兵頭新児:《「#KuToo」裁判》に見るフェミのマッチポンプ

兵頭新児:《「#KuToo」裁判》に見るフェミのマッチポンプ

#KuToo裁判の背景

 3月29日、フェミニストの石川優実氏が控訴された裁判において原告側の言い分が棄却され、氏が勝訴したことが伝えられました(参考記事)。

 問題になったのは石川氏の著書、『#KuToo: 靴から考える本気のフェミニズム』。本書が引用したツイート内容が著作権と名誉感情を侵害するものであるとして、ツイッタラー(※ツイッターの利用者のこと)によって損害賠償などが求められたのですが、知財高裁は、請求を棄却した一審判決を支持して、被告側の言い分を認めたというのです。

 その一審判決というのは東京地裁の2021年5月における、「ツイートの掲載は、著作権法の「引用」に該当する」、「(本の解説文は)社会通念上許される限度を超える侮辱行為に該当するということはできない」などといったもの。

 石川氏の本を出版し、被告ともなった現代書館はツイッター上で「言いがかり訴訟に完全勝訴」と誇らしげに謳い、ここぞとばかりに同書の宣伝をしていますが、では彼女は不当な攻撃を受けた被害者だったのでしょうか。
twitter (11801)

勝訴を高らかに謳う現代書館のツイート
via twitter
 問題となった『#KuToo』はタイトルにもあるように、ツイッターのハッシュタグによる社会運動、「#KuToo」をテーマにしたもの。これは「#metoo」にインスパイアされた、「女性ばかりがヒールやパンプスを履かされる社会を変えたい」という運動です。

 が、その運動の是非は置くとして、実のところ本書は石川氏のツイートと、それに対するいわゆる「クソリプ」を掲載した第2章が全体の半分ほどを占めているのです。この「クソリプ」とは「クソのようなリプライ」、つまり「罵倒や誹謗中傷などを意図した返信」を指す言葉であり、フェミニストである彼女は、匿名の卑劣なツイッタラーから常に罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせられ、大変に疲弊なさっていた、ということです。
兵頭新児:《「#KuToo」裁判》に見るフェミのマッチポンプ

兵頭新児:《「#KuToo」裁判》に見るフェミのマッチポンプ

石川氏は常に罵詈雑言(ばりぞうごん)を浴びせられていたというが…
『#KuToo』を開くと、72pに今回の原告であるH氏(原著ではツイッターの表示名とユーザー名を明記)のツイと石川氏のリプとが掲載されています。

逆に言いますが男性が海パンで出勤しても#KuTooの賛同者はそれを容認すると言うことでよろしいですか?》(H氏)

そんな話はしてないですね。もしも#KuTooが「女性に職場で出勤する権利を!」ならば容認するかもしれないですが、#KuTooは「男性の履いている革靴も選択肢にいれて」なので。》(石川氏)
 なるほど、#KuTooを揶揄しようとして意味不明の喩(たと)えを持ち出し、そこを石川氏に鮮やかに切り返されたということですね。
 全くもって、ミソジナス(女性蔑視的)で卑劣な男もいたものです。それに対し恐れず戦いを挑む石川氏はまさに勇猛な、フェミニズムの闘士です!

 ……すみません、ちょっととぼけてみましたがもう限界です。

 種明かしをさせていただくことにしましょう。同書を見ると、両者が会話を交わしているようにしか見えません。ところがそれは、全く違うのです(レイアウトでそれらしくミスリードさせ、どのような状況のツイートなのかを明文化しないのが、同書の極めて姑息なところなのですが)。

RT機能を利用した"編集"

 実はこのH氏の海パン云々という話は、(#KuTooについての話題ではあれど)全く別な人物と議論していて出てきたものなのです。同書ではそこを全くカットして、H氏が石川氏に話しかけたかのようなニュアンスに仕立て上げてしまっているのです。

 また、同書を見る限り石川氏はH氏にリプライ、つまり返信しているように読めますが、これは単なる引用RT(※引用リツイート)でした。「引用RT」というのはあくまで相手のツイートを表示する機能であり、(元のツイート主にも引用RTが表示されるので、リプライに近いといえば近いのですが)いわゆるリプライとはまた、違うものなのです。
 しかも同書の下劣なところは、左ページにツイートの引用(に見せかけた、実際のツイートをねじ曲げたもの)を掲載し、右ページでは石川氏のそれに対する批評のおコトバが並んでいる点です。

#KuTooを男性が海パンで出勤する話に繋げるこの人の思考回路、どうなってるんだろう。
(中略)
 こういう人たちって、リアルな会話はどうなってるんだろうか……。
》(73p)

 どうなってるどうなってると繰り返していますが、第三者と長いやり取りをしていたところにいきなり石川氏が割り込んできて、トンチンカンなことを言い出した、というのが実態なのですが、むしろ石川氏はリアルな会話でもこうなんでしょうか、と問いたいところです。
実際はH氏にリプライしていないのにも関わらず、そのよう...

