リフレ派支持の理由

 週末に郵便ポストを開けると、「特別定額給付金」の申請書が届いていました。さっそく10万円を握りしめ、自粛中に行けなかった近所の飲食店の売り上げに貢献しようと思います。
 ということで今回は、経済について思うことをつらつらと。

『WiLL』では高橋洋一さんや田中秀臣さん、上念司さんといった「リフレ派」と呼ばれる論者がよく登場します。初めに言ってしまうと、僕もリフレ派を支持しています。経済学の世界には、マルクス経済学からリフレ、最近話題のMMT(現代貨幣理論)など様々な派閥があるようです。
 その中で、なぜ「異端派」(日本経済新聞いわく)のリフレ派を信じるのか。
 答えは簡単――「常識的に考えて」といったところでしょうか。

 一度、リフレ理論のマスターを試みようと、無謀にも岩田規久男編『昭和恐慌の研究』を購入したことがあります。しかし案の定、最初の数ページであえなく撃沈。大学生にもなって一般教養科目「経済学」で需要・供給曲線やジュグラー・コンドラチェフの波といった高校レベルの内容を学んでいた文系人間には、微分・積分のニュルっとしたマーク(∫←コレ。「インテグラル」って呼ぶそうですよ、奥サマ!)が幅を利かせる経済理論を齧(かじ)ることすらできませんでした。

 ただ、常識的に考えればリフレ派の主張を肯定せざるを得ません。金融緩和によって円安に誘導され輸出企業は儲かり、株価が上がって企業の設備投資は増え、人手不足になり雇用が回復する……。
「アベノミクスはトリクルダウン」などとも言われます。その側面も否定しませんが、アベノミクスで真っ先に恩恵を受けたのは新卒やパート・アルバイトなど社会的に強い立場に置かれていない人たちだったことも事実。

 特に僕は、リーマンショックの影響が残る民主党政権下で就職活動をしていました。企業が採用人数を絞り、秋になっても就活を続ける同期が大勢いました。それが翌年、安倍政権に代わったら、後輩たちは軒並み大企業の内定をとるようになったのです。
 また、増税の悪影響についても身をもって体感しています。スーパーでも、ご褒美で100グラム300円の牛肉を買おうと思ったものの、レジ前で踏みとどまって棚に戻すこともしばしば。消費税が数%上がるだけで、家計や消費マインドにどれほど影響があることか……。

 その後、『アベノミクスが変えた日本経済』(野口旭著、ちくま新書)や『増税亡者を名指しで糺す』(田中秀臣著、悟空出版)など素人にもわかりやすい本に出合ったおかげもあり、反緊縮・リフレ派の支持者となるに至りました(WiLL増刊号#155参照)。

「常識」は財務官僚&大手メディアに勝る?

 プライマリーバランスが大事とか、増税しても経済にはさほど影響がないとか主張している財務官僚や朝日新聞は、庶民の当たり前=常識が欠けているのではないでしょうか。経済理論や数式がわからなくても、経済がヒトの営みである以上、常識に勝るものはないと信じています。

「反安倍」に傾倒する人たちの言説も、「常識の経済学」の補強材料となります。「憲法9条を変えるな」「アベ政治を許さない」なんて言っている人たちがアベノミクスを否定しているケースは枚挙に暇ありませんが、「じゃあ金融緩和すれば日本は良くなるんだな」と。

 MMTに懐疑的な目を向けるのも同じ理由です。どれくらい国債を刷ったらハイパーインフレになるとか、正直よくわからない。経済をマトモに勉強していない身分でMMTを否定する勇気はありません。しかし、「山本太郎待望論」を掲げ始めると距離を置いてしまいます。経済こそ政治だと思いますし、国民生活に直結する経済政策は我々が選挙で票を投じるうえで最も重要なファクターであることは間違いない。しかし、さすがに山本太郎はナシでしょう。

 何かに迷ったら、まず常識に立ち返って判断していきたいと思います。ただ、曖昧で主観的なものゆえに、常識を取得するのはなかなか難しい。大学教授や財務官僚、朝日新聞のエリートですら「常識のカベ」を越えられずに苦しんでいますから。
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山根 真(ヤマネ マコト)
1990年、鳥取県生まれ。中学時代から『WiLL』を読んで育つ。
慶應義塾大学法学部卒業。ロンドン大学(LSE)大学院修了。銀行勤務を経て、現在『WiLL』編集部。
好きなものは広島カープと年上の優しい女性。

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