【朝香 豊】今度こそオオカミが来る?中国・不動産バブル...

【朝香 豊】今度こそオオカミが来る?中国・不動産バブルのホント

天文学的な債務

 中国経済の雲行きがおかしくなっていることについては、YouTubeのWiLL増刊号でも取り上げたが、時間の関係で取り上げきれなかったところを中心にもう少し詳しく述べてみたい。

 中国の朱鎔基元首相の息子の朱雲来氏は、中国を代表する金融専門家であるが、彼は2018年に非公開の講演の席で中国の2017年末での債務の合計が600兆元(1京円)をすでに越えていたと語った。朱雲来氏によると、中国経済が平均して年率10%近く成長していた期間に債務は年率20%で増え続けてきたという。なお、中国の2017年のGDPは公式では83兆元(1300兆円)だということになっているが、実質はこの半分程度であると考えられており、これを前提に考えると、中国の総負債額は2017年段階でGDPの1400%以上に達していたとみなされる。これは日本のバブルの絶頂期のざっと6倍の水準である。この状態から3年が経過し、コロナ禍も襲い、激しい水害などにも見舞われて、中国の債務状況がさらに悪化しているのは間違いないところだ。

 GDPの1400%に達している債務が仮に平均で5%の金利を求めていると考えても、GDPの70%が利払いに回らなければならないという構図であり、これではとてもではないがまともな経済にならない。ちなみに5%の金利と聞くと日本の感覚からすればものすごく高いと思うだろうが、中国では国債金利が3%を越えているので、5%の金利は決して高いものではない。

 本来であれば、中国はこの金利負担を軽減するために大幅な利下げを行うべきなのだが、それができない事情がある。それは外貨が枯渇しかけているからだ。日米欧がゼロ金利を採用している中で、3%以上の金利にすれば、中国への外資の投資資金を引きつけることができ、これによって外貨不足を解消することができる。この目的は国内の債務負担の軽減よりも優先されるものであるので、こうした高金利が維持されているのである。だが一方でこの金利負担に中国経済は耐えられなくなり、バブル崩壊の引き金になるという悪循環にはまっている。

実生活上でも見られる「破綻の予兆」

 中国のバブル崩壊を象徴するのが、上海明天広場の競売である。明天広場はハンター・バイデンとの怪しい取引で一躍有名になった華信能源グループが保有していた高さ282メートルもある超高層ビルで、上海の中でも超一等地にある。華信能源の破綻に伴い競売にかけられることになったが、25.71億元からスタートした競売には誰も買い手がつかずにこの競売は流れた。後日これより20%減額した20.57億元で再び競売にかけられたが、これにも買い手は全くつかなかった。そこでさらに20%切り下げた16.45億元で再び競売にかけられることになっているが、これにすら買い手がつくかどうかは疑問視されている。

 これは中国経済の中心地である上海の中でも超一等地に位置する不動産が、大幅に値引きされても買い手が全くつかなくなったことを意味する。中国での不動産の利回りは1%程度とされており、仮に4%で銀行から借り入れできたとしてもとても採算が合わない。不動産価格がバブル的に上昇することが期待できなくなっては、不動産投資意欲が蒸発するのは当然であろう。

 債務を利用した詐欺事件のようなことも多発している。その中で最近話題となっているのが蛋壳という不動産管理会社の話だ。この蛋壳は借り手が1年分の家賃をまとめて支払う場合には、賃料を値下げするということを謳い文句にして成長してきた企業である。すなわち、入居者が1年分の家賃を前払いしてくれるなら、家賃は11ヶ月分でいいなどとするのである。この不動産管理会社は家主には毎月1ヶ月分の賃料を支払い続けるわけなので、単純に考えれば逆ザヤ状態なのだが、最初に預かった潤沢な資金を使って運用をうまくやるから問題ないという理屈になっていた。そこで賃料が少ないほどありがたいと思う人たちは借金をしてでも1年分の家賃を集めて支払うわけだが、管理会社の運用がうまくいかなければ、家主のもとに家賃が全く入らないことになる。そして案の定この蛋壳が家主に対する家賃の支払いに滞るようになり、入金がなくなって怒った家主が入居者を追い出そうとするようになった。家主も借金をしてアパート・マンションを買っているから、家賃収入がないと返済計画に狂いが生じて困ることになる。これに対して入居者もすでに家賃は支払っているとして徹底抗戦するという構図になっている。どちらも譲れないわけだ。

 バブル崩壊を避けようと、中国はずっと債務の拡大を容認してきたわけだが、これがついに限界に達したというのは間違いない。不動産ローンの返済が止まるなら、銀行は担保となっているアパート・マンションの差し押さえをせざるをえないが、しかし差し押さえたアパート・マンションが簡単に現金化できる状態ではなくなっている。この結果、銀行の破綻も今後相次ぐことが予想される。中国経済はすでに破綻に向かって進むしかなくなっていることを軽視すべきではないだろう。
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朝香 豊(あさか ゆたか)
1964年、愛知県出身。私立東海中学、東海高校を経て、早稲田大学法学部卒。
日本のバブル崩壊とサブプライム危機・リーマンショックを事前に予測、的中させた。
現在は世界に誇れる日本を後の世代に引き渡すために、日本再興計画を立案する「日本再興プランナー」として活動。
日本国内であまり紹介されていないニュースの紹介&分析で評価の高いブログ・「日本再興ニュース」( https://nippon-saikou.com )の運営を中心に、各種SNSからも情報発信を行っている。
近著に『左翼を心の底から懺悔させる本』(取り扱いはアマゾンのみ)。

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