【山口敬之】コロナ禍をあおる執拗な「PCRテロ」と医師会

【山口敬之】コロナ禍をあおる執拗な「PCRテロ」と医師会

写真は尾崎 東京都医師会会長
via youtube
 12月8日、東京都医師会の尾崎治夫会長が武漢ウイルス対策を巡って記者会見を行った。内容は医療崩壊、GoToトラベル反対、Ct値を巡るやり取りなど多岐に及んだ。

 そして、尾崎会長の1つひとつの発言には、自治体と医師会の武漢ウイルス対策の問題点が凝縮されていた。大手メディアの一報を例にとりながら、1つひとつ検証していく。

医療崩壊という「煽り」

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東京都医師会の尾崎治夫会長が8日、記者会見し、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う入院患者の増加を受け、「コロナ患者も一般患者も両方守れない状態に近づいている」と述べ、強い危機感を示した。都内のコロナ入院患者は同日時点で1850人に上った。
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 医療崩壊とは、治療を受ける必要のある患者数が、医療体制の受入可能数を超えてしまう状態のことである。

「医療体制」は、医師、看護師、放射線技師などの医療従事者や、病床数、人工呼吸器、ECMOなどの医療インフラと必要機器の数で決まる。

 12月に入ってからは1日の「感染者」が2000人を超える日が続いていて、これが医療崩壊論の元になっている。

 それならば1日の感染者数が20万人を超えているアメリカは、一体どうなっているのだろうか。
 民間団体の調査では、アメリカで武漢ウイルス疾患で入院中の患者は、11月段階で約5万2000人で、全病床数の6%程度に収まっているが、医療リソースが逼迫し始めている地域もある。例えば中西部ミネソタ州の都市ミネアポリスではコロナ患者を受け入れ可能な病床が埋まりつつあるが、隣接地域に搬送する事で凌げている。

 こうした越境搬送は増えているが、逆に言えば、ほとんどの都市は医療体制に余裕があり、まだ「必要な治療が受けられずに死ぬ人が続出する」という医療崩壊には陥っていないのだ。

 人口が日本の倍近くあるアメリカの病床数はおよそ98万床だが、日本の病床数は約160万床とアメリカの1.6倍。日本は単位人口当たりの病床数で世界一の13.7床(人口1000人当たり)を誇っていて、アメリカの4倍以上である。

 日米の医療リソースのデータを列挙してみる。日本の優位は圧倒的だ。

[病院数]
1位 8,442 日本
2位 5,564 米国

[病床数]
2位 日本(160万床)
4位 米国(98万床)

[病床数(人口1,000人当たり)]
1位   日本 13.7床
79位 米国  3.0床

[医師数(人口1,000人当たり)]
51位 米国 2.4人
55位 日本 2.3人

 各データで世界トップクラスの数値を示している日本の医療体制の中で、唯一と言っていい弱点が、単位人口当たりの医師の数である。人口1000人当たり約2.3人と世界55位で決して高い数字とは言えない。しかし、アメリカも世界51位の2.4人に過ぎず、日本との差は誤差の範囲である。

 しかも発表される「感染者数」は、実は「PCR検査陽性反応者数」であり、この数字の中には「偽陽性」という感染者でない人も一定程度含まれる。PCR検査の特異度が99%のとき、偽陽性が1%も存在するため、1400万人が検査を受けると、感染者が実際はゼロであっても、14万人が「偽陽性」という形で陽性反応を示してしまうのだ。

 この「偽陽性者」は、もちろん症状は出ない。「陽性反応者」のうちの「本当の感染者(実際にウイルスを体に取り込んだ人)」も、90%以上が無症状か、症状があってもごく軽微なので、これらの人々を隔離したり病院に収容したとしても、基本的には安静にしているだけなので、医師は重症者の治療を優先できる。

