【門田隆将】「寛容」が消えた日本はどこにいくのか

【門田隆将】「寛容」が消えた日本はどこにいくのか

 東北新社に勤める菅義偉首相の長男・正剛氏との会合の告発から始まった総務省接待問題。「利害関係者」から金銭・物品の贈与や接待を受けることを禁じた「国家公務員倫理規定」に違反しているとして、次々と総務官僚たちが〝血祭り〟に上げられた。

 やがて接待の主体が東北新社からNTTへと移り、武田良太総務大臣にも飛び火した。週刊文春が何かを取り上げるごとに国会はそれに振りまわされる。野党には調査能力などなく、文春が唯一ともいえる〝ネタ元〟だからだ。

 だがNTTの最大株主は「国」であり、当然、会合をはじめ、さまざまな接触があるだろう。NTTの澤田純社長は国会に呼ばれた際、こう証言した。

 「日頃よりマスコミや与野党議員を始め各界有識者と意見交換の場を設けている」
 
 ならば、野党も誰がNTT社長との会食に応じたのか、まず明らかにしてから国会で追及すべきだろう。

 さらにNTTだけでなく、NHKの接待問題も解明していただきたい。国民から受信料を総額で年間およそ7千億円も徴収し、内部留保を3700億円も有する巨大組織がNHKである。その「特権」を守るために、NHKが国民の受信料を使って総務官僚にどんな接待をおこなっているのか。そのことを是非、追及していただきたく思う。

 自分たちを対象から外して報じるマスコミの卑劣さは相変わらずだが、この騒動のもう一つの主役はSNSである。たとえば、山田真貴子内閣広報官が辞職に至ったSNSのツイートはあまりに酷かった。

 〈よくものうのうと辞めずに居座るな。安倍晋三と同類だ。菅や二階、麻生とも同類。国民のために働かず、自分のために働き、国民の税金をむさぼり食う無能な連中たちよ、さっさと消えろ #山田真貴子辞めろ〉

 〈#山田真貴子辞めろ。月額報酬117万円超の6割を自主返納したって45.6万円残るし、世間は一般的にお前の歳で40万以上稼げる女は少ないんだよ〉

 〈辞めろ、クズ女! #山田真貴子辞めろ #自民の地方議員をガンガン落とそう #スガの放送利権を許さない〉

 〈#山田真貴子辞めろ わあーーー、いやだなー この手のおばさん! 腹黒いよ 子供や学生! なつかんだろうな 最悪! 最低!〉

 …SNSのツイッターには、「#」付きの〈山田真貴子辞めろ〉が溢れ、さすがに嫌になったのだろう。山田氏は3月1日、ついに辞職した。

 私はこんなツイートをみる度に「本当にここは日本なのか」と思う。自分は匿名で、これほどの罵声を他人に浴びせることができる人が「大勢、日本にいる」ことに毎回、衝撃を受ける。それは日本の美徳でもある「寛容」が消えつつあることを示している。
gettyimages (5346)

いつから「寛容さ」を無くしたのか?
 寛容が消えるのは、「異論を許さないこと」と同義である。全体主義、共産主義に、もとより寛容はない。あるのは破壊と独裁、弾圧である。

 寛容をなくし、信じられないような罵声を浴びせる人々が、一方では中国共産党がおこなっているウイグルジェノサイドや香港弾圧に対しては信じられないほど寛容であることは何を意味しているのか。
 
歴史的に左翼革命は、既存の文化を破壊することから始まる。革命とは、従来の価値観を打破することが最重要だからだ。

 すでに自由主義の本家・アメリカで「言論の自由」が侵され、革命が始まっている。今年1月、ワシントンでの議事堂乱入騒動の際の総ヒステリー現象、そしてトランプ大統領のツイッターアカウントの永久停止などは、そのことを如実に表わしている。世界的な全体主義の台頭だ。

 アメリカの総ヒステリー現象が乗り移ったかのように、日本でも、森喜朗氏への集団リンチ事件、総務省接待疑惑などで、常軌を逸した攻撃が起こった。

 誰がこれらを煽動しているのか。ツイッターを追っていくと、見事なまでに左翼勢力のアカウントに行きつく。そして、さらにそのツイートを遡っていくと、彼らが日本の文化を破壊するために、いかに必死であるか、よくわかる。女系天皇容認論、女性宮家創設、夫婦別姓論なども、そのレールの上にあることが浮かび上がってくるのである。

 私たちの重要な文化である「寛容」はすでに壊されているかもしれない。しかし、日本独特の文化を守ることが、自由なき「全体主義」の訪れを防ぐ最大の方法であることを、私たちは知るべきなのではないだろうか。
門田 隆将(かどた りゅうしょう)
1958年、高知県生まれ。作家、ジャーナリスト。著書に『なぜ君は絶望と闘えたのか』(新潮文庫)、『死の淵を見た男』(角川文庫)など。『この命、義に捧ぐ』(角川文庫)で第19回山本七平賞を受賞。最新刊は、古森義久氏との共著『米中"文明の衝突" 崖っ淵に立つ日本の決断』(PHP研究所)。

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