「政治」ばかりの日本医師会

横田由美子:コロナ「敗戦」~「戦犯」日本医師会は見切れ

横田由美子:コロナ「敗戦」~「戦犯」日本医師会は見切れ

中川俊男・日本医師会会長
via youtube
 一年遅れの平和の祭典、東京五輪・パラリンピックが7月23日に開幕する。

 G7サミットで菅義偉総理は、「安全・安心の東京開催に向けて、(新型コロナウィルス対策の)万全な観戦対策を講じ、準備を進めていく」と述べたが、開幕までその時点では約ひと月半。いまだコロナ対策の看板が「準備」では、はなはだ心もとないではないか――そうした懸念は、自民党の政調関係の職員の間でずっと抱かれていた。

 さらにこの時、菅総理が官邸で「感染防止とワクチン接種の二正面作戦で新型コロナを抑え込むことが最大の経済政策だ」と、述べた瞬間、前出の職員から嘆息が漏れた。

 「総理はこのウイルスの本質をわかっていない。まともな情報が入っていないからです」と、官邸関係者は憔悴しきった様子で、その戦犯として日本医師会の中川俊男会長と尾崎治夫東京都医師会長を挙げた。

 「中川会長は日医を差配できない上、政治批判を繰り返すばかりなので、官邸からの信頼はゼロに等しい。中川会長が礼を尽くさないから、総理もその周辺も中川氏を嫌っていて、官邸と日医との関係はこれまでにないほど最悪です」 と、憤りを隠さない。

 そして、前会長の横倉義武氏を引きずりおろし中川新会長の絵を描いたのは、東京都の尾崎治夫医師会長だ。医師会関係者は、政治家でもないのに記者会見で政治批判ばかりしている中川会長と尾崎治夫東京都医師会長に対して怒気を含めて話す。

 「日医と官邸、各省庁との関係は過去最悪だ。中川氏の自己中心的で狭量な態度や尾崎氏の強すぎる権力欲が、新型コロナの感染症対策全てに悪影響をもたらしている。オリパラ後、『東京型』と呼ばれる感染拡大が世界を席巻してもおかしくない状況なのに、二人揃って政治家気取りです」

 政治家気取りの会長のおかげで、日医内部も機能不全に陥っている。他の幹部が少しでも目立った発言をしようものなら、会長が自ら全力で「待った」をかけ、全ての交渉をしようとする。中川会長との寿司デートが報じられたM女史が幅を利かす、日本医師会総合政策研究機構もその余波を受け、内紛が勃発。副所長の四段階降格人事が起き、日医シンクタンクとしての役割を果たせない事態となっている。


 さらには、中川会長は国民に強く自粛を求めておきながら、政治資金パーティーには張り切って幹部を引き連れて参加。直後には、会長自身の病院でクラスターが発生するという騒ぎも起こした。もはや日医内部でも誰からも尊敬されない裸の王様になりつつあると漏れ伝わってくる。

「コロナ敗戦」の継続を待つ勢力

 ワクチン接種が進んできてため、発表される数字だけ見ていると、ようやく新型コロナは収束に向かっているように見える。また、6月20日をもって緊急事態宣言が解除されたことから、「非常事態が続く日常」から解放されるのでは、という楽観ムードが東京の街には漂っている。

  しかし、むしろ「コロナ敗戦」の継続を望むかのような動きがあるのもまた事実だ。例えば、「ゼロコロナ」という極めて非現実的な提言を行う立憲民主党などの野党4党は、会期末間際に内閣不信任案を提出。数の論理で当然否定されたが、立憲の福山哲郎幹事長は、「解散覚悟で提出する」などと威勢のいい言葉を発するありさまだ。オリパラ開催を目前にした今、解散総選挙などできないのは、誰の目にも明らかで、「卑怯な物言い」としか言いようがない。

 だが、ワクチン接種の普及と根本の感染症対策を並行して行わなくてはならないいま、感染症対策に失敗し、オリンピックを挟んで万が一にでも「東京型」を世界にばらまく結果となれば、7月初旬の都議選、8月22日投開票の横浜市長選に与党は芳しい結果を出せず、9月から10月とみられる解散総選挙で、自公は大敗を喫してもおかしくはない。