 だから、日本の唯一の弱点である「医師の少なさ」も、ことコロナ対応という意味においては致命傷にはならないのである。

 世界最悪の感染者・死者を抱え、医療リソースで日本よりはるかに見劣りするアメリカが、日本の100倍の感染者数を受け止めて、いまだに医療崩壊に陥っていないのだ。

 人口がアメリカの半分で、4倍の病床を持つ日本が、100分の1の「感染者数」で、アメリカより先に医療崩壊するなどということがあり得るのだろうか。

医療逼迫は自治体と医師会の責任

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 12月8日の会見で尾崎会長は「東京の新型コロナの入院患者は1,850人にのぼっていて、都が確保したとする病床の7割がすでに埋まった」と危機を強調した
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 尾崎会長は4月17日に開いた記者会見でも、医療崩壊の可能性に言及していた。

 こうした医師会からの訴えもあり、政府は4月30日に25.7兆円の第1次補正を、6月12日には約32兆円の2次補正を成立させた。

 1次補正段階では、柱の1つとして「医療体制に関する包括支援交付金の全額国費負担と積み増し及び医療現場の課題解決のための強力な支援」が明記されていた。

 2次補正でも「検査・医療体制の整備」に自治体が使える交付金を2兆2370億円を積み増した。さらに具体的な使い道を決めない「予備費」は前代未聞の10兆円を計上された。

 1次2次合わせて補正予算は60兆円に上った。少なく見積もっても数十兆円規模の「医療支援体制」が6月には完成していたのである。

 この時取材した政府関係者は、「冬に必ず第2波が来る。それまでに、自治体と医師会が、2次補正と予備費を使って医療体制の底上げを図るんだろう」と予測していた。

 具体的には、

・大病院の敷地内駐車場などにプレハブの臨時病棟を建設し、
・コロナ患者と通常の患者の棲み分けのための動線確保の改装
・無症候者と軽症者用のホテルの長期借り上げ

 などに自治体と医師会が取り組み、医療体制の底上げのためのインフラ整備と環境整備が進むと期待されていた。
 
 ところが、お金と時間があったにもかかわらず、自治体と医師会の対応は、「万全」からはほど遠いものと言わざるを得なかった。

 例えば、補正予算の策定前の6月10日段階に、東京都はコロナ患者のために3300床の病床を確保していた。そしてこの段階で東京都医師会は「パンデミックのピーク時には最大4000床が必要になる」と試算した。その後少しずつ病床数は増えていき、12月2日段階での確保数は目標値の4000床に達している。

 すなわち東京都医師会は、自らピーク時に必要な病床数を算定し、その数を確保しているのだ。

 にもかかわらず「ピークにむけて医療崩壊が近づいている」とは、自己矛盾も甚だしい。もし4000床では足りないと言うなら自分の試算が間違っていただけのことであって、補正予算を活用して5000床でも6000床でも増床しておくべきだったのだ。
 ここではっきりさせておきたいのは、現場で治療に当たっている医師、看護師など医療従事者は、コロナ禍にあって社会を救うスーパーヒーローだということである。
 彼らのプロフェッショナルかつ献身的な仕事が、私たちの生活と経済を根底から支えていることは、全ての人が肝に銘じるべきである。

 彼らの献身に応え、少しでも負担を軽減することこそ自治体と医師会の最大の責務である。

 だからこそ、6月段階でピーク時の必要病床数を自ら4000床と算定しておいて、今になって「不足している」「医療崩壊が近づいている」と、自分の瑕疵を棚に上げて危機を煽る東京都と医師会が、首都の医療従事者の負担を無駄に増やしていると指摘しているのである。

GoToトラベル

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 尾崎会長は「年末が1つの正念場」として、国に対し「人の動きを止めて頂きたい」として、あらためてGoToトラベルの停止を強く求めました。
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 医師に限らず、GoToトラベルの一時中止を求める者が少なくない。そういう人は、下記のデータをどう考えるのだろうか?