実際はH氏にリプライしていないのにも関わらず、そのように見せた上、右ページでは批評している

via 著者提供
 冒頭のニュースは、弁護士ドットコム「控訴審も勝訴した石川優実さん「女性蔑視がなかったか、考えてほしい」で伝えられたものであり、そこには上記の事情についても一応書かれてはいるのですが、極めて抑えた筆致で、石川氏の振る舞いのおかしさにできる限り気づかれまいと気を使った印象です。何も知らない人間が見ても、不自然さを感じさせないような書き方になっています。

 しかし本件は、同書の出た当初から問題になっていました。

 ニュースサイト「KSL-Live!」の記事、「検証!石川優実 著『#KuToo』でクソリプとして引用されたツイートに改変・改竄の指摘が多数 出版社が釈明も矛盾」を見てみましょう。

当サイトで掲載内容を検証したところ、クソリプとして掲載され、現在でも閲覧可能な投稿51件のうち、実際に石川氏にリプライを送っていたのは12件しかなかった。それ以外の39件は投稿者が石川氏のアカウントには関与しておらず、単独投稿もしくは他のアカウントへ投稿していたところへ、石川氏が引用リツイート機能を使って投稿したものだった。

 申し訳ないですが、もうメチャクチャ、と言わざるを得ません。

明らかに"自作自演"では

 同書は確かに「クソリプ」集ですが、その「クソリプ」は引用RT機能を使って、もっぱら石川氏が相手に対して送りつけていたもの、というのが実情だったようです。

 中には引用されている石川氏本人のツイに、元のツイにはなかった文章が加筆されている箇所まであります。
 ※他の事例については「風流間唯人の女災対策的読書・第3回『#KuToo 靴から考える本気のフェミニズム』」でも検証していますので、ご覧ください)

 ちなみに上の検証記事では、石川氏の引用リツイートがなされたのが(2019年)6月に極端に偏っているとの指摘もあります。石川氏自身も当時「仕事でクソリプを集めている」と発言しており、つまりは「本の中でミソジニストども、ネトウヨどものクソリプを紹介する」という目的がまずあり、それを果たすためにわざわざ自分から相手に絡みにいった(しかしリプとは微妙に異なる引用RTという形にして、もめごとを避けようとした)、という推測が成り立つのではないでしょうか。
 ところがGoogleで「石川優実 裁判」といったワードをここ一週間ばかりに更新されたという条件で検索してみたところ、ごく僅かなまとめサイトを除くと、どれもこれも弁護士ドットコムのニュースを転載したものばかり。
 つまりフェアとは思えない形で、石川氏に有利な情報ばかりが拡散されているのです。

 同ニュースには、石川氏の発言も紹介されています。

「2019年11月から今日まで、ネット上や、アマゾンレビューで、捏造や著作権侵害という言葉を目にしてきた。本を書いた自分ですら洗脳されそうになるぐらい、何回も何回も長期にわたって目にしてきた。何も知らない人は一体この本と私にどんな印象を持ったのか」

「実際、私のもとに事実に基づかない思い込みによる批判や悪口が多数寄せられてきた。そうやって女性差別に抗議をする人間の発言を無効化することこそ、目的ではないか」

 石川氏の代理人である太田啓子弁護士(この方もフェミニストとして著名)の言葉もあります。

「本来問題ではなかったことに対して、複数の法律家が『著作権法違反だ』と語ったことで、石川さんを快く思わない人たちや、攻撃したい人たちが嬉々として飛びついた。(石川さんが)訴えられたことが悪い印象を振りまく道具になっていたのは問題で、ミソジニー(女性嫌悪・蔑視)による事実を見る目の歪みは、本当に問題だと思う」

 白紙の状態で同記事を読んだ者は、なるほどと納得することでしょうが、ここまでお読みいただいた皆様は、「どの口が」とお感じになったのではないでしょうか。

"被害事案"をつくり、便乗する人たち

 近年、フェミニズムに対して風当たりが強くなりつつあることは、ご存じかと思います。

 しかしそれはフェミニストたちが極めて反社会的な思想を元にした「ムチャ振り」を続けてきたからだということは、ぼくの今までの記事をお読みいただければおわかりになるかと思います。

