元御殿場市長は静岡の代表にふさわしくない⁉
静岡朝日テレビによると、静岡県の川勝平太知事が参院補選最終日である10月23日に浜松市に入り、浜松市出身の山崎真之輔氏の応援演説を行った。その中で、次のように述べている。
以下※印は編集部による注釈
「今回の補選は、静岡県の東の玄関口(※御殿場市)、人口は8万強しかないところ。その市長をやっていた人物か。この80万都市、遠州の中心浜松が生んだ、市議会議員をやり、県議会議員をやり、私の弟分。こういう青年、どちらを選びますか」
川勝知事は、山崎氏のライバルである若林洋平氏が御殿場市長を務めていたことをからめて、御殿場市をこき下ろす。
「こちら(※浜松市)は食材の数も、439ある静岡県のうち3分の2以上がある。あちら(※御殿場市)はコシヒカリしかない。だから飯だけ食って、それで農業だと思っている。こちらにはウナギがある。カキも出てくるし、シラスも出てくる。そして三ケ日ミカンもある。肉もある。野菜もある。タマネギもある。もちろん餃子もある。何でもある。そういうところで育んできた青年を選ぶのか、はっきりしています」
つまり、「浜松市にはいろんな食料産品があるが、御殿場市にはコシヒカリしかない。いろんな産品がある環境で政治経験を積んだほうが、能力的に勝るのが当然だ」と言いはなったのである。
以下※印は編集部による注釈
「今回の補選は、静岡県の東の玄関口(※御殿場市)、人口は8万強しかないところ。その市長をやっていた人物か。この80万都市、遠州の中心浜松が生んだ、市議会議員をやり、県議会議員をやり、私の弟分。こういう青年、どちらを選びますか」
川勝知事は、山崎氏のライバルである若林洋平氏が御殿場市長を務めていたことをからめて、御殿場市をこき下ろす。
「こちら(※浜松市)は食材の数も、439ある静岡県のうち3分の2以上がある。あちら(※御殿場市)はコシヒカリしかない。だから飯だけ食って、それで農業だと思っている。こちらにはウナギがある。カキも出てくるし、シラスも出てくる。そして三ケ日ミカンもある。肉もある。野菜もある。タマネギもある。もちろん餃子もある。何でもある。そういうところで育んできた青年を選ぶのか、はっきりしています」
つまり、「浜松市にはいろんな食料産品があるが、御殿場市にはコシヒカリしかない。いろんな産品がある環境で政治経験を積んだほうが、能力的に勝るのが当然だ」と言いはなったのである。
さらに、川勝知事は次のように畳みかける。
「よろしいですか皆さん、浜松遠州、経済はここが引っ張ってきた。あちらは観光しかありません。それしか知らない人間が、静岡県全体の代表の参議院議員になってどうするんですか。ダメです」
浜松市と御殿場市という具体的な場の話から、「田舎で政治経験を積んだ者が県を代表して政治家をやっていけない」と偏見を隠さなかったのである。
言うまでもないが、御殿場市は静岡県だ。知事が、自分が受け持っている市を公の場でこき下ろす事例を私は知らない。おそらく前代未聞のことではないだろうか。
※「誤解を与えた」として川勝知事は11/2日に謝罪(編集部)。
「よろしいですか皆さん、浜松遠州、経済はここが引っ張ってきた。あちらは観光しかありません。それしか知らない人間が、静岡県全体の代表の参議院議員になってどうするんですか。ダメです」
浜松市と御殿場市という具体的な場の話から、「田舎で政治経験を積んだ者が県を代表して政治家をやっていけない」と偏見を隠さなかったのである。
言うまでもないが、御殿場市は静岡県だ。知事が、自分が受け持っている市を公の場でこき下ろす事例を私は知らない。おそらく前代未聞のことではないだろうか。
※「誤解を与えた」として川勝知事は11/2日に謝罪(編集部)。
田舎への偏見を隠さない知事
川勝知事の差別意識の強さについては、今に始まったことではない。2020年10月7日の定例会見で、川勝知事は日本学術会議のいわゆる「任命拒否問題」に触れて、菅義偉首相(当時)について、次のように述べている。
