指定感染症2類から外すべし
医療提供体制の逼迫を防ぐ最善の対策は、緊急事態宣言の発令ではなく、新型コロナを第2類相当の指定感染症から外すことからだ。SARSなどと同等の2類扱いだから医療が逼迫し、指定病院は一般患者が遠のいて赤字になり、医療関係者や保健所はオーバーワークを強いられている。その悪循環を断ち切ることが、まずは何よりも先決なのだ。
昨年(2020年)の3月や4月の段階で、新型コロナを2類に置くのはまだ理解できる。未知のウイルスに最大限の危機感を持って備えるのは、危機管理上、致し方ない面もあるからだ。しかし、その後、半年以上経って、コロナの実態がある程度分かってきてもそのままと言うのは、よく分からない。柔軟性がないのか、世論の反発を恐れているのか。
風邪が流行りやすい冬に緊急事態宣言を発令しても、効果は限定的であろうし、何より、この約1年の経験で、新型コロナは、日本においては、無茶苦茶に怖い病気ではないということは最早、明確であろう(昨年の年末年始、老若男女の多くが初詣に詰めかけたのも、マスクをしていれば、感染はある程度防げるし、コロナは無茶苦茶に怖い病気ではないことを理解しているからだろう)。
それよりも、緊急事態宣言を発令したことによる経済的打撃のほうが大きい。
コロナに関して、あるコメンテーターが「外出する人は外出しちゃうし」とテレビで言っていたが、外出=悪でもなければ、感染するわけでもない。外出して何をするかが問題なのだ。当然、大人数での会食は感染の確率は高まる。そうでなければ、マスクをして消毒していれば、確率はかなり下がる。
恐怖をあおるメディアの愚
全国の知事も「医療崩壊が迫るから、外出は控えてください」しか言えないのだろうか。外出を控えることが医療崩壊を防ぐのではない。医療崩壊を防ぐ方法は、何度でも言うが、コロナを第2類相当の指定感染症から外すこと。
地方の首長は、そう言ったことを政府にドンドン提言するべきなのだ。コロナで緊急事態宣言を出すなら、これから日本はインフルエンザの季節になると宣言を出すことになるのか。そんなバカげたことは今までもこれからもあるまい。
インフルエンザも毎年の死亡者はかなり多いし、年末年始の帰省後、感染者が急増すると言われており、年によっては十分医療を圧迫している。今の政府や自治体には、昨年1年の「歴史」と「経験」に学び、スピード感や発想の転換が必要なのだ(と言って、どうでもいい税金の無駄使いの政策をスピード感を持って実行されても困るが)。
マスメディアも、昨年も今もコロナ一色。ニュース速報なども流して過剰とも言えるコロナ報道を続けている。まだ、それが人々の注意を喚起する報道程度なら良いだろう。しかし、過剰な報道は人々の恐怖心を煽り喚起している。メディアの人々もそこに気付き、反省が必要である。
「人災」で日本経済をダメにするな
宣言を出す理由の一つとなっている医療崩壊も事前に防ぐことができるのだから、まずはそこに取り組むべきだろう。
政府や全国の自治体(首長)は、安易な緊急事態宣言を発令を考えてはいけない。その前にやるべきことはあるのだ。コロナに対して緊急事態宣言を出すことは、例えて言うと、害虫を駆除するのに、爆弾を使用するようなものだ。副作用が余りにも多すぎる。それを安易にやろうと言うのだから、どうかしている。
立憲民主党の枝野幸男代表も「今回の判断は遅きに失したのは大変残念だが(緊急事態宣言を)出さないよりは、何倍もマシなのでそのことは評価したい」と発言した。
日本共産党委員長の志位和夫氏も「1都3県の知事の要請は重いものがありますから、緊急事態宣言はやむを得ない」と主張している。
小池東京都知事や首都圏の首長もこれと似たような考えだろう。政治家はなぜ緊急事態宣言以外の様々な対策にまずは取り組まないのか。宣言を出せば、それで解決するとでも思っているのか。