▶︎日本の感染者/総人口
16万人/1億2500万人=0.13%
▶︎GoToトラベル利用者の感染割合
255人/5280万人=0.00048%

 要するに、統計は「GoToトラベルに行った人」より「行かなかった人」の方が270倍感染しやすいという結果を示している。
 もちろん、旅行に行く人は基本的に健康状態のいい人であろうから、感染割合が低くなるという側面もある。

 しかし、少なくともGoToトラベルによって感染が拡大したということを示すデータはない。それは医師会も認めている。それなのに、医師会などが証拠もなく国民の移動制限を求める姿勢には、強い違和感を禁じ得ない。

 コロナ禍で最も直接的な打撃を受けたのが、ホテル・旅行業界、航空業界、飲食業界だ。GoToトラベルとGoToイートによって、何とか食いつないだ関係者は少なくない。

 自らの職責である医療体制拡充を怠っていた自治体と医師会に、医療崩壊を脅し文句にGoTo事業の中止を訴える資格はあるのだろうか?

 彼らの言う通り経済を止めれば、失業者は確実に増える。「失業者が100万人出れば、6000人程度の死者が出る」ということは、これまでの統計がはっきりと示している。

 一方、新型コロナウイルスによるこれまでの死者は2400人。客観的な根拠も示さずGoToトラベルの中止を求めるのは、コロナ禍によるトータルの死者を増やす「テロ行為」とすら言える。

Ct値

 12月8日の会見では、尾崎会長と記者でこんなやり取りがあった。
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記者:Ct値40以上に設定し多くの偽陽性者を出し、それを感染者と呼ぶことについてどのようにお考えですか?
尾崎:検査のことは専門でないのでわからない。
記者:精度もわからない検査を使い感染拡大と言う理由は?
尾崎:こんなところで場違いな質問をするな。
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 PCR検査は、唾液中や鼻腔口腔内の粘膜にいるウィルス遺伝子の特定の断片を取り出してそれを何度も増幅させ、存在するウィルスの量を推定する検査だ。

 ここで重要になってくるのが、「何回増幅させるか」という増幅サイクル数(Ct値)だ。少ないCt値で有意なウイルス量を検出すれば被験者の持つウイルス量が多いということになる。逆に、何回も増幅しないとウイルスが検出できないのであれば、被験者のウイルス量は少ないといえる。
 
 そして、何度も繰り返して増幅すると、本来は発症能力のないウイルスの破片しかなくても、「陽性」という結論が出てしまう。

 だからこそ、Ct値をいくつに設定するかの基準づくりが非常に重要になる。

 Ct値が25より小さい陽性者の85%以上は他人に感染力があるウイルスが培養できたが、35を超えると8.3%しか培養できなかったとの結果もある。言い換えれば、Ct値35まで陽性反応が出なかった人の92.7%は、感染していない可能性が極めて高いということになる。

 世界で最も武漢ウイルス制圧に成功した国の1つである台湾は、Ct値を30~34程度に設定しているといわれている。中国では「Ct値37程度で再検査を推奨」という運用になっているという。

 ところが、日本でのCt値は40以上に設定されている。過度な増幅でウイルスの死骸を見つけては「感染者が急増」と大騒ぎしている可能性すらあるのだ。

 Ct値について、日本感染症学会と日本医師会の運用には決定的な矛盾がある。武漢ウイルス患者の退院基準である。

 感染して発症した入院患者は、「発症日から10日間が経過して、3日間無症状であれば、PCR検査なしで退院許可」という判断基準で退院している。

 発症10日目のCt値の平均は32~33、14日目でも37程度と言われている。すなわち、医療機関からお墨付きをもらって退院した「元患者」に、Ct値40でPCR検査すれば、確実に「陽性」と判定されるのである。

 この「ねじれ現象」1つ取ってみても、尾崎会長が「場違いな質問」と恫喝(どうかつ)したCt値の設定問題こそ、「PCR騒擾(そうじょう)」を終焉させる決定打になり得ることがわかる。

もはや「未知のウイルス」ではない

 トランプ大統領が大統領選の最中の10月2日、武漢ウイルスに感染・発症したというニュースは、世界を驚かせた。

 しかし、もっと驚かれたのは、そのわずか3日後に完治・退院し、選挙戦に復帰したことだった。

 一時期発熱もあったトランプ大統領には、レムデシビルという新薬とステロイドが投与され、この治療がすぐに、テキメンに効いたのだ。

 74歳と、日本で言えば後期高齢者の一歩手前のトランプ大統領が、発症しても3日で完治したという事実は大きい。一緒に罹った15人のホワイトハウススタッフも、1人も重症化することなく、数日で全員が完治して戦線に復帰した。

 そして、ファイザーなど世界の製薬大手が次々とワクチンを完成させ、武漢ウイルスへの確実な予防効果があることが確認されている。

 治療法がわからずワクチンもなかった4月の第1波とは全く状況は違う。「罹っても治る」「パンデミックは防げる」。人類は武漢ウイルスを制圧しつつある。

 それでも、日本ではPCR検査のCt値が高く設定され、PCR検査大量実施を求め続ける者が絶えない。さらに「PCR陽性反応者」を「感染者」と呼び続けるメディア。「医師会」「専門家」「メディア」のトライアングルが、感染者数を水増しして国民の不安を煽り続けているのだ。

 そして、国民に刷り込んだ「基礎的不安」をベースに、感染者も死者も少なく世界で最も医療リソースに恵まれているはずの日本で、医師会自ら「医療崩壊間近」「GoTo反対」を唱える。

 こうして不安を煽り続け経済を壊死させようという勢力には、パンデミック抑止以外の秘めたる悪意があるのではないか。そう疑ってかかった方がいいのかもしれない。
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山口 敬之(やまぐち のりゆき)
1966年、東京都生まれ。フリージャーナリスト。
1990年、慶應義塾大学経済学部卒後、TBS入社。以来25年間報道局に所属する。報道カメラマン、臨時プノンペン支局、ロンドン支局、社会部を経て2000年から政治部所属。2013年からワシントン支局長を務める。2016年5月、TBSを退職。
著書に『総理』『暗闘』(ともに幻冬舎)がある。

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この記事へのコメント

コロナ脳は速やかに絶滅せよ 2021/2/9 15:02

こんなところまでコロナ脳が暴れてるのか
こいつらの目的は一体何だ?
厚労省や医師会が危機だと煽るのはまあ理解はできる。勿論納得はできないが。
厚労省は三流官庁というレッテルを剥がして「俺たちが日本を支配するんだ」と言いたいんだろうし、医師会は「開業医がこれまで通りに生活できるために他の国民は我慢しろ」という理由。
コロナ脳は厚労省や医師会の別働隊(かそのもの)なんだろうか?そうだったら辻褄が合うのだが。

何がPCRテロだよ、あほか! 2020/12/27 23:12

この人、全然状況がわかってないね。レイプ事件も加害意識が低かったのがよくわかる。

日本は皆保険、みんな治療が受けられるわけよ。
だから重症になれば誰もが入院可能だから直ぐに満床になる。
欧米に比べて重傷者少ないけどね。
かたや欧米は日本よりもはるかに重傷者が多いけどお金のある人しか治療しないのよ、
NYの所得が低い有色人種が多く亡くなっているのは病院にいけず自宅でそのまま亡くなっている。

何がジャーナリストだよ

猫好医者 2020/12/24 13:12

この内容を読むと現場の人間は、医療体制や法律が違うのに、今の100倍働けということなんだろうなと感じます。現場の人間はかなり疲弊していて、辞めるスタッフが増えてきている状況ですけど。

「酷いね」は酷いね 2020/12/18 07:12

私は6月中頃、政府関係者から第二次補正について、「第2波に備えて、対応可能な病院が駐車場などにプレハブのコロナ対応臨時病棟を建設する事を支援するつもりだ」と直接聞きました。

山口先生の記事の内容と完全に符合します。少なくとも政府がそういう事を想定していた事は間違いありません。

知りもしないで「笑止」と断定する人こそ、酷いね。

酷いね 2020/12/15 00:12

ニューヨーク、ニュージャージーでは第一波で医療崩壊をおこしている。
住民10万あたりの看護師数米11,1日10.5
国民皆保険の日本 金がないと医療が受けれないアメリカ、低所得者、移民の無視
検査・医療体制の整備」に自治体が使える交付金を2兆2370億円を積み増した
詳細を読めばパンデミック対応でなく
「大病院の敷地内駐車場などにプレハブの臨時病棟を建設」など不可能
結局、病床でなく医療従事者の両腕が患者を救うんだよ。
ジャーナリスト?笑止

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