「菅義偉という人物の教養のレベルが図らずも露見したということではないか。菅義偉さんは秋田に生まれ、小学校、中学校、高校を出られて、東京に行って働いて、勉強せんといかんと言うことで(大学に)通われて、学位を取られた。その後、政治の道に入っていかれて。しかも時間を無駄にしないように、なるべく有権者と多くお目にかかっておられると。言い換えると、学問された人ではない。単位を取るために大学を出られた。ともかく、おかしなことをしたと思うが、周りにアドバイザーはいるはず、こういうことをすると、自らの教養が露見しますと、教養の無さが、ということについて、言う人がいなかったのも、本当に残念です」(『静岡新聞』)
「たいして勉強もしておらず教養もない政治家が、学者の決めたことに口を出すなどとんでもない」と、菅首相が日本学術会議の会員人事で人事権を振るったことを批判したのである。
「菅義偉という人物の教養のレベルが図らずも露見したということではないか。菅義偉さんは秋田に生まれ、小学校、中学校、高校を出られて、東京に行って働いて、勉強せんといかんと言うことで(大学に)通われて、学位を取られた。その後、政治の道に入っていかれて。しかも時間を無駄にしないように、なるべく有権者と多くお目にかかっておられると。言い換えると、学問された人ではない。単位を取るために大学を出られた。ともかく、おかしなことをしたと思うが、周りにアドバイザーはいるはず、こういうことをすると、自らの教養が露見しますと、教養の無さが、ということについて、言う人がいなかったのも、本当に残念です」(『静岡新聞』)
「たいして勉強もしておらず教養もない政治家が、学者の決めたことに口を出すなどとんでもない」と、菅首相が日本学術会議の会員人事で人事権を振るったことを批判したのである。
私はこの発言について、選挙によって選ばれて国民の負託を受けた政治家を下に見る、学者の貴族意識の表れだと分析した。つまり、学者を「特権階級」と見ているわけである。川勝知事は元早稲田大学教授の学者であったからなのか、自らも政治家であるにもかかわらず、総理大臣を学者より下だと決めつけて、人事を振るう資格がないとこき下ろした。
これは拙書『日本学術会議の研究』(ワック刊)でも引用した箇所だが、当時は気づかなかったことがある。それは、「秋田」という地名を意識的に出していることだ。単に政治家と学者の比較であれば秋田出身であることは関係がないはずだが、川勝知事は菅首相があえて秋田出身であることを口にしているのである。
これは拙書『日本学術会議の研究』(ワック刊)でも引用した箇所だが、当時は気づかなかったことがある。それは、「秋田」という地名を意識的に出していることだ。単に政治家と学者の比較であれば秋田出身であることは関係がないはずだが、川勝知事は菅首相があえて秋田出身であることを口にしているのである。
中国⇒日本(都市部)⇒日本(地方)という順位付け
2021年7月号の月刊WiLLに寄稿した「リニアの夢を砕く~川勝平太静岡県知事は ズブズブ親中派」でも述べたのだが、川勝知事は久能山東照宮を特集した『静岡人』(改訂第2号)のインタビューで、自分の祖先が中国からの渡来人である秦氏の流れをくんでいると誇らしげに語っている。大陸の名門の血筋であるから、自分は上の立つべき人間であると言いたいのかもしれない。
川勝知事は、中国共産党の機関誌「人民日報」のインタビューで、20歳のころに『毛沢東選書』全巻を読破し、毛沢東の農民とブルジョアの対立に興味を持ったと述べ、中国愛を隠していない。
ここからわかるのは、川勝知事が日本を中国より下に置き、さらに日本での都市より田舎を下に置くといったように、人を生まれたところで優劣をつける差別主義者であるこということだろう。
川勝知事は、中国共産党の機関誌「人民日報」のインタビューで、20歳のころに『毛沢東選書』全巻を読破し、毛沢東の農民とブルジョアの対立に興味を持ったと述べ、中国愛を隠していない。
ここからわかるのは、川勝知事が日本を中国より下に置き、さらに日本での都市より田舎を下に置くといったように、人を生まれたところで優劣をつける差別主義者であるこということだろう。
留意して欲しいのは、「人は生まれや環境で優劣がつく」という意識を持つことを責めているのではないことだ。そういう考え方は昔からあり、日本には思想の自由があるのだから(中国にはないが)、そう考えること自体は自由である。問題は、県知事という公職にある者が、その思想を平気で公の場で言ってしまったことにある。
菅首相への発言からは、出生地による優劣のあり方は川勝知事が物の考え方の根本に持っているものであると読み取れる。