私はこれを「緊急事態宣言を出したがるバカ」「緊急事態宣言、万歳脳」とあえて過激に名付けたい想いに駆られた。
首都圏の首長らが夜8時以降の不要不急の外出を控えるよう、呼びかけることにも違和感がある。外出時間や外出を制限する事が感染拡大を抑止するわけではないからだ。
重要なのは、例えば店側の感染予防対策の中身であり、客がそれを守ることだ。夜8時以降に店を開けても、それ以前に店を閉めても、店と客が感染防止対策をやっていなければ感染確率は上がる。そこが肝(きも)だ。時間は関係ないだろう。例えば、夜10時まで営業しているが、しっかり感染対策をやっている店。夜8時までに店を閉めるが感染対策をやっていない店。どちらが感染を広げるかは一目瞭然。しっかりと感染対策をやっている店は、時短や休業要請に応じる必要などない、ドンドン営業してほしいと私は思っている。
時短要請で感染を防げるわけではない。人流の抑制は経済をダメにする。自治体は、時短要請などせず、店の感染防止対策を徹底させたり、テイクアウト事業を支援することがより重要ではないか。複数での会食を止めて個人で食事をしたりテイクアウトを利用すれば、感染拡大を防げるし飲食店も助かるだろう。店側もシールドを付けて半個室状態にするなどの対策も必要。
しかし、そこまでの対策をやっていない店もそれなりにある。そこは対策が必要。営業時間を減らしたから感染率が下がるわけではない。
首相周辺は「飲食店を午後8時で閉じればいいのに、やっていなかった。小池氏の失政だ」と不満をあらわにしたようだが、このような時に責任の押し付け合いは見苦しい限りである。政府も都もどっちもどっちだ。日本のコロナによる死亡者数は欧米に比べて比較にもならないくらい少ない。
マスクや消毒をして注意することは必要だが、緊急事態宣言は明らかにやり過ぎだ。
政府よ、日本経済をダメにするな! と叫びたい想いだ。
まず、すべきことをやってくれ
これが、エボラなら分からなくもないが、コロナに適用する意味はあるのだろうか。私は緊急事態宣言を出すことに反対だが、どうせ出すなら、人の行き来が多い年末年始前、クリスマス前に出すべきだったと思う。明らかにタイミングがずれている。
政府は中韓を含む11カ国・地域からビジネス関係者などを受け入れている入国緩和策について、新型コロナの変異ウイルスが確認されたかどうかに関わらず、一時停止とする方向で検討に入ったが、これも遅すぎるし、何より、このような状態で、入国緩和をしたこと自体が頓珍漢である。
この1年、日本政府や自治体のコロナ対策、大きく言えば危機管理能力を見てきたが、決断の遅さや、実行すべき時にやるべきことをせず、やるべき時にやるべきでないことを遂行するなど、その対応は、残念極まりない。
戦後日本は平和ボケと言われて久しいが、今回の事態は政治家や官僚の劣化のせいでもあろうか。
かつて、幕末の志士・坂本龍馬は、
「朝廷より先ヅ神州をたもつの大本をたて、夫より江戸の同志と心を合セ、右申所の姦吏を一事に軍いたし打殺、日本を今一度せんたくいたし申候事ニいたすべくとの神願ニて候」(朝廷は神国日本を保つ大方針を立て、江戸の同志と心をあわせて、悪い役人と一度戦をして撃ち殺し、この日本をもう一度洗濯しようということを神様にお願いしたい気持ちです)
と書簡に書いた。
「日本を今一度、洗濯したい」――この気持ちを抱くのは、何も私だけではあるまい。
1983年、兵庫県相生市出身。歴史学者、作家、評論家。皇學館大学大学院文学研究科博士後期課程単位取得満期退学。兵庫県立大学内播磨学研究所研究員・姫路日ノ本短期大学講師・姫路獨協大学講師を歴任。現在、大阪観光大学観光学研究所客員研究員。現代社会の諸問題に歴史学を援用し迫り、解決策を提示する新進気鋭の研究者。著書に『日本人はこうして戦争をしてきた』、『日本会議・肯定論!』、『超口語訳 方丈記』など。