 事実、7月4日の都議選では、都民ファーストが激減し、自民・公明はかろうじて過半数、その一方で、立憲民主党や共産党が大きく議席を伸ばすとすでに見られているのだ。

 このままでは、立憲民主党を中心とした大左翼政権の誕生という悪夢も現実化してくる。岡田克也常任顧問は共産党との共闘を否定したが、

 「そもそも、共産党を入れたのは岡田だ。すでに、共産党は誰を大臣にするか協議に入っていて、しかも揉めるという馬鹿馬鹿しい状況になっている」 と、公安庁調査庁関係者は「こんな日が本当にくるなんて…」と、げんなりとした様子で話す。

ワクチン確保の遅れが政権の危機に

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大左翼政権誕生の恐怖—
via twitter
 コロナ危機前には思いもよらなかった「大左翼政権」誕生の危機。なぜ、こんなことになってしまったのか。

 一番の要因は、新型コロナウイルスのスワクチン確保が、予定よりも2カ月近く遅れたことにあるだろう。

 そして、そのワクチン確保が遅れた要因として、内閣官房の官僚はこう嘆く。

 「日医の中川会長は、永田町どころか霞ヶ関ともまともに話ができないから、根回しができないどころか情報共有ができなかった。日本のビジネス慣例は国際標準と異なる部分が少なくないのですが、秋葉剛男外務事務次官も、米ファイザー社と交渉した杉山晋輔駐米大使も、そうした〝ビジネス勘〟どころか、医療知識もないまま、交渉を進めざるを得なかった。中川会長が共闘に積極的でなかったから、もらい事故になった。それでもワクチンを確保できたのは、『日本がオリパラ開催国である』という皮肉な理由で、優先順位を上げてもらえることができたからなのです。」

 このような過程でワクチン確保に至っているので、当初は、バイアル(薬剤ボトル)1個で5回しか打てないという前提で契約したが、「瓶を傾けて細い針で底まで吸い上げると6回打てる」と、ファイザー社が主張をし始め、6回分支払えと、交渉が暗礁に乗り上げたこともあったという。この時も中川会長は高見の見物であったと、外務官僚も怒りを隠さない。

 結果的にワクチン普及が進みつつあるからと言って、結果オーライで体制や責任の所在が不明瞭なままでは、いずれ確実に国民からさらなる「医療不信」を招く事態が起き、現場の「医療崩壊」は免れないだろうというのが、医師の間では定説になりつつある。

「ワクチン打てば全てOK」ではない

横田由美子:コロナ「敗戦」~「戦犯」日本医師会は見切れ

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職場接種の開始などワクチン自体の普及は進むが―
 また、「ワクチン普及=コロナ禍の収束」ではない。効率的なワクチン接種への道筋だけでなく、ワクチン接種後のフォローや再発防止施策に関しても「無策」と言わざるを得ないのが現状なのだ。

 公衆衛生や危機管理を専門にする医学者は、

 「第五波は間違いなく来る。全域でロックダウンしている英国では、公共交通機関を利用する際、マスク使用か顔を布で覆わない場合、罰金を課すほど厳しい措置をとったが、全面解除は見送りとなった(6月15日現在)。予想以上に強力だったインド型のデルタ株が蔓延したからという説もあるが、いずれにしても、このウイルスはワクチンを打てば終わりではない。」

 と、深刻な口調で話す。

 公共交通機関内でも感染しているということは、〝空気感染〟の可能性が高いということだ。

 現在、医療現場では医師らが身を削って、高齢者優先にワクチンを打ち続けているが、現場は過酷だ。

 地方の中堅の医療機関の院長は、激しい怒りを秘めたコメントを自らのフェイスブックで発信していたので要約する。

 「一般診療と個別接種を両立しながら鞭打って走っているが、極めてストレスフルだ。摂取率の高いところにワクチンを融通するらしいが、陽性者が多いところには以前から医療機関の手薄が指摘されていて、ワクチン流通の起点に疑問を感じる。(河野大臣は)職域接種を推進しているが、現場の状況をわかっているのか。地域の医療機関は時間外接種して、週末は集団接種に出務を要請されているが、この状態がいつまで続くのか行政からは知らされず、役所も医師会上層部も『よろしくお願いします』を言うだけ。接種費用を上げるから、どんどん打てという態度で、効率性など何も考えていない」

 しかも、ワクチンは打てばそれで済むというものではない。2回の接種で予防率が90%に高まるが、免疫がつくまでには1~2週間は必要とされている。それでも、コロナにはかかるし、人にもうつる。ワクチンを打っているコロナ患者とワクチンを打ってないコロナ患者の接触により、重症者が今後増える可能性も予見されている。人によっては中和抗体の量が少なくなる期間が短く、そうした人々のためにも、ワクチンパスポートをつくり、PCR検査を頻回して様子を見て、その人の移動を追いかけることのできるシステムが必要なのに、菅政権は、何ら手を打っていない。マイナンバーを使用しようとしても法改正が必要だ。せめて、QRコードで読み込める状態にはもっていきたい。

