新たな日本をつくり出すことの決意を表明したのである。初期において、政府の対応は遅いという声も耳にしたが、今はフルパワーで封じ込めに取り組んでいる。この寄稿においては、政府は封じ込めにどのように取り組んできたか、そして今後やるべきことについて考えてみたい。

 まず、国産新型インフルエンザ治療薬「アビガン」の新型コロナウイルス治療薬としての承認についてである。安倍総理は繰り返し「5月中の承認を目指す」と述べたが、6月末までかかるとされる治験の結果が出る以前に、観察研究での有効性や安全性が確認できれば5月中の承認がなされる見込みだ。観察研究とは、藤田医科大と国立国際医療研究センターが取りまとめを行い、新型コロナウイルス感染症患者へ実際にアビガンを投与する研究である。もちろん治療効果も狙ってのことであり、投与例はすでに3000例近くになっている。

 早期のアビガン承認に向けた動きは、総理が繰り返し力強く発言することで動きが出てきたものだ。総理のリーダーシップが力強く発揮された例であり、すでに承認された「レムデシビル」も然りである。さらに総理は、ワクチンについても7月から治験を始められる見込みだとも発表した。ワクチンができれば、新型コロナ対策も様相が変わり、より明るい未来が見える。

 マスクや医療用防護服については、メーカーによる増産や政府による調達で不足が徐々に解消されつつある。厚生労働省を中心とするマスク班やガウン(防護服)班があらゆるつてをたどって調達にあたった。厚生労働省の対策本部は、まさに映画『シン・ゴジラ』の「巨災対(巨大不明生物特設災害対策本部)」のような光景で、政府の総力を結集し対応にあたっている。

 なお、政府による布マスク配布について、「布マスクより不織布マスクを」「費用がかかりすぎる」などと批判もあったが、日本政府の全世帯への配布発表後、CDC(米国疾病予防管理センター)は米国民に布マスク着用を推奨し、シンガポールは全国民に布マスクを配布した。さらに、フランスではパリ市などが市民に布マスクを配布し、他の自治体にも広がりを見せている。

総理自ら積極的に

 政府による学校の休校要請も批判されたが、その後、欧州諸国やアメリカなどが追随している。日本政府の世界に先駆けた対応は、世界のスタンダードになっている。PCR検査についても、検査可能数が伸び、当初の目標を超える1日あたり約2万2000件となった。ただ、十分な検査体制の構築に時間がかかったことは否めない。

 安倍総理が2月29日の記者会見で、「医師が必要と考える人全てがPCR検査を受けられるようにする」と述べたことを受け、私は友人の医師などに確認したところ、相当の大仕掛けでやらなければ時間がかかると感じた。翌日の3月1日に政権中枢のある方に「お金がかかってもあらゆる手を尽くしフルパワーでやるべきです」と進言した。

 その後、十分な検査体制の構築において、誰かが何かをさぼっていたということは決してないが、総理の言う「目詰まりがあった」というのは何が原因だったのかは収束後にしっかりと検証し、今後、未知なるウイルスが発生した場合に速やかに対処するための参考とすべきであろう。そして、政府の発信も強化がなされてきた。これも進言を続けてきたが、安倍総理自らが直接、国民に語りかける場面が増えてきた。

 5月6日には、インターネットのニコニコ生放送とヤフーで、「安倍首相に質問!みんなが聞きたい新型コロナ対応に答える生放送【ゲスト京都大学iPS細胞研究所・山中伸弥所長】」が放送されたが、ニコニコだけで放送終了時で視聴数が35万8000、コメント数は22万7000にのぼった。放送後の視聴者アンケートでは、「とても良かった」との評価は65%を超えた。その後も、インターネット放送「言論テレビ」で櫻井よしこさんと対談するなど、総理自らによる積極的な情報発信がなされている。

 さらに、政府はデマや不正確な情報への対応も行ってきた。3月末に広がった都市封鎖のデマ対応もだが、私が政務官を務める国土交通省に関連するものでは、緊急事態宣言に合わせ、首都圏などで鉄道の終電繰り上げや減便の要請を政府が検討している、との報道が一部でなされた。3密回避の観点からも、国交省としてこうした検討は全く行っておらず、不正確な情報であるため国交省として明確に否定の発信を行った。
「物流が滞って食料などの調達が困難になるのでは」との不安がネット上などで広がった際には、政府全体として物流や供給体制は十分であることを発信した。

中国船が海保巡視船を追尾

 政府が全力で対応にあたるなか、我が国の安全保障において重大な事案も発生している。5月8日、尖閣諸島に領海侵入した中国海警局の船2隻が、操業中の日本漁船を追尾したのである。これは過去に例がないことであり、海上保安庁の巡視船が漁船を守るとともに、領海外に出るよう警告したところ、中国海警局の船は領海外に退去した。

 このような行為は断じて許されるものでなく、外交ルートで厳重な抗議を行った。領海侵入は当然許される行為でないうえ、しかも今回は我々が新型コロナウイルス対応を必死に行っている最中の行為である。中国はこうしたことをしてくる国だということを我々は強く認識をしなくてはならない。

 海上保安庁を所管する政務官として、厳しい任務にあたっている海上保安官に敬意と感謝を表したい。新型コロナウイルス対応においても、海上保安庁は陽性患者や陽性疑いの方の搬送を離島などで行っている。必死で新型コロナの対応にあたるとともに、領土領海の護りに奔走(ほんそう)しているのである。大変な状況の中、本当に頭の下がる思いである。

将来に希望を

 新型コロナウイルス収束以後を見据えた話をしたい。何よりも重要なのは、消費の回復と加速による景気浮揚であろう。そのため、私が所管する観光庁では「Go To Travelキャンペーン」を新型コロナ収束後に行う。旅行代金の半分(最大1泊あたり2万円)を補助、旅行先での飲食や地場産品の購入にも使えるようにする。そのほかにも、飲食店での割引を行う「Go To Eatキャンペーン」など、政府全体で行う「Go Toキャンペーン」の予算は約1兆7000億円にのぼる。

 このキャンペーンの予算について、「まず医療体制の構築に予算を回せ」との意見もあるが、補正予算において、医療体制の構築のための予算をしっかり確保したうえで、収束以後を見越した予算として計上したものである。売り上げが特に激減している観光業界や飲食業界にとって、将来への希望を持っていただくことが極めて重要であるとともに、大型のキャンペーンとなるので今から準備をしておかなくてはならず、「収束したから今から予算組みを」とはならない。日本の観光地は外国人観光客の伸びで活況を呈したが、実は日本国内の旅行者全体の8割は日本人である。日本人がしっかりと国内を観光できるための補助や景気浮揚に取り組んでいけば、再び観光地は息を吹き返すことと思う。

 現在政府においては、2次補正予算の立案が行われている。雇用や家賃、学生など困難な状況におかれている方々を支援する内容となる見込みである。新型コロナウイルス封じ込めのため耐えた皆さんが、喜びや幸せを感じられる日本にしていかなくてはならない。
和田 政宗(わだ まさむね)
1974年、東京都生まれ。1997年、慶應義塾大学法学部政治学科卒業後、アナウンサーとしてNHKに入局。2013年、参議院議員選挙にみんなの党公認で出馬し、宮城県選挙区で初当選。現在、国土交通大臣政務官。髙山正之氏との共著『こんなメディアや政党はもういらない』(ワック)のほか、『世界は日本が大スキ!』(青林堂)等著書多数。

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