今回御殿場市への偏見を露わにしたのも、ついうっかりということではなく、確信を持っての発言だろう。
菅首相への発言からは、出生地による優劣のあり方は川勝知事が物の考え方の根本に持っているものであると読み取れる。
今回御殿場市への偏見を露わにしたのも、ついうっかりということではなく、確信を持っての発言だろう。
発言の裏には…
この発言の裏には、彼が応援した山崎氏が立憲民主党と国民民主党が推薦した野党系であるのに対して、元御殿場市長の若林氏が自民党の推薦を受けていたことがあると考えられる。
川勝知事にとって、与党である自民党は神聖なる学問から遠く離れた薄汚れた存在であり、それに対抗している野党政治家は教養のある好ましい存在である。だから、薄汚れた与党系政治家であれば、何を言っても良いという考え方が川勝知事にあるのではないかというのが、私の考えだ。
そう考えると、川勝知事がなぜ菅首相を批判するのに、秋田を出してきたかもわかる。川勝知事は中国を頂点に起き、日本をその下に置き、さらに日本の田舎を下に置いているのだから、秋田出身者も中国の名門の源流を持つ自分から見ると「下」にある人物であるからだ。また、薄汚れた自民党のトップであるのだから、もともと持ち合わせている偏見を丸出しにして攻撃したということだろう。
川勝知事にとって、与党である自民党は神聖なる学問から遠く離れた薄汚れた存在であり、それに対抗している野党政治家は教養のある好ましい存在である。だから、薄汚れた与党系政治家であれば、何を言っても良いという考え方が川勝知事にあるのではないかというのが、私の考えだ。
そう考えると、川勝知事がなぜ菅首相を批判するのに、秋田を出してきたかもわかる。川勝知事は中国を頂点に起き、日本をその下に置き、さらに日本の田舎を下に置いているのだから、秋田出身者も中国の名門の源流を持つ自分から見ると「下」にある人物であるからだ。また、薄汚れた自民党のトップであるのだから、もともと持ち合わせている偏見を丸出しにして攻撃したということだろう。
via seijichishin.com
川勝知事は、JR東海の社運を賭けた大プロジェクトであるリニア新幹線を、県知事の立場で阻止している。その間に静岡県の友好地域である中国浙江省のリニアプロジェクトが着々と進んでいる。一帯一路の受け入れまで前向きに語るほど親中派である川勝知事であるから、中国のリニアのほうに関心があるのかもしれない。
川勝知事がリニア凍結の根拠としている大井川の減水も、覆工コンクリート工事をしなければ減る最大値の2.5倍の水を、発電用に山梨県に回しているのである。これでは「反対のための反対」ではないかと批判されても仕方がないだろう。
しかも、覆工コンクリート工事は実際におこなわれる上に、漏れる水はすべて大井川に戻されるのであるから、失われる水量ははるかに少ない。
私なら田舎への偏見を隠さない知事などまっぴらごめんであるが、今のところ川勝知事は県民の負託を受けている。ここにリニア問題の難しさがある。せめて県民にはきちんと正しい情報を流して判断を仰いで欲しいと願うばかりだ。
川勝知事がリニア凍結の根拠としている大井川の減水も、覆工コンクリート工事をしなければ減る最大値の2.5倍の水を、発電用に山梨県に回しているのである。これでは「反対のための反対」ではないかと批判されても仕方がないだろう。
しかも、覆工コンクリート工事は実際におこなわれる上に、漏れる水はすべて大井川に戻されるのであるから、失われる水量ははるかに少ない。
私なら田舎への偏見を隠さない知事などまっぴらごめんであるが、今のところ川勝知事は県民の負託を受けている。ここにリニア問題の難しさがある。せめて県民にはきちんと正しい情報を流して判断を仰いで欲しいと願うばかりだ。
白川 司(しらかわ つかさ)
評論家・翻訳家。幅広いフィールドで活躍し、海外メディアや論文などの情報を駆使した国際情勢の分析に定評がある。また、foomii配信のメルマガ「マスコミに騙されないための国際政治入門」が好評を博している。
評論家・翻訳家。幅広いフィールドで活躍し、海外メディアや論文などの情報を駆使した国際情勢の分析に定評がある。また、foomii配信のメルマガ「マスコミに騙されないための国際政治入門」が好評を博している。