 ワクチンも数種類あるが、現状では、誰にどの種類のワクチンを打ったのか、どのような反応が起きたのか、記録に残らない状態であるという。将来的に仮に薬害が発生しても、原因を追及しにくいからだ。

 「逆に言うと、だから、厚労省は、心ない族議員やシンパの議員を使って、必死で、ワクチンパスポートや人のトレーサビリティ(追跡可能な状態)を行わないようにしているのではないかと疑念を抱かざるを得ない。厚労省は、ファイザー社のワクチンについて、接種を受けた20~60代の男女合わせて7人(976万人中)に心筋炎や心膜炎などの症状が確認され、このうち6人は2回目の接種以降に症状が出たと明らかにしたけれど、薬害裁判を今から恐れている。しかし、日医がリードをとって、感染拡大の施策を厚労省と打ち出せば、厚労省も逃げの姿勢から転じていたはずです。このような厚労省の姿勢を見て、他の省庁も、コロナ関係では、なるべく責任の所在を明確にさせたくないとなった。会長のリーダーシップの欠如が遠因ですよ」

 と、東京都の職員は呆れた口調で言う。

見放される中川会長、そして暗躍するアノ人

横田由美子:コロナ「敗戦」~「戦犯」日本医師会は見切れ

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驚きのプランBが⁉
 実際、ワクチンの運搬経路を調べると成田まではファイザー社、成田から三郷などの薬品倉庫までは国交省が管理し、そこから各自治体までは厚労省、さらに地域医療レベルでの調整は保健所などがしている。

 「低温フリーザーなど接種するワクチンの品質管理が困難で、ファイザーの手配を受けて、各自治体がそれに見合った設備を調達していますが、ファイザー社も国内の人員では手いっぱいで、提携している製薬会社やシンクタンクから広域調整をし、そこから先は保健所が行うというロジスティクスにしたのです。ところが実際にやってみると、厚労省令で対応しなければいけない部分が緊急対応で多く発生し、国交や法務省、各都道府県自治体、各医療機関、保健所と全て連動して行わなければならないため、混乱を招きました。始めから日医が厚労省をバックアップして二人三脚でワクチン確保の動きをとっていれば、外務省も交渉が楽だったはずだし、オリンピックにも間に合ったはず」

 と、ここでも、中川日医会長の責任を問う声が出た。中川氏は、バックアップするどころか、保健所の機能を否定する発言などをしたため、まとまるものもまとまらなかったというのだ。

 このような状況のまま都議選に突っ込み、オリパラ後に万が一「東京型」が広まるようなことがあれば、先にも触れたように菅総理のお膝元である横浜市長選にも自民は敗れる可能性が高くなる。そこで自分の出番がやってくると今から手ぐすね引いて待っている女性がいますよと、都民ファーストの関係者は強く警鐘を鳴らす。

 「都民ファーストの支持率は下がる一方で、試算ではひとケタ議席台に留まると出ています。それなのに、小池(百合子)都知事は何もしてくれない。彼女にとって、われわれはもう『不要』なのです。状況次第では、自民党に復党して、二階グループに担がれる形で総裁選に出馬し、解散権行使というシナリオが、水面下でBプランとしてできていると聞いています」

 小池都知事と尾崎・東京都医師会会長との蜜月は昔からよく知られている話だ。

〝小池新総理、尾崎新医師会長〟という構図があるならば、今の混乱は彼らに有利に働いていることは間違いなく、中川会長を担いだ尾崎氏が、すでに中川氏を見放しつつあるという噂が流れるのももっともな話である。

 「ワクチンが普及し始めたからもう大丈夫」ではない。大左翼政権や小池新総理を現実にしないためにも「戦犯」医師会を見切り、感染症対策を早急に整備して人の流れを戻し、一日も早く経済を建て直す必要があるであろう。
横田由美子(よこた ゆみこ) 
埼玉県出身。青山学院大学在学中より、取材活動を始める。官界を中心に、財界、政界など幅広いテーマで記事、コラムを執筆。「官僚村生活白書」など著書多数。IT企業の代表取締役を経て、2015年、合同会社マグノリアを立ち上げる。女性のキャリアアップ支援やテレビ番組、書籍の企画・プロデュースを手がける。

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