 石川氏自身、(本書の出版の後の話ではありますが)萌えキャラである「宇崎ちゃん」を使用した献血ポスター、「お母さん食堂」(参考記事)、そして女性のバストをアップにした広告など、様々なものに文句をつけるというまさにフェミの体現者と言ってもいい活躍ぶりを見せていました(「お母さん食堂」については問題になる数年前、自身が愛用している旨をツイートしていたことが発掘されるなど、腰砕けなオチがついたのですが……)。
 ともあれ、そうした活動をしている以上、いずれにせよ批判されるのは当たり前でしょう。ましてや本件については(勝訴した以上、「著作権違反」という言葉は措くとしても)普通に考えて「捏造」と言われても仕方のないものです。

 ところが、上のニュースで「ミソジニーミソジニー」と繰り返されていることが象徴するように、それがフェミニストにとっては「ミソジナスな女性差別的ツイート」と認識されてしまうのです。

 もちろん石川氏へのリプには本当に女性差別的な「クソリプ」もあったのかも知れませんが、多くは辛辣であれ、彼女の行状をただ批判したものだったのではないでしょうか。

 しかし、何とかして自分たちのマイナスイメージを払拭したい、自分たちこそが悪者から攻撃されている被害者なのだと世論を誘導したい、というのがフェミニストの考えです。

 そもそも、先にも指摘したように、本書が出版された目的自体が世間に「被害者である自分たち」という印象を与えることだと思しいのですから。
≪「#KuToo」裁判≫に見るフェミのマッチポンプ

≪「#KuToo」裁判≫に見るフェミのマッチポンプ

"マッチポンプ"は勘弁!
 もう一度、本書を開いてみましょう。
 以下は先に述べた「クソリプ」集である第2章の冒頭に掲げられた、編集部による解説です。

相手は「自分が絶対的に正しい」と言わんばかりに、どうにか石川を遣り込めようと執拗に攻撃し、言い負かせなくなると論点をずらしてさらに食い下がる。石川から返答がないと「反論できない」とする幼稚な思考、上から目線の語気、むきだしのミソジニー感情。これらの出どころであるアカウントのプロフィールを確認すると、「日本を愛してやまない」「愛国にめざめてみた」といった「愛国心」や「伝統」を重んじるタイプや、「安倍総理支持」といった夫婦別姓やパリテ(※)に消極的な内閣を支持する人も少なくない。》(58-59p)

しかし、石川は怖めず臆せず、それらひとつひとつに平静に、真っ当に、あざやかにリプライしていく。》(58p)
 ※著者注:「パリテ」とは、選挙の候補者を男女同数とすることを定めたフランスの法律です。

 つまり、夫婦別姓やパリテといった政策に否定的な者、安倍(元)総理を支持する者、愛国心を持つ者は幼稚であり、威圧的であり、
ミソジニーである、と主張しているわけです。
 フェミニズムは絶対的に正しく、それに疑問を覚える者は悪である。

 彼女らの目的は、そうしたイメージを何とか世間へと定着させることだったのではないでしょうか。

 何しろ、彼女が社会運動家となったきっかけそのものが以前ご紹介した遠藤まめた氏から声をかけられたことだったり、それ以降、社民や立民と関係が深くしていったりで(これも以前ご紹介した、伊是名夏子氏を擁護する社民のYou Tube番組にも出演していました)、保守層を敵視するのは当たり前ではあります。

 しかし、ことこれについてはそうしたイデオロギー以前の問題、つまりそうしたイデオロギーを世に広めようとして、悪役の「捏造」をするというやり方に疑問が持たれているということが、彼女にはおわかりにならない。

 いえ、フェミニストという人々のほとんどに残念ながらそうした傾向があることは、今までのぼくの記事をお読みいただいた方には、おわかりいただけているのではないでしょうか。

 さて、そんな石川氏ですが、実は他にも目下騒がれている榊英雄監督(※)の件でも、極めて奇妙な言動が目立っています。

 次回はそこについて、見ていきましょう。

 ※榊英雄監督:複数女優への性行為強要疑惑が報じられた映画監督・俳優
兵頭 新児(ひょうどう しんじ)
本来はオタク系ライター。
フェミニズム、ジェンダー、非モテ問題について考えるうち、女性ジェンダーが男性にもたらす災いとして「女災」という概念を提唱、2009年に『ぼくたちの女災社会』を上梓。
ブログ『兵頭新児の女災対策的随想』を運